Clarity Vx DeReverb Proの設計|強さの軸は3本ある

この記事では、Waves 🎛️Clarity Vx DeReverb Pro の「強さ」がなぜ1本のつまみで決まらないのかを、公式ユーザーガイドを軸に、公式製品ページの記載も添えて分解します。Main Knob・Strength Multiplier・グラフのノードがそれぞれ何を動かしているのか、Main Knob を 100% にしても最大の残響除去にならないと公式が明言している理由、そして下位機の 🎛️Clarity Vx DeReverb とガイドの説明が食い違っている箇所までを扱います。

先に資料の話をします。この製品には、少なくとも4つの PDF が流通しています。製品フォルダに同梱されているのは 2023年5月28日更新の版で、Waves 公式製品ページに埋め込まれた manualPDF フィールドが指す現行版は 2025年に作られた別ファイルです。どちらも21ページで、章立ても同じ。ページ数では見分けられません。それでいて中身は3か所変わっています。本記事は現行版を基準に書き、旧版にしかない記述は版を明示して残します。

以下に出てくる数値の範囲・初期値はすべて公式ユーザーガイドの記載で、📖レイテンシーなど技術表の数値は公式製品ページの Tech Specs の記載です。いずれも編集部の実測値ではありません。当編集部はこの製品を所有していないため、効き具合や音質の評価は書きません。コンポーネントは📖モノと📖ステレオ(公式英語ページ Tech Specs のコンポーネント欄で有効になっているのはこの2つ)。定価は 43,780円(2026年9月時点の公式日本語ページ表示)ですが、Waves はセールの頻度が高く、確認した時点でも割引価格が併記されていました。単発のセール価格は目安にならないので、現在の価格は公式ページでご確認ください。

カホ

「ノブを右に回すほど強く効く」で説明が終わる製品ではありません。強さの入り口が3つあって、それぞれ意味が違います。そこを取り違えると、掛かりすぎと掛からなさを行ったり来たりすることになります。

目次

この記事でわかること

  • Main Knob・Strength Multiplier・ノードの3つが、それぞれ何を増やしているのか
  • Main Knob 100% が最大ではない、と公式が書いている理由
  • ノード1とノード6(📖シェルフ)だけで掛かり方の分布を変える手順
  • 2023年版と2025年版で変わった3か所と、下位機のガイドと割れている記述

Clarity Vx DeReverb Proとは|何を解決する製品か

公式ガイド p.3 が挙げる前提はシンプルです。声にとって📖リバーブは空間の感覚を与えてくれるものだが、過剰だったり場に合っていなかったりすると濁りになり、他の📖トラックと馴染まなくなる。しかも現場では、整っていない部屋で録られた素材や、リバーブが焼き付いたままの🎵アカペラ/📖ボーカルサンプルを、そのまま使うしかない場面がある。「そういう録音を使える状態に戻す唯一の方法が、残響を取り除くことだ」というのがガイドの立て付けです。

手段はディープニューラルネットワークによる分離です。ガイド p.3 はニューラルネットワークを「学習する機械」と定義し、リバーブと乾いた声を区別するといった有用な仕事をする前に「何百万もの関連📖サンプルを分析しなければならない」と説明します。入力が通ると重みとバイアスの組が作られ、それが処理を制御する。どんな素材で学習させたかがネットワークの判断を大きく左右する、とも書かれています。ネットワークを選ぶという操作が、性能の上下ではなく偏りの選択である理由がここにあります。

そのうえで Pro が持つのは、量を決めるだけでなくどの📖周波数にどれだけ掛けるかを彫刻する道具と、掛けた後始末をするための出力段です。ガイド p.4 は「多くの場合、完璧な結果に到達するにはノブ1本で足りる」と書いたうえで、さらに細かく処理したい周波数と控えたい周波数を精密に制御できる、と続けます。ノブ1本で済むならそれでよく、済まないときのために全部載っている、という構成です。

