DTM音楽研究家のイボGです。
アーティストは一体どうやって音楽を作っているのでしょうか。何を重視しているのでしょうか。ここではアーティストがどうやって音楽を作っているか、またどんな点にこだわりを持っているかを把握できている限りまとめてみました。
アーティストによって、楽曲制作のアプローチが異なることが分かってきますが、楽曲制作の過程や思い入れ、こだわりなどを知ることができると、楽曲の見え方も変わってきて面白いですよ。
また、音楽制作をする人は、プロのアーティストがどんなところに意識をしているかを知って、是非自分の音楽制作手法にも取り入れてみてくださいね(私もかなり参考になりました)。
楽曲制作のアプローチ
まずは一般的な楽曲制作のアプローチをまとめてみました。中には歌詞や伝えたいこと、テーマが決まらないと音楽制作に入れない人もいたり、逆にリズムやバックトラックなどのサウンド面から入って、メロディーや歌詞は後付で作っていく人もいて、その作り方は細かい点で見ると本当に十人十色で面白いです。
それを紐解いていくことで音楽・楽曲の聴き方がまた変わってくると思います。アーティストによって様々な作り方をしていることにも気づくと思います。

詞先
まずは歌詞を先に作っているというアーティストをご紹介していきますが、歌詞を重視しているアーティストの傾向としては、「シンガーソングライター」が特に多いという印象です。歌詞を重視しているアーティストは「伝えたいメッセージ」「言葉」「テーマ」を重視しており、中にはそれが固まらないと楽曲が作れないというアーティストもいます。ですので、楽曲のヒントやモチーフを得るために、普段から本を読む、映画を見る、外出する、色々な人の考え方を知るといった情報収集と刺激を得ることが大切になると思います。
aiko
歌詞先アーティストとしては有名なaikoさんですが、伝えたい言葉を書いた後にメロディーを作って音にハメていくスタイル。メロディーの作曲は電子ピアノで作っており、楽曲が似通らないよう、目をつむって弾き始めるなどランダム性を取り入れる遊び心のある作り方も、彼女ならではの制作スタイルだと思います。編曲アレンジに関しては、プロデューサーが橋渡しとなってアレンジャーに伝達し、3者で何度も擦り合せを経て行うという形式。
楽曲に関しては型破りな面も多く、音楽理論のセオリー上使われないアレンジ(ノート)が用いられており、代表曲「ボーイフレンド」のサビに関しても、デモ段階で制作スタッフに違和感をかなり持たれたそうです(何度も繰り返し聞いていくうちに、そのスタッフも「慣れたきた」とのこと…)。メロディーに関しても、半音の上下を多数織り交ぜたり、コード進行についても、メジャー・スケールではなく、「ブルー・ノート・スケール」を多用するなど、自由な音楽観を持ち合わせているような印象です。
歌詞に関しては恋愛論やファッションなど独自の目線から描く世界観が女性を中心に共感を呼び、広い世代が支持されていますね。
槇原敬之
1990年代の代表的音楽アーティストで、「世界にひとつだけの花」「遠く遠く」など多数のヒットソングの生みの親となっており、楽曲提供もSMAP、平原綾香、声優の花澤香菜、芸人のダウンタウンなどと幅広く着手しています。彼の制作スタイル常に歌詞から制作する方法で、「曲から書くことはできない」ということを頻繁に公言しています。詞にメロディーを乗せていく作業とのことですが、その歌詞には実話もあるようです。(例:彼女の後をつけて浮気現場を目撃するという衝撃的なストーリーの「SPY(1994年)」)
ちなみに、槇原さんは作詞作業を「悶々とする孤独な作業」と表現しており、作曲やアレンジの段階では開放感があって、歌詞に誘われるというイメージを持っているようです。人を元気付けたり、素直さに気づいてもらいたいというストレートな強いメッセージを込めるというプレッシャーを抱いている分、言葉の生み出しには「半泣きで書いている」というぐらい…相当苦労しているようですが、それさえ乗り越えられれば自分で築いた世界観・イメージで、後は転がるように多くの人の胸に染み入る楽曲ができあがるのですね。
