Waves Magma Springs の入力セクションには FDBK と刻印されたつまみがあります。名前から想像するのは「繰り返しの量」でしょう。ところが公式ユーザーガイド p.4 の Feedback の説明はこうです。「ヘッドルームをコントロールし、Drive セクションの挙動に影響する。これらの調整はチェインの最後で補正されるため、出力ゲインは変わらない」。繰り返しの話はひとことも出てきません。しかもこの一文は、同じ Magma ファミリーの Magma Channel Strip が Sensitivity という別の名前のコントロールに与えている説明と、一字一句同じです。この記事では、全5ページの公式ガイドと公式Tech Specs、そして Magma ファミリー3本のガイドを突き合わせて、この7種スプリングリバーブの設計を解剖します。
想定読者は、すでに Magma Springs を持っていてプリセット任せから抜け出したい人と、スプリングリバーブ専用機を買うか迷っている中〜上級者です。操作チュートリアルではなく、7つのタンクの正体と、ガイドが書いていることと書いていないことを扱います。
数値と仕様は Waves 公式ユーザーガイド(Magma Springs / User Guide・英語・全5ページ)に基づきます。同梱PDFと Waves の CDN が配信するPDFは sha256 が一致し、製品ページ内の manualPDF フィールドも同じファイルを指していました(2026年9月5日確認)。加えて公式製品ページ(英語・日本語)と Tech Specs、比較のために Magma Channel Strip・BB Tubes・Lofi Space の公式ガイドを、出どころを明示して使います。編集部はこの製品を所有していないため使用感の描写はせず、公式資料で裏が取れない数値は書きません。
カホつまみの名前と、そのつまみの説明文が一致していない製品があります。名前で操作すると外します。ガイドの本文のほうを読んでください。
この記事でわかること
- FDBK の説明文が、Magma ファミリーの「ヘッドルーム」コントロールの文と一致していること
- Reverb Tail Length の基準点が「Medium」で、Long と Short は元のIRから作られていること
- 7つのタンク名がガイド本文にタンク名としては出てこず、パネルの刻印と公式ページにしかないこと
- Mix が混ぜる相手が「ドライ」ではなく「ポストディレイの入力信号」と書かれていること
Magma Springsとは|何を解決する製品か
ガイドは製品説明の前に、スプリングリバーブそのものの解説から始めます(p.2)。この2段落が、7つのタンクを選ぶときの判断材料になります。
古典的なスプリングリバーブは、片端のトランスデューサーともう片端のピックアップの間に張られた、調整可能なバネで構成される。トランスデューサーからのエネルギーがバネを動かし、信号が行き来し、ピックアップがその動きを出力信号に変える。この組み立て全体をリバーブタンクと呼ぶ。バネの長さと太さがディレイタイムを決め、(ピアノにあるような)ダンピングパッドがリバーブテイルの色を左右する。
そして用途についての一文。「スプリングディレイはギタートラックに特に有用だ。スプリングディレイはたいていホールリバーブやチェンバーリバーブほど豊かでも大きくもないので、ミックスの中で楽器を見失う危険なしに、楽器のまわりに輪郭のはっきりしたリバーブを設計できる」。ここが設計の出発点です。大きく響かせないことが弱点ではなく、狙いだと最初に宣言しています。
製品としての定義は「Magma Springs はこのリバーブ効果をプラグインに持ち込んだもの。シンプルな見た目の中に固有の音を持ち、柔軟さと単純さを両立する。7種類のリバーブ設定と、入力側の Drive・Delay・Feedback、出力側のハイシェルフとローシェルフがある」(p.2)。p.3 のインターフェイス図は 1〜10 の番号で各部を指しており、10番は WaveSystem ツールバーです。6番の「Bass and Treble Controls」が2本のつまみをまとめて指しているので、製品のコントロールは入力側3つ(Drive・Pre Delay・Feedback)、リバーブ本体2つ(タンクセレクター・テイル長)、出力側5つ(Treble・Bass・Mix・Output・ST/MONO)という配分になります。
公式Tech Specs によれば、コンポーネントはモノ/ステレオ/モノ→ステレオ、対応サンプルレートは 96 kHz まで、対応バージョンは V17・V16・V15・V14、リリース日は 2023年7月31日です。価格は公式日本語ページの表示で定価 26,180 円(公式英語ページの希望小売価格は 149 米ドル)。本稿の観測は2026年9月5日の1回ぶんしかないため、幅を名乗らず単発のセール価格も載せません。現在の価格は 公式製品ページ で確認してください。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
