この記事では、Waves PRS SuperModels が「3台のアンプを詰め合わせた製品」ではなく、3台それぞれで信号の並びが違う製品であることを、公式ユーザーガイドの信号経路図から分解します。ノイズゲートの置き場所がアンプごとに違うこと、そのゲートが何を聴いて開閉しているか、Auto Input が狙う −17 dB の意味、キャビネットIRに 50 ms という上限がある理由までを扱います。
先に、この記事が参照した資料の版を示します。本稿の一次資料は公式ユーザーガイド「PRS SuperModels user guide」全28ページ(PDFの作成日 2018年4月30日/更新日 2022年6月19日)です。waves.com の製品ページに埋め込まれた manualPDF フィールドが指すファイルと、手元の同梱PDFは sha256 が一致したので、同梱版がそのまま現行版です。接尾辞違い(-1 / -2 / -v1 / -v2 / -v3 / -v16-update)はすべて 403 でした。手順が働いていることの対照実験として、別版があると分かっている V-Comp を同じ方法で叩いたところ v-comp-v16-update.pdf(10,214,848バイト)が返っています。つまり「取れなかった」のではなく「無い」と言える状態です(いずれも 2026年9月5日に確認)。
もうひとつ、この製品を書くうえでの前提を。このガイドには、つまみの範囲と初期値を書いた行がありません。3系統(pypdf・pdfminer.six・PyMuPDF)で全28ページを抽出して数えたところ、Range という語は0件、Default は1件だけで、それもキャビネットIRの一覧見出し「Default cabinet IRs:」でした。単位の dB が出てくるのも、後述する Auto Input の −17 dB という1か所だけです(いずれも全文を正規化して数えた結果です)。ですからこの記事は、パラメーター表の数値ではなく構造と手順を軸に追います。以下の記述はすべて公式資料——本製品の公式ガイドと公式製品ページ、公式の機械可読フィード、そして比較のために読んだ他製品の公式ガイド——の記載で、編集部の実測値ではありません。
カホ数値が書かれていないマニュアルは、読む価値が無いという意味ではありません。この製品の場合、いちばん重要な情報は数字ではなく4ページ目の3枚の図に入っています。
この記事でわかること
- Archon・Dallas・V9 の3機で、ノイズゲートが置かれている位置が違うこと(信号経路図の読み解き)
- ゲートの検出が「入力から」取られている設計と、そこから読み取れること
- Auto Input が −17 dB を狙う目的と、アンプを替えたら取り直す必要がある理由
- キャビネットIRの上限 50 ms・9番目のノブ位置・IRを2枚重ねたときの位相合わせ機能
PRS SuperModelsとは|何を解決する製品か
ガイドの製品概要(p.3)は、この製品を「ギターとアンプの製作者として名高い Paul Reed Smith が作った3台のアンプを、綿密にモデリングしたもの」と定義しています。そして続けて、「コントロールはオリジナルと同じ。一部のアンプには柔軟性のためにノブやスイッチを追加した」と書いています。実機の再現を土台にしつつ、プラグインでしかできない操作をいくつか足した、という立て付けです。
収録されている3台は次のとおりです(p.7 の一覧より)。
| アンプ | チャンネル構成 | ガイドの説明 |
|---|---|---|
| PRS Archon(本文の見出しは Archon 50) | 2チャンネル(Lead / Clean) | 非常にアグレッシブな音で、重い音楽向けに設計されている。それでいてクリーンは驚くほど澄んでいる。温かく静かな音も出せる |
| PRS Dallas | シングルチャンネル | 非常にクリーンから軽いオーバードライブまで。クラシックで空間の広い音。きらめくクリーントーンが得意だが、クラシックなオーバードライブまで押し込める |
| PRS Blue Sierra V9 | シングルチャンネル | 温かく太く生々しいオーバードライブアンプ。甘い歪み、巨大な低域、それでいて焦点が定まっていて扱いやすい。V9 は市販されなかったモデルで、PRS のプロトタイプを弾くことになる |
