Waves CLA Effectsは、設定によっては音が一切出なくなります。それが不具合ではなく仕様であることを、公式ガイドがクイックスタートの注意書きとして明記しています。この記事では、なぜこの製品が「出力ゼロ」を仕様として書く必要があったのかを、信号の並び方から組み立てます。
想定読者は、すでにCLA Effectsを持っている人と、CLAコレクションのどれを入れるか迷っている人です。プリセット紹介ではなく、コントロールの範囲・初期値と、同じコレクションの他5本と何が違うのかを扱います。コレクション全体(Vocals・Guitars・Bass・Drums・Unplugged・Effects の6本)の概要と使用場面は、入門側の記事 【Wavesプラグイン】「CLAシリーズ」の概要と使用場面、使い方を解説 で扱っています。どれを入れるか決めかねている方は、そちらを先にどうぞ。
参照した一次資料は、Waves公式のCLA Effectsユーザーガイド(英語)の現行版と同梱版、バンドル付属のCLA Signature日本語版マニュアル、そして比較のために開いたコレクション6本ぶんの現行ユーザーガイドです。数値はすべてこれらの公式資料の記載に由来し、裏が取れない項目は書きません。編集部は本製品を所有していないため、使用感の描写はしません。
カホ同じコレクションの他の5本には「カラーを全部Clearにしても固定処理は残る」という一文があります。この機種にだけ、それがありません。そこが設計の分かれ目です。
この記事でわかること
- CLAコレクション6本のうち、この機種だけがBass・Treble・Compressを持たないこと
- 「出力が無くなる」条件が仕様として書かれている理由と、Directスイッチの実際の役割
- 2本のディレイが担当する音価と、Slapだけがテンポ同期から外れていること
- 全コントロールの範囲・初期値と、現行ガイドが11年前の版から何を変えたか
CLA Effectsとは|何を解決する製品か
CLA EffectsはWaves Artist Signature Seriesの1本です。現行ガイド p.3 はこのシリーズを「用途特化型のオーディオプロセッサー」と定義し、狙いを「創作の流れを止めずに、探している音を素早く出すこと」と書いています。CLA Artist Collectionは6本で構成され、内訳はCLA Vocals、CLA Drums、CLA Bass、CLA Guitars、CLA Unplugged、CLA Effectsです。バンドル構成は改編されうるので、現在の内容は公式ページで確認してください。
日本語版マニュアルは、この6本に役割のラベルを振っています。ドラム=CLA Drums、ベース=CLA Bass、ギター=CLA Guitars、ボーカル=CLA Vocals、そしてエフェクト=CLA Effects、リバーブ・エフェクト=CLA Unplugged。他の4本が楽器名で呼ばれているのに対し、この2本だけが処理の名前で呼ばれています。担当しているものが違う、ということが一覧の書き方に出ています。
CLA本人のコメントもガイドに収録されています(現行ガイド p.4)。「CLA Effectsは何でもやる。フィルターをかけたボーカル?できる。テレフォンFX?できる。John Lennonの『I Am the Walrus』のボーカルディストーション?できる、二重にできる。テープフェイズのかかった複数のディレイ?できる。リバーブとテープスラップとロングエコーを同時に?イエス、イエス、そしてイエス。お気に入りの機能のひとつがエコー・スロー・セクションだ。スローボタンを押せば、狙った言葉にだけロングディレイを、ワンクリックで足せる。おまけにテンポはすべてセッションのBPMに合わせてあるから、当て推量が要らない」。
ここで挙がった語のいくつかは、そのままコントロールの選択肢名として並んでいます。Telephone(EQ Colorの赤)、Slap(Short Delay Colorの緑)、Tape Phase(Pitch Colorの緑)。ガイドはこの対応を明示していませんが、語は一致しています。一方で「エコー・スロー」だけは対応がはっきり書かれていて、クイックスタートが「Throwコントロール」と呼んでいるものがそれです。
コンポーネントは2つ。CLA Effects Mono-to-Stereo(モノ入力・ステレオ出力)とCLA Effects Stereo(ステレオ入力・ステレオ出力)です。モノ入力・モノ出力の構成は、コンポーネント節に載っていません。
価格は定価17,380円です(2026年9月時点でwavesjapan.jpに掲載されている値)。セール期間中は表示価格が定価を下回ります。現在の価格は公式ページで確認してください。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
6本の中で、この機種だけがチャンネルストリップの形をしていない
