この記事では、Waves SoundShifter が「速度」と「音程」をどう切り離しているのかを、公式ユーザーガイド(全13ページ)と公式テックスペックの記載から分解します。3つのコンポーネントで使える場所がまるで違う理由、この製品が素材のピッチもテンポも検出しない「比率の機械」として作られている理由、そしてフォルマントを補正しないという選択が何と引き換えなのかまでを扱います。
先に、購入前に知っておくべき仕様をひとつ。SoundShifter は3つのコンポーネントで構成されていますが、そのうち Graphic と Parametric は Pro Tools のオフライン AudioSuite でしか使えません。公式製品ページが「Please note」として明記しており、公式のサポートホスト表でも Pro Tools の行には「Graphic & Parametric support AudioSuite only」、Logic Pro・Cubase・Ableton Live・REAPER・FL Studio といった行には「SoundShifter Pitch only」という注記が付いています。Pro Tools を使っていない環境で手に入るのは、リアルタイム用の Pitch コンポーネント1つです。
以下の範囲・初期値・レイテンシー値はすべて公式ユーザーガイドと公式製品ページのテックスペックの記載であり、編集部の実測値ではありません。なお本稿が参照したユーザーガイドは、Waves が現在配布している版と同一のファイルです(公式製品ページが現行マニュアルとして指しているPDFと、手元の同梱PDFがバイト単位で一致することを確認しました)。定価は22,660円(wavesjapan.jp・2026年9月時点)ですが、本稿の確認時点でも大幅な割引価格が表示されていました。現在の価格は公式ページで確認してください。
カホピッチシフターとして語られがちな製品ですが、ガイドのページ配分を見ると、時間の単位の説明に p.5〜p.8 の4ページ、ピッチ側は p.8 後半から p.9 までの1ページ半。紙面の重心は明らかに時間側です。そこから逆算すると、この製品の性格が見えます。
この記事でわかること
- 3つのコンポーネント(Parametric・Pitch・Graphic)が、それぞれどこで使えるのか
- 「ピッチを検出しない」設計が、Source/Destination 方式に直結している理由
- MODE 4種と LINK MODE 4種が、それぞれ何を守るための切り替えなのか
- 公式テックスペックが公開しているレイテンシーの実数と、その意味
SoundShifterとは|何を解決する製品か
公式ユーザーガイドは冒頭(p.2)で、SoundShifter を「高品質なタイムスケーリング(コンプレッション/エクスパンション)とピッチシフトのオーディオプロセッサー」と定義しています。そして続けて、よく知られたバリスピードやリサンプリングの手法とは違う点として、ピッチをまったく変えずに時間の伸縮ができること、あるいは長さを変えずに音程だけを変えられることを挙げ、「スピードとピッチを分離して、それぞれを個別に操作できるようにした製品だと言える」と書いています。
主要なコントロールは2つ。出力の速度を決める Time Ratio と、出力の音程の変化量を決める Pitch Ratio です。可動範囲についてガイドは、「最大で2倍の速さ・遅さ・高さ・低さまで。つまりどの方向にも最大2または0.5の比率」と書いています。ピッチについてはこれが1オクターブ上下に相当します。
面白いのは、この2つを同じ比率に揃えたときの挙動です。ガイドはそれを「高品質なバリスピード・リサンプリングツールとして動作する」と説明しています。つまりテープの回転を上げ下げしたときの、速くなれば高くなるあの動きが、分離を諦めるという形でちゃんと用意されている。分離が売りの製品なのに、分離しない使い方も設計に含まれている、というのがこの製品の輪郭です。
ガイドは品質についても慎重な言い方をしています。「この種の処理は純粋主義的な処理ではないが、控えめな比率であれば相対的な透明性があると主張できる」「比率が大きいほど音は自然でなくなる。とくに人の声や、より複雑で密度の高い信号で顕著になる」。メーカー自身が上限側の劣化を先に認めているわけで、この一文は使い方の指針としてそのまま読めます。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
3つのコンポーネントは、役割だけでなく「動く場所」でも分かれている
ガイド p.2 は3つのコンポーネントを次のように並べています。Parametric SoundShifterは選択範囲の速度と音程を固定比率でシフトするもの。SoundShifter Pitchはピッチのみのパラメトリック版で、任意の信号をリアルタイムでピッチ処理するために作られたもの。Graphic SoundShifterはオートメーショングラフを描くことで、選択範囲の途中で比率を変えられるものです。
