PuigTec EQP-1Aの低域は、BoostとAttenを同時に上げても打ち消し合いません。公式マニュアルの表現では「互いを相殺せず、共鳴シェルフ(resonant shelf)を作る」。この記事では、その挙動が何によって成立しているのか、全11コントロールの範囲と初期値はいくつか、そして「Inをオフにしてもバイパスにはならない」という仕様を、Waves公式マニュアルに沿って解剖します。
想定読者は、すでにPuigTecを挿したことがある人と、Pultec系のEQを1つ持つか迷っている人です。操作手順ではなく、つまみの裏で何が起きているかを扱います。
仕様・数値はWaves公式の PuigTec EQP-1A User Manual(全17ページ)に基づきます。編集部は本製品を所有していないため使用感の描写はせず、マニュアルで裏が取れない項目は書きません。モデリング元にまつわる通説も、マニュアルか公式ページで確認できた範囲にとどめます。
カホこの機種は語られすぎていて、伝聞が仕様のように流通しています。まず、メーカーが自分の言葉で何を書いているかから始めます。
この記事でわかること
- BoostとAttenが打ち消し合わない理由と、マニュアルが使っている呼び方(「resonant shelf」)
- マニュアルが挙げる4項目のアナログ挙動(THD/トランス/ハム/挿した直後の変化)
- 全11コントロールの範囲・初期値と、マニュアル内で数値が割れている箇所
- Inをオフにしても消えないもの、Mainsが実際に足しているもの
PuigTec EQP-1Aとは|何を解決する製品か
Pultec EQP-1Aのモデリングです。マニュアル第1章がモデリング元の来歴を短く書いています。Wavesのガイドの記述はこうです。1951年、Pulse Techniques Inc. の Gene Shenk と Ollie Summerland が、最初のパッシブ・プログラムEQであるEQP-1を世に出した。イコライジング回路の設計は Western Electric からライセンスを受けたもので、初期のPultecはパッシブフィルターにつきものの挿入損失(ゲインの目減り)を抱えていた。そこで彼らは、複数の真空管によるプッシュプル構成のゲイン補償段を追加した。その結果生まれた定番機が EQP-1A である——という流れです。
ただしこの来歴は、実機メーカーである Pulse Techniques の公式サイトや一般に流通している資料と3点で食い違います。年代——Wavesのガイドは1951年としますが、メーカー公式サイト(pulsetechniques.com)は同社を「1953年から1981年までプロ用音響機材を作っていた会社」とし、設立を1953年2月1日、EQP-1につながる開発の転機を「1955年ごろ」と書いています。EQP-1の発表を1956年、EQP-1Aを1961年とするのは一般に流通する資料(英語版Wikipedia)のほうです。綴り——共同創業者の姓は、一般資料では Summerland ではなく Summerlin と表記されます。順序——ガイドは「挿入損失を埋めるゲイン補償段を追加した結果がEQP-1A」と読める書き方をしていますが、一般資料では真空管のゲイン補償段はEQP-1の時点ですでに内蔵されており、EQP-1Aは周波数ポイント(20Hzや16kHzなど)を追加した1961年の改訂版とされています。当サイトはこの3点を、どちらか一方に寄せず両方を並べるにとどめます。
ここは押さえておく価値があります。EQP-1Aの「音」としてよく語られる真空管の色は、EQを掛けるための回路ではなく、パッシブEQで失われたゲインを取り戻すための回路から来ている。EQ部はあくまで受動素子で、増幅は後段。この二階建てが構造です。
マニュアルは製品の輪郭も数で示しています。EQP-1Aは広帯域のイコライジングのために作られた機種で、低域のブースト/カット周波数が4点、ハイカット(高域減衰)周波数が3点、高域ブースト用の周波数が7点、そして高域ブーストのカーブを整えるバンドワイズ・コントロールが1つ。実際のコントロール一覧(付録A)もこの数と一致します。
コンポーネントは2つで、いずれもマニュアルの言葉では「3バンドのパッシブEQ」——PuigTec EQP-1A Stereo と PuigTec EQP-1A Mono です。3バンドの内訳は、低域シェルフ(BoostとAttenが同居)/高域ベル・ブースト/高域シェルフ・アッテネーション。