FDBKの説明文は、Magmaファミリーの「ヘッドルーム」の文と一致する
Magma シリーズ3本のガイドを並べると、同じ骨格の一文が繰り返し現れます。
| 製品 | コントロール名 | ガイドの説明(原文の訳) | 範囲 |
|---|---|---|---|
| BB Tubes(p.4) | Sensitivity | 入力ゲインをコントロールし、サチュレーターの挙動に影響する。これらの調整はチェインの最後で補正されるため、出力ゲインは変わらない | ガイド記載の範囲 |
| Magma Channel Strip(p.4) | Sensitivity | ヘッドルームをコントロールし、drive セクションの挙動に影響する。これらの調整はチェインの最後で補正されるため、出力ゲインは変わらない | −12 dB 〜 +12 dB |
| Magma Springs(p.4) | Feedback | ヘッドルームをコントロールし、Drive セクションの挙動に影響する。これらの調整はチェインの最後で補正されるため、出力ゲインは変わらない | 0 〜 100 |
Magma Channel Strip と Magma Springs の説明文は、大文字小文字の差を除いて完全に同じです。違うのは、その説明が貼られているコントロールの名前だけ。片方は Sensitivity、もう片方は Feedback です。
ここで公式どうしが割れます。公式製品ページの機能一覧は「Pre-Delay & Feedback controls for wild creative FX options」(日本語ページ:「クリエイティブなFXオプションのためのプリディレイ&フィードバック・コントロール」)と書き、Pre Delay と並べて飛び道具として紹介しています。一方でガイドの Feedback の項には、繰り返し・再入力・テイルの伸長にあたる語がひとつもありません。どちらかが誤りだとは本稿では断定しません。ただ、操作の指針としてはこう言えます——FDBK を回したときに監視すべきなのは「繰り返しの数」ではなく「Drive の掛かり方」です。ガイドが名指ししている影響先はそこだけだからです。
そしてもう一点。ヘッドルームを動かしても出力ゲインは補正されるとガイドが明記しています。つまり FDBK は「音量を変えずに歪みの掛かり方だけを変える」側のつまみです。この非対称は Magma ファミリー共通の設計で、Drive 側には補正の記述がありません(Drive は「入力ゲインをコントロールする。入力ゲインが上がると倍音歪みが増え、ピークは抑えられる」・Range 0〜100)。音量を変えたくないなら FDBK、歪ませたいなら Drive、という役割分担になります。



ガイドは Feedback の増減がどちらでヘッドルームが増えるかを書いていません。しかもこのプラグインには、ガイドが説明しているメーターの類もありません。向きは耳で確かめるしかない、ということになります。
基準点は「Medium」——LongとShortは元のIRから作られている
Reverb Tail Length は Short/Medium/Long の3ポジションのスイッチですが、ガイド p.4 の書き方が独特です。
リバーブの見かけの持続時間をコントロールする。「Medium」が元のインパルス応答の全長である。「Long」と「Short」のリバーブテイルは、その元のIRから導き出されている。
これは「短い・普通・長い」の3段階ではありません。Medium が実測されたタンクそのもので、Long と Short は加工物だ、と言っています。7つのタンクはそれぞれ固有のインパルス応答なので、Medium に置いたときだけ「そのタンク本来の長さ」が鳴る、という構造です。
運用に直結します。タンクの音を比較するときは Medium で揃える。Short や Long で聴き比べると、タンクの違いと加工の効きが混ざります。逆に、狙った長さが先にあるなら Long/Short から入って構いませんが、そのときは「元のタンクの響きとは別のもの」を聴いていることになります。ガイドは Long と Short がどれだけ伸縮するかを数値で書いていないので、比率は本稿でも書きません。
7つのタンク名は、ガイドの本文では読めない
ガイド p.4 のタンクセレクターの項は、こう書くだけです。「この7ポジションのセレクターは、タンクのさまざまな構成の固有のインパルス応答(音のスナップショット)を提供する。それぞれが別個の効果を生む」。全5ページの本文を、ホワイトスペースを詰めて正規化したうえで7つの名前すべて(50’s・Twang・Motor City・Classic・California・Heavy・Dark Space)で全文検索したところ、6つは3系統の抽出すべてで0件でした。唯一ヒットした「classic」も、p.2 の「古典的なスプリングリバーブは…」「Waves Magma ファミリーを定義する…クラシックなサウンド」という一般的な形容詞としての2件で、タンク名としては本文に出てきません。