コンポーネントは6つで、1台につき2つ。mono-to-mono(モノ入力/モノ出力)と mono-to-stereo(モノ入力/ステレオ出力)です(p.5)。公式製品ページのコンポーネント表も Mono と Mono→Stereo の2種類だけを立てており、ステレオ入力のコンポーネントは載っていません。ギター用アンプとしては筋の通った構成です。
そして、このガイドが製品概要の前に書いているのがインピーダンスの話です(p.3「Proper Input Signal」)。ギターアンプの挙動は入力信号のインピーダンスに左右される、SuperModels も同じである、正しくないと本来の音が出ない——として、ハイインピーダンス(1メガオーム以上)の楽器入力と、バッファードアウトプット(10キロオーム)を持つもの、たとえば普通のチューナーペダルをギターとオーディオインターフェースのあいだに挟むことを推奨しています。初回起動時に、この設定方法を案内する窓が一度だけ出るとも書かれています。この注意は p.19 の入力セクションでほぼ同文で繰り返されます。ガイド内で2回書くほど重視されている、ということです。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
3機で、ノイズゲートの置かれる場所が違う
ガイドの p.4 には「Signal Flow」として3枚の図が並んでいます。Archon / V9 / Dallas の順です。本文はこの図に一切解説を付けていませんが、3枚は同じ図ではありません。図に描かれているブロックを並べると次のようになります。
| アンプ | p.4 の図に描かれた並び |
|---|---|
| Archon | Input → Auto Input Gain → Boost → Gate → Amp → Gate → Cabinet → Air |
| V9 | Input → Auto Input Gain → Boost → Amp → Gate → Cabinet → Air |
| Dallas | Input → Auto Input Gain → Boost → Gate → Amp(Spring Reverb)→ Cabinet → Air |
3枚とも、Auto Input Gain から Tuner へ枝が出ている点は共通です。違うのはゲートの位置で、Dallas はアンプの前に1つ、V9 はアンプの後ろに1つ、Archon は前後に1つずつ。Dallas の図だけ、Amp のブロックに「Spring Reverb」と添え書きがあります。
本文側でこの違いに触れているのは1文だけです。p.20 のノイズゲートの節が「Archon アンプには front end に追加のゲートがある。このゲートは音符のリリースを音楽的に切り、非常に短い音符やコードを弾いたときに音楽的な効果を作る。この効果はメタルと結びつけられることが多いので、モードスイッチには M の文字が振られている。Archon のゲート部では1つのノブが両方のモードを制御する」と書いています。つまりガイドは Archon の「追加ぶん」だけを説明していて、Dallas と V9 でそもそも基準側のゲート位置が違うことは、図を見なければ分かりません。
実務上の意味は素直です。アンプの前にゲートがある Dallas では、ゲートで切った信号がそのままアンプに入ります。アンプの後ろにゲートがある V9 では、アンプが作った歪みやノイズもゲートの処理対象に入ります。Archon はその両方を持っていて、ノブは1本でまとめて動きます。同じつまみを同じ位置にしても、選んだアンプによって何が起きるかが違う、ということです。
ゲートは、アンプを通ったあとの音を聴いていない
3枚の図には、もうひとつ共通のラベルがあります。図の上部を横切る線に付いた 「Gate Detection from input」 です。検出線は入力側から引き出され、ゲートのブロックへ向かっています。Archon の図では、この線が2つのゲートの両方に落ちています。
