公式ユーザーガイドは Waves Q10 を「長年、問題のある音の外科的な修復のための定番」と書いています。この記事では、なぜそういう道具になったのかを、公式資料(Waves が現在配布しているユーザーガイド、製品に同梱された2017年版、および Waves の公式製品ページと会社概要)の記載だけで分解します。10本のバンドがどれも同じ6種類のフィルターから選べること、Q が 100 まで伸びること、そして「入力フェーダーを下げろ」とガイド自身が指示している理由までを扱います。
先に前提を1つ。以下の範囲と初期値はすべて公式ユーザーガイドの記載で、編集部の実測値ではありません。ゲインは ±18dB、Q は 0.5〜100。どちらもガイド第3章の Range 欄に書かれている値で、版による違いもありません(ゲインの 0.1dB 刻みは p.9 の本文)。周波数だけは、同じガイドの中で記載が割れています。下限は 16Hz で一致していますが、上限はパラメトリック側(現行 p.19)が 21,357Hz(ガイドの表記は「21,357 kHz」ですが、kHz は単位の誤植です。約21.4kHz)、グラフィック側(現行 p.21)が 16kHz。いずれにしても 20Hz〜20kHz ではありません。詳しくは「全パラメーター」と後段の FAQ で扱います。本記事はガイドに載っているコントロールだけを扱います。
ユーザーガイドは2つあり、この記事では版を書き分けています。①製品に同梱された「Q10 Equalizer User Guide」(全25ページ。PDF の作成日は2017年9月)。以下ではこれを「2017年版」と呼びます。②Waves が現在配布している同名のユーザーガイド(全25ページ。作成日は2021年8月、更新は2022年6月)。以下ではこれを「現行ガイド」と呼びます。ページ数は同じですが中身は書き換わっており、パラメトリック側の周波数上限・Windows の修飾キー・プリセットの章の3か所が別物になっています。範囲と初期値は②の現行ガイドを基準にし、②から消えた記述は「2017年版では」と年を添えて残しています。加えて、ガイドの記述が Waves の他の公式資料と食い違っている箇所では、Waves 公式製品ページと会社概要(2026年9月時点)を参照して両論を併記しています。
コンポーネントはモノとステレオの2系統で、どちらでも1・2・3・4・6・8・10バンドから選べます(ガイドが列挙している構成)。画面は Modern と Legacy の2種類があり、WaveSystem ツールバーの Modern/Legacy ボタンで切り替えられます。切り替えても EQ の動作には影響しない、とガイドは明記しています。価格はガイドに記載が無いため、この記事では扱いません。
カホバンドが多いことは、このEQの本質ではありません。10本あることより、10本が全部同じ形をしていることのほうが効いています。そこから見ていきます。
この記事でわかること
- 「パラグラフィック」が指しているもの——グラフ操作と数値入力が同じ1つの状態を指す構造
- 全バンドが同じ6タイプ(Bell / Low Shelf / High Shelf / Low-pass / High-pass / Proportional Q)から選べることの意味
- Q=100 が帯域幅として何を意味するか。ガイドが書いている定義から逆算する
- ガイドが「入力フェーダーを -3dB から -6dB 下げろ」と指示している理由
Q10とは|何を解決する製品か
ガイドの第1章は、Q10 を「最大10バンドの柔軟なイコライジングを提供するマルチバンド・パラグラフィック・イコライザー」と定義しています。構成は2つの独立したモノEQ、または左右が正確に連動するステレオEQのどちらかとして使える、と続きます。
Waves が Q10 を出したのは1993年で、市場で最初のパラグラフィックEQプラグインだった——というのがガイド自身の記述です(現行 p.3)。以後、目立った見た目と操作の流れはほとんど変えないまま、内部の更新を重ねてきました。本稿が参照している2つのガイドはどちらも25周年記念版のもので、この版では次の5点が新機能として挙げられています(この一覧は現行ガイドと2017年版で同じです)。