名前が読めるのは、本稿が確認したかぎり2か所です。p.3 と p.4 のUI図版の刻印と、公式製品ページ。誌面を画像化して確認したところ、セレクターの周囲に扇状に刻印された並びと、公式日本語ページが 1〜7 と番号を振った順序は一致していました。以下は公式製品ページ(英語・日本語)の記述をまとめたものです。
| # | タンク名 | 公式ページの説明 |
|---|---|---|
| 1 | 50’s | ロックンロールの誕生の時代へ連れ戻す。古いメンフィス・ブルースのレコードのメランコリックな側面を引き出す |
| 2 | Twang | 「テレキャスターを Vox に突っ込んだ」としか言いようのないサウンド。エレクトロニック・ミュージック、特にアナログシンセやループするアルペジオにも効く |
| 3 | Motor City | 相当な大きさと重さがあり、オールドスクールなソウル/R&Bを象徴する。(公式のヒント:ドラムで試すと巨大な結果になる) |
| 4 | Classic | 大きく、暖かく、多用途。ほとんどの要素をミックスに美しく収める。ときに滑らかなプレートリバーブのようにも聞こえる |
| 5 | California | バイブス最大。明るいトーンでボーカルをミックスの上に浮かび上がらせる。トーンコントロールで表情を変えられる |
| 6 | Heavy | 英語ページ:レスポールを、飛ばしきった Fender のキャビネットに、大きな格納庫の中で鳴らしたらこうなる、という近似。あらゆる要素の上に見事に厚い雲を作る/日本語ページ:伝統的なギターアンプのスプリングリバーブをあらゆる楽器にインサート可能になる。壁のように厚いリバーブサウンド |
| 7 | Dark Space | 愛され続けるハードウェアがベース。ダブの本質的なサウンドで、あらゆる制作要素を光年の彼方へ送り出す |
6番の Heavy だけ、英語ページと日本語ページで書かれている内容が別物です。訳の揺れではなく、まったく違う文が置かれています。どちらが元かは分からないので、両方を並べました。
タンクを選ぶときの一般則は、ガイド p.4 側にあります。「一般に、3本バネのタンクは、より満ちた・より豊かな響きで、低域が多い。2本バネのタンクはよりざらつきがあり、60年代の感触に向く。タンクを作っている材質(木・石膏ボード・コンクリートなど)も重要だ」。どの名前が何本バネなのかは、本稿が確認したガイドにも公式ページにも書かれていませんが、「低域が出て豊かなほうか、ざらつくほうか」という耳の当てどころは、この一文が与えてくれます。
Mixが混ぜる相手は「ドライ」ではなく「ポストディレイの入力信号」
出力セクションの Mix の定義は、リバーブとしては珍しい書き方をしています(p.5)。「出力信号と、ポストディレイの入力信号との間のミックスを確立する。Range: 0 to 100」。ふつうのリバーブなら「ドライ入力とウェット出力」と書くところを、ここではディレイを通ったあとの入力信号と書いています。Pre Delay は「リバーブの前、入力信号に掛かるディレイ」(p.4・0〜600 ms)ですから、文字どおり読めば、混ぜられる側の信号も Pre Delay の影響下にあることになります。
ただし、この一文以外にルーティングを説明した記述はありません。0 と 100 のどちらがウェットかというラベルも付いていません。同じ Waves でも MDMX Distortion Modules のガイドは、Screamer と Overdrive の Mix について「Range: 0(すべてドライ)to 100(すべて処理済み)」と両端に注釈を付けています。Magma Springs のガイドには、それにあたる注釈がありません。したがって本稿は、ガイドが書いている文言をそのまま示すに留めます。実際にどちらへ回せばウェットが増えるかは、耳で確かめてください。
チェインの順序で確定的に言えるのは次の4点です。Drive は入力ゲイン(入力セクション)。Pre Delay はリバーブの前。Treble と Bass はリバーブのあとで「リバーブテイルを整形する」ためのシェルフ(各 −18〜+18 dB)。Output はウェット/ドライのあと。これ以上の内部経路はガイドに書かれていないので、本稿でも書きません。
Stereo/Monoは幅つまみではない——IRのどちらのチャンネルを鳴らすか