そして同じページに、Parametric と Graphic が「オフライン」プロセッサーである理由が書かれています。リアルタイム処理につきものの、音の欠落や長い遅延というアーティファクトを避けるためです。オフラインであることは制約ではなく、品質を取るための選択だと明言されている。
ここに現行の公式製品ページが具体的な条件を足しています。「Please note: SoundShifter には3つの異なるコンポーネントがあります。Pitch はサポートされているすべての DAW でインサートとして使えます。Graphic と Parametric は Pro Tools のオフライン AudioSuite フォーマットでのみ使えます」。公式のサポートホスト表も同じ内容で、Pro Tools の行には「SoundShifter Graphic & Parametric support AudioSuite only」、Logic Pro・Digital Performer・Ableton Live・Nuendo・Cubase・MainStage・GarageBand・Audition・Premiere Pro・FL Studio・REAPER・Reason・Maschine・Komplete Kontrol・Bitwig Studio の各行には「SoundShifter Pitch only」と書かれています(注記が空欄のホストもいくつかあります)。



グラフを描いて曲の途中でテンポを変える、という使い方に惹かれて買うと、Pro Tools 以外では画面が出てきません。買う前に自分のホストがどちら側かを確認する。この製品では、そこが一番大きな分岐です。
ピッチもテンポも検出しない。だから Source と Destination がある
SoundShifter のインターフェースは、時間もピッチも「Source(元)」と「Destination(先)」の2列で入力する形になっています。この設計の理由は、ガイド p.9 の一文がすべて説明しています。「SoundShifter は選択された信号のピッチを検出しないので、Source の周波数は常に 440 Hz が初期値になる」。
全13ページのなかで「detect(検出する)」という語が現れるのは、この1回だけです。しかもそれは否定形で使われている。つまり Frequency 欄の 440 Hz は「あなたの音の高さ」ではなく、比率を計算するための分母にすぎません。ガイドが挙げている例がそれを端的に示しています。44100 と 48000 の間のシフトに相当する比率でピッチを変えたいなら、まず Source を 44100 にして、Destination に 48000 と入れる。440 Hz でも 44100 でも、入れる数字は比率さえ合っていれば何でもよいわけです。
時間側も同じ思想で作られています。選択範囲の長さは、対応しているホストなら自動で Source 欄に反映されますが、通信に対応していないホストではユーザーが手で入力する。テンポも同様で、ガイドは「SoundShifter は正しい Source テンポがユーザーによって手動で入力されることを要求する」と書き、初期値は 120bpm だと明記しています。Graphic 側にいたっては、ホストから選択範囲の長さを取得できないとき Total time が 1:00 分に初期化されます。
ガイドが Graphic の節に置いた「重要な注意!」は、この設計の弱点をそのまま認めたものです。2分の選択範囲に対して Total input time が1分に設定されていると、グラフの変化は最初の1分にしか適用されません。分析しない機械は、入力された数字を疑いません。だからこの製品では、つまみを合わせる前に「入れた数字が正しいか」を確かめる工程が本体になります。
Source/Destination は、単位変換機を兼ねている
比率を入力する方法として、ガイドは複数の時間フォーマットを用意しています。Time(時:分:秒:ミリ秒)、Tempo(bpm)、Bars & Beats(小節|拍|ティック)、Samples、SMPTE(時:分:秒:フレーム)、Feet + Frames(16fpf)。ピッチ側は Transpose(半音と セント、または音楽的音程)と Frequency(Hz)です。
そしてガイドは、これらが相互に翻訳されることを副次的な機能として明示しています。「これらの長さはすべてのフォーマット表示に変換されるので、SoundShifter は優れたフォーマット変換計算機になる。たとえば1分8秒の音楽が何サンプルになるか知りたければ、知っている値を打ち込めば SoundShifter が他を計算してくれる」。実際、Source を編集すると Destination が現在の比率に従って更新され、Destination を編集すると Source との関係から比率のほうが調整されます。入り口と出口のどちらから指定してもよい、というのがこの2列の意味です。