⚠ ただし、この「1993年」は Waves 自身の他の記述と噛み合いません。同じ p.3 は続けて「この歴戦の道具の25周年を祝って、いくつかの改良を加え、機能を足し、新しい見た目を作った」と書いていて、この「25周年」を掲げたガイドのうち、製品に同梱されていたほう(本記事でいう2017年版)の PDF が作られたのは2017年9月です。25周年が2017年なら起点は1992年になり、同じ段落の「1993年」と1年合いません。Waves の会社概要のページも「Waves was founded in 1992」「Our first product, the Q10 Paragraphic Equalizer」——1992年創業で、最初の製品が Q10 だと書いています。どちらが正しいかを本記事で決めることはできないので、ガイドの1993年と、25周年・会社概要から出てくる1992年が並立している事実として置いておきます。発売年を1つだけ挙げている解説を見かけたら、公式のもう一方が別の年を示していることを思い出してください。
- Proportional Q フィルター — ゲイン調整に比例して Q が変わるフィルタータイプ
- Smoothing — コントロールを動かしたときに音がグリッチしないようにする
- 倍精度処理 — 32ビット浮動小数点処理と倍精度64ビット処理を選べる
- バンド表示の選択 — 全バンドの操作子を並べる表示と、選択中の1バンドに絞る表示
- 新しいインターフェース — Modern 表示の追加(Legacy も残っている)
この製品が解決するのは「特定の周波数を、狙った幅で、必要なだけ動かす」という一点です。ガイドは用途を、問題のある音の外科的な修復と、穏やかな色付けの両方だとしたうえで、極端に大きな Q 値と大きなブースト/カットを備えるため、通常のEQでは手が届かない音まで直して焦点を合わせられる、と説明しています。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
パラグラフィック=2つの操作面が1つの状態を指している
ガイドは画面を3つの区画に分けて説明します。バンドを見て動かすためのグラフィック表示、周波数・ゲイン・Q を数値で持つパラメトリック部、そして入出力部。パラメーターは値ボックスへの直接入力でも、グラフ上のバンドマーカーを動かしても設定でき、片方で行った変更はもう片方に反映されると明記されています。名前の「パラ+グラフィック」はここを指しています。
この二重化には使い分けがあります。ガイドは値ボックスの用途として「周波数が予測できるハーモニックなフィルターを作るときに便利」と例示し、グラフ側については「グラフを横切るようにドラッグして音を“その場で”探す」と書いています。探索はグラフ、確定は数値、という分担です。
グラフ側の操作は修飾キーで切り替わります。ガイドの一覧はこうです。
| 操作 | 動作 |
|---|---|
| バンドマーカーをクリック | そのバンドを選択 |
| バンドマーカーをダブルクリック | バンドのオン/オフ |
| CMD/Ctrl+クリック | フィルタータイプの切り替え |
| Alt+水平ドラッグ | Q(幅)を変える |
| Ctrl を押しながら水平/垂直に動かす | その軸だけを動かす(もう一方は固定) |
| Shift+複数マーカーをドラッグ選択 | 複数バンドを同時に操作 |
Ctrl による軸ロックは地味ですが重要です。ゲインを変えずに周波数だけ動かす、という探し方ができるかどうかで、共鳴の特定にかかる時間が変わります。
バンドに役割が割り当てられていない
Q10 のバンドは1本ずつが同じ仕様です。各バンドが6種類のフィルタータイプと、ゲイン・周波数・Q の完全な制御を持つ。ガイドは「ほとんどのマルチバンドEQと違い、Q10 のどのバンドもどのフィルタータイプでも使えるので、信号を整形する際の柔軟性が非常に高い」と書いています。低域用バンド・高域用バンドといった役割分担が無い、ということです。
ただし初期状態には性格があります。フィルタータイプは全バンド Bell、ゲインは 0dB、そしてバンドの初期値はオフ(ガイドの一覧の Default が Off)。初期周波数は次のとおりです。