出力の ST/MONO スイッチは、ステレオ幅を連続で狭める種類のコントロールではありません。ガイド p.5 の定義はこうです。「Stereo モードでは、インパルス応答の両チャンネルがステレオ出力に送られる。Mono モードでは、インパルス応答の左チャンネルが右チャンネルにコピーされ、モノ信号を作る」(ステレオコンポーネントのみ)。
つまり「幅を狭める」のではなく「IRの左だけを使う」処理です。IRが左右で違う収録である以上、Mono に切り替えると幅が減るだけでなく音色も右チャンネル側の成分を失うことになります。ガイドは音色が変わるとまでは書いていないので、ここは「左チャンネルのコピー」という仕様の記述として押さえてください。
同じ「モノにする」でも実装は製品ごとに違います。たとえば Lofi Space の Mono は連続可変で、ガイドが「10=元のステレオイメージ、0=幅がモノまで縮む」と目盛りの意味まで書いています。Magma Springs は2択のスイッチで、しかも「どちらのIRチャンネルを使うか」という別の軸です。名前が似ていても中身が違う例です。
【公式どうしが割れている】スプリングリバーブの起源が1930年代と1950年代で違う
製品ページの導入文が、英語と日本語で異なる年代を挙げています。
- 公式英語ページ:「これが1950年代以来のカルト的な人気を説明するのかもしれない」
- 公式日本語ページ:「1930年代の登場以来、スプリング・リバーブがカルト的な人気を誇っている理由を追体験できます」
20年ずれています。ガイド本文には 1930 も 1950 も出てきません(3系統の抽出とも0件)ので、公式資料の中で照合する先がありません。本稿はどちらの年代も採らず、割れているという事実だけを記録します。製品の音を選ぶうえで影響しない箇所ですが、「公式に書いてあった」という理由だけで年代を引用すると、引用元によって答えが変わることになります。
公表された遅延は全レートで49サンプル
ガイド全5ページに latency の語は出てきません(3系統の抽出でいずれも0件)。数字は公式製品ページの Tech Specs 側にあり、単位はサンプルです。
| サンプルレート | 44.1 kHz | 48 kHz | 88.2 kHz | 96 kHz |
|---|---|---|---|---|
| Magma Springs(サンプル) | 49 | 49 | 49 | 49 |
| Magma Tube Channel Strip(サンプル) | 49 | 49 | 49 | 49 |
4つのレートすべてで 49 サンプルです。同じ Magma ファミリーの Magma Tube Channel Strip の公表値も、別途取得したところ全レートで 49 でした。サンプル数が動かないので、レートを上げるほど時間としての遅延は短くなる計算になります(公式が公表しているのはサンプル数のみなので、本稿はミリ秒への換算をしていません)。本稿が同じ手順で取得した他製品の公表値と並べると、Lofi Space は 88.2/96 kHz で99サンプル、MDMX Distortion Modules は HD を入れると 44.1/48 kHz で147サンプルです。Magma Springs はどのレートでも 49 で一定という位置づけになります。
全パラメーター
ガイド全5ページで Range: が書かれているのは7本、Default: は0本です(pypdf・pdfminer.six・PyMuPDF の3系統でいずれも同数)。書かれていないものは「記載なし」と明示します。
| セクション | コントロール | ガイドの説明 | 範囲・初期値 |
|---|---|---|---|
| Input | Drive | 入力ゲインをコントロールする。入力ゲインが上がると倍音歪みが増え、ピークは抑えられる | 0 〜 100/初期値の記載なし |
| Input | Pre Delay | 入力信号に掛かるディレイ。リバーブの前 | 0 〜 600 ms/初期値の記載なし |
| Input | Feedback(FDBK) | ヘッドルームをコントロールし、Drive セクションの挙動に影響する。チェインの最後で補正されるため出力ゲインは変わらない | 0 〜 100/初期値の記載なし。どちらが多いヘッドルームかの記載もなし |
| Reverb | Reverb Tank Selector | 7ポジション。それぞれがタンクの異なる構成の固有のインパルス応答で、それぞれ別個の効果を生む。3本バネは満ちて豊かで低域が多く、2本バネはざらつき60年代向き。材質(木・石膏ボード・コンクリート)も重要 | 7択(名前はガイド本文に記載なし。刻印と公式ページのみ) |
| Reverb | Reverb Tail Length | リバーブの見かけの持続時間。Medium が元のIRの全長で、Long と Short は元のIRから導き出されたもの | Short/Medium/Long の3択/初期値・伸縮比の記載なし |