この図が示しているのは、ゲートの開閉がアンプで歪ませたあとのレベルではなく、入力のレベルで決まるという設計です。ハイゲインのアンプでは、歪ませるほどノイズの見かけの音量が上がるので、出力側で検出するゲートはアンプのゲインを動かすたびに開閉の条件が変わります。入力側で検出していれば、アンプのゲインを動かしてもゲートが見ている信号は変わりません。裏を返せば、ゲートの効きを左右するのは入力レベルのほうだということです。ガイドが p.6 のクイックスタートで「Auto Input でアンプとゲートの両方に合うレベルを作る」と、入力レベルとゲートを1つの手順にまとめているのは、この構造と噛み合っています。
ここで、前の節と合わせて整理しておきます。ゲートが何を切るかは経路上の位置(アンプの前か後ろか)で決まり、いつ切るかは検出線で決まる。この2つが別々に設計されているのが、この製品のゲートの作りです。
ゲートのしきい値について、ガイドはこう書いています。「ノブの設定が −40 より小さければ、音符そのものに影響を与えずにヒスなどの低レベルなノイズを取り除けるはずだ」(p.20)。ここには単位が書かれていません。念のため申し添えると、同じ Waves のギターアンプ製品である Voltage Amps のガイドは、ほぼ同じ文型で「threshold settings of less than −40 dB」と dB を付けて書いています(Voltage Amps ユーザーガイド p.11)。PRS 側のガイドで単位が落ちているのは事実ですが、どちらの表記が正しいかを決める記述は、本稿が確認したかぎり公式資料の中にありません。



「アンプが3台入っている」と読むと、この製品の設計は見えません。ゲートの位置が違うということは、同じノブでも意味が違うということです。図を1枚見るだけで、プリセットの選び方が変わります。
Auto Input:−17 dB を狙う自動較正
入力レベルの設定は手動でもできますが、ガイドは Auto Input を推奨しています(p.19)。動作は明快です。指定した時間だけ入力信号を解析し、ピークと RMS のレベルを求めて平均し、入力レベルを約 −17 dB に調整する。ガイドが挙げている目的は「プロセッサーに理想的なヘッドルームを与えるため」です。時間は 2.5秒・5秒・10秒の3択で、長いほど較正が正確になる傾向がある、とされています。
手順で見落としやすいのは順番です。アンプを選んでから入力レベルを設定する。ガイドは「入力レベルの計算は特定のアンプのダイナミクス特性に基づいている。入力レベルを設定したあとにアンプを差し替えたら、正しい入力レベルを取り直す必要がある」と明記しています。同じ注意はクイックスタート(p.6)にも書かれています。
細かい挙動も書かれています。演奏を止めるとタイマーも止まり、再開すると較正が続く。学習中は Boost がオフになる。計算が終わると Auto Input のスイッチは自動的に切れる。そして入力ゲインは 200 ms かけて新しい値へ移行するので、切り替わりが滑らかになる。手動で合わせる場合は6個の LED を見ます。緑は概して入力が低いことを示し、黄色をできるだけ多く点灯させるのが理想、赤は高すぎる、という読み方です。
キャビネットは2枚重ね。上限は 50 ms
キャビネット部は2段構えです。手前にあるのが Cabinet Loader(Input/Output モジュール内)。9ポジションのセレクターノブで、最初の8ポジションが工場出荷のIRに割り当てられています。並び順は「aggressiveness」の強いものから弱いものへ。ガイドが列挙している8種は次のとおりです(p.21)。
112 V30.wav212 Black 1.wav212 Black 2.wav212 V30.wav412 G65 off-axis.wav412 G65 on-axis.wav412 Green 55hz.wav412 Green 75hz.wav
9番目のポジションはユーザーIR用です。Cabinets モジュール側でユーザー作成のIRを読み込んでおくと、9番がそのIRを呼び出すようになります。ユーザーIRや他社IRがそのキャビネットに用意されているかぎり、9番は有効です。
キャビネットは2系統あり、両方に同じIRを入れることも、別々のIRを入れることもできます。ガイドの書き方はこうです。同じIRを入れると音量が上がる傾向があり、違うIRを入れると通常はより豊かで複雑なキャビネットサウンドになる。各キャビネットは個別にバイパスでき、両方をオフにすると Cabinet Loader ごとバイパスされます。
