【比較】SONYモニターヘッドフォン MDR-CD900ST・MDR-7506・MDR-M1STを聴き比べ・レビューまとめ

DTMなどで音楽制作するときに欠かせないのが、フラットな周波数特性を持ち、些細な音を聞き分けできるモニタリング環境です。ただ、住環境的に大きな音量が出しづらい日本では、モニタースピーカーよりもモニターヘッドフォンの方が扱いやすく、値段も安いため重宝される傾向にあります。

中でも王道のメーカーSONYのヘッドフォン、特にMDR-CD900STは不動の定番機種としてプロ・アマ問わず日本では圧倒的に多数のシェアを占めていますが、情報量や解像度が不足しているという意見やサウンドの好みによって別の機種であるMDR-7506MDR-M1STを使用している方も見かけるようになってきています。

モニターヘッドフォンの定番「SONY」

  • 1989年の業務用販売から今なお日本で定番製品のMDR-CD900ST
  • 海外のレコーディングスタジオで採用されているMDR-7506
  • SONYが威信をかけ4年半の開発期間を経て生み出したMDR-M1ST

そこで、最近「MDR-7506」と「MDR-M1ST」を購入し、特徴や聴き比べをしてみた感想などをまとめました。特に、「MDR-CD900ST」の後継機として作られた「MDR-M1ST」のサウンドが気になるという方もいらっしゃると思いますので、参考にしていただけると幸いです。

ちびイボG

それぞれのサウンドの個性がかなり違うことにとても驚きました。それぞれのサウンドの個性から私個人的な活用方法も最後に掲載していますので参考にしていただけると幸いです。

聞き分けに使用した音源

壮大で余白のある楽曲を選定し、CDで聴感上聞こえる音量を同じにして、聞き比べた感想をそれぞれのヘッドフォンレビュー蘭に記載しています(I/OはRME FIREFAXE UFXⅡ)。

目次

SONY MDR-M1ST

新時代に対応した新たなニュースタンドを送り出すという精神のもと、約4年半の開発期間をかけて作り出したヘッドフォンが、このMDR-M1STです。ハイレゾ音源にも対応しつつ、これまでの交換修理で蓄積したノウハウを活用した部品の改善・削減なども図られているようです。

何よりも、音に関しては、ソニーミュージックスタジオのレコーディングエンジニアのフィードバックをもらうために2年以上もスタジオに通い詰め、何度も試行錯誤を繰り返し、更に複数のエンジニアスタッフに納得してもらえるように調整を行ったそうですが、大きすぎる「MDR-CD900ST」の功績を塗り替える新たな製品を作り出すということは、簡単ではなかったようです。

主な特徴

・値段が他の製品の約2倍(約3万円)
・再生周波数帯域:5~80,000Hz
・ストレートコード(バランス接続も可能)
・コードは脱着が可能(交換も可能)
・パッド部分は横に90度回転可(片耳聞き)

楽曲「ninelie」を聞いて

・音は一枚ベールがあるような音(ハイが抑えめ)
・低域が良く出ていて音の芯が太い
・中低域がどっしりしていて密度が濃い
・響きや余韻が最も綺麗で聞き取りやすい
・他機種よりパッドは固く厚めで長期装着も良い
・リスニング用途としても非常に良い

比較感想の結果や今後の使い道などは最後にまとめています。

SONY MDR-7506

1991年に発売された密閉型ヘッドフォンで青帯のデザインが特徴的なプロフェッショナル向け製品です。

海外のスタジオや番組などで目にする機会が多く、宇多田ヒカルさんが使っている場面も見かけられています。スペック上はMDR-CD900STの方が優れていますが、価格や聴感上の周波数帯域バランスなどからMDR-7506の方が使いやすいという日本人DTMerも多く見かけます。

主な特徴

・値段は1万円程度(最も安い)
・再生周波数帯域:10~20,000Hz
・他機種よりパッドが厚くリスニング用としても良い
・カールコード
・パッド部分は180度反転可(片耳聞き)

楽曲「ninelie」を聞いて

・ハイが強めで特徴的(ボーカルの息遣いも良く聞こえる)
・キックも芯まで聞きやすい(CD900は表面だけ)
・響きや余韻(リバーブ)もそれなりに聞き取れる
・音は両サイドに振ったような聞こえ方
・輪郭の音もくっきりしていて帯域もバランス良い

SONY MDR-CD900ST

1989年に業務用、1995年に一般用として販売された赤帯のデザインが特徴的な密閉型ヘッドフォンです。発売から30年以上も経過した古い機種ではありますが、2020年現在でも、DTMerが最も使っているヘッドフォンランキングで堂々の1位となりました(詳細は記事最後にYoutubeを掲載)。

主な特徴

・値段は1万円程度
・再生周波数帯域:5Hz~30kHz
・音は非常にクリスプで硬い(長時間使用は聞き疲れしやすい)
・音が張り付いたように近い(粗が見つけやすい)
・パッド部分は180度反転可(片耳聞き)