単位ごとの性格も書き分けられています。Samples は最も細かい解像度で、コンピューターが他のすべての表示を計算するための単位。ガイドは「Samples 表示は、他の単位では解像度が低くフレームやミリ秒やティックに丸められてしまうために到達できない比率にも到達できる」と説明し、Samples 表示から他のフォーマットに切り替えるとサンプル数が変わることがある(丸めた値ではなく、狙った単位の実値が優先されるため)とまで書いています。尺をサンプル単位で詰める必要があるなら、この表示から離れないほうがいい、ということです。
Bars & Beats には前提条件があります。小節数はテンポに対して相対的なので、正しい Source テンポが入っていなければ意味を持ちません。同じ長さの素材でも、テンポが2倍なら小節数は倍になる——ガイドはこの当たり前を、わざわざ「重要な注意」として書いています。サブ拍は tick で、960 ティックが1拍。拍子は中央のセットアップ部で指定し、初期値は 4/4 です。



Tempo と Bars & Beats は独立した2つの入力に見えて、内部では噛み合っています。ガイドの言い方だと、Destination のテンポは Source の小節数を保ち、Destination の小節数は Source のテンポに従って正しくなる。片方だけ見て納得しないほうが安全です。
MODE の4つは「何を優先して壊すか」の順番
MODE は Sync / Smooth / Transient / Punchy の4択で、初期値は Transient です。ガイドはこれを「4つのアルゴリズム最適化設定のうち1つを選ぶもの」と説明しています。並び順には意味があって、守る対象が「トラック間のタイミング」から「単発の打撃の輪郭」へ移っていきます。
- SYNC — 最もタイミングに敏感な最適化。ドラムのマイクアレイのように位相が関係し合う複数トラックを処理するときに適する。小さい比率では非常によく働くが、大きい比率ではトランジェント成分と連続成分を同じように伸ばしてしまうため、音がにじみ、明瞭さが落ちる
- SMOOTH — SoundShifter の作り込みをもう少し使い、アーティキュレーションをよりよく保つ。声、管楽器、あるいは混成のクラシック音楽に向く
- TRANSIENT — トランジェントのアタックの保存にもう一歩踏み込む。ただしそのために、トランジェントのアタックのタイミングをわずかに妥協する。ピアノ、ギターなど撥弦・打鍵系に向く
- PUNCHY — パンチを最大限に残すための最適化。パーカッシブな音とビート系の音楽のために作られている
読み替えると、Sync はトラック同士の関係を守り、Punchy は1発の音の形を守る。この2つは同時には成り立たないので、間に Smooth と Transient が置かれている、という配置です。初期値が Transient なのは、その中間で最も外れにくい位置だからだと理解できます。なお Sync の弱点(大きい比率でにじむ)はガイド自身が書いていることで、隠されている情報ではありません。
LINK MODE は「どちらが主人か」を決めるスイッチ
LINK MODE は Unlinked / Time / Pitch / Strapped の4択で、初期値は Unlinked。アンリンク時は Time と Pitch のコントロールが独立していますが、他のリンクモードを選ぶと、片方の値でもう片方も動きます。
- Pitch リンク — ピッチと時間の両方が Pitch 比率でシフトする。このモードでは時間側の編集はすべて無効になる
- Time リンク — ピッチと時間の両方が Time 比率で調整される。このモードではピッチ側のコントロールが無効になる
- Strap — ピッチと時間のリンクを任意のタイミングで繋いだり切ったりできる。繋いだ時点のオフセットを保つか、最初からリンクしていれば高品質なリサンプルを行う
UI 側の作りも親切で、リンク中はどちらのセクションが処理を支配しているかを矢印が示します。無効になった側のコントロールは淡色になり、その比率表示は消える。そして重要なのは、無効側は設定を保持していて、リンクモードを変えると元の値がそのまま復帰すると明記されている点です。バリスピードで大枠を決めてからリンクを外して微調整、という往復が前提になっている作りだとわかります。
フォルマントは補正されない。それが「和音でも通る」の代償