「PuigTec」の名前の由来については、Waves公式の製品ページが、プロデューサー/エンジニアであるJack Joseph Puig のコレクションにある手作りのオリジナル機を再現したものだ、と説明しています。プラグイン画面の上部バーにも「JACK JOSEPH PUIG COLLECTION」と入っています。個体の型番やリビジョン名まで踏み込んだ記述は、マニュアルにも公式ページにも見当たらないので、この記事でも書きません。
販売単位にも注意が必要です。公式ではEQP-1AとMEQ-5が「PuigTec EQs」という1つの製品としてまとめられており、EQP-1Aだけを単体で買う形にはなっていません。日本公式サイト(wavesjapan.jp)の表示で定価26,180円(2026年8月時点)。確認できたのは1時点の価格だけなので、実売がいくらという幅は書きません。現在の価格は公式ページで確認してください。Wavesの主要バンドルにも含まれていますが、構成は改編されるので収録状況も公式で確認を。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
BoostとAttenが同居していて、しかも相殺しない
この機種の要点はここに尽きます。低域バンドは、Boost と Atten が同一の周波数に対して働きます。20Hz/30Hz/60Hz/100Hz の4点から1つ選ぶと、その1点がブースト側とカット側の両方の基準になる。周波数のつまみは1つしかありません。
ふつうに考えれば、同じ周波数を同じだけ上げて下げれば元に戻るはずです。マニュアル第2章(クイックスタート)はそこを名指しで否定しています。「BoostとAttenuationは同じカットオフ周波数に対して働くが、同時に適用しても互いを打ち消さない。むしろ共鳴シェルフ(resonant shelf)を作る」。
できあがるカーブの形については、PuigTecのマニュアルは「共鳴シェルフになる」以上のことを書いていません。ただし同じWavesの別マニュアル——Renaissance Equalizer の解説文——が、モデリング元であるPultecの挙動としてもう少し具体的に説明しています。第8章によると、両方のつまみを同時に使うと「深い低域ではブースト量がそのまま出て、傾きが急になり、本来ならフラットに戻っていくはずの周波数(肩)のあたりに谷ができる」。同マニュアル第4章も、この挙動を「アナログのフィルター、具体的にはPultecが、カットとブーストのつまみを同時に使うことで既に実現していたEQの振る舞い」と書いています。
呼び名について一点だけ。この操作は世間で「Pultecトリック」と呼ばれることがあります。PuigTec EQP-1A・PuigTec MEQ-5・Renaissance Equalizer の3つのマニュアルを読むかぎり、「Pultec trick」という複合語は出てきません。使われているのは「resonant shelf(共鳴シェルフ)」で、日本公式サイトの製品ページも EQP-1A の特徴を「ユニークなレゾナンスローシェルフブースト」と表記しています。ただし Waves が trick という語をまったく使っていないわけではありません。Renaissance Equalizer の第8章は、このカーブ群を「デジタルの基準では新しいが古いアナログの手管(old analog tricks)」と書き、Pultecで両つまみを同時に使う操作そのものを「(secret)」と括弧付きで呼んでいます。言えるのは、少なくともこの3つのマニュアルでは、この挙動が trick という名前ではなく resonant shelf という仕様名で説明されている、というところまでです。「メーカー全体の立場」や「世間とメーカーで呼び名が食い違う」というところまでは、この3冊からは導けません。



「秘密のテクニック」として語られているものが、メーカーのクイックスタートに書いてある。よくある話です。
高域側は「ベルで足して、シェルフで引く」という非対称
低域は1バンドにBoostとAttenが同居していますが、高域は事情が違います。足すほうと引くほうで、フィルターの型そのものが別です。
- Hi Bell Boost:ベル型。周波数は3k/4k/5k/8k/10k/12k/16kHzの7点。Bandwidth(Q)で幅を変えられる
- High Shelf Atten:シェルフ型。周波数は5k/10k/20kHzの3点。Q調整は無い