楽曲「ninelie」を聞いて

・中域が中心にあるような帯域感(低域は薄い)
・響きや余韻(リバーブ)は聞き取りにくい
・音との距離が近く(センター寄りで)広がり感は少ない

聴き比べの結果まとめ

リスニング用途としては

楽曲の壮大な感じを一番出せていて密度が濃く、音楽的な感動をおぼえたのはMDR-M1STでした。ただ、MDR-7506もかなりメリハリあるキックと、エッジの効いた高域で輪郭が強くて、これもポイントを抑えていて印象に残りました。MDR-CD900STは他の2機種と比較して、残念ながら音楽的は魅力がかなり薄い一方、音の距離が近く輪郭がはっきりと捉えられるといった感じです。

ちなみに、今回のリファレンスで選んだ楽曲をオープン型のヘッドフォンで聞くと更に解放感があって心地良かったです。

音楽制作(モニタリング)用途としては

MDR-7506もMDR CD900STも音の輪郭部分(立ち上がり部分)が露出しているような感じで、MDR-M1STはアタッキーでは無く、一歩引いたような音になっていますが、個人的には一番音楽的なバランスがまとまっているように聞こえました。ただし、このサウンドがマイルドになった感じは、人によっては好みが別れるポイントになると思いますので、購入の際は、一度試し聞きの機会があった方が良いと感じました(実際に好みでないという方も何人かお見かけしています)。

MDR-7506も少しサイド寄りにはなるもの、しっかりと空間を把握できるヘッドフォンだと感じました。MDR-CD900STは今まで使っていたとは言え、こうして3機種で比較すると相当独特で、ミックス・マスタリングは逆に難しいのでは無いかとも感じるほど、ペラペラな音のような印象を受けてしまいました。

変な例え方をすると、MDR-M1STはどっしりしていて風味も豊かな「濃厚魚介系つけめん」MDR-7506は青森名物の主役たくさんでエッジがバランス良く効いた「味噌カレー牛乳ラーメン」MDR-CD900STはそれだけでは物足りないが定番の「カップヌードル」といった印象を受けました。

個人的な3機種の使い分け

MDR-M1STは2つの機種に比べ輪郭が丸いものの情報量が多く、ずっと音楽を聴いていたいと思わせてくれます。音が太く、立体感があるので「サウンドの良さの確認」だけでなく「音楽的な良さの確認」ができるので、音楽制作時からミックス初期で使用する普段使いヘッドフォンとして使用することにしました。

MDR-7506は、価格含めてトータルバランスで優秀なモニターヘッドフォンだと思いました。音楽制作後半のサウンドのブラッシュアップ期(ミックス~マスタリング)にかけて活用したいと思っています。私の持っているRME FIREFACE UFXⅡ含めて、オーディオインターフェースによっては、2つのヘッドフォンをつなぐことができる機種があるので、1つはこの機種を挿しておいて間違いないように感じました。

定番のMDR-CD900STは、音が良く聞き取れる製品ではあるものの、2つの製品に比べると情報量として少し物足りなく感じたところがあります。特にモニターの低域が弱いので出し過ぎてしまうことが多く、私のモニタースピーカー(YAMAHA MSP3)も同様に低域が弱いので、出し過ぎることが悩みの種となっていました。また、2つの機種と比較すると音の立ち上がり・輪郭に特化した硬い音で余韻・響きは感じ取りにくいところもあり、以上の理由から長い間重宝していましたが、サブモニターとして活用するに留め、メイン機種としては世代交代を行うこととしました。ただ、音との距離が近い事もあり、ボーカルの手直し・粗探し、ノイズの確認など、検出用のヘッドフォンとして使う場合はこれが最も向いていると思います。

スクロールできます
特徴MDR-M1STMDR-7506MDR-CD900ST
音の輪郭少し雲がかるアタッキーアタッキー
音の芯太いほどほど薄い
空気感余韻多い余韻ほどほど余韻少ない
感想普段使いトータルチェック用ボーカルチェック用
価格3万円台1万円台1万円台
仕様年数1年目1年目7年目
使用年数は少し違うが印象をまとめるとこんな感じ

推し機種はどれか

もし、最初の一台や無難な製品を求めた購入をしたいのであれば間違いなく「MDR-7506」を推したいと思います。理由は価格も含めて3機種の中でオールラウンダーであり、弱点がないこと。そして、予算に少し余裕があって、「DTMを一生続けるつもりだ!」ぐらいの方はサブモニターとして「MDR-M1ST」を選択されると、自身の音楽性の客観性・幅が広がって作品作りの精度が上がるのではないかと思います。

参考:ヘッドフォンランキング

なお、音楽クリエイター育成スクールの「sleepfreaks」でDTMerが使っているヘッドフォン人気ランキングが動画でまとめられていましたので、参考にしていただるけと幸いです。

DTMer3,272名に聞いたヘッドフォンランキング(2020年)

プロ・アマチュア(2769名)

  1. SONY MDR-CD900ST
  2. audio-technica ATH-M50x
  3. YAMAHA HPH-MT8
  4. AKG K240 Studio
  5. SHURE SRH440

プロのみ(503名)

  1. SONY MDR-CD900ST
  2. YAMAHA HPH-MT8
  3. SONY MDR-7506
  4. SENHEISER HD-25-1 Ⅱ
  5. audio-technica ATH-M50x

なお、動画の中では、SONY MDR-M1STが講師陣の推しモデルとして紹介されています。

MDR-M1STの開発秘話

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