置き場所には制約があります。現行版 p.4 は「🎛️Clarity Vx のプラグインはプラグインチェーンの先頭に挿すこと」とし、理由を「ニューラルネットワークは、過度なコンプレッション・📖EQ のカット・📖オートチューンなどの処理がかかっていないクリーンな声で訓練されている。それらの処理はネットワークがクリーンな声を識別するのを難しくする」と説明します。そのうえで「Clarity Vx DeReverb と Clarity Vx を併用するときは、DeReverb を先にすること」と、順番まで名指しで指定しています。

設計思想:なぜこの効き方をするのか

強さの軸が3本ある

この製品でいちばん誤解されやすいのは、残響除去の量を決める操作が1つではないことです。ガイドの記述をたどると、処理の強さそのものに効くコントロールが3つあり、しかも性格が違います。

  • Main Knob(p.10)── 「左に振り切ると入力信号だけが聞こえ、右に振り切るとニューラルネットワークの処理だけが聞こえる」。範囲は 0%(入力信号のみ)〜 100%(ニューラルネットワーク出力のみ)。これは📖ミックスです
  • Strength Multiplier(p.8・p.13)── 「Main Knob のようなミックスではない。ニューラルネットワークのエンジンがどれだけ強く働くかを制御する」。グラフのノードの処理強度を、指定された倍率で一律に掛け算する
  • ノードの Strength(p.13・p.18)── 周波数ごとの強さ。範囲は 0%〜200%、初期位置は 100%。ガイドは 200% を「Main Knob で設定した既定の残響除去量の2倍」と説明します

このほかに Tail Smoothing と Presence がありますが、こちらは除去したあとの聞こえ方を戻す側の道具なので、後段で別に扱います。

ガイド p.8 は、Strength Multiplier(ネットワークの「馬力」)と Main Knob(総合的な Strength と入力信号のミックス)の📖バランスを変えると、ほぼ同じ残響除去量に到達しても質感がそれぞれ違う、と書いています。ここが設計の要点です。同じ「7割消えた」状態に、少なくとも2つの作り方がある。

Main Knob 100% は最大ではない

ガイド p.9 に、注意書きとして独立した囲みがあります。「Main Knob を 100% に設定しても、最大の残響除去にいるという意味ではありません。グラフのノードを上に動かせば、Main Knob が 100% のままでも、さらに強く残響除去することができます」。

カホ

普通のプラグインなら「ノブを振り切った=これ以上は無い」で判断が終わります。この製品は違うと公式が明記しているので、振り切ってから「効かない」と結論しないでください。

順序の説明も同じページにあります。「グラフのコントロールは Reduction Knob の後段にあるので、Reduction Knob を動かすと総残響除去量に比例して影響する。グラフのコントロールを使うつもりなら、Main Knob や Strength Multiplier を高めの値から始めることを勧める」。ここでガイドが同じつまみを Main Knob と Reduction Knob の2通りで呼んでいる点は、読むときに注意が要ります。p.6 の凡例と p.10 の見出しはいずれも Main Knob です。なお原文は adjusting it proportionally will affect total dereverberation で、何に比例するのかまでは書かれていません。

推奨手順としては、p.7 の「グラフで微調整するつもりなら、Main Knob を高めの値から始めて、周波数帯ごとにグラフで打ち消していくとよい」が公式の書き方です。下から積み上げるのではなく、上から削る方向を勧めている、と読めます。

グラフは「掛かり方の分布」を彫刻する

グラフには6つのノードがあります。カーブの型は固定で、ノード1がローシェルフ、ノード2〜5がベル、ノード6がハイシェルフ(p.18)。ただし周波数の割り当ては自由で、ガイドは「ノードには 1〜6 のラベルが付いているが、どのノードにもどの周波数でも割り当てられる」と書いています(p.9)。動かせる範囲は 16 Hz 〜 21,357 Hz。Q は 0.4 〜 7(初期値 0.7)。