Bandwidth が効くのは Hi Bell Boost だけで、目盛は 0 が sharp(狭い)、11 が broad(広い)。初期値は 0、つまり最も狭い側です。パネル上の刻印も SHARP → BROAD の向きになっています。
周波数の並びを眺めると、この機種の担当範囲がはっきりします。選べる点は 20〜100Hz と 3k〜20kHz にしかなく、100Hz と 3kHz のあいだには1点もありません。 中域を触る道具ではない、という設計です。この空白を埋めるのが、同じ「PuigTec EQs」に同梱されている MEQ-5(200Hz〜7kHz)になります。
マニュアルが挙げるアナログ挙動は4項目
マニュアル第1章3節は、モデリングした「アナログらしさ」の要素を4項目挙げています。ただし本文は「これらは最も重要な要素のいくつか(some of)である」という書き方なので、この4つでモデリングの全部という意味ではありません。列挙されている4項目を、そのまま並べます。
| 要素 | マニュアルの説明 |
|---|---|
| 全高調波歪み(THD) | 基本波の電力に対する全高調波成分の電力の比。主に増幅で生じ、奇数次・偶数次の倍音を加えて音色バランスを変える。ピーク出力ゲインも変えるが、その幅は通常 ±0.2〜0.3 dB を超えない |
| トランス | 初期のトランスは周波数特性が平坦でなく、低域と超高域のロールオフを生んだ。オリジナルのPultec EQP-1Aはトランスによる高域ロールオフを持つ。10kHzより上でレベルの落ちに気づいたら、それはモデリングされたトランスによるもの |
| ハム | 50Hz電源と60Hz電源の両方をモデリング。よく聴くと両者でハムのレベルが違う。ハムは地域や電源事情ごとに固有なので、あなたのスタジオに元からあるハムとは違う可能性があり、用途に合わないこともある |
| 挿した直後の変化 | インスタンス化した直後に、高域が持ち上がったように聞こえる約1dBのゲインを伴う周波数バランスの変化が起こりうる。これはモデリング元の実機の挙動そのもので、低域のカットオフ周波数を変えると変化量も変わる。フィルター同士の相互作用によるオリジナル機の特性 |
4番目が実務上いちばん厄介です。つまみを何も触っていなくても、挿した時点で音が変わる。 しかも変化量は Low Frequency の設定に依存する。A/Bで「効きが薄い」と判断する前に、この分が乗っていることを勘定に入れる必要があります。
マニュアル第1章にはこれを裏付ける実測プロットも載っています。オリジナルの Pultec EQP-1A を全ゲイン0にし、低域カットオフを20Hz(赤)と100Hz(黄)にした2本のカーブ。縦軸は ±1dB の拡大表示で、2本の差はおおむね0.5dB程度に収まりますが、ゲインを一切上げていないのに両者は同じ形になっていません。赤は数kHzのあたりが緩やかに持ち上がり、黄は高域側がなだらかに落ちていきます。



低域のカットオフを変えると高域の形が変わる。EQとしては行儀が悪いですが、それがこの機種の指紋です。
Inはバイパススイッチではない
誤解されやすいので独立させます。マニュアル第3章の記述はこうです。「In はEQをオン/オフするが、アナログモデリングは残す」。初期値はOn。
つまり In をオフにしても、上で挙げたTHD・トランス・ハム・挿入時の変化はそのまま通り続けます。素の音と比べたいならプラグイン自体をバイパスする必要がある。In で比べられるのは「EQカーブの有無」だけです。
Mains も同じ系統のコントロールです。マニュアルの定義は「オリジナル機の電源に由来する、ノイズフロアとハムによるアナログ的な性質を制御する」。Off/50Hz/60Hz の3択で、初期値は60Hz。何もしていないのにノイズフロアが乗っているのが気になる場面では、ここをOffにします。
全パラメーター
付録Aに載っているコントロールは11個です。第3章2節の本文と突き合わせて表にしました。
| コントロール | 役割 | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Low Band Boost | 低域シェルフのブースト量 | 0〜11(フルスケールで18dBブースト・0.1刻み) | 0 |
| Low Band Atten | 低域シェルフの減衰量(Boostと同じ周波数) | 0〜11(フルスケールで18dB減衰・0.1刻み) | 0 |
| Low Band Frequency | 低域シェルフのカットオフ点 | 20Hz/30Hz/60Hz/100Hz | 30Hz |