全13ページのユーザーガイドのなかで「formant」という語が出てくるのは1回だけで、それは次の一文です。「フォルマントはピッチと一緒にシフトし、すべての要素の長さがかなり変わる」(p.2)。この製品にはフォルマントを独立して動かす軸も、ピッチを動かしたときにフォルマントを据え置く補正も、ガイドの説明のなかには登場しません。
これは欠陥ではなく、入力を選ばないことと引き換えの仕様です。フォルマント補正を行うには基音を確定させる必要があり、そのためには単音の入力が要ります。SoundShifter は基音を確定させないので、和音でもミックス全体でも通る。ガイドが「どんなジャンルの混成音楽でも、少しだけシフトするなら結果は非常にクリーンだ」と書けるのは、この構造のおかげです。逆に、人の声を大きく動かせば不自然になることも同じページで先に断ってあります。



フォルマント補正のスイッチを探して画面を往復する人がいます。公式ガイドは「フォルマントはピッチと一緒に動く」と1回だけ、しかしはっきり書いています。声の質感を据え置いたまま音程だけ動かしたいなら、最初から別系統の製品を開いたほうが早い。
リアルタイム側のコストは、公式の表に数字で出ている
ガイドは Pitch コンポーネントについて「リアルタイム処理のために設計されている。固定のレイテンシーを持つ」(p.3)、「純粋なディレイ、すなわち固有のレイテンシーを一定量もたらす」(p.9)と書いていますが、ガイド本文には数値がありません(latency という語は全13ページで2回出てきますが、いずれも数値を伴いません)。数値は公式製品ページの Tech Specs 側にあります。単位はサンプルです。
| サンプルレート | レイテンシー(公式値・サンプル) | 秒への換算(編集部計算) |
|---|---|---|
| 44.1 kHz | 6,946 | 約157.5 ms |
| 48 kHz | 6,946 | 約144.7 ms |
| 88.2 kHz | 13,858 | 約157.1 ms |
| 96 kHz | 13,858 | 約144.4 ms |
ミリ秒の欄はサンプル数をサンプルレートで割っただけの換算で、公式が公開しているのはサンプル数のほうです。それでも桁は把握しておく価値があります。0.15秒前後という値は、歌いながらモニターする用途には重すぎる一方、DAW の遅延補正が効くトラックインサートとしては通常問題になりません。つまりこの数字は「使えない」ではなく「どこで使うか」を決める材料です。
CPU についてもガイドははっきり書いています。「リアルタイムのインテリジェント・アルゴリズムは CPU 消費が非常に大きいので、ミックスのなかで使える数には限りがある。オフラインのプロセッサーではこれは問題にならないが、96kHz の素材にこの処理を行う場合はリアルタイムのプレビュー動作も制限される」。そのうえで、短い区間に適用して確かめ、良ければ選択範囲全体に流すという手順を推奨しています。オフラインの2コンポーネントが Pro Tools に閉じている理由も、この文脈で読むと筋が通ります。
Graphic は「点で描く」ための一式が丸ごと用意されている
Graphic SoundShifter は、Parametric と同じ要素を使いながら、選択範囲の途中で値を変化させるためのコンポーネントです。ピッチ用とタイム用の2つの独立したグラフを持ち、Edit コントロールでどちらを編集するかを選びます。グラフ上でダブルクリックすると新しいポイントが作られ、最も近い2点(または常に存在する開始点・終了点)の間でカーブが曲がる。ポイントは最大999個まで追加できます。
編集の制約も明確です。ポイントは隣接するポイントを越えて移動できず、ぶつかったところで止まる。Point Info で時間を手入力する場合も、最も近い2点の間の値だけが有効で、範囲外の数値は Enter で受け付けられず、Esc で直前の値に戻ります。複数選択したときは、最初の1点だけが黄色い枠(選択かつアクティブ)で、残りはシアンの枠になる。
グラフの下には入力と出力の2本の時間ルーラーがあり、出力側はグラフに連動して時間スケールの変化を示します。表示フォーマットは View コントロールで選び、Bars & Beats や SMPTE のように追加情報が要る単位を選ぶと、テンポ・拍子・SMPTE フォーマットの選択コントロールがその場に現れます。ズームは横軸(時間)・縦軸(比率/セント)とも最大1000倍まで。縦のズームは波形表示には効きません(波形の縦軸はエネルギーの尺度であり、ここで調整しているのは時間比率とピッチのトランスポーズだから、というのがガイドの説明です)。
全パラメーター
公式ユーザーガイド(全13ページ)に記載のあるコントロールと初期値です。ガイドが初期値を明示している項目は、表のあとにまとめて挙げます。
| コントロール | 範囲・選択肢 | 初期値 | 役割 |