向きは素直です。ノードを下げるとその周波数のネットワーク処理が弱まり、残響が戻ってくる。上げると処理が強まり、その周波数の残響除去が深くなる。ガイド p.16 は、中央の初期線より上に動かすと「そのノードの周りで非常に📖アグレッシブな処理になり、非常にドライな信号になることがあるので、Main Knob で埋め合わせたくなるかもしれない」と補足しています。

もうひとつ、p.20 に「ノード1と6の特別な使い方」という節があります。シェルフなので、個々のノードを触らずに全体の焦点と量を変えられる、という趣旨です。ガイドが挙げる例は3つ。

  • ノード1(ローシェルフ)を右下へ動かすと、残響除去がほぼ全部無くなる。ローシェルフなので、右へ動かすほど周波数の面で、下へ動かすほど強さの面で処理が減る
  • ノード6(ハイシェルフ)を左上へ動かすと、個々の設定を変えずに全ノードの強さが増す
  • ノード6を左上、ノード1を右下へ同時に動かすと、低域の残響は残したまま高域だけ最大限に除去できる。ノード2〜5の設定は変わらない。このシェルフの作用は他のノードの「上に乗る」

公式日本語ページも、リバーブ付きのボーカルを扱う場面として「低域と高域のテールを抑え、リバーブのキャラクターを維持します」という使い方を挙げています。両端をシェルフで独立に動かせる設計と噛み合う説明です。

Presence ── 下位機のガイドと説明が割れている

Presence は残響除去で失われた声の近さを埋め戻すためのコントロールで、範囲は 0 〜 100、初期値は 50。ここまでは Clarity Vx DeReverb(下位機)と同じです。問題は、50 から 100 側で足される高域の説明が2つのガイドで逆になっていることです。

資料該当箇所の原文
Clarity Vx DeReverb ガイド p.5adds some high-end (proportional to its dereverberation process)
Clarity Vx DeReverb Pro ガイド p.14
(2023年版・2025年版とも)
adds some high-end (proportionally opposite to its dereverberation process)

「除去量に比例して足す」と「除去処理と逆比例の関係で足す」では、意味が反転します。どちらが実装なのかは、本稿が参照した2本のガイドからは決められません。公式どうしが割れているので、この記事では方向を断定せず、両方の原文を並べるところまでにします。運用としては、Presence を動かしたら耳で確かめるしかありません。

もうひとつ、Pro のガイドだけが書いている注意があります。「Presence の設定はプラグインの音量に影響する。高い値では出力が 0 dB を超えることがある。その場合は📖リミッターを使うか、出力レベルを下げること。どちらでも出力📖ゲインは制御できるが、色は多少異なる」(p.14)。Presence は音量に触るツマミでもある、という前提が、次の出力段の存在理由につながります。

Tail Smoothing ── 消した尾を戻す

ガイド p.14 は、この製品が「📖初期反射とリバーブテイルを含めて、トラックからリバーブを完全に取り除くことができる」と書いています。そのうえで「しかし私たちは、スタジオであってもある程度の“部屋”を伴った声を聞き慣れている。だから残響除去したトラックは、ドライすぎる/細すぎる、特定の周波数で存在感を欠く、と感じられることがある」と続けます。

Tail Smoothing はその埋め戻しです。「元のリバーブテイルを一部戻すために使う。設定が高いほど、出力に再導入される元信号のテイルが長くなる」。範囲は 0 ms 〜 1000 ms。p.8 では同じ機能を「ニューラルネットワークに対して、処理の📖リリースを緩めるよう指示する」と説明しており、合成したリバーブを足しているのではなく、元信号のテイルを戻していることが読み取れます。