奥にあるのが Cabinets モジュール(プラグイン中央)。既定では蓋がかぶっていて、Cabinet Loader のギアボタンで開きます。ガイドはこのモジュールの中身を「2チャンネルのゼロレイテンシーIRコンボルバー」と説明しています。ここでできるのは、タイミングと位相の整合、2つのキャビネットのレベルとパンの調整、そしてミックス結果を新しいIRとして書き出すことです。Process パネルの4つは次のように定義されています(p.26)。
| コントロール | ガイドの定義(p.26) |
|---|---|
| Time Fix | IR の先頭を切り詰めて、音がファイルの先頭ぴったりから始まるようにする。2つのIRに適用すると、両者はまったく同じ時刻から始まる |
| Phase Fix | 2つのIR間の位相を揃える |
| Smart Mix | 2つのIRの体感音量を揃え、ミックスの良い出発点を作る |
| Export | 2つのIRを合成した結果を、新しいIRとして書き出す |
Process パネルは両方のキャビネットが有効なときだけアクティブになります。IRを2枚重ねると位相の打ち消しや芯の無さが起きうる、という前提でこのパネルが用意されている、という構図です。
読み込めるIRには制限があります。WAV 形式で、長さは 50 ms 以下。それより長いファイルは短縮されてフェードがかかります。ガイドはこの制限の理由も書いていて、「この短いIRの長さはスピーカーキャビネットには適切であり、長いIRは CPU を無駄に使い、レイテンシーを課すことになる」としています。同じ 50 ms という上限は p.24 と p.26 の2か所に書かれています。ひとつ読み込むと、そのフォルダ内のIRがすべてメニューに現れます。「Clear User ID」でリストから消せます。
マイクは選ばない。位置はIRに焼き込まれている
アンプシミュレーターというと、キャビネットの前に立てるマイクの種類と位置を選ぶ画面を想像する人が多いと思います。この製品のキャビネット部は、そういう作りになっていません。手がかりは工場IRの名前にあります。412 G65 off-axis.wav と 412 G65 on-axis.wav——同じ 4×12 の G65 キャビネットに対して、オンアクシスとオフアクシスが別々のIRとして用意されているのです。つまりマイクの位置は、可変のパラメーターではなくIRの側に焼き込まれた選択肢として提供されています。
ガイドの記述もこの読み方と揃っています。全28ページを3系統で抽出して数えたところ、microphone という語は0件。キャビネットに関する記述は、IRの選択・巡回試聴・2枚の合成・書き出しだけで構成されています。p.4 の信号経路図に描かれているブロックも、Auto Input Gain・Boost・Gate・Amp・Cabinet・Air と、枝分かれ先の Tuner だけです。マイク位置を動かしたければ、別の工場IRに切り替えるか、自分で用意したIRを9番のポジションに読み込むことになります。
なお、コンボルバーがゼロレイテンシーであることと、プラグイン全体のレイテンシーがゼロであることは別です。公式製品ページの技術仕様(Latency タブ)は、この製品のネイティブ動作で 44.1 kHz のとき「Archon & V9: 89 サンプル/Dallas: 174 サンプル」、48 kHz のとき「Archon & V9: 90 サンプル/Dallas: 175 サンプル」、88.2 kHz と 96 kHz ではいずれも 10 サンプルと公表しています(2026年9月5日時点)。アンプによって値が違う点、そして高いサンプルレートのほうが値が小さい点は表のとおりですが、その理由を説明した記述は本稿が確認した資料の中にはありません。
パワーアンプ側は「演奏中に触るつまみ」ではない、と書いてある
3機のいずれにも、真空管アイコンから開く Power Amp Setup のパネルがあります。ガイドの位置づけがはっきりしています(p.10)。「パワーアンプこそがアンプの性格を最終的に決める場所である。パワーアンプに個性を与えているのは高調波の扱い方であり、それは真空管と電源トランスに大きく左右される」。そして、「ハードウェアのアンプでは、これらのコントロールはめったに変えない。触るには普通キャビネットを開ける必要があるからだ。SuperModels のアンプではアクセスしやすくなっているが、それでも『演奏しながら触るコントロール』ではなく『セットアップのコントロール』だと考えてほしい」と釘を刺しています。