CLAコレクション6本の現行ユーザーガイドを全部開いて、フェーダーの解説を数えました。「Bass controls」「Treble controls」「Compress controls」の3項目は、CLA Vocals・CLA Drums・CLA Bass・CLA Guitars・CLA Unplugged の5本すべてに1つずつあり、CLA Effectsには3つとも0件です。逆に「EQ controls」という項目を持つのはCLA Effectsだけで、他の5本には0件でした。
他の5本は、低域と高域を別々のフェーダーで動かし、その隣にコンプが乗る——つまりチャンネルストリップの形をしています。CLA Effectsはその3本がまるごと無く、代わりにEQという単独のフェーダーが1本あるだけです。そのEQも、ガイドの定義は「高域シェルビングフィルターをコントロールする」。低域側のコントロールは、この製品には用意されていません。
細かいところにも差が出ています。5本の注意書きが「EQフェーダー群を動かしたときに有効になる(the EQ faders are moved)」と複数形で書かれているのに対し、CLA Effectsだけが「EQフェーダーを動かしたときに(the EQ fader is moved)」と単数形です。BassとTrebleの2本があるかどうかが、そのまま英語の数に出ています。
並んでいるフェーダーは、EQ/Distortion/Reverb/Short Delay/Long Delay/Pitch。素材を整える道具ではなく、素材に足す道具で構成されています。クイックスタートが最初の一行で「エフェクトリターン(AUXバス)に挿す」と指定しているのは、そういう中身だからです。
「音が出なくなる」が、注意書きとして書かれている
現行ガイド p.5 のクイックスタート末尾には「Please note」として3つの注意書きが並びます。その1つ目が、この製品を理解する鍵です。
Reverb、Short Delay、Long Delay、PitchのColorがclear(Bypass/Mute)に設定され、かつDirectがオフのとき、プラグインは何も出力しない。
ここが他と決定的に違います。同じ位置にある注意書きを6本ぶん読み比べると、CLA Vocals・CLA Drums・CLA Bass・CLA Guitars・CLA Unplugged の5本には「すべてのカラーをclearにしても、Chrisが設計したいくつかの固定処理はそのまま有効」という一文があり、CLA Effectsにだけこの一文がありません。代わりに置かれているのが、上の「何も出力しない」です。
言い換えると、他の5本には常時動いている素の処理が残っているのに対し、CLA Effectsには残っていません。素通しの経路はDirectスイッチ1つで、それを閉じたうえで4つのウェット系を全部ミュートすれば、出口に届くものが何も無くなります。チャンネルストリップではなく、送り先の箱だという設計が、この一文に出ています。
なお同じ「何も出力しない」条件を持つのは、6本のうちCLA Unpluggedだけです(対象はReverb 1・Reverb 2・Delayの3つとDirect)。ただしCLA Unpluggedのほうは「固定処理は有効」の一文も同時に残しており、両方を載せています。2つの文を並べて持つのがUnplugged、後者だけを持つのがEffects、という関係です。



「挿したのに音が消えた」で検索する前に、Directの位置を見てください。仕様として、ちゃんと消えます。
Directは単純なドライ/ウェットの切り替えではない
DirectスイッチはOn/Off、初期値On。ここまでは素っ気ないのですが、説明文が独特です(現行ガイド p.11)。
Directは処理経路をコントロールする。DistortionとEQがオンのとき、それらはDirect経路とエフェクト経路の両方に影響する。DistortionとEQがオフのとき、Directはドライ(未処理)信号になる。一般に、CLA Effectsをインサートとして使うときDirectはオンに、エフェクトリターンとして使うときはオフにする。
つまりDirectは「ドライ音を混ぜるか否か」のスイッチではありません。EQとDistortionは経路が分岐する前に置かれていて、オンであればDirect側にも効きます。Reverb/Short Delay/Long Delay/Pitchは分岐した後のエフェクト経路にだけ乗る。だからこの4つのColorを全部clearにしてDirectを閉じると出口が空になる、という先ほどの注意書きと辻褄が合います。
同じDirectという名前でも、CLA Unpluggedのほうの定義は違います。あちらは「未処理信号の通過をコントロールし、ドライ信号をウェット(処理済み)出力と混ぜるかどうかを決める」。Unpluggedは素直なドライ/ウェットの合流スイッチで、CLA EffectsのDirectは経路そのものの切り替えです。ちなみにDirectスイッチを持つのは、6本の現行ガイドを見るかぎりこの2本だけでした。