| Output | Treble | ハイシェルフ。リバーブのあとで、リバーブテイルを整形する | −18 dB 〜 +18 dB/初期値の記載なし。周波数の記載もなし |
| Output | Bass | ローシェルフ。リバーブのあとで、リバーブテイルを整形する | −18 dB 〜 +18 dB/初期値の記載なし。周波数の記載もなし |
| Output | Mix | 出力信号と、ポストディレイの入力信号との間のミックスを確立する | 0 〜 100/初期値の記載なし。0と100のどちらがウェットかの記載もなし |
| Output | Output | 出力を設定する。ウェット/ドライのあと | −18 dB 〜 +18 dB/初期値の記載なし |
| Output | Stereo/Mono | Stereo=IRの両チャンネルがステレオ出力へ。Mono=IRの左チャンネルが右へコピーされモノ信号になる(ステレオコンポーネントのみ) | 2択/初期値の記載なし |
| 共通 | WaveSystem ツールバー | プリセットの保存と読み込み、設定の比較、アンドゥ/リドゥ、プラグインのリサイズ | — |
p.3・p.4・p.5 の誌面を画像化して目視した範囲では、パネルは左から DRIVE/PRE DELAY/FDBK、中央にタンクセレクター(7つの刻印)と SHORT–MEDIUM–LONG のスイッチ、右に TREBLE/BASS/MIX/OUT と ST–MONO のトグル、という並びでした。図版に写っているつまみの位置は初期値の証拠にはならないため、初期値としては扱っていません。
用途別・設定の始点
下の表は、ガイドの記述と公式ページの記述だけで組み立てています。編集部が試した設定値ではありませんし、ガイドに数値の推奨は書かれていません。
| やりたいこと | 資料から言えること |
|---|---|
| 7つのタンクを比較したい | Reverb Tail Length を Medium に固定する。Medium だけが元のIRの全長で、Long/Short は加工物だとガイドが書いている |
| ギターに掛けたい | ガイド p.2 が「スプリングディレイはギタートラックに特に有用」と名指ししている。公式ページの Twang は「テレキャスター+Vox」、Heavy は「レスポール+飛ばした Fender キャビ」と、いずれもギター由来の説明 |
| ミックスの中で楽器を見失いたくない | ガイド p.2 が「ホールやチェンバーほど豊かでも大きくもないので、楽器を見失う危険なしに輪郭のはっきりしたリバーブを設計できる」と、これを設計目的として書いている |
| 低域を厚くしたい/ざらつかせたい | ガイド p.4 の一般則。3本バネのタンクは低域が多く豊か、2本バネはざらついて60年代向き。どのタンクが何本かは資料に記載がないので、耳で当てにいく |
| 歪ませたい | Drive(0〜100)。上げると倍音歪みが増え、同時にピークが抑えられる |
| 音量を変えずに掛かり方だけ変えたい | FDBK。ガイドが「チェインの最後で補正されるため出力ゲインは変わらない」と明記している。影響先として名指しされているのは Drive セクションの挙動 |
| ドラムで大きく響かせたい | 公式ページが Motor City に「ドラムで試すと巨大な結果になる」というヒントを付けている |
| ダブの飛び道具にしたい | 公式ページが Dark Space を「ダブの本質的なサウンド」と説明。Pre Delay(0〜600 ms)と FDBK も、公式ページはクリエイティブFXの枠で紹介している |
| テイルの色だけ整えたい | Treble・Bass は「リバーブのあと」で「リバーブテイルを整形する」ためのシェルフ(各 ±18 dB)。周波数は資料に記載がない |
似た製品との使い分け
以下の比較は、いずれも比較先の公式ユーザーガイドを実際に読んで書いています。
| 比べる点 | Magma Springs | Lofi Space | Magma Tube Channel Strip |
|---|---|---|---|
| ガイドのページ数 | 5 | 6 | 7 |
| 役割 | スプリングリバーブ専用 | エコー+リバーブのローファイFX | 真空管系チャンネルストリップ(EQ・ダイナミクス) |
| スプリング系の音 | IRが7種(名前は刻印と公式ページのみ) | Spring/Plate の2択(IRリバーブ) | なし |
| ディレイ | Pre Delay 0〜600 ms(繰り返しではない) | エコー 1〜3500 ms・音符同期・Ping Pong | なし |
| 歪みのつまみ | Drive 0〜100(補正の記述なし) | コントロール一覧に歪み量のつまみは出てこない | Input gain(Drive)0〜100(補正の記述なし) |