ゲスの極み乙女。
「川谷絵音(Vo,Gt,Key)」を中心に「休日課長(Ba)」、「ちゃんMARI(Vo,Key)」、「ほな・いこか(Dr)」の4人組で2012年5月に結成されたロックバンド。「ヒップホッププログレバンド」を自称しており、スピード感のあるラップ調の歌詞に加えジャズやクラシックなどの要素を取り入れた楽曲が特徴的。
2014年10月に発売されたアルバム「魅力がすごいよ」では音楽性が深すぎるせいか、思ったほど当時は記録が伸びなかったこともあり、そのリベンジ楽曲「私以外私じゃないの」を機に、詞先に切り替えたようです(結果、同アーティストで最もヒットとなるオリコン20週登場を記録)。
音楽制作の話とは関係ありませんが、休日課長こと「和田理生(わだまさお)」さんは、一時期「TERRACE HOUSE」に出演していて、性格の良さが滲み出すぎて、我が家ではめちゃめちゃ応援していました。
SHISHAMO
「宮崎朝子(Gt,Vo)」、「松岡彩(Ba)」、「吉川 美冴貴(Dr)」のガールズ3ピースロックバンドで、2010年に結成し、最初は漢字で「柳葉魚(ししゃも)」でした。曲調は青春といった感じの甘酸っぱいラブソングが多く、特に女性層から熱い支持を受けています。楽曲制作の大半はボーカルギターの「宮崎さん」で、制作スタイルは歌詞を先に作って、ギターを引きながら歌っていくという作り方をしています。歌詞は携帯に記録していて、なるべく聴く人の顔を思い浮かべて、心に届くようにどう言ってほしいかを考えているそうです。ただ、携帯を無くしていた時期があり、その時は歌詞と歌を同時進行で作ったため、いつもより時短に繋がったそうです。また、基本的に歌詞の展開は、ストーリー形式を持たせた楽曲が多いのも特徴的です。
鬼束ちひろ
19歳でデビューし、2001年にはアルバムがミリオンセールスを記録。突如風のように現れた実力派ボーカリストですが、実は自身で作詞と作曲を手掛けるシンガーソングライターです。ハードスケジュールによる健康状態の悪化のため、表舞台から立ち去ってしまいましたが、ネガティブな感情表現も独特な世界観も、芸術作品っぽくて、個人的にはもっともっと評価されて良い”アーティスト”だと思っています。
音楽制作スタイルは、何よりも歌詞を重視していることから詞先であり、これによってメッセージ性の強い楽曲を生み出せているのだと思います。10代から詞先の手法で作曲を始めていますが、詞と曲がマッチしない場合でも「詞の世界を重視」するため、曲の方を修正するというエピソードがある程、歌詞に強い思い入れを抱いているそうです。
ちなみに、”笑い”を文字で表現する際に使われていた「w」、「www」。「w」の形・見た目から笑いの表現として今では「草生える」「大草原」という表現が浸透していますが、この表現の元祖はなんとこの「鬼束ちひろ」さんですよ。歌詞には謎解きとまではいきませんが、直接的な表現を避ける傾向にあるため、解釈が多面的になるところや聞き手に優しくないところが多くありますが、そこは鬼束ワールドの作品の魅力だと思います。
一時期、音楽活動からは離れていたものの、現在は復帰して「HYSTERIA」というアルバムをリリースをしていました。昔に作った楽曲がたくさん残っていたそうで、この楽曲たちを完成させてほしいとディレクターからの熱烈オファーがあって完成に繋がったそうです。ちなみに、今回初めて楽曲が完成しているところに歌詞をつけていったそうですが、10曲分の歌詞を1週間で作ったらしく、天才かと思いました…。そんな豊かな感性手に入れてみたいですね…。
アルバムの楽曲ですが、「焼ける川」という楽曲の破壊力はヤバめで、これだけでも買って聞いてほしいです(以下の動画の28秒ぐらいからの曲です)。
チャットモンチー
徳島県出身の「橋本絵莉子(Vo,Gt)」「福岡晃子(Ba)」「高橋久美子(Dr)」による3ピースバンド。チャットモンチーは筋金入りの詞先バンドなのですが、面白いのは3人とも歌詞を書いていたので、バンドには常に「歌詞のストック」があったという点。橋本さんは後年のインタビューで、バンド時代に曲先をやらなかった理由を「やる必要がなかったんです」と振り返り、詞にメロディをつけるのが得意だったから、と語っています。