出力段が付いている理由

出力段は全処理の後段にあります(p.15)。📖フェーダーは −inf 〜 +24 dB で、ステレオ版では左右を独立に動かせます。フェーダー上部の Link ボタンを押すと分離、もう一度押すとオフセットを保ったまま再結合する仕様で、Link の初期値は On。メーターは全処理後の出力を表示し、赤いピークホールド LED 付き。メーターをクリックすると📖クリップ LED がリセットされます。

リミッターはブリックウォールで、信号チェーンの末尾に適用されます。オンにするとゲインリダクションメーターとピークホールド値が表示される。初期値は Off。Width は 0%(モノ)〜 100%(元の📖ステレオ幅)で初期値 100%、ステレオ版のみ。

Presence が音量を押し上げること、ノードを 200% まで上げられること、Main Knob 100% の先にまだ余地があること。この3つを並べると、出力が 0 dB を超える経路がいくつもある設計だと分かります。下位機のガイドには出力段の記載そのものがありません。Pro にリミッターとフェーダーが載っているのは、そのぶん暴れる作りだからだと読めます。

Solo・Difference・Bypass ── 「引いた分」を聴く3つの経路

この製品の検証系は、ノードの📖ソロ状態によって挙動が変わります。ガイド p.19 の記述を整理します。

  • Solo(ノード単位)── そのノードの周波数範囲だけを試聴する。ソロ範囲の外はすべて📖ミュート(−inf dB)。ソロ中のノードは点滅し、スポットライトで該当周波数が示される
  • Bypass(全体)── ソロが1つも無いときは入力信号だけが聞こえる(📖DAW のバイパスと同じ)。ソロがあるときはソロされたノードの入力信号だけが聞こえる
  • Difference(全体)── 入力と出力の差、つまり減らされたリバーブだけを試聴する。ソロがあるときは、入力とソロされたノードとの差を聴く

ノードの On/Off にも仕掛けがあります。「オフにしたノードは、オフである間は初期値に戻る。オンに戻すと以前の設定を思い出す」(p.19)。比較のためにオフにしても設定は失われないということです。グラフ全体を初期位置へ戻す Flat ボタンもあり、こちらは「他のコントロールを変えずに、全ノードを初期設定と位置に戻す」と定義されています。

リセットの条件と、処理がどこで走るか

ニューラルネットワークは処理しながら「履歴」を蓄積し、それが以後の判断に影響します。再生ごとの再現性を確保するため、ガイド p.11 は「停止するたびにニューラルネットワークをリセットする」と書いています。素材が切り替わってリバーブの種類や質が変わるときは手動リセットが推奨で、小さなクリックやポップを避けるため、無声区間か無音のときに押すという具体的な指示まで付いています。この Reset は📖オートメーション可能です。

Auto-reset をオンにすると、200 ms の無音(−144 dB を下回るレベル)を検出するたびに自動でリセットされます。初期値は Off。ガイドはこの機能の狙いを「1つのインスタンスで、200 ms 以上の無音で区切られた複数のイベントを扱うことが想定されるリアルタイム用途で有益」と説明しています。長尺のダイアログを1本のインスタンスで流す使い方を想定した設計です。

もうひとつ、p.9 に「Clarity Vx DeReverb Pro の処理はすべてお使いのコンピューター上で実行されます。処理のために📖クラウドへ送られることはないので、インターネット接続が無くてもすべての操作を実行できます」という記載があります。AI を名乗る処理の実行場所を、ガイド本体で明示している例です。

オートメーションの範囲も明記されています。「ニューラルネットワークセレクター、アナライザーの表示オプション、折りたたみ/展開を除く、すべてのコントロールがオートメーション可能」(p.9)。マルチセレクトについては「ウィジェットのコントロール、ニューラルネットワークセレクター、リセットボタンを除き、すべてのコントロールをグループ操作のために複数選択できる」(p.21)。除外リストの中身が2か所で違うので、オートメーションと複数選択を同じものとして扱わないでください。

全パラメーター

現行版ガイドで Range: の行が付いているコントロールと、本文中に数値が書かれているものをまとめます。空欄は「本稿が参照した現行版(全21ページ)に、その項目の記載が見当たらなかった」という意味です。