中身は3つのコントロールと2つのインジケーターです(V9 の節 p.17 が「3つのコントロールがある」と数えています)。
| 要素 | ガイドの説明 |
|---|---|
| SAG | 電源トランスを強く押したときに起きる電源電圧の落ち込みを再現する量。増やすと弾きやすくなることがあり、音符がより前に出ることがある |
| Speed(SAG Speed) | サグ効果の速さ。アタックとリリースの感触に影響しうる |
| Bias | 真空管のバイアス設定。ホット側は高調波が増え、サグが増え、音量が上がる。コールド側は高調波が減る(ガイドの原文は「less harmonics, etc.」と省略形)。効果は繊細だが、聴き分けられるようになると全体の感触が変わることが分かる |
| SAG メーター(表示) | サグが増えるとメーターのレベルは下がる |
| OT インジケーター(表示) | 出力トランスがどれだけ酷使されているかを示す。緑=許容範囲/黄=押しているがおそらく大丈夫/赤=ゲインが高すぎるので戻す |
SAG メーターの向きは間違えやすいところです。サグが深くなるほどメーターは下がるので、「メーターがよく振れている=サグが効いている」ではありません。ガイドは Archon の節(p.11)で説明を尽くし、Dallas(p.14)と V9(p.17)では「Power Amp Setup は本ガイドの前半、Archon 50 の節で詳しく説明している」と参照に留めています。
Boost の Shape:回す向きの説明が、3機のあいだで割れている
3機とも Boost(ペダルのアイコンから開く)に Gain / Level / Shape の3つを持ち、Shape は6段のロータリースイッチです。ところが、その回す向きの説明がガイドの中で一致していません。
| アンプ(ページ) | Shape の説明 |
|---|---|
| Archon(p.9) | 低域をブーストして高域を減らす=反時計いっぱい / 高域をブーストして低域を減衰=時計いっぱい |
| Dallas(p.13) | 低域をブーストして高域を減らす=時計いっぱい / 高域をブーストして低域を減衰=反時計いっぱい |
| V9(p.16) | 低域をブーストして高域を減らす=時計いっぱい / 高域をブーストして低域を減衰=反時計いっぱい |
Archon だけが逆向きに書かれています。これは抽出の事故ではありません。pypdf・pdfminer.six・PyMuPDF の3系統がいずれも同じ並びを返し、該当ページを画像に描画して目視でも確認しています。3機で実装が本当に違うのか、それとも記述の誤りなのかを判定できる記述は、本稿が確認したかぎり公式資料の中にありません。操作するときは、説明文よりも耳で確かめるのが安全です。
全パラメーター
前述のとおり、このガイドには範囲・初期値の行がありません。以下はガイドが説明している役割と、どのアンプに載っているかの対応です。
| モジュール | コントロール | 役割(ガイドの記載) | Archon | Dallas | V9 |
|---|---|---|---|---|---|
| Input / Output | Input | 入力ゲイン。6個のLED表示を見て合わせる | ○ | ○ | ○ |
| Auto Input | 2.5/5/10秒で解析し、約 −17 dB に自動調整 | ○ | ○ | ○ | |
| Gate(Thresh) | ピックアップのバズやヒスを除去。検出は入力から | ○ | ○ | ○ | |
| Gate M モード | 音符のリリースを音楽的に切る追加ゲート。ノブは共用 | ○ | ― | ― | |
| Cabinet Loader ×2 | 9ポジション。1〜8が工場IR、9がユーザーIR。個別にオン/オフ | ○ | ○ | ○ | |
| Air | キャビネットの実効的な大きさ。小さいほどタイト、大きいほど開放的。ゼロでバイパス | ○ | ○ | ○ | |
| Tuner | Off/On/Mute の3設定。Mute は出力を消して無音でチューニング | ○ | ○ | ○ | |
| Output | プラグインの出力ゲイン。アンプより後ろ | ○ | ○ | ○ | |