|---|---|---|---|
| Time Ratio | どの方向にも最大2または0.5の比率 | — | 出力の速度を決める |
| Pitch Ratio | どの方向にも最大2または0.5(=1オクターブ上下) | — | 出力の音程の変化量を決める |
| Transpose(半音) | −12 〜 +12 | — | 移調する音程を半音単位で指定 |
| Transpose(セント) | 0 〜 99(100セント=1半音) | — | 半音の内側の微調整 |
| Transpose(音程名) | 短2度・長2度・短3度・長3度・4度…(ガイドは「etc.」と続き全リストは示していない) | — | 音楽的音程での指定 |
| Frequency(Source / Destination) | Hz | Source=440 Hz | 周波数比でピッチ比率を指定(ピッチ検出は行わない) |
| Time(Source / Destination) | 時:分:秒:ミリ秒 | — | 尺で比率を指定 |
| Tempo(Source / Destination) | bpm | 120 bpm | 速度で比率を指定(Source は手入力が前提) |
| Bars & Beats(Source / Destination) | 小節|拍|ティック(960ティック=1拍) | — | 小節数で比率を指定 |
| Samples(Source / Destination) | サンプル数 | — | 最も細かい解像度で比率を指定 |
| SMPTE(Source / Destination) | 時:分:秒:フレーム | — | 映像基準で比率を指定 |
| Feet + Frames(Source / Destination) | 16fpf | — | フィルム尺で比率を指定 |
| SMPTE FORMAT | 一般的なフレームレート標準(ドロップフレーム方式を含む) | — | SMPTE 表示のフォーマット選択 |
| METER | 拍子(1小節の拍数と1拍の音楽的長さ) | 4/4 | Bars & Beats の計算基準 |
| MODE | Sync / Smooth / Transient / Punchy | Transient | アルゴリズム最適化の選択 |
| LINK MODE | Unlinked / Time / Pitch / Strapped | Unlinked | 時間と音程を連動させるかの選択 |
| Edit(Graphic) | Pitch カーブ / Time カーブ | — | 編集対象のグラフを選ぶ。各要素の隣にバイパスボタン |
| View(Graphic) | Parametric と同じ時間フォーマット群 | — | ルーラーの表示単位を選ぶ |
| Point Info(Graphic) | Source time / Destination / 比率(タイムカーブ)またはセント(ピッチカーブ) | — | 選択中のポイントの座標を表示・手入力 |
| Start Time(Graphic) | 選択範囲の開始時刻(0 起点/指定起点を丸ボタンで切替) | — | アレンジ上の時刻でルーラーを読む |
| Total Time(Graphic) | 入力と出力の総時間(View の単位で表示) | ホストから取得できないとき 1:00 分 | グラフを適用する範囲を決める |
| Zoom(Graphic) | 横軸・縦軸とも最大1000倍。Reset Zoom あり | 選択範囲全体の表示 | ポイント編集の拡大縮小 |
| Reset Graph(Graphic) | 全ポイント削除+ズームリセット(Undo 可) | — | グラフを初期状態に戻す |
| グラフのポイント数(Graphic) | 最大999(開始点と終了点は常に存在) | — | カーブの分解能 |
| WaveSystem ツールバー | プリセットの保存/読み込み、比較、Undo/Redo、リサイズ | — | Waves 共通のツールバー |
ガイド全13ページで「default」という語が使われている箇所は8つあり、そのうち初期値として読めるのは次の7項目です。MODE(Transient)、LINK MODE(Unlinked)、Tempo(120bpm)、METER(4/4)、Frequency の Source(440 Hz)、Graphic の Total time(1:00 分)、Graphic の表示範囲(選択範囲全体)。残る1つは初期値ではなく、グラフの開始点と終了点が常に存在するという記述です。上の表で初期値を「—」としたものは、ガイドに記載が見当たらなかったものであり、初期値が存在しないという意味ではありません。