| バンド | 初期周波数 | バンド | 初期周波数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 31Hz | 6 | 1000Hz |
| 2 | 62Hz | 7 | 2000Hz |
| 3 | 125Hz | 8 | 4000Hz |
| 4 | 250Hz | 9 | 8000Hz |
| 5 | 500Hz | 10 | 16000Hz |
1オクターブずつ上がっていく並びで、グラフィックEQのフェーダー配置がそのまま初期値になっています。パラメトリックの自由度を持ちながら、開いた直後の見え方はグラフィックEQ。名前の由来がここでも効いています。
タイプごとの挙動も押さえておきます。シェルフは指定周波数の上か下をブースト/カットしますが、指定した周波数は傾きの中間です。ガイドの例は明快で、3000Hz に +6dB のハイシェルフを設定すると 1000Hz ではおよそ +3dB になる、と書かれています。「3kHz から上を上げた」つもりが 1kHz が動いているのは仕様です。パス/カットは -12dB/oct のロールオフで、カットオフ周波数はロールオフが -3dB になる点。シェルフとパス/カットには Q が効きません。



「バンドを動かしているのに音が変わらない」という相談は、だいたいバンドがオフのままです。初期値がオフだと知っていれば1秒で終わる話です。
Q が 100 まであることの意味
ガイドは Q の定義まで書いています。ベルフィルターにおける Q は Fc/Fw、つまり中心周波数を -3dB 点での帯域幅で割った値で、どちらもヘルツで測る。この定義に当てはめると、中心 1kHz で Q=100 のときの帯域幅は 10Hz という計算になります。ハムやその倍音のように「周波数が1点に決まっている雑音」を、周囲の音楽的な成分を巻き込まずに抜くための数字です。
使い分けの目安もガイドが示しています。一般的なEQ用途では Q が 0.5〜6 あたりが普通で、ハムのような特定周波数のノッチという専門的な用途では 100 までの大きな値を使うことがある。そして「高い Q で特定の音を見つけてから、フィルターを広げて滑らかな効果にする」という手順が推奨されています。
刻みの細かさも見ておきます。ゲインは 0.1dB 刻み。周波数は1/16トン刻み(1オクターブあたり96ステップ、整数に丸め)で、左右の矢印キーで1ステップずつ動かせます。値ボックスやバンドマーカーを選んだ状態で、左右キーが周波数と Q、上下キーがゲイン。押しっぱなしで連続変化します。



探し方はガイドが書いています。高い Q で大きくブーストしたまま周波数を左右に動かし、いちばん嫌な音が持ち上がった位置で止める。それからブーストを深いカットに反転させる。探し方が手順として書かれているのだから、そのとおりに回せばいいという話です。
Proportional Q は「探すため」のフィルター
25周年記念版で追加された Proportional Q は、ゲイン調整に比例して Q が変わるタイプです。バンドのゲインが上がると Q が上がり、フィルターが狭くなる。ガイドはこれを「ベルフィルターの中心周波数を追い込むのに便利な道具」と位置づけ、高いゲインを入れてフィルターを大きく絞り、正しい周波数を見つけ、それからゲインを下げて幅を戻す、という手順を挙げています。前項の探し方を、Q と ゲインの2操作から1操作に畳んだものと考えると分かりやすいはずです。
ガイドの図は、同じ周波数 635Hz・同じ Q=8 のまま、ゲインだけを +6dB と +18dB にした2枚を並べています。Q の設定値が同じでも、実際のカーブの幅がゲインで変わる、という比較です。ガイドは「Band-pass フィルターと Proportional Q フィルターを比べて、どう違うかを理解してほしい」とも書いています。
選び方には注意点があります。Legacy 表示でタイプアイコンを連打したときの巡回順として、ガイドが挙げているのは parametric(bell)→ low shelf → high shelf → low pass → high pass の5つです。直接選ぶ場合は、タイプボタンを CMD+クリック(Mac)/Start+クリック=Windows キー+クリック(Windows)してポップアップメニューから選べます(現行ガイド p.10)。ここは2017年版では Ctrl+クリックでしたが、現行ガイドで Start キーに変わりました。