制作の順番は3段階で、誰かが書いた歌詞 → 橋本さんがギターでメロディーをつける → 福岡さんがコード感・アレンジをつけるという流れ。福岡さんも従来のやり方を「歌詞にメロディーを付けたあとに私がコード感をつけていく」と説明しています。橋本さんが「まず私の歌詞があって、最初はギターで曲をつけていて」と話す通り、道具はギター1本というシンプルさです。
個人的に良いなと思ったのが、他人が書いた詞に曲をつける面白さを橋本さんが語っていること。自分以外の歌詞だと「こんな曲になった!」という驚きが必ずあるそうで…この驚きこそが、バンドで詞先を続けた原動力だったんですね。ちなみに2人体制になった2017年以降は意識的に曲先や打ち込み先行にも挑戦していて、「クッキング・ララ」は福岡さんが「曲を先に作って、あとから」橋本さんに歌を乗せてもらった曲だそうですよ。
メロディー先
メロディーから作るという方はシンガーソングライターの方にも多く見られます。一般的には、メロディーが思いついたら、即座にスマホアプリのボイスレコーダーで記録しておき、楽器(コード)と共にイメージを拡大。その後、具体的な楽曲の仕上げ・ブラッシュアップのために、アレンジャーに引き渡されるというパターンも多かったです。
miwa
神奈川生まれの東京育ちで、父親の影響により音楽が身近にあったというmiwaさんが、音楽制作を始めたのは15歳からとのこと。楽曲の多くは弾き語りスタイルを中心に様々な楽器が登場する厚みのあるバンドサウンドで、野外フェスでも入念にサウンドチェックリハーサルを行う様子が印象的でした。楽曲の種類も幅広く、風が吹き抜けていくような爽やかな夏ソング、可愛らしい楽曲など、明るく元気な性格が光る演出だけでなく、エレキギターに持ち替えて激しいロックチューンを披露する姿も「かっこいい」と絶賛されるなど、アイドルチックな一面とアーティストとしての魅力を持つキャラクター、そして数々のドラマなどのタイアップで心を鷲掴みにする楽曲を量産しているシンガーソングライターです。
シンガーソングライターにありがちな自由気ままに作る音楽制作スタイルよりも、タイアップ楽曲が多数を占めるということから、メロディーをどんどんストックしているそうで、歌詞はテーマが与えられたときに考えるという形で、発注を受けてから応える職業作家的な制作スタイルを取っているのが彼女の凄いところ。これだけ幅広い引き出しがあるアーティストは本当に凄いと思います。。。フェス、ライブも魅力的でした!
七変化する魅力的なアーティスト
スガシカオ
本名もスガシカオさん。30歳を過ぎてから音楽デビューをしたことでも有名なシンガーソングライターです。SMAPに歌詞を提供した「夜空ノムコウ」では締切りを忘れていて、札幌のライブに向かう途中で慌てて仕上げたというエピソードも伝説となっています。そんなスガシカオさんの音楽制作には「iPad」が欠かせないとのことでこれまでに大小様々なサイズの機種を8台以上も所有しており、音楽制作の大半はiPadが関わっているとのこと。
ライブでも譜面を入れて、フットペダルでページをめくったり、メロディーが思いついたら簡易レコーダーを立ち上げて鼻歌でメロディーを吹き込むようです。思いついたらとことん鼻歌を吹き込んでいって、出尽くしてから楽曲としてまとめ始めるので、曲によっては鼻歌ファイルが300に到達することもあったようです。また、基本的には外出時に思いつくことが多いそうなので、制作の締切が近づくとiPad Proを持ってひたすら歩くそうで、場合によっては20km近く歩くこともあるようです。ちなみにiPhoneではクリエイティブな気持ちになれないようで、物足りなかったようで…。
yoasobi(ayase)
元々はVocaloidによる楽曲投稿をしていたayaseさん。2019年11月に幾田りら(ikura)さんと小説を音楽にするユニット「YOASOBI」を結成し、翌月リリースした「夜に駆ける」で瞬く間にヒットアーティストの仲間入りをしました。