もうひとつ、探しがちなものについて。ウェットとドライを混ぜる Mix コントロールは、このガイドのコントロール説明には出てきません。全13ページ中に「mix」という語は5回現れますが、その内訳は「mixed music」「your mix」「mixed classical music」「remixing」(2回)で、いずれも文中語です。パラレルで薄く混ぜたい場合は、プラグインの外で経路を組むことになります。
動作仕様は公式製品ページの Tech Specs から。対応サンプルレートは最大96kHz(Waves の全プラグインが 44.1kHz と 48kHz に対応し、多くはそれ以上にも対応、という注記付き)。チャンネルコンポーネントはモノラルとステレオで、モノ→ステレオ(Mono-to-Stereo)およびサラウンドの構成には印がありません(この表の列は Name/Mono/Stereo/Mono-to-Stereo/Surround・Comments で、ミッド/サイドの列はありません)。提供バージョンは V17 から V9 までと記載されています。
用途別・設定の始点
この製品はつまみを回して追い込む道具ではなく、数字を2つ入れて比率を作る道具です。したがって始点は「どの単位で入れるのが最短か」で決まります。以下はガイドが実際に手順として書いている使い方に対応させたものです。
| やりたいこと | 入れる場所 | ガイドの根拠 |
|---|---|---|
| 1分8秒の曲を、きっちり1分のCM枠に収める | Destination の Time に 0:01:00:000 | 「編集や切り詰めは不要で、音質の差はほとんど気づけないだろう」(p.6) |
| 78bpm で録った箇所を 81bpm にする | Source Tempo に 78、Destination Tempo に 81 | プレビューで確かめ、合わなければ比率を微調整する(p.6) |
| ライブ録音を「100bpm・4/4 で8小節」に合わせる | Source Tempo に 100、Destination の Bars に 8 | 人間的なテンポの旧録音を電子的な環境でリミックスする場面(p.7) |
| 44100 と 48000 の差に相当するピッチ変化を与える | Frequency の Source に 44100、Destination に 48000 | Source を先に直してから Destination を入れる(p.9) |
| テープのバリスピード的に、速度と音程を一緒に動かす | LINK MODE を Time / Pitch / Strapped のいずれかに | 時間比率と音程比率が同じとき、高品質なバリスピード・リサンプリングとして動作する(p.2) |
| 複数マイクで録ったドラムキットをまとめて伸縮する | MODE を Sync | 位相が関係し合う複数トラックの処理に適する。ただし大きい比率ではにじむ(p.4) |
| 声・管楽器・混成のクラシックを伸縮する | MODE を Smooth | アーティキュレーションをよりよく保つ(p.4) |
| ビート素材・パーカッションを伸縮する | MODE を Punchy | パーカッシブな音とビート系音楽のために作られた最適化(p.4) |
| 96kHz の素材を処理する | まず短い区間だけ処理して確認 | 96kHz ではリアルタイムのプレビュー動作も制限される(p.3) |
比率そのものの目安については、ガイド p.2 がはっきり書いています。控えめな比率なら透明性が高く、比率が大きいほど自然さが失われる。とくに人の声と、複雑で密度の高い信号で影響が出る。逆に言えば、音を作りにいく用途(1オクターブ下げて質感ごと変える、など)では、その不自然さのほうが目的になります。透明に寄せたいのか、キャラクターが欲しいのかで、許容できる比率が変わる、という整理です。
似た製品との使い分け
Waves のピッチ系は、何を犠牲にして何を守るかがそれぞれ違います。以下は各製品の公式ユーザーガイドの記載を並べたものです。
| 製品 | 入力の前提 | 長さを変えられるか | フォルマントの扱い | リアルタイム性 |
|---|---|---|---|---|
| SoundShifter | 任意のオーディオ信号(和音・ミックスも可) | 変えられる。これが製品の核 | ピッチと一緒に動く(独立した軸はガイドに出てこない) | Pitch はインサート可。公式値で 6,946サンプル(44.1/48kHz) |
| UltraPitch | 単音のみ(フォルマント補正のため基音の確定が要る) | ガイドはサンプルレートのヘッダを書き換える手順で代用させている | ピッチと独立した軸(−12.0〜+12.0)を持つ | ガイドは「非常に長いルックアヘッドにより 0.2秒程度のレイテンシー」と説明 |