紛らわしいのは、同じ「タイプの切り替え」でも押すキーが場所によって違うことです。上のタイプボタンは Start+クリック(現行 p.10)ですが、グラフ上のバンドマーカー側は現行ガイド p.22 でも「CMD/Ctrl+Click on marker」のままです。前掲の修飾キー表はグラフィック操作の一覧なので、そちらは CMD/Ctrl のままで正しい、ということになります。
「入力を下げろ」と書いてあるEQ
ガイドの入力の項は、EQ を扱ううえで最も実務的な記述です。入力信号は過大にすべきではない、状況によっては内部でクリップが起こりうる、と始まります。理由はこうです。すでにノーマライズされていたりピークが高かったりする素材では、EQ を通す前には存在しなかったピークが内部で生じることがある。しかもそれは、ゲインを持たないフィルター(ハイパスなど)やカットだけのフィルターでも起こる。
そして続きが本質です。この種のクリップを表示するには、イコライザーのバンドとバンドのあいだにメーターが必要になる——だから見えない。したがってレベルの非常に高いファイルを扱うときは、入力フェーダーを -3dB から -6dB 下げて内部のピークに余裕を作れ、というのがガイドの指示です。
この設計は入出力の可動範囲にも表れています。入力フェーダーの範囲は -∞ 〜 0dB。上げられません。一方で出力フェーダーは -24dB 〜 +12dB あり、上へ戻せます。入口では下げるだけ、出口で取り戻す、という構造です。
出口には Trim があります。クリップさせずに出力を最大レベルに合わせるボタンで、値ボックスにはヘッドルームが表示されます。ガイドの例は 4.5dB。値が正でクリップランプが点いていなければ、その分だけフェーダーを上げられるという意味で、Trim を1回押すとフェーダーがその値だけ上がります(例では押した結果ヘッドルームが 0.2dB になる)。すでにクリップしていれば Trim の値は負になり、押すとオーバー分だけ下がります。正方向の最大は +12dB です。



カットしかしていないのに歪む、という現象の説明がマニュアルに書いてあります。しかも「バンド間にメーターが無いから見えない」とまで。見えない歪みの心当たりがある人は、入力を 3dB 下げるところからです。
プリセット集が仕様の一部になっている
現行ガイド p.17 の「Presets」の節は、Q10 には膨大なファクトリープリセットが用意されていると書いたうえで、それがどう助けになるかを6つに分けています。問題を解決する(例「Remove 50 Hz Removal」「Noise Removal」)、楽器の焦点を合わせる(「Guitar Enhance」「Power Bass」)、性格を変える(「Lead Vocal」「Backing Vocal」)、効果を作る(「Radio」「Telephone」)、プロから学ぶ(Waves のアーティストが自分の使い方を示したカスタムプリセット)、クラシックを試す(プラグインの開発に使われた画期的なフィルターを収めた「Legacy」フォルダ)。呼び出しは WaveSystem ツールバー中央の小さな矢印からです。
ファクトリープリセットは上書き保存できません。読み込んで調整し、ユーザープリセットとして保存すると Presets メニューに並ぶ——というのが現行ガイドの案内です。プリセットの分類がガイド本文に書かれているという事実そのものが、この製品でプリセットを「おまけ」と見ないほうがいい理由になっています(数のほうは現行ガイドに出てきません。p.17 の書き方は「膨大なファクトリープリセット」で、実数は示されていません。公式製品ページの数字も英語版が「50 factory and artist presets」、日本語版が「20を越えるエフェクトプリセット」で一致していないので、本記事では数を挙げません)。