そんなayaseさんの楽曲制作スタイルは、思いついたときに携帯のボイスメモに入れて、その後パソコンに移すという作業をするという定番の方法です。作曲家あるあるで有名な話、曲を思いついて録音しているときは「良い曲だ!」と思っていても、時間が経過してからいざ楽曲に起こしてみると「あれ…?」となる現象。ayaseさんはこれを防ぐために、パーツだけで残しておかずに「イメージがしっかり見えているうちになるべく作りきってしまう」ように心がけているそうですよ。
ちなみに、音楽制作をしている人に勇気を与えたayaseさんのツイートがあります。ここからあのヒット曲が生まれたと思ったら、環境に言い訳せずまだまだ私達も精進する必要がありそうですね!!ちなみに、ピアノでよく使っているのは、Logic Proに内蔵している「Steinway Grand Piano」というパッチなので、Yoasobiサウンドを目指したい方は是非参考にしてください。
こちらもayaseさんが手掛けていますね。
川嶋あい
『天使の歌声』と称されたシンガソングライターの草分け的存在「川嶋あい」さんは、楽曲「明日への扉」で一躍ブレイクし、「旅立ちの日に…」という曲も卒業定番ソングとして人気があり、若い世代からの支持を集めています。
歌との出会いは3歳の頃からで、中学生の頃には数々のコンクールでグランプリ受賞をするようになり、高校は芸能コースに通うため単身上京。しかし、周囲の友人はどんどん活躍する一方で、自身は孤独感と挫折感に打ち勝てず、毎日泣き続けていて、初めて実施した四ツ谷駅での路上ライブでも誰も立ち止まってくれず何も変わらなかったそうです。
通常ならここで心が折れそうですが、川嶋さんは「路上ライブ1000回やろう。それでも駄目なら諦めよう」という決意をして、高校1年生の終わり頃からカラオケでの路上ライブ生活を続けて、様々な人にサポートやアドバイスをもらうことで現在の弾き語りスタイルなっていったそうです。そして、ある時路上で歌っていた「明日への扉」がテレビの番組プロデューサーの目に留まり、CDデビューを果たした…、なんとも勇気を与えてくれるエピソードですね。ちなみに、中学2年生の時には演歌歌手としてデビューもしていたそうですが、そちらは売れなかった様子…。
川嶋さんの音楽制作方法については、「歌詞先」と思われていることが多いのですが、実は、本人は「メロディーにいちばん合う言葉を探してきた」と言っていることからも、メロディー先であることが伺えます。また、基本的にテーマは変わってもこのやり方は変わっていないそうですので、曲によってやり方を変えたりすることも無さそうです。
スピッツ
詞・曲の大半を手掛ける草野マサムネさんですが、曲(メロディー)が先だとご本人がはっきり明言しています。画家のjunaidaさんとの対談で、歌詞の言葉選びに独特のビートを感じると言われた際、「曲先行でつくっているから」かもしれない、と答えているんですね。メロディの流れやリズムに逆らわないように言葉を乗せたいと、いつも考えているのだそう。先にメロディーとリズムがあって、そこに最も気持ちよく乗る言葉を探しにいくという順番です。
しかもこの優先順位がかなり徹底しています。「歌いたいことを犠牲にしてでも」メロディの流れやリズムに添いたい、とまで語っているんです。言いたいことよりも、メロディーへの乗り心地を優先する。スピッツの歌詞が独特の浮遊感と語感の良さを持っていて、意味が取りづらいと言われることもあるのは、この徹底ぶりの裏返しなのかもしれません。「本当に歌いたい言葉」ではなく「きれいに乗る言葉」を選び抜いた結果だと考えると、あの言葉選びの不思議さがすとんと腑に落ちます。
とはいえ、常に完全なメロディー先というわけでもないようです。楽曲「紫の夜を越えて」については、駅のエスカレーターに乗っているときにメロディーと歌詞が浮かび、「人がいないところまで行って」スマホに入れた、というエピソードを語っています。メロディーと歌詞がまとめて降りてきた瞬間ですね。日常の移動中にふっと降りてきたものを、その場で捕まえて残しておく。この「取りこぼさない習慣」のほうは、私たちもすぐ真似できるところです。