実務上の意味ははっきりしています。インサートで使うならDirectをオンにして、EQとDistortionで元の音そのものを整えつつ空間を足せる。AUXリターンで使うならDirectをオフにして、送られてきた音のウェット成分だけを返す。ガイドが冒頭の一行目でこれを指定しているのは、経路の形が使い方で変わるからです。
ディレイが2本ある。音価が重ならないように割ってある
ディレイのフェーダーの数を6本ぶん数えると、CLA Vocals・CLA Drums・CLA Guitars・CLA Unpluggedがそれぞれ1本、CLA Bassは0本(ディレイのフェーダーを持ちません)。CLA EffectsだけがShort DelayとLong Delayの2本を独立に持ち、それぞれのColorが選べる音価も重なっていません。
| セレクター | Clear | Green | Blue | Red |
|---|---|---|---|---|
| Short Delay Color | Mute | Slap | Eight(8分音符) | Dot Eight(付点8分音符) |
| Long Delay Color | Mute | Quarter(4分音符) | Half(2分音符) | Full(全音符) |
短いほうが8分の周辺、長いほうが4分から全音符まで。2本を同時に上げれば、細かい返しと長いエコーが同居します。CLAのコメントにある「リバーブとテープスラップとロングエコーを同時に」という言い方とも、この構成は重なります。
ここで1点、読み落としやすい但し書きがあります。Short Delay Colorの注記は「ディレイタイムはセッションのBPMに同期する。ただしSlapは除く」。Long Delay Colorの注記には、この除外がありません。2本のディレイのポジションのうち、テンポ同期の対象外だと明記されているのはShort DelayのSlapだけです。CLA本人のコメントは「テンポはすべてセッションのBPMに合わせてある」と言い切っていますが、コントロール解説の側はSlapを明示的に外しています。テンポを変えたときに1つだけ位置が動かないポジションがある、と読んでおくのが正確です。
Send Long Delayは初期値Off。Throwは押しているあいだだけ
左上にあるロータリースイッチがSend Long Delayで、位置はHold/Off/Throwの3つ、初期値Off。ガイドの定義は「Long Delayへのセンドのミュートを解除する」です。動作はクイックスタートに書かれています。Holdにすると常時送られ、Throwはマウスで押し下げているあいだだけ送られ、放すとセンドはミュートされる。
これがCLA本人が「お気に入りの機能のひとつ」と呼ぶ部分で、クイックスタートも「オートメーションを書きながら、選んだフレーズにロングディレイを足すのが簡単で楽しい」と紹介しています。ディレイ量をオートメーションで上げ下げするのではなく、送りを一時的に開ける。ハードウェアのコンソールでセンドフェーダーを一瞬だけ突くのと同じ操作を、ボタン1つに置いた作りです。
注意が要るのは、ガイドが「Off=ミュート」と一語では定義していないことです。定義が「センドのミュートを解除する」であること、Throwで放すとミュートに戻ること、日本語版が「Holdを設定するとディレイ・センドは常に有効となります」と書いていること——この3つを重ねると、Offの位置ではLong Delayへの送りが閉じていることになります。一方で同じガイドは「その他のフェーダーはゼロでも有効で、Chrisのデフォルト設定になっている」とも書いており、Long Delayフェーダーが有効なのに送りが閉じている状態をどう扱うのかは書かれていません。この2文の関係はガイドが説明していないので、断定はしません。
全パラメーター
以下はすべて現行ガイド(全12ページ・PDF作成日2021年4月)p.7〜p.11 の記載です。日本語版マニュアルの該当章(第7章)とも照合し、数値の食い違いはありませんでした。
| コントロール | 役割 | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Input Sensitivity | 最適な入力レベルに合わせる | ±10(0.1単位) | 0 |
| Input Meter | 入力ピークレベル表示 | −26〜0 dBFS | — |
| Sensitivity LED | レベルの適否表示 | 消灯(低すぎる)/緑(良い)/黄(最適)/赤(非常に大きい) | — |
| Balance | 左右のオフセット(Stereoコンポーネントのみ) | ±6 dB(0.1単位) | 0 |
| Send Long Delay | Long Delayへのセンドのミュート解除 | Hold/Off/Throw | Off |
| EQ | 高域シェルビングフィルター | ±10(0.1単位) | 0 |
| EQ Color | フィルターエフェクトの切り替え | Clear(Bypass)/Green(Top)/Blue(Filter)/Red(Telephone) | Green(Top) |