「Legacy」フォルダの項には脚注が付いていて、ノイズシェーピングの先駆者であり、アンビソニックスとサウンドフィールド・マイクロフォンの開発で知られる Michael Gerzon を紹介しています。Waves と共同で「L1 コンプレッサーと Q10 パラグラフィック・イコライザー」を作った、とあります(L1 の呼称はガイドの表記のまま引用しています)。
2017年版のガイドでは、ここに「Setup library」という別の節(p.16〜17)が置かれていました。セットアップライブラリという大きなプリセット集が付属し、プラグインのインストール時にコンピューターへコピーされる。カテゴリーとして、マルチメディア、擬似ステレオ、帯域制限、プリ/ディエンファシス、プラトーフィルター、チルトフィルター、クロスオーバー、ハーモニックコム(ハム除去)などが挙がる。補正用途としてハムやヒスの低減、創作用途として AM ラジオや電話のシミュレーション、擬似ステレオ、コムフィルター、さらにブリックウォールのクロスオーバーフィルターといったユーティリティ的な構成も含まれる。そして、このライブラリに付属する解説文書を書いたのは Michael Gerzon である——という記述です。現行ガイド(2021年8月版)ではこの節ごと「Presets」に差し替わり、「Setup Library」という名称も、上に並べたカテゴリー名も、解説文書の書き手の話も残っていません。Gerzon の脚注そのものは現行にもありますが、掛かっているのは「Legacy」フォルダの項です。
ただし、消えたのはガイドの節であって、プリセットそのものが無くなったという話ではありません。Waves Japan の公式製品ページは2026年9月時点でも、この製品の特徴として「マルチメディア、疑似ステレオ、バンドリミッティング、串状のフィルタリング、クロスオーバー、ハム除去などのプリセット」を挙げています。2017年版で並んでいたカテゴリーとほぼ同じ顔ぶれです。だから「現行ガイドに名前が無い=手元の Q10 にも入っていない」とは言えません。本記事が確認できたのは「現行ガイドからこの節が消えた」ところまでで、同梱プリセットの現物までは確かめていません。名前を頼りに探すときは、ガイドではなくプラグインの Presets メニューを直接見てください。
全パラメーター
現行ガイド(2021年8月版)第3章に記載された範囲と初期値です。Link はステレオコンポーネントのみに適用されます。
| コントロール | 範囲 | 初期値 | 役割 |
|---|---|---|---|
| Band On/Off | オン / オフ | オフ | バンドの有効化。オンで点灯 |
| Band Number ID | — | Band 1 | Full 表示ではオン/オフ、Focus 表示ではバンド送り |
| Gain | -18dB 〜 +18dB(0.1dB 刻み) | 0dB | バンドのブースト/カット量 |
| Freq | 16Hz 〜 21,357Hz(1/16トン刻み)※現行 p.19 の記載。同 p.21 のグラフィック側は 16Hz〜16kHz と書かれており不一致 | バンド1〜10で 31 / 62 / 125 / 250 / 500 / 1000 / 2000 / 4000 / 8000 / 16000Hz | ベルでは中心周波数、シェルフ・パスでは角周波数 |
| Q | 0.5 〜 100 | ガイドに記載なし | フィルターの幅(Fc/Fw) |
| Filter Type | Bell / Low Shelf / High Shelf / Low-pass / High-pass / Proportional Q | Bell(全バンド) | バンドごとのフィルター形状 |
| Input フェーダー | -∞ 〜 0 | 0 | プラグインへの入力。L/R は個別 |
| フェーズ反転 | チャンネルごとに個別 | — | 位相の反転 |
| Output フェーダー | -24dB 〜 +12dB | 0dB | 出力レベル |
| Trim | -12dB 〜 +12dB | — | クリップしない最大レベルへ出力フェーダーを合わせる |
| Output メーター | -∞ 〜 0dBFS | — | ピークホールドとクリップ表示。値ボックスのクリックで消去 |