| Vocal Bender | モノフォニックのボーカル(ポリフォニックはアーティファクトの原因になると明記) | 「入力信号の長さは変えない」と明記 | ピッチと独立した専用つまみ(±12半音/±1200セント) | ゼロレイテンシー |
| Waves Tune | ボーカルとモノフォニック楽器 | ガイドが挙げる役割は音程の補正と操作で、長さの伸縮は挙げていない | フォルマント補正されたピッチシフトを用いる | 補正の前に素材のスキャンが必要 |
並べると分岐がはっきりします。素材の長さそのものを変えたいなら、この4つのなかでその役割を担っているのは SoundShifter です。逆に、声の質感を保ったまま音程だけ動かしたい、あるいは音程を「正しい音」に寄せたいなら、フォルマント軸や検出機構を持つ側の製品を選ぶことになります。SoundShifter は基音を確定させないぶん入力を選ばない代わりに、声を大きく動かすと質感まで一緒に動く。トレードオフが正反対です。
音程補正の側については、当サイトで Waves Tune、Waves Tune LT、Waves Tune Real-Time をそれぞれ個別に解説しています。「音程を直す」のか「音程をずらす」のかで、開くべきプラグインが変わります。
よくある質問
Cubase や Logic に Graphic と Parametric が出てきません
仕様どおりです。公式製品ページは「Graphic と Parametric は Pro Tools のオフライン AudioSuite フォーマットでのみ利用できる」と明記しており、公式のサポートホスト表でも Logic Pro・Cubase・Ableton Live・REAPER・FL Studio といった行には「SoundShifter Pitch only」の注記が付いています。Pro Tools 以外の環境で使えるのは、リアルタイムのインサートとして動く Pitch コンポーネントです。なお公式ページ内では、このリアルタイム側のコンポーネントを「Pitch」と表記する箇所と「Shift」と表記する箇所が混在していました。ユーザーガイドとサポートホスト表はいずれも「SoundShifter Pitch」と書いているため、本稿は Pitch で統一しています。
ピッチを変えると声の質感まで変わってしまいます
そういう仕様です。ユーザーガイド p.2 に「フォルマントはピッチと一緒にシフトし、すべての要素の長さがかなり変わる」と書かれています。同じページで「比率が大きいほど自然でなくなる。とくに人の声で顕著」とも断っています。声の質感を保ったまま音程だけを動かしたい場合は、フォルマントを独立して扱えるプラグイン(Waves 製品では Vocal Bender や UltraPitch がその軸を持っています)を検討することになります。
どこまで動かせますか
ユーザーガイドは「最大で2倍の速さ・遅さ・高さ・低さまで。どの方向にも最大2または0.5の比率」と書いています。ピッチについてはこれが1オクターブ上下に相当し、Transpose の半音表示は −12 から +12。セントは 0 から 99 で、100セントが1半音です。なおガイドは比率の数値がどちら向きに大きくなるか(比率2が速いのか遅いのか)までは書いていないため、本稿では方向を断定していません。
Source の周波数が 440 Hz から動きません
動かないのではなく、そもそも自動で追随しません。ユーザーガイド p.9 は「SoundShifter は選択された信号のピッチを検出しないので、Source の周波数は常に 440 Hz が初期値になる」と明記しています。この欄は素材の音程を表示するためのものではなく、比率を入力するための2つの数字です。時間側の Source 欄も同じ考え方で、ホストが選択範囲の長さを伝えてこない場合はユーザーが手で入れる前提になっています。
まとめ
- 3コンポーネントのうち Graphic と Parametric は Pro Tools の AudioSuite 専用。Pro Tools 以外の環境で手に入るのはリアルタイムの Pitch だけで、これが購入判断の最初の分岐になる。
- 素材のピッチもテンポも検出しない「比率の機械」なので、Source と Destination に入れる数字の正しさが結果の正しさになる。単位変換機として使えるのは、その副産物。
- フォルマントはピッチと一緒に動く。和音でもミックスでも通る代わりに、声を大きく動かせば質感まで動く——ガイド自身が先に認めているトレードオフ。



比率を入れるだけの製品は、操作を覚える時間がほとんど要りません。そのぶん、入れる数字を間違えたときに誰も止めてくれない。触る前に尺とテンポを確定させておく、というのがこの製品を使う技術のほぼすべてです。
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