| Hi Bell Boost | 高域ベルのブースト量 | 0〜11(0.1刻み・下の注記参照) | 0 |
| Hi Bell Bandwidth(Q) | 高域ベルの幅 | 0〜11(0=sharp/11=broad・0.1刻み) | 0 |
| Hi Bell Frequency | 高域ベルの中心周波数 | 3k/4k/5k/8k/10k/12k/16kHz | 3kHz |
| High Shelf Atten | 高域シェルフの減衰量 | 0〜11(フルスケールで18dB減衰・0.1刻み) | 0 |
| High Shelf Frequency(Atten Sel) | 高域シェルフのカットオフ点 | 5k/10k/20kHz | 20kHz |
| In | EQのオン/オフ(アナログモデリングは残る) | On/Off | On |
| Mains | 電源由来のノイズフロアとハムの再現 | Off/50Hz/60Hz | 60Hz |
| Gain(Output) | 出力のトリム | −18dB 〜 +18dB(0.1dB刻み) | 0dB |
Hi Bell Boost の最大ブースト量は、マニュアル内で数値が割れています。 第3章2節の本文は「0-11(20 dB boost, 0.1 steps)」、巻末の付録Aは「0 to 11(18 dB boost, 0.1 steps)」。同じ文書の中で20dBと18dBが並んでいるので、この記事では表に数値を書かず、ここで両方を提示するにとどめました。なお付録Aは Low Band Atten と High Shelf Atten の行も「18 dB boost」と書いており(本文では減衰)、付録側に表記の粗さがあります。
もう一点、目盛と仕様の差。マニュアル第3章の画面図を見ると、Boost/Atten系のつまみの刻印は0から10までで、11の目盛はありません。一方で本文・付録とも可変範囲は「0〜11」と書かれています。数値窓で入力するなら11まで入る、と理解しておけば実務上は困りません。
メーターは出力レベルをdBFSで表示し、右上のLEDは出力がクリップしたときに点灯します。ツールバーのUndo/Redoについて、マニュアルは「直近32回ぶん」と説明しています。
用途別・設定の始点
マニュアルには楽器別の推奨値がありません。数字を作るわけにはいかないので、ここでは「どのつまみから触るか」だけを、公式に定義されている各コントロールの役割から組み立てます。
| やりたいこと | 触るコントロール | 起点 |
|---|---|---|
| 低域に厚みと締まりを同時に | Low Band Boost と Low Band Atten を両方上げる | 相殺せず共鳴シェルフになる。周波数は1つしか選べない |
| 低域の重心を変える | Low Band Frequency | 20/30/60/100Hzの4点。初期値30Hz |
| 高域の輝きを足す | Hi Bell Boost + Bandwidth | 7点から選ぶ。初期値3kHz・Bandwidthは0(最も狭い) |
| 足した高域の広がりを調整 | Bandwidth のみ動かす | 0=sharp → 11=broad |
| 高域を落ち着かせる | High Shelf Atten + Atten Sel | 5/10/20kHzの3点。初期値20kHz |
| EQカーブだけ外して比べる | In を Off | アナログモデリングは残るので、素の音との比較にはならない |
| ノイズフロア・ハムを避ける | Mains を Off | 初期値は60Hz |
| 出力が赤く点いた | Gain(−18〜+18dB) | メーター右上のLEDがクリップ表示 |
| 中域を動かしたい | この機種には該当するバンドが無い | 選べる周波数の点が100Hzと3kHzのあいだに1つも無い。MEQ-5側の担当 |
1行目について補足します。BoostとAttenをどのくらいの比率で上げるかについて、マニュアルは何も指定していません。「同時に適用しても打ち消し合わず、共鳴シェルフを作る」とだけ書かれています。よく見かける「+3に対して−3」といった具体的な組み合わせは公式の推奨ではないので、この記事では書きません。
似た製品との使い分け
MEQ-5とは担当帯域が重ならない
同じ「PuigTec EQs」に入っているMEQ-5は、名前のとおり中域専用機です。両者のマニュアルから選択可能な周波数を並べると、役割分担がそのまま見えます。
| 項目 | PuigTec EQP-1A | PuigTec MEQ-5 |