緑黄色社会
「Mela!」「花になって」などでお馴染みの4人組バンド。リョクシャカの制作が面白いのは、メンバー4人全員が作曲をして、毎回「バンド内コンペ」で採用曲を決めるという方式です。ベースの穴見真吾さんいわく、コンペにすると結果的に「メロディが強いものだけが生き残る」とのこと。しかもギターの小林壱誓さんは「他の人の曲を聴かないようにしてる」そうで、けっこうガチンコの勝負なんですね…。
つまり順番としては「曲が先、歌詞は後」。ボーカルの長屋晴子さんもラジオで、作品の話をもらったらまずバンド内でコンペをして、「その後に、私が歌詞を書いていった」と手順を説明していました。持ち寄る形は「弾き語りデモ」やワンコーラスだけのデモで、長屋さんのデモについては小林さんが「ほぼピアノがメイン」と話しています。
採用が決まった後は、穴見さんがそのデモを「完成形に近いアレンジまで持っていきます」とのことで、そこから外部のアレンジャーにバトンタッチ。ちなみにアレンジで楽器を入れる順番は、ピアノや打ち込み系→ギター→最後にベースだそうで、ベーシスト本人が自分のパートを最後に回すというのが何とも興味深いです。ただし例外もあって、「Shout Baby」については長屋さんが「メロディとコードと歌詞とが一緒に出てきた」と話しているので、曲によっては詞曲同時のパターンもあるようですね。
福山雅治
シンガーソングライターであり俳優でもある福山雅治さん。制作の出発点は完全にメロディーで、思い浮かんだメロディを「ギターで弾き語りしてボイス・レコーダーに録音する」というラフ・スケッチから始まるそうです。ここはスガシカオさんの鼻歌ストックとも通じるところがありますね。
面白いのはその次で、曲全体のイメージが見えたらエンジニアを招いてPro Toolsにアコギとボーカルを録音。ワンコーラスだけ録ってそれを貼り付けて2コーラス目にしたり、間奏を8小節だけ暫定で入れたりと「Pro Tools上でコラージュして構成していく」という作り方。DTM的な発想で曲の設計図を組み立てているんですね。構成が固まった後は、エレキギターかピアノのコード・バッキングを録り、そこからドラム、ベース、ブラスやストリングスという順番で音を積んでいくとのことです。
ちなみにアルバム『AKIRA』の制作では、コロナ禍でスタジオが使えなくなったため「仕事場にブースを作った」そうで、生ドラムとサンプルを共存させたり、Spliceのサンプルを自分の手で打ち込んだりと、かなり攻めた作りをしています(完成まで6年8ヶ月…!)。歌詞をいつ書くかについては本人の明言を見つけられなかったのですが、プロデューサーの萬年里司さんが『ON AND ON』のLAレコーディングを「詞ができていない状態で向こうに行って」と振り返っていることからも、曲が先で詞が後というスタイルが伺えます。
BUMP OF CHICKEN
楽曲を一手に手掛ける藤原基央さんですが、調べてみると時期によって作り方が大きく変わっているのが面白いところです。10代の頃を振り返った公式サイトのインタビューでは「曲だけは量産できた」「歌詞はどうでもよかった」と語っており、初期は完全な曲先、しかも歌詞は最後の最後だったことを本人が認めています。鳴らしたい音楽さえできれば、何を歌っているかは二の次。そこまで言い切るあたりが痛快です。
その進め方が徹底していて、この時期は「YAMAHAのQYっていうシーケンサーに打ち込んで」曲のほうを先に完成させていたそう。バンドへの持ち込み方も独特で、小節数・コード進行・ドラムのビート・ベースの形をメンバーに口頭で伝え、そのまま演奏して録音。「録ってる最中は」どんな言葉をどんなメロディで歌うか、メンバーは誰も知らない状態だったといいます。オケを録り終えてから歌詞とメロディを書くという、かなり大胆な順番ですね。ベースの直井由文さんも「僕らの待ちの時間はめちゃくちゃ多かった」と証言しています。