| Cabinets | On/Off・Pan・Mix・Volume | Pan は mono-to-stereo コンポーネントのみ。Mix は2つのIRの相対レベル、Volume はモジュール全体の出力 | ○ | ○ | ○ |
| Excursion | スピーカーコイルの変位を制御し誇張する。3個のLED表示、赤はやりすぎ | ○ | ○ | ○ | |
| Process(4種) | Time Fix/Phase Fix/Smart Mix/Export。両キャビネット有効時のみ | ○ | ○ | ○ | |
| IR 読み込み | WAV・50 ms 以下。Forward/Backward で全IRを巡回、2.5/5/10秒の自動試聴 | ○ | ○ | ○ | |
| Boost | Gain | 音に加えるオーバードライブの量 | ○ | ○ | ○ |
| Level | アンプの入り口を押す Boost モジュールの出力レベル | ○ | ○ | ○ | |
| Shape | 6段のロータリースイッチ。低域寄りと高域寄りのあいだ(回す向きの説明は上表のとおり割れている) | ○ | ○ | ○ | |
| Preamp / EQ | Bright | EQ セクションの先頭に置かれたハイシェルフ。Dallas では「ゲインが上がるほど効果が目立たなくなる」と補足あり | ○ | ○ | ○ |
| Bass / Middle / Treble | 低域/中域/高域。Archon では Clean・Lead 両チャンネル共通の表記 | ○ | ○ | ○ | |
| Volume | プリアンプゲイン | ○ | ○ | ○ | |
| Reverb | スプリングリバーブのミックス | ― | ○ | ― | |
| Gain Stage Volume | ゲインステージ用のプリアンプ音量 | ― | ― | ○ | |
| Gain Stage Output | ゲインステージからパワーアンプへ送る音量 | ― | ― | ○ | |
| Lead / Clean | 2つのアンプチャンネルの切り替え | ○ | ― | ― | |
| Power Amp | Master | パワーアンプの音量。Archon では隣の LED が音量過大を示す | ○ | ○ | ○(Output Master) |
| Depth | パワーアンプの低域コントロール。Archon では両チャンネル共通 | ○ | ― | ― | |
| Presence | パワーアンプの高域コントロール。Archon では両チャンネル共通 | ○ | ― | ○(Output Presence) | |
| Power Amp Setup | SAG | サグ効果の量 | ○ | ○ | ○ |
| Speed | サグ効果の速さ | ○ | ○ | ○ | |
| Bias | ホット(高調波増・サグ増・音量増)とコールドのあいだ | ○ | ○ | ○ | |
| 共通 | On/Off | アンプヘッドのバイパス。オフにすると Input/Output とキャビネットのモジュールだけが聞こえる | ○ | ○ | ○ |
Dallas と V9 の Power Amp Setup について、ガイドは Bias を1項目にまとめており、Archon の節にある「Tube Bias」の解説を参照するよう書いています。Master のとなりの過大レベル LED について具体的な説明があるのは Archon の節(p.10)で、「過大レベルはマスター出力から来ているとは限らず、鎖のどこか、おそらく EQ セクションから来ている可能性が高いので、どこで起きているか確かめること」という注記が付いています。
用途別・設定の始点
ガイド自身がクイックスタート(p.6〜7)で順番を提示しています。編集部の推奨ではなく、公式の手順です。
| 順 | 触る場所 | ガイドの指示 |
|---|---|---|
| 0 | トラック | モノトラックに挿し、mono か mono-to-stereo のコンポーネントを選ぶ。各アンプは既定のプリセットで立ち上がる(Paul Reed Smith 本人による「そのアンプでこの音を出すには」の提案) |
| 1 | Auto Input | アンプとゲートの両方に合うレベルを作る。2.5/5/10秒を選び、On を押していつもどおり弾く。区間が終わると自動でオフ。アンプを差し替えたら取り直す |
