ジャンル名の中には、具体的な仕掛けにまで還元できるものがあります。この記事で扱う4つはまさにそれで、ビートの組み方や音色の選び方がジャンルの正体になっています。裏を返せば、DTMで再現しやすいジャンルでもあります。
ミオジャンル名って、雰囲気の話やと思ってた。でも調べてみたら、リズムの形とか音色とか、けっこう具体的に決まってるんやな。
そのとおりです。雰囲気で決まるジャンルと、仕掛けで決まるジャンルがあると考えると整理しやすくなります。ここで扱う4つは後者です。
Gファンク
1980年代後半のカリフォルニアで生まれた、ヒップホップのサブジャンルです。特徴はサンプリングと生楽器の組み合わせ、独特のシンセメロディ、ファンク由来のリラックスしたサウンド、レイドバックしたグルーヴ、そしてコーラスの使用です。
大きく2系統に分けられます。ひとつはシンセを多用し、Pファンク系やZapp & Rogerをサンプリングする流れ。もうひとつは、より肩の力の抜けたメロディとラップを聴かせる流れです。
Gファンクらしさの正体
細く高い音域を滑るように動くシンセリード、腰の据わった遅めのグルーヴ、太いベース、そして歌のコーラス。この4つが揃うと、それだけでこの系統に聞こえる。
デンボウ
これはジャンル名であると同時に、リズムパターンの名前です。1990年のダンスホール曲「Dem Bow」に由来し、1990年代初頭にジャマイカ系とアフロ・パナマ系のプロデューサーが発展させ、その後プエルトリコのアーティストによって広まりました。
音楽的な核は3+3+2(トレシーヨ)のクロスリズムです。半拍ごとにわずかなシンコペーションが入り、独特の「跳ね」が生まれます。基本的にループとして反復して使われるのが特徴で、レゲトンの土台になっているリズムでもあります。
なおレゲトンとデンボウは同じではありません。プエルトリコのレゲトンがメロディアスで洗練された方向へ進んだのに対し、ドミニカ共和国では2000年代に、より生々しく攻撃的な形として分岐しました。
コンプレクストロ
エレクトロハウスのサブジャンルで、名前は「complex(複雑)」と「electro」を合わせた造語です。Porter Robinsonが2010年に、自分の作っている音楽を説明するために作った言葉とされています。
特徴はグリッチ、入り組んだベースライン、そして多数の音をシーケンサー上で重ねて素早く切り替えるシンセリードです。ワブルベースをはじめとする多様な電子音が混ざり合います。影響源として1980年代のアナログシンセ音楽、ゲーム音楽、チップチューンが挙げられています。
コンプレクストロらしさの正体
「1つの長いフレーズ」ではなく「細かく切り替わる断片の連続」であること。同じ長さのフレーズでも、16分単位で音色が入れ替わっていくと途端にこの系統に聞こえる。
オルタナティブヒップホップ
4つの中で、これだけは性格が違います。特定の音の決まりごとではなく、「主流の型に収まらないヒップホップ」という位置づけの言葉だからです。
ジャズ、ロック、エレクトロニカ、ソウルなど他ジャンルの要素を取り込んだもの、あるいは当時の主流とは異なる制作手法を採ったものが、まとめてこう呼ばれます。基準が「主流」なので、時代によって指す範囲が動くという性質があります。
4つを並べて見る
| ジャンル | 決めているもの | 再現の鍵 |
|---|---|---|
| Gファンク | 音色とグルーヴ | 高音のシンセリード+遅めの腰の据わったビート |
| デンボウ | リズムパターンそのもの | 3+3+2の区切りをループさせる |
| コンプレクストロ | 音の切り替わり方 | 細かい単位で音色を入れ替える |
| オルタナティブヒップホップ | 主流との距離 | 他ジャンルの素材を持ち込む |
上の3つは手を動かせば近づけるジャンル、いちばん下は選択の姿勢で決まるジャンルです。同じ「ジャンル名」でも、成り立ちの種類が違うことが分かります。
よくある質問
Q. デンボウとレゲトンはどう違うのですか?
デンボウはリズムの名前でもあり、そのリズムを土台にした音楽の名前でもあります。レゲトンはそのリズムを基礎に発展したジャンルです。デンボウが土台、レゲトンがその上に建った建物と考えると分かりやすくなります。加えて、ドミニカ共和国で発展した生々しい形を特にデンボウと呼ぶ使われ方もあります。
Q. ジャンルを正確に名乗る必要はありますか?
ありません。ただし作るときの道具としては非常に有効です。「3+3+2で組む」「16分で音色を切り替える」といった具体に落ちていれば、迷ったときの指針になります。名乗るためではなく、手を決めるために使ってください。
Q. これらを混ぜてもいいのですか?
むしろそれが新しいものが生まれる道筋です。オルタナティブヒップホップという言葉自体が、他ジャンルを取り込んだ結果に付いた名前でした。デンボウのリズムにコンプレクストロの音色を乗せる、といった組み合わせは十分に成立します。
この記事に出てきたジャンル辞典
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