コントロール範囲初期値何をするか
Neural Network Selectorドロップダウン選択記載なし学習素材の違うネットワークを選ぶ
Main Knob0%(入力信号のみ)〜 100%(ネットワーク出力のみ)記載なし残響除去量。入力と処理結果のミックス
Strength Multiplier記載なし記載なしネットワーク全体の出力を全周波数で一律に増やす
Resetモーメンタリ—ネットワークの履歴を初期化。オートメーション可
Auto-resetOn / OffOff200 ms の無音(−144 dB 未満)ごとに自動リセット
Analysis/WidthSingle / Double × Stereo / Mono の組み合わせをメニューで選択記載なし解析方法と出力幅。ステレオ版のみ
Tail Smoothing0 ms 〜 1000 ms記載なし元信号のリバーブテイルを戻す長さ
Presence0 〜 10050残響除去後の声の近さ。50 が原音に近い色
Output Faders−inf 〜 +24 dB記載なし全処理後の出力レベル。ステレオ版は左右独立可
Output LinkOn / OffOn解除すると左右独立、再結合時はオフセットを保持
LimiterOn / OffOff信号チェーン末尾のブリックウォール
Width0%(モノ)〜 100%(元のステレオ幅)100%出力のステレオ幅。ステレオ版のみ
Node Frequency16 Hz 〜 21,357 Hz記載なしノードの中心周波数。6ノードとも同じ範囲
Node Strength0% 〜 200%100%その周波数の処理強度。100% がグラフの基準線
Node Q0.4 〜 70.71ノードが受け持つ帯域幅
Node On/Off・SoloOn / Off記載なしオフの間は初期値、オンで前の設定を復帰
Difference / BypassOn / Off記載なしソロの有無で対象が変わる(本文参照)
Flatモーメンタリ—他を変えずに全ノードを初期位置へ
Graphic Display 表示Neural Network Frequency Analyzer / Traditional Frequency Analyzer / None記載なし表示方式。1つ目はCPUをやや多く使うとされる

Strength Multiplier に範囲も初期値も入っていないのは、記載が見当たらなかったからです。ガイド p.13 の作例には 1.0 と 3.1 という値が写っていますが、画面図は初期値の証拠になりませんので、表には書きませんでした。

公式の技術表が公表している値

ユーザーガイド21ページには出てこない数値が、waves.com の製品ページの技術表(Tech Specs)にあります(2026年9月6日取得)。

項目公表値
レイテンシー(サンプル数)44.1 kHz=2048/48 kHz=2048/88.2 kHz=4096/96 kHz=4096
対応📖サンプルレート96 kHzまで
コンポーネントMono/Stereo(Mono-to-Stereo と📖サラウンド系はいずれも無効)
提供バージョンV17/V16/V15/V14

レイテンシーは公式の遅延表がサンプル数で公表している値です。時間に直すと、44.1 kHz と 88.2 kHz でおよそ46 ms、48 kHz と 96 kHz でおよそ43 ms。ガイドがチェーンの先頭に挿すよう指定している製品なので、この遅延はチェーンの入口で乗ります。DAW の遅延補正が効く環境なら意識せずに済みますが、かけ録りや📖モニターしながらの作業では効いてくる桁です。

一方、📖CPU負荷の数値は、ガイドにも技術表にもありません。ガイドにあるのは「Double モードは左右を独立に解析・処理するのでチャンネルごとの処理は精密になるが、そのぶん CPU を多く必要とする」(p.12)、「この表示(Neural Network Frequency Analyzer)は CPU をやや多く必要とすることがある」(p.16)という相対的な言い方だけです。負荷の見積もりは、実際に挿して DAW のメーターを見るしかありません。