| 2 | Cabinet Loader | 2つのキャビネットそれぞれに工場IRを選ぶ。並びはアグレッシブな順。個別にバイパス可 |
| 3 | Gate | ピックアップ・アンプのゲイン・デジタル処理から出るノイズと、弦の鳴きなど演奏由来のノイズを減らす |
| 4 | Air | キャビネット内の「空間」を足す。低い設定ほどタイト、高い設定ほど空気感と広がりが出る |
| 5 | Amp Gain と EQ | 好みに合わせる。Boost はアンプの入力にゲインを足す。典型的には中域が増えて低域が減るので、ギターを前に引き出すのに使える |
| 6 | Archon のみ | Lead と Clean を選ぶ。ガイドいわく「はっきりと違う音」 |
| 7 | Output | プラグイン自体の出力を決める |
細かく詰めたくなったら Cabinets モジュールへ、という流れです。IRの試聴には自動巡回が用意されていて、2.5/5/10秒のいずれかを選んで Play を押すと、弾いている最中にIRが次々に切り替わります。気に入ったところでもう一度 Play を押すと、そのIRが読み込まれます。Cabinet 1 にIRを読み込むあいだ Cabinet 2 はミュートされ、Cabinet 2 に読み込むあいだ Cabinet 1 がミュートされるので、比較のときに2枚が混ざりません。工場IRの試聴順は常に同じで、Direction ボタンで順序を逆にできるのはユーザーIRのほうです。
価格については、公式日本語ページ(wavesjapan.jp)の表示で永続ライセンスの定価が 22,660 円、waves.com 側の希望小売価格が 129 米ドルです(いずれも 2026年9月5日時点)。同じ日のページには割引後の価格も出ていましたが、観測が1時点しかないため本記事には書きません。公式の機械可読フィードでも、この日は「セール中」と判定されました。現在の価格は 公式製品ページ で確認してください。発売日はフィードの記載で 2018年5月3日です。
似た製品との使い分け
同じ Waves のギターアンプ製品に Voltage Amps があります。並べると、この2つは設計の出発点からして違います。以下は両方の公式ユーザーガイドと公式製品ページの記載を突き合わせた比較です。
| 比べる点 | PRS SuperModels | Voltage Amps Guitar |
|---|---|---|
| モデリングの出発点 | Paul Reed Smith の実機3台を綿密にモデリング。「コントロールはオリジナルと同じ」 | 「特定のハードウェアからモデリングしたものではなく、音楽のスタイル、そしてしばしば年代で設計・分類されている」 |
| アンプの数 | 3(Archon・Dallas・Blue Sierra V9) | 5(Royal-X・Aggro・Blue Flame・Arena・Silverado) |
| アンプの切り替え | アンプごとにコンポーネントが分かれる(計6コンポーネント) | 1つのプラグイン内でボタン切り替え。コンポーネントを差し替えず、設定も失わない |
| チャンネル | Archon のみ Lead / Clean の2チャンネル、他2機は1チャンネル | 5機すべてが Clean / Drive / Lead の3チャンネル |
| コントロールの共通性 | 「各アンプは独自の見た目と、いくつかの異なるコントロールを持つ」 | 「Voltage Amps のコントロールはどれも同一で、違うのは見た目だけ」 |
| キャビネット | 工場IR 8種+ユーザーIR。2枚重ね、位相/時間の整合と書き出しまで可能 | 6組のキャビネットペアを6段スイッチで選び、Cab Tone で2枚の比率を決める。外部IRを使う手順としてガイドが挙げているのは、Cab Bypass にして IR1 などのIRローダーを後段に挿す方法 |
| コンポーネント(公式表) | Mono、Mono→Stereo | Mono、Stereo、Mono→Stereo |
| レイテンシー(公式技術表・ネイティブ) | 44.1 kHz: Archon & V9 89/Dallas 174 サンプル 48 kHz: 90/175 サンプル 88.2・96 kHz: 10 サンプル | 44.1・48 kHz: Guitar 12/Bass 6 サンプル 88.2・96 kHz: Guitar 21/Bass 12 サンプル |