| Link | L / L+Link / R / R+Link | — | 左右を個別に扱うか連動させるか(ステレオのみ) |
| View Select | Full / Focused | — | 展開ボタンで表示を切り替え |
Freq の上限だけ注釈が要ります。現行ガイド p.19 の表記は「Range: 16 Hz–21,357 kHz」ですが、この kHz は単位の誤植です。21,357kHz は 21.357MHz にあたり、オーディオ帯域の話として成立しません。21,357Hz(約21.4kHz)と読むほかなく、この値なら 44.1kHz のナイキスト周波数(22,050Hz)にも収まります。そのうえ、同じ現行ガイドのグラフィック側 p.21 は「Range: 16 Hz–16 kHz」のままで、ガイド内部で食い違っています(2017年版は p.19・p.21 とも 16kHz でした)。本記事は数値をガイドの記載どおりに引きつつ、明らかな単位の誤りだけ Hz に直して載せています。
Full 表示では読み込んだコンポーネントのバンド数だけ操作行が並びます(Q10 なら10行、Q6 なら6行)。Focused 表示では選択中の1バンドだけを表示し、そのぶんグラフィック表示が大きくなります。Link は L/R のどちらを基準に動かすかまで選べる形式で、L+Link なら左のバンドマーカーの動きに右が追従します。
用途別・設定の始点
いずれもガイドに根拠のある操作だけを並べます。数値の断定ではなく、どこから触るかの話です。
| 目的 | 始点 | ガイド上の根拠 |
|---|---|---|
| 共鳴・鳴きの特定 | Bell のまま Q を高くして大きくブースト、周波数を左右に振る | 見つけたらブーストを深いカットに反転させる手順が明記 |
| 周波数の追い込み | Proportional Q を選び、いったんゲインを大きく入れる | ゲインで幅が変わるので、絞る→特定→ゲインを戻すの順 |
| ハムとその倍音 | 高い Q のカットを基本波と倍音に並べる | Q=100 までの用途としてハムのノッチを明示(p.9)。プリセットにも「Remove 50 Hz Removal」「Noise Removal」がある(現行 p.17) |
| 低域のゴロつき | High-pass。角周波数はロールオフ -3dB の点 | ロールオフは -12dB/oct 固定。Q は効かない |
| 高域の耳障りな成分 | Low-pass、または高い Q のカット | ヒスや金切り声の減衰にローパスを、という記載 |
| 全体の色付け | Shelf。ただし指定周波数は傾きの中間 | 3000Hz を +6dB にすると 1000Hz で約 +3dB という例示 |
| レベルの高い素材 | Input フェーダーを -3dB 〜 -6dB | 内部ピークに余裕を作るための指示 |
| 仕上げの音量合わせ | Trim を1回押す | クリップせずに最大へ。正方向は +12dB まで |
確認の作法についてもガイドは一段踏み込んでいます。重要な調整をするときは、個々のバンドをオン/オフしながらEQ後の音を聴くとよい。これはプラグイン全体をバイパスするのとはまったく別の比較になる、と。全体バイパスは「EQ をかけたかどうか」を、個別バンドのオン/オフは「そのバンドが仕事をしているかどうか」を答えます。10本あるなら、後者を回すほうが情報量は多いはずです。
似た製品との使い分け
選択の分かれ目は、バンドの性格を自分で決めたいかどうかです。Q10 はどのバンドも同じ6タイプから選べて、Q は 0.5〜100、ゲインは ±18dB。バンドごとに役割や効き方が作り込まれたEQとは、設計の方向が逆を向いています。狭く深く狙う仕事、そして本数を要求される仕事は Q10 の側です。
同じ Waves のEQでは、Renaissance EQ と V-EQ3・V-EQ4 の解説記事があります。バンドの数と自由度で押すのか、決められた効き方に乗るのかで、開くべきプラグインが変わります。
ハム退治については、Q10 のプリセットに「Remove 50 Hz Removal」「Noise Removal」が用意されている一方で(現行ガイド p.17)、電源由来のノイズを専門に扱うプラグインもあります。X-Hum の解説も併せて読むと、手作業でノッチを並べるべき場面かどうかの判断が速くなります。