転機として語られているのが「車輪の唄」。既存曲に似たコード進行を弾き回しているうちにストロークがハマり、「鼻歌で歌ったものがメロディになって」、浮かんだ情景をそのまま言葉にしたら書けたのだそう。ギターを弾く手から鼻歌が生まれ、そこに言葉が乗っていく流れですね。近年はさらに詞と曲の境目がなくなっているようで、歌詞を書きながらギターを弾くのを3〜4時間繰り返し、何も出てこないまま帰る日もあると語っています。「ロストマン」を作った時は9カ月何も出てこなかったそうで、書けない時間ごと制作に組み込んでいるところに凄みを感じます。
ウルフルズ
「ガッツだぜ!!」「バンザイ〜好きでよかった〜」などでお馴染み、トータス松本さん率いる大阪出身のロックバンド。ウルフルズの曲作りは、トータスさんがギターの弾き語りで曲の形を作るところから始まります。音楽ナタリーのインタビューでは、音から組み立てようとすると「曲ができひん」ので、とりあえず弾き語りで作るのだと語っていました。打ち込みやトラックから入るタイプとは対照的ですね。
そうしてできた曲は、まず「ギターだけ」でデモテープにして、デタラメに叩いたドラムを足した状態でメンバーに聴かせるそうです。制作環境の話も面白くて、段ボールに囲まれた狭い場所でパソコンを広げて作業していた時期もあったのだとか。環境が整っていなくても作る人は作るんだなぁと、ayaseさんのツイートを思い出しました。
歌詞の作り方も独特で、ある楽曲ではノートを見開きで使い、右のページに「病気」をひたすら書き出して、そこに音楽用語を混ぜながら左のページで歌詞に仕上げていったそうです。すごい発想…。ちなみにメンバーに曲作りを提案したときは「2行の歌詞でも良いから」そこからみんなで広げていこう、という言い方をしているので、順番がガチガチに決まっているわけではなさそう。入口はあくまでギターと歌、というのがウルフルズらしいところだと思います。
コブクロ
「桜」「蕾」でお馴染み、小渕健太郎さんと黒田俊介さんによるデュオ。楽曲の大半を書くのは小渕さんですが、普段の作り方は「ギターを弾いて、コードに対して歌いながらメロディを作る」というスタイルだそうです。作曲用には「Mini Maton」という小さいギターを愛用していて、「ギターがなかったら、何曲かは本当にできていないです」とまで語っているのが印象的でした。
ただコブクロが面白いのは、時期によって詞先と曲先を行き来しているところ。2016年のアルバム『TIMELESS WORLD』については、小渕さんが「このアルバムはほとんど詞先ですね」と明言しています。つまり「普段はメロディーから作るけれど、作品単位で詞先に振り切ることもある」という複合タイプなんですね。
2024年のインタビューでは両者の違いについても語っていて、先にメロディーができたものの方が「妥協がなくなる」とのこと。詞が先だと、その言葉が伝わるメロディーの候補は無数にある。でも先にメロディーがあると、それを損なわない歌詞は1つしかない…という考え方だそうです。制約があるほど密度が上がるという話で、これは自分の制作にも取り入れたい発想でした。
トラック優先型(全般)
サウンドの良さを重視した作り方で、トラックメイカーと呼ばれるアーティストに多い傾向にあり、主にDTMを使って制作していく場合の手法となります。シンガーソングライターは、歌詞かメロディーを優先する作り方ですので、まさに対象的な作り方。特に音楽業界では、商業としての成功も重要視されますので、中身(歌詞)よりも外観(サウンド・メロディー)の良さを優先し、コンペ形式(競争)によって次の楽曲を選抜することも多数ありますね。
中田ヤスタカ
かなり昔の雑誌記事で読んだことがあるのですが、自分の中で格好良いと思ったサウンドを常にアップデートし続けているため、楽曲がCDとして形になっている頃には自分のサウンドを「古いなぁ」と思っていることもあるそうです。音楽業界のスピード感よりも早く進化を続けている中田ヤスタカさんは完全に天才肌タイプだと思っていて、遠い存在のように感じました。他にもエピソードとして、気になるアーティストのライブに行っても家に帰って作曲したくなったり、「自分だったらこうするのになぁ」と考えてしまうので、あまり音楽自体は聞かないそうですね…。ももクロの音楽プロデューサー「ヒャダイン」さんも嫉妬するぐらいですが、かなり型破りな存在だと思います。