| 希望小売価格 | 129 米ドル/定価 22,660 円 | 99 米ドル/定価 17,380 円 |
この表から読める使い分けは単純です。「この実機の音」に寄せたいなら PRS SuperModels、「この年代・このジャンルの音」を素早く当てにいくなら Voltage Amps。そしてキャビネットに手を入れたい人——手持ちのIRを持ち込む、2枚を混ぜて自分のIRを作る、といった作業をしたい人にとっては、その機能が本体に入っている PRS SuperModels のほうが素直です。逆に、アンプを次々に切り替えながら同じ設定で比べたい局面では、コンポーネントの差し替えが要らない Voltage Amps が向きます。
よくある質問
ステレオのトラックに挿せますか
ガイドが挙げているコンポーネントは mono-to-mono と mono-to-stereo の2つで、ステレオ入力のコンポーネントは載っていません(p.5)。公式製品ページのコンポーネント表も Mono と Mono→Stereo の2種類だけを立てています。クイックスタートも「モノトラックに挿し、mono か mono-to-stereo を選ぶ」から始まります。ステレオに広げたい場合は、mono-to-stereo コンポーネントを使い、Cabinets モジュールの Pan で2つのキャビネットを左右に配置する、というのがガイドの想定する形です(Pan は mono-to-stereo コンポーネント専用と明記されています)。
手持ちのキャビネットIRを読み込めますか
読み込めます。条件は WAV 形式で長さ 50 ms 以下。それより長いファイルは短縮されてフェードがかかります。読み込みはフォルダ単位で扱われ、ひとつ選ぶとそのフォルダ内のIRがすべてメニューに並びます。読み込んだユーザーIRは、Cabinet Loader ノブの9番目のポジションから呼び出せます。リストを消したいときは「Clear User ID」を使います。
他社のアンププラグインと組み合わせられますか
ガイドに専用の節があります(p.27「Using a Third-Party Amp」)。PRS のアンプをオフにするとバイパスされ、Input/Output とキャビネットIRのセクションだけが残ります。別のアンプは、プラグインの鎖の中で PRS SuperModels より前に挿します。ガイドはこのとき「そのアンプはこのチャンネルの信号経路の先頭に座ることになるので、PRS SuperModels のアンプとはいくらか違う振る舞いをする」と注意を添えています。アンプをオフにしたときに何が残るかは p.9 と p.15 でも繰り返されています。
DAW を立ち上げずに使えますか
スタンドアロンのアプリケーションとして使えます(p.28)。Windows では ASIO ドライバー、macOS では Core Audio が必要で、アプリ本体は Waves Applications フォルダに置かれます。パネルからは入出力デバイス、有効な入出力チャンネル、サンプルレート、オーディオバッファサイズ、MIDI 入力、テンポを設定できます。ただしWindows ではサンプルレートとバッファサイズをこのパネルから変更できません。ガイドの指示は「アプリを閉じ、ドライバーのコントロールパネルでサンプルレートとバッファサイズを変え、アプリを起動し直す」です。
まとめ
- ノイズゲートの位置は3機で違う。Dallas はアンプの前、V9 はアンプの後ろ、Archon は前後に1つずつ。しかも検出は3機とも入力から取られている。
- 入力レベルはアンプを選んでから Auto Input で作る。狙いは約 −17 dB。アンプを差し替えたら取り直す。
- キャビネットは2枚重ねが前提で、位相と時間の整合、書き出しまで本体に入っている。持ち込めるIRは WAV・50 ms 以下。



範囲も初期値も書いていないマニュアルでしたが、構造は全部書いてありました。数字が無いから分からないのではなく、どこを見れば書いてあるかを知っているかどうかです。
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