| Distortion | ウェットミックスのディストーション量 | ±10(0.1単位) | 0 |
| Distortion Color | ディストーションのキャラクター | Clear(Bypass)/Green(Drive)/Blue(Crunch)/Red(Fuzz) | Green(Drive) |
| Reverb | リバーブのウェットミックス | ±10(0.1単位) | 0 |
| Reverb Color | リバーブの空間の切り替え | Clear(Mute)/Green(Room)/Blue(Hall)/Red(Canyon) | Green(Room) |
| Short Delay | ディレイのウェットミックス | ±10(0.1単位) | 0 |
| Short Delay Color | ディレイタイムとキャラクター(Slapを除きBPM同期) | Clear(Mute)/Green(Slap)/Blue(Eight=8分音符)/Red(Dot Eight=付点8分音符) | Green(Slap) |
| Long Delay | ディレイのウェットミックス | ±10(0.1単位) | 0 |
| Long Delay Color | ディレイタイムとキャラクター(BPM同期) | Clear(Mute)/Green(Quarter=4分音符)/Blue(Half=2分音符)/Red(Full=全音符) | ガイドの印字は「Green(Slap)」(下記参照) |
| Pitch | ピッチモジュレーションのウェットミックス | ±10(0.1単位) | 0 |
| Pitch Color | ピッチモジュレーションのタイプ | Clear(Mute)/Green(Tape Phase)/Blue(Chorus)/Red(Mr. Wide) | Green(Tape Phase) |
| Direct | 処理経路の切り替え | On/Off | On |
| Output | 出力レベル | ±10(0.1単位) | 0 |
| Output Meter | 出力ピークレベル表示 | −26〜0 dBFS | — |
入出力のClip LEDは、どちらもレベルが0 dBFSを超えると点灯し、メーターエリア内をクリックするとリセットされます。フェーダーの範囲がすべて ±10 の独自スケールで統一されているのはコレクション共通の作りで、各フェーダーが内部で何dB動くかの記載はガイドにありません。
Long Delay Colorの初期値は、ガイドの誤植です
表の1行だけ書き方を変えたのは、ここに誤植があるからです。Long Delay Colorの選択肢はClear/Quarter/Half/Fullの4つですが、その直下の初期値の行には「Default: Green (Slap)」と印字されています。Slapはこのセレクターの選択肢に入っていません。すぐ上のShort Delay Colorの初期値が「Green (Slap)」なので、そこからの写し間違いと読めます。
誤植であることの裏取りとして、3系統のPDF抽出(pypdf/pdfminer.six/PyMuPDF)で同じ文字列が返ることと、該当ページを画像化して目視することの両方を行いました。さらに、同じ誤りが現行版(2021年)・同梱版(2010年)・日本語版マニュアルの3つすべてに載っています。翻訳時の取り違えではなく、元の英語原稿の段階から11年以上そのまま残っている記述です。
では正しい初期値は何か。ガイドの誌面には、この項目のとなりにスイッチのスクリーンショットが置かれていて、そこではFULL/HALF/QUARTERのうちQUARTERが緑に点灯しています。他のセレクターがすべて「緑の位置が初期値」という並びであることとも整合します。ただし画面図は初期値の証拠になりませんので、この記事では確定した値としては書きません。緑の位置がQuarterであること、そして印字されている「Slap」がこのセレクターには存在しないこと——ここまでが公式資料から言えることです。



公式が誤植を11年放置しているとき、記事側が黙って直すのが一番まずいです。引用は残して「これは存在しない」と添えるほうが役に立ちます。
現行ガイドと同梱版の違い
CLA Effectsのユーザーガイドには2つの版があります。Wavesが現在配布している現行版(全12ページ・PDF作成日2021年4月27日)と、製品に同梱されている版(全17ページ・作成日2010年3月7日)です。本文の範囲・初期値は現行版を基準にしました。
2版を突き合わせた結果、「Range:」「Default:」で始まる行は37行あり、37行すべてが一致していました。増えたコントロールも消えたコントロールもありません。Long Delay Colorの誤植も含めて、そのまま引き継がれています。