音楽制作ではCubaseを使用しており、歌詞も女子力高めなテーマですが、PVのせいもあってかどこか近未来的でアンドロイドチックで面白いですね。曲に関しても、サビのメロディーを至るところに散りばめたり、王道と少しずらしてみたり、繰り返しのメロディーに変化をつけてみたりといった、遊び心とも取れるハイセンスな技が散りばめられています。また、楽曲はインスピレーションが「降ってくる」というタイプではなく、作りたい時に「引きずり出してくる」そうです。
ただし、中田ヤスタカさんのfacebookなどを見ると、リズムが打ち込んである状態のところに鍵盤を当ててっている様子もあるので、リズムから構築していっているのかもしれません。詳細が分かったら追記していこうと思います。
作曲を始めたのは10歳からで、16歳の時にはYAMAHAコンテストも優勝賞品(サンプラー)欲しさに1時間足らずで制作した楽曲を応募し、テクニック賞を獲得しています。(当時私も聞いていましたが、こんな楽曲よく作れるなぁと落ち込みました)。自身でプロデュースしているユニットの「capsule」、元々アイドルだった「Perfume」やモデルだった「きゃりーぱみゅぱみゅ」、映画やCMソング、リオ五輪閉会式の楽曲提供など、ワールドワイドで活躍の場を広げています。
トラック優先型(リズム)
先程ご紹介したDTMを用いたトラック優先型の制作方法ですが、こちらはそのうちリズムから入るという作曲家になります。DTMを使う場合、何でもありの世界ですが、鍵盤でコード弾きから入る方、メロディーから入る方、ドラムパターンの切り貼りなどリズムから作っていく方(ベースから作る人は聞いたことありませんが…)、など大体パターンや癖が決まっています。
Reol
日本人女性ソロアーティスト初となるYoutubeチャンネル登録者数100万人を2019年11月に記録。田中圭出演の「BOAT RACE」のCMソングに起用されてから急激に認知度がぐんぐん向上していますが、元々は動画サイトで人気歌い手「れをる」としてカヴァー文化を牽引してきたカリスマボーカルです。シンガソングライターでありながら、多重録音経験を元に自身でDTMの打ち込みもこなすマルチクリエイター。
音楽制作の手法や音楽経歴については、ラジオ番組でyoasobiのayaseさんとの対談した時に、音楽との関わりをたくさん話してくれています(下に掲載)。音楽歴は、3歳から中3までピアノ、マーチングバンドを担当。その他にもギター、サックス、木管楽器をかじっていたそうです。
音楽制作には「Cubase」を使用していて、制作過程は主に2種類とのこと。1つ目はドラムループなどを貼り付けリズムを構築した後にベースラインなどを組み立てていく「トラックメイク」的な作り方。2つ目は、メロディーにコードを当て、その後リズムを入れていく作り方をしているようです。ちなみに、面白いと思ったのが、Reolさん”らしさ”を出した楽曲にするうえで、ピアノ(コード)から入るとうまくいかないそうです。
ちなみに、メロディーから作った曲は歌詞が一緒に出てくることが多く、その場合、基本的に歌詞は思いついた内容から変えないそうで、詞の内容(詩・ストーリー)よりもリズム感・音馴染み感を大切にしていることが伺えます。
第六感については、CMタイアップの楽曲打ち合わせ後のバスで思いついたそうで、バス内で窓際に寄って必死にボイスメモで録音していたそうです…。アーティストのこうした制作話すごく面白いですね!!
彼女の持ち味で特徴的な高い声は、「エフェクトを多用しているのではないか?」とよく言われるのですが、以下のYoutube生歌ライブでは、難しい楽曲にも関わらず圧倒的なパフォーマンスを披露しています…。かっこいい!