なお本記事は設計と数値の話に絞っています。画面の場所や基本操作から確認したい場合は、入門側の Waves Q10 Equalizer の使い方 を先に読んでください。
よくある質問
バンドを動かしても音が変わりません
バンドがオフの可能性が高いです。ガイドのコントロール一覧で Band On/Off の初期値は Off とされています。パラメトリック側のバンドセレクターをダブルクリックするか、グラフ上のバンドマーカーをダブルクリックするとオン/オフが切り替わります。バンドをオフにするとグラフ上のマーカーが暗くなり、そのバンドのカーブへの影響も無くなります。
周波数の上限はいくつですか
ガイドの中で記載が割れているため、上限を1つに断定できません。現行ガイド(2021年8月版)のパラメトリック側 p.19 は「Range: 16 Hz–21,357 kHz」。kHz は単位の誤植なので、21,357Hz(約21.4kHz)と読みます。ところが同じ現行ガイドのグラフィック側 p.21 は「Range: 16 Hz–16 kHz」のままで、2017年版は p.19・p.21 とも 16kHz でした。下限が 16Hz である点だけは全部一致しています。
したがって、手元の Q10 で 16kHz より上に上がるなら、それは現行ガイド p.19 の記載どおりの動作です。逆に 16kHz で止まるなら、それは同じガイドの p.21 の記載と一致します。どちらにしても、ガイドの片方の行より実機の表示を信じて構いません。「上限は 16kHz」と1つの数字で言い切っている解説は、2017年版のガイド(p.19・p.21 とも「16 Hz–16 kHz」)か、現行ガイドのグラフィック側 p.21 を出どころにしています。周波数範囲の記載が書き換わったのはパラメトリック側の p.19 で、グラフィック側 p.21 は2017年版のまま据え置かれました。
なお、上限が「効く上限」とイコールでない点は版によらず同じです。シェルフは指定した周波数より上(または下)をブースト/カットするフィルターなので、ハイシェルフの角周波数を上限に置けば、その上の帯域も動きます。上限が制限しているのは、バンドの周波数をどこまで高く置けるか、という一点です(Freq の Range はタイプを問わず掛かります)。
ハイパスの傾きを急にできますか
1バンド単位では変えられません。ガイドはパス/カットのロールオフを -12dB/oct と記載し、Q はパス/カットに影響しないと明記しています(p.12)。より急峻にしたいなら、同じタイプのバンドを重ねる形になります。Q10 はどのバンドもどのフィルタータイプでも使えるので、これは構造として素直にできることです。(2017年版のガイドには、セットアップライブラリに「ブリックウォールのクロスオーバーフィルター」が含まれるという記述がありました。現行ガイドにこの記述は残っていません。)
スペクトラムアナライザーはどこにありますか
現行ガイドのコントロール一覧と画面説明には、アナライザーに相当する項目は出てきません(2017年版も同じです)。グラフィック表示について書かれているのは、バンドマーカーとEQカーブの操作・表示です。周波数を目で探す代わりに、ガイドは「高い Q と大きなブーストで問題の音を見つける」という耳による探索手順を示しています。
まとめ
- 10本のバンドがどれも同じ6タイプ・同じ範囲を持つ。役割分担が無いぶん、狭く深い処理と本数の要る処理に強い。
- Q は 0.5〜100。ガイドの定義(Fc/Fw)で読めば、Q=100 は 1kHz で幅 10Hz にあたる。一般用途は 0.5〜6、ノッチで大きな値。
- カットしかしていなくても内部ピークは起こりうる。入力フェーダーは 0dB より上へは行かず、レベルの高い素材では -3dB 〜 -6dB 下げる。戻すのは出口の Trim。



ガイドいわく、長年の更新は内部にとどまり、見た目と操作の流れはほとんど変えられなかった。25周年版も「使い慣れた人に驚きはない」。バンドを増やす前に、1本を正確に置けるかどうかです。
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