変わったのは仕様以外の部分で、大きいものが2つあります。1つ目は冒頭のあいさつ文で、2010年版が案内していたのは www.wavesupport.net(Answer Base、Tech Specs、インストールガイド、ソフトウェアアップデート、オーソライズと登録の案内)。現行版はWavesアカウントの作成とWaves Update Planの更新、そして www.waves.com/support のサポートページへの案内に差し替わっています。
2つ目が、ページ数が5ページ減った理由です。2010年版には第4章「The WaveSystem」が5ページあり、ツールバーの各機能(Undo/Redoはそれぞれ直前の32アクションまで)、プリセットの保存と削除、A/B比較、インターフェイス操作、そしてPro Tools専用の環境設定が載っていました。この環境設定の選択肢には、AudioSuite・RTAS・TDMという当時のPro Toolsのプラグイン形式の名前が並んでいます。現行版ではこの5ページがまるごと落ち、別冊のWaveSystem Guideへ誘導する2文に置き換わりました(現行版 §3.3)。17ページ→12ページの差はここから出ています。
もう1点、コレクション全体を見渡すと面白い事実があります。現在配布されているCLAのPDFの作成日時を並べると、CLA Bassを除く5本とCLA MixDownの計6本が、2021年4月27日という同じ日に打ち出されています(CLA Effectsが最も早い11:33、以下Guitars 12:08、MixDown 12:23、Unplugged 12:37、Vocals 12:56、Drums 13:59。CLA Bassだけは2010年3月7日のままです)。なお作成日はPDFを生成した時刻であって、内容を改訂した日とは限りません。この記事で現行版を新しいほうだと判断している根拠は作成日ではなく、公式製品ページの manualPDF がこのファイルを指していることと、あいさつ文が2010年版の wavesupport.net から現行の waves.com /Waves Update Plan の案内に入れ替わっていることです。
その一斉更新の前後で、クイックスタート末尾にあった「出力メーターが赤に入ったら、Outputフェーダーで出力レベルを下げる」という1行の扱いが分かれています。手元にある2010年3月7日版を開くと、CLA Effects・CLA Unplugged・CLA Vocals・CLA Drums・CLA Bass の5本すべてにこの1行がありました。ところが2021年版を数えると、Unplugged・Vocals・Drums・Guitars・MixDownの5本が0件で、CLA Effectsだけが1件のまま残っています。作り直されていないCLA Bassにも当然残ったままです。同じ日に同じ作業をしたのに、1本だけ結果が違う——手作業の跡が見えます。
ただし範囲は限定しておきます。CLA Guitarsは手元にある同梱ファイルも2021年版だったため、この1行が元々あったのかどうかを確認できていません。CLA MixDownは2017年7月4日版の時点ですでに0件で、この行を持っていませんでした。「削除された」と言い切れるのは、2010年版と2021年版の両方を突き合わせられたUnplugged・Vocals・Drumsの3本です。
なおこの残った1行には、2010年版から引き継がれた誤字もそのままです。「Output」が1箇所だけ Ouput と綴られています。
用途別・設定の始点
| やりたいこと | 触るコントロール | 起点と注意 |
|---|---|---|
| AUXリターンで使う | Directをオフ | ガイドのクイックスタート第1項がこの指定 |
| トラックに直接挿す | Directをオン | 同項の但し書き。EQとDistortionが元の音にも効く |
| 入力を合わせる | Sensitivity | LEDが点灯するまで上げる。曲中で最もピークの高い箇所で |
| 高域を動かす | EQフェーダー→EQ Color | フェーダーが0のままだとColorを切り替えても効かない |
| 電話みたいな音にする | EQ Color=Red(Telephone) | 先にEQフェーダーを動かすこと |
| 歪みを足す | Distortion Color(Drive/Crunch/Fuzz) | ClearはBypass。ガイドは「バイト感を出す」用途と説明 |
| 空間を足す | Reverb Color(Room/Hall/Canyon) | ClearはMute |
| 細かい返しを足す | Short Delay Color | Slapだけテンポ非同期。8分・付点8分は同期 |
| 長いエコーを足す | Long Delay Color+Send Long Delay | センドの初期値はOff。Holdで常時送り |
| 狙った1語だけエコーを飛ばす | Send Long Delayを Throw | 押しているあいだだけ送られる。オートメーション向け |
