「電波ソング」という言葉は聞いたことがあっても、何をもって電波ソングと呼ぶのかを説明できる人は多くありません。この記事では、その特徴を音楽的に分解し、DTMで作るとしたら何をすればいいのかまでをまとめます。
ミイんー、みぃ、アニソンは好きなんだけど、電波ソングってどこからが電波なのかなぁ。速い曲のこと? それとも歌詞が変な曲のこと?
実は電波ソングに厳密な定義はありません。ジャンル名というより、聴いた人が受ける印象につけられた俗称です。ただし、そう呼ばれる曲には共通する音楽的な特徴がはっきりあります。
この記事では、言葉の由来・音楽的な特徴6つ・代表的な作り手・DTMでの作り方までを扱います。
電波ソングとは何か
電波ソングは、意味の通らない歌詞と、強い中毒性を併せ持つ楽曲を指して使われる言葉です。日本のアニメソングやゲーム音楽の周辺で育った呼び名で、音楽理論上の分類ではありません。
語源は「電波」という俗語です。支離滅裂な言動を指す言い回しから来ていて、歌詞の内容が飛躍していて意味を追えないことを表しています。近い言葉として「萌えソング」があり、日本語版Wikipediaでは電波ソングの項目が萌えソングと同じ記事にまとめられています。
音楽的な特徴を6つに分解する
「なんとなく電波っぽい」を、具体的な要素に分けてみます。
1. テンポが速い
疾走感のある速いテンポが多い。休符が少なく、常に何かが鳴っている密度の高さも特徴。
2. キーが高い
歌の音域が高く設定される。高い声そのものが、この種の曲の記号として機能している。
3. 合いの手がある
ほぼ必ずコール(掛け声)や特徴的な短いフレーズが挟まる。聴き手が参加できる余地が設計されている。
4. 歌詞が飛躍する
意味を追わせない。造語、擬音、脈絡のない単語の連なりが多用される。
5. 中毒性がある
短くて覚えやすいフックを繰り返す。一度聴くと頭から離れない構造が意図的に作られている。
6. 展開が忙しい
数小節ごとに音色や展開が切り替わる。飽きさせない代わりに、聴き手を落ち着かせない。
この6つのうち、4と5がそろって初めて「電波」と呼ばれる傾向があります。速くて高いだけならアップテンポなアニメソングであり、歌詞の飛躍と中毒性が加わったときに呼び名が変わる、という感覚です。
代表的な作り手と歴史
電波ソングが形になったのは1990年代の終わりごろで、2000年代前半にかけて広がったとされています。歌手では桃井はるこ、KOTOKO、大野まりな、新堂真弓、ユニットではUNDER17、MOSAIC.WAV、IOSYSといった名前が代表として挙げられます。
特にUNDER17は「萌えソングをきわめる」という旗印を掲げて活動し、この言葉そのものを広める役割を果たしました。呼び名が先にあったのではなく、作り手が名乗ることで定着していったという点が、このジャンルの成り立ちを物語っています。
その後、この音楽的な語彙はボーカロイド楽曲、同人音楽、ネットレーベル、インターネット発の音楽全般へ流れ込んでいきました。今の高速で情報量の多い曲づくりの一部は、この系譜の上にあります。
DTMで電波ソングを作るなら
ここからは制作側の話です。上の6つの特徴を、具体的な作業に置き換えます。
- テンポを速く設定します。目安として、一般的なポップスより明確に速い領域を選びます。速さそのものが疾走感を担当するので、ここは最初に決めます。
- キーを高めに取ります。ただし歌える範囲を超えると全部が破綻するので、トランスポーズで仮のキーを何段階か試し、歌い手の音域から逆算して決めます。
- 短いフックを作り、繰り返します。中毒性の正体は繰り返しです。2小節程度で完結する印象的なフレーズを作り、曲中で何度も戻ってくる構造にします。
- 合いの手を左右に配置します。主メロは中央、コールは左右へ振ると、混ざらずに参加感だけが増えます。掛け声は主メロより控えめな音量が基本です。
- 数小節ごとに何かを変えます。音色の追加、抜き、フィル、SEの挿入。同じ状態を8小節以上続けないくらいの感覚で組み立てます。
- ボーカルの処理で記号性を足します。ピッチコレクションを強めにかけた機械的な声は、このジャンルでは効果として機能します。自然さを狙う一般的なミックスとは判断基準が逆になります。
要素別・作り方の早見表
| 要素 | やること | 注意点 |
|---|---|---|
| テンポ | 一般的なポップスより明確に速く | 速すぎると歌詞が聞き取れなくなる |
| キー | 高めに設定し、トランスポーズで詰める | 歌い手の音域を超えたら下げる判断を先に |
| メロディ | 2小節前後の短いフックを繰り返す | 凝りすぎると覚えられない |
| 歌詞 | 造語・擬音・語感を優先 | 意味を捨てても語呂は捨てない |
| 合いの手 | 左右に振って重ねる | 中央は主メロの席として空けておく |
| 展開 | 数小節ごとに変化を入れる | 変えすぎると曲の輪郭が消える |
| 音色 | 尖ったシンセとSEを同居させる | 帯域がぶつかるのでEQでの整理は必須 |
| ボーカル処理 | 強めのピッチ補正を効果として使う | 「自然さ」を基準に判断しない |



あ、意味が分からないのがダメなんじゃなくて、意味が分からないのが狙いなんだ。ちゃんと計算されてるんだねぇ。みぃ、ちょっと歌ってみたくなっちゃった。
よくある質問
Q. 電波ソングとアニソンは違うものですか?
重なる部分はありますが、別の軸の言葉です。アニソンは使われる場所による分類、電波ソングは曲の性格による呼び名です。アニメ主題歌である電波ソングもあれば、アニメと無関係な電波ソングもあります。
Q. 萌えソングとはどう違いますか?
ほぼ同じ領域を指す言葉として使われてきました。日本語版Wikipediaでも同じ記事にまとめられています。強いて言えば萌えソングはかわいらしさに、電波ソングは意味不明さと中毒性に、それぞれ重心があります。使う人によって範囲が変わるので、厳密に区別する実益はあまりありません。
Q. 今から作っても古いですか?
古びていません。高速で情報量が多く、短いフックを繰り返し、声を記号として扱うという方法論は、ボーカロイド楽曲やインターネット発の音楽に受け継がれています。ジャンル名として名乗るかどうかは別として、手法としては現役です。
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