詞・曲 同時進行型
詞が先か、メロディーが先か。実際にはそのどちらとも言い切れず、詞と曲を行き来しながら、あるいはほぼ同時に立ち上げていくというアーティストも少なくありません。ここではそうした作り方をしている方をまとめてみました。
あいみょん
「マリーゴールド」「君はロックを聴かない」などで一気に世代を超えた支持を集めたあいみょんさん。彼女の作り方は詞先でも曲先でもなく、曲と歌詞が同時進行というスタイルです。日本経済新聞の取材では「曲と歌詞は同時進行」と語り、コード進行を弾きながら、口をついて出てきた言葉をそのまま歌詞にしていくと説明しています。Gコードをじゃんじゃか弾きながら物語を立ち上げていくのだそう。しかもこれは「14歳のころから変わらない作り方」とのことで、売れてからも制作の入り口を一切いじっていないところに凄みを感じます。
個人的に面白いと思ったのが、楽曲「チカ」の生まれ方。ギターをかき鳴らしていたら「A.P.C.の黒い財布」という言葉が口をついて出てきて、そのリズムが心地よかったので、そこから物語を書き始めたのだそうです。意味から言葉を選ぶのではなく、リズムに乗せて気持ちよかった言葉が先にあって、そこから物語のほうを逆算していくわけですね。歌詞を「意味」ではなく「響き」から拾うこの感覚は、弾き語りで曲を作る人にはかなり参考になるはずです。
一方でアレンジについては人に委ねる部分が大きいのも特徴。以前はイメージを伝えるのに「お化け屋敷みたいな」といった感覚的な言葉しか出せなかったと振り返っており、レコーディングの場でアレンジャーとリアルタイムに作り上げていく形をとっています。作詞作曲は自分の芯を貫き、アレンジは現場の化学反応に開いておく。この配分の潔さも、あいみょんさんの強さだと思います。
Official髭男dism
ソングライティングを担う藤原聡さんは、詞先・メロ先のどちらか一方に固定していないタイプです。J-WAVE『~JK RADIO~ TOKYO UNITED』では「歌詞が先、メロディが先、どちらもありますね」と明言。歌いたい内容に合わせてメロディを変えることもあれば、採用したいメロディに合わせて歌詞のほうを変えることもある、と説明しています。どちらが先かよりも、詞とメロディを何度も往復させて磨き込むところに本質がある作り方ですね。
実際、藤原さんは「何度でも作り変える」とも話していて、一度できたものを聖域にしません。ここ、DTMをやっているとつい「せっかく作ったから」で守りに入ってしまうところなので、耳が痛い方も多いのではないでしょうか。さらに作曲とは自分の中から絞り出すだけではなく、周りにある言葉や楽器の音から「教えてもらうもの」だと最近思うようになった、とも語っていて、作曲を「自分から搾り出す作業」ではなく「受け取る作業」として捉え直しているのが印象的です。
道具としてよく使っているのがスマホのボイスメモ。aikoさんとの対談では、溜めたメモのうち手応えのあったものに「◎」を付けて選り分けていると明かしていました。ある楽曲については、メロディーは以前から断片的にあったものが誕生日の日に今の形へ並んだと語り、歌詞のほうは「ほぼ1年ぐらいかけて」書いたとのこと。メロディーの断片を日常的にストックしておき、あとから並べ替えて一曲に組み上げる。これは今日からでも真似できる手法だと思います。
中島みゆき
実は「詞先か曲先か」という分け方そのものを、ご本人が否定しているのが中島みゆきさんです。ほぼ日刊イトイ新聞で糸井重里さんに歌詞とメロディは別々に作るのかと聞かれ、「大抵はワンセットです」と即答。メロディだけ先にできているのは楽曲提供のときくらいで「それは例外」だと語っています。詞と曲が分かれておらず、最初から一体で立ち上がってくるということですね。この感覚を本人は「言ってみれば百人一首ですよ」と表現。言葉に抑揚をつけたほうが響きもよくなる、その延長にメロディーがあるという捉え方です。
当時すでに主流だった曲先のやり方については、歌詞を書く前にアレンジまで済ませ「歌詞はラララのまま」録ってしまうのが一般的らしい、とちょっと距離のある言い方をされていて面白いです。13年後の対談でも同じ質問に「ものによって、パーツパーツによってね」「ほとんど同時っていう時もある」と答えていて、長い年月を挟んでも説明がまったくブレていないのが凄いところ。
個人的に一番面白かったのが、この作り方を外側から支えている仕組み。長年のプロデューサー兼アレンジャーである瀬尾一三さんが厳しく、「デモテープの段階ですでに歌詞がないと、アレンジすらしてくれない」のだそうです。一番だけ書いて渡しても、全体が見えないとアレンジできないと突き返されるとのことで、本人も、二番の歌詞に大どんでん返しがあるならサウンドにも仕掛けが要る、と納得の様子。瀬尾さん側も「メロディー譜と詩を持ってきます」と証言しており、詞と曲が揃わないと制作が一歩も動き出さない体制になっているわけです。歌詞を後回しにしがちな身としては、耳が痛い話でした。
最後に
著名アーティスト達の楽曲制作方法、面白いですね。これからも随時見つけ次第更新していきますが、是非アーティスト達の制作秘話を参考に皆さんも創作活動を頑張っていきましょう!
ご視聴ありがとうございました!




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