| 広がり・揺れを足す | Pitch Color(Tape Phase/Chorus/Mr. Wide) | ClearはMute |
| 左右のずれを直す | Balance | ±6 dB。Stereoコンポーネントのみ |
| 出力が赤い | Outputフェーダーを下げる | Clip LEDはメーター内クリックでリセット |
この表に「ボーカルならReverbを+4」といった数値が無いのは、ガイドにその記載が無いからです。公式が手順として指定しているのは挿す場所とDirectの位置、そしてSensitivityまで。そこから先は一貫して「カラーを切り替えて、その曲に一番よく効くものを見つける」という書き方で通されています。数値の正解を出さないことが、この製品の設計方針そのものです。
似た製品との使い分け
まず同じコレクション内での位置づけです。CLA Vocals・CLA Drums・CLA Bass・CLA Guitarsの4本は楽器名を冠していて、いずれもBass/Treble/Compressを土台に持つチャンネルストリップ型。挿す先は各楽器のトラックだとクイックスタートが指定しています。残る2本、CLA UnpluggedとCLA Effectsだけがエフェクトリターン(AUXバス)を第一の挿し先として指定され、Directスイッチを持ちます。
そのUnpluggedとの違いもはっきりしています。CLA Unpluggedは、Bass/Treble/Compressを持ったうえでReverb 1とReverb 2の2系統を積み、それぞれに独立したPre Delay(64T〜4=1/64三連〜4分音符、BPM同期、初期値16、オン/オフは初期値Off)が付きます。リバーブを厚く作るための構成です。対してCLA Effectsは、EQ/Distortion/Reverb/Short Delay/Long Delay/Pitchと種類を横に広げていて、リバーブは1系統しかありません。深さのUnplugged、幅のEffectsという分担です。
汎用のリバーブ/ディレイと比べたときの違いは、決め方の軸にあります。プリディレイやフィードバックを数値で追い込むのではなく、色を選ぶ。ガイドが掲げる「創作の流れを止めずに素早く出す」という目的が、そのままUIになっています。逆に、時間や帯域を数値で詰めたい場面には向きません。ガイドがそもそも数値を持っていないからです。
よくある質問
挿したら音が消えました。壊れていますか
仕様の可能性があります。ガイドは「Reverb、Short Delay、Long Delay、PitchのColorがclearに設定され、かつDirectがオフのとき、プラグインは何も出力しない」と明記しています。まずDirectの位置を確認してください。トラックに直接挿しているならDirectはオン、というのが公式の指定です。
EQのカラーを切り替えても何も変わりません
仕様です。ガイドは「EQの調整はEQフェーダーを動かしたときに有効になる。0のままではEQカラーを切り替えても効果が出ない」と書いています。まずEQフェーダーを動かしてください。なおガイドによれば、EQ以外のフェーダーは0の位置でも有効で、そこがChrisのデフォルト設定にあたります。0=オフではありません。
ディレイのテンポはどう決まりますか
セッションのBPMに同期します。Short Delayが8分音符と付点8分音符、Long Delayが4分音符・2分音符・全音符です。ただしShort DelayのSlapだけは同期の対象外だと注記されています。
ロングディレイのフェーダーを上げても鳴りません
Send Long Delayスイッチの位置を確認してください。初期値はOffで、このスイッチの役割はガイドの定義では「Long Delayへのセンドのミュートを解除する」ことです。常時鳴らしたいならHold、フレーズ単位で飛ばしたいならThrowを押している状態にします。ただしOffのときにLong Delayへ何が送られているのかを、ガイドは明示的には書いていません。
Pitchフェーダーは音程を変えるものですか
ガイドの定義は「ピッチモジュレーションのウェットミックスをコントロールする」です。選べるタイプはTape Phase/Chorus/Mr. Wideの3種類で、ClearはMute。音程を移調するコントロールとしては説明されていません。
まとめ
- コレクション6本のうち、Bass・Treble・Compressを持たないのはこの1本だけ。チャンネルストリップではなく送り先の箱
- Directは単なるドライ/ウェットではなく経路の切り替え。ガイドの記述を重ねると、EQとDistortionは分岐前、Reverb以下4つは分岐後に置かれている
- ディレイは2本で音価が重ならない。テンポ同期の対象外だと明記されているのはShort DelayのSlapだけ



挿す場所とDirectの位置。この2つを決めた時点で、もう半分終わっています。残りは色の総当たりです。





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