| 補正付きのつまみ | Feedback 0〜100 | 該当なし | Sensitivity −12〜+12 dB |
| 出力側のトーン | Treble・Bass シェルフ 各 ±18 dB(周波数の記載なし) | HP 30〜1500 Hz/LP 1500〜21,000 Hz | ハイシェルフ(2.5 kHz から・±14 dB)/ミッドベル(周波数 100 Hz〜5 kHz・初期値 1.6 kHz)/ローシェルフ(±14 dB) |
| モノ化 | ST/MONO の2択(IRの左を右へコピー) | Mono を連続可変(10=元、0=モノ) | コンポーネントがモノとステレオの2つ。幅を扱うコントロールはコントロール一覧に出てこない |
| 公表された遅延(サンプル) | 全レート 49 | 44.1/48=0、88.2/96=99 | 全レート 49 |
| ガイドの Default 行 | 0本 | 0本 | あり(ミッドベルの初期値 1.6 kHz など) |
選び分けの軸ははっきりしています。スプリングの音そのものを7種から選びたいなら Magma Springs。エコーと組み合わせてローファイの「空間」を作りたいなら Lofi Space(こちらは Spring/Plate の2択で、帯域を殺すフィルターが付きます)。真空管の色をトラック全体に通したいなら Magma Tube Channel Strip。Magma の2本(Springs と Channel Strip)は Drive の説明文が共通なので、どちらかを触ったことがあれば入力側の作法はそのまま通用します。



Magma の3本は、入力側の文章が使い回されています。だから「Drive で歪ませ、補正付きのつまみで掛かり方を変える」という手順が、そのまま横に移せます。名前が Sensitivity か Feedback かは、この際どちらでもいい。
よくある質問
FDBKを上げるとエコーのように繰り返しますか?
ガイド p.4 の Feedback の説明には、繰り返しに関する記述がありません。書かれているのは「ヘッドルームをコントロールし、Drive セクションの挙動に影響する」「チェインの最後で補正されるため出力ゲインは変わらない」の2点だけです。一方で公式製品ページは Pre Delay と並べて「クリエイティブなFXオプションのための」コントロールと紹介しています。本稿はどちらかを誤りとは判断しません。ガイドの記述に沿って操作するなら、FDBK を動かしたときに聴くべきは Drive の掛かり方です。
7つのタンクは、それぞれ何本バネですか?
本稿が確認した資料には書かれていません。ガイド p.4 は「3本バネのタンクは満ちて豊かで低域が多い/2本バネはざらつき60年代向き」という一般則を書いていますが、7つのどれがどれかは対応づけていません。公式製品ページの7つの説明文にもバネの本数は出てきません。したがって、聴いて判断する以外の方法は資料からは出てきません。
Reverb Tail Lengthの「Medium」は真ん中の設定という意味ですか?
スイッチの位置としては真ん中ですが、意味は「真ん中」ではありません。ガイド p.4 は「Medium が元のインパルス応答の全長であり、Long と Short はその元のIRから導き出されている」と書いています。Medium だけが元のIRそのもので、両側は加工です。タンクを聴き比べるときは Medium に揃えるのが筋の通ったやり方になります。
つまみの初期値はどこに書いてありますか?
本稿が参照した全5ページのガイドには、Default: で始まる行が1本もありません(3系統の抽出でいずれも0件)。Range: の行は7本で、Drive・Pre Delay・Feedback・Treble・Bass・Mix・Output の範囲だけが公表されています。タンクセレクターと Reverb Tail Length、Stereo/Mono には選択肢の数しか情報がありません。UI図版につまみの位置は写っていますが、図版は初期値の証拠になりませんので、本稿では数値として扱っていません。
まとめ
- FDBK はガイド上「ヘッドルーム」のつまみ。説明文は Magma Channel Strip の Sensitivity と一字一句同じで、出力ゲインは補正される。公式製品ページの「クリエイティブFX」という紹介とは向きが違う
- 基準点は Medium。元のIRの全長がここで、Long と Short は導出物。タンクの比較は Medium で揃える
- 7つのタンク名は、ガイドの本文ではタンク名として登場しない。パネルの刻印と公式製品ページだけが名前と性格を教えてくれる



本稿が参照した全5ページのガイドに Default: の行は0本。そのぶん、Medium という基準点をガイドがわざわざ名指ししているのは大きい。比較の土台がひとつあるだけで、7種は選べるようになります。



コメント