|---|---|---|
| バンド数(マニュアル表記) | 3バンド(低域シェルフ/高域ベル/高域シェルフ) | 3バンド(LowMid Peak/Mid Dip/HiMid Peak) |
| 選べる周波数の下端 | 20Hz | 200Hz |
| 選べる周波数の上端 | 20kHz(高域シェルフ) | 7kHz(Mid Dip) |
| ブーストできるバンド | 低域シェルフ・高域ベル | LowMid・HiMid |
| カットできるバンド | 低域シェルフ・高域シェルフ | Mid のみ |
| 幅(Q)の調整 | 高域ベルのみ(Bandwidth 0〜11) | 無し |
| フルスケールの変化量 | 低域18dB/高域シェルフ18dB/高域ベルは記述が割れる | 3バンドとも10dB |
日本公式サイトも、2つを併用すると「フルレンジのヴィンテージEQチェーン」になる、という書き方をしています。どちらか片方を選ぶ製品ではなく、上下と中央で分担する組み合わせです。
同じ挙動を「1本のフィルター」で持っているEQもある
興味深いことに、この共鳴シェルフはWavesの別ラインで単一のフィルタータイプとして実装されています。Renaissance Equalizer がそれで、同機のマニュアルは経緯を明記しています。1994年に Michael Gerzon がWavesへの非公開論文で「Pultecがカットとブーストの同時使用で実現していた挙動を、ひとつのフィルタータイプとして実現する方法」を提案し、それをPultec系の鳴りと折衷して実装したものだ、と。
使い分けの軸ははっきりしています。PuigTec EQP-1A の低域シェルフは周波数が固定4点・Q調整なしで、深追いできない代わりに外しにくい。Renaissance Equalizer はシェルフのQを0.71〜1.41で連続的に変えられるが、その分だけ判断が要る。 決め打ちの色が欲しいときと、狙った形を作りたいときで分かれます。なお「Q固定」なのは低域シェルフの話で、EQP-1Aの Hi Bell 側には7つの周波数点と Bandwidth(Q)があります。
よくある質問
Q. BoostとAttenを同時に上げると打ち消し合わない?
打ち消し合いません。マニュアル第2章が「同じカットオフ周波数に対して働くが、同時に適用しても互いを打ち消さず、共鳴シェルフを作る」と明記しています。ただし、その先の「何dBずつ上げるとどんなカーブになるか」はマニュアルに書かれていないため、当サイトでも数値の推奨はしていません。
Q. つまみを触っていないのに音が変わるのは不具合?
仕様です。マニュアルは2つの原因を挙げています。ひとつは挿入直後の約1dBのゲインを伴う周波数バランスの変化で、低域カットオフの設定によって変わるもの。もうひとつはトランスのモデリングによる高域ロールオフで、10kHzより上のレベルの落ちはこれが原因だと明記されています。どちらもオリジナル機の挙動の再現です。
Q. Inをオフにすればバイパスになる?
なりません。In は「EQをオン/オフするが、アナログモデリングは残す」コントロールです。素の音と比較したいなら、DAW側でプラグインごとバイパスしてください。ノイズフロアとハムだけを止めたい場合は、In ではなく Mains を Off にします。
Q. つまみの数字はdB?
違います。Boost/Attenのつまみは 0〜11 という目盛の値で、dBではありません。フルスケールに対応するdB量は種類ごとに決まっていて、低域のBoostとAtten、および高域シェルフのAttenが18dB。高域ベルのBoostだけはマニュアル内で20dBと18dBに記述が割れています。dBで直接指定したいなら、出力側の Gain(−18〜+18dB)が唯一のdB表記コントロールです。
まとめ
- 低域はBoostとAttenが同一周波数に同居し、同時に使っても相殺せず共鳴シェルフになる(マニュアル第2章の記述。この3冊のマニュアルでは「Pultec trick」という複合語は使われず、「resonant shelf」という仕様名で説明されている)
- マニュアルが挙げるモデリング要素は4項目。うちトランス由来の10kHz以上のロールオフと、挿入直後の約1dBの変化は、つまみを触らなくても効いている
- Inはバイパスではない。EQカーブだけが外れ、アナログモデリングは通り続ける



つまみが少ない機種ほど、触っていない部分が仕事をしています。まずInとMainsの意味を押さえてから、低域の2つを回してください。