用途別・設定の始点

公式ガイドが手順として書いている範囲だけを、出発点の形に並べ替えたものです。数値の推奨は本稿が参照したガイドに見当たらないので、操作の順序と方向だけを示します。

状況公式の記述にもとづく出発点
とりあえず結果を出したい素材に合ったネットワークを選び、Main Knob だけで詰める。p.4 は「多くの場合ノブ1本で足りる」、p.7 は「複数試すこと。結果は素材依存」
グラフで追い込むつもりがあるMain Knob と Strength Multiplier を高めから始め、グラフで周波数ごとに打ち消していく(p.7・p.9)
高域は最大限に消しつつ、低域の残響は残したいノード6を左上へ、ノード1を右下へ。この操作はノード2〜5の設定を変えない(p.20)
消しすぎて細くなったTail Smoothing で元のテイルを戻す。それでも近さが足りなければ Presence を 50 より上へ(p.8・p.14)
モノのボーカルが、ステレオリバーブごとステレオトラックに乗っているガイドは Width を「0」にすることを強く推奨(p.8)
Double/Stereo でステレオ像が揺れる・ジッターに感じるDouble/Mono を選ぶか、出力段の Width で狭める。「モノは常により安定している」(p.12)
左右で残響が大きく違う(🎵合唱・複数の歌い手)Double モード。左右を独立に解析・処理するがCPUを多く使う(p.12)
ダイアログを1インスタンスで通すAuto-reset をオンにする。200 ms 以上の無音で区切られたイベントを扱う用途向け(p.11)
出力が 0 dB を超えたリミッターを入れるか出力レベルを下げる。「どちらでも制御できるが色は多少異なる」(p.14)

参照した版と、版ごとに変わったところ

この製品のユーザーガイドは、本稿が入手できた範囲で次の4本があります。すべて21ページで、PDF の作成日も同じ 2023-05-11 のものが3本あるので、ページ数と作成日では見分けられません。

版入手先/更新日見分けがつく箇所
2023年5月版(製品同梱)同梱PDF=CDN の clarity-vx-dereverb-pro.pdf と md5 一致。更新 2023-05-28表紙と p.6 は、誌面の見た目は同じなのにテキスト抽出すると文字化けする
2023年6月版(2本)CDN の -v2(更新 2023-06-01)と -v3(更新 2023-06-04)フォント不良が解消。本文テキストは2本とも完全一致。下記②の2文は、すでにこの版で消えている
現行版clarity-vx-dereverb-pro-v16-update.pdf/PDF作成 2025-01-20・更新 2025-05-29下記の3点。PDFのタイトル属性が Claririty Vx DeReverb Pro と誤植

現行版の判定は、公式製品ページに埋め込まれている manualPDF フィールドが指す PDF を取得して行いました。バージョン番号を順に当てていくと -v2・-v3 に行き着いてしまいますが、それらは現行版ではありません。現行版のファイル名は -v16-update という別系統でした。同梱の2023年5月版と現行版のあいだで変わっている点は3つです。ただし3つが同時に変わったわけではありません。②は2023年6月の版ですでに起きており、①と③が2025年の現行版での変更です。

  • 挿す位置の注記(p.4)。2023年版は「ノイズリダクションプラグインを含む他のプラグインは Clarity Vx DeReverb Pro より前に来るべきではない」。現行版はこの但し書きを外し、代わりに「Clarity Vx DeReverb と Clarity Vx を併用するときは DeReverb を先にすること」という一文を足しています。禁止の言い方から、併用時の順序指定へ書き換わりました
  • ネットワークメニューの説明(p.10)。2023年版には「ネットワークの説明にある “📖NR” は、残響除去とあわせて📖ノイズリダクションが適用されることを示す」「メニューはカテゴリ別に整理されている:Dialogue | 📖Speech and Singing | Vocals」の2文がありました。現行版はこの2文とも削除されています。ただし消えたのは2025年の現行版ではなく、2023年6月の -v2 の時点です(-v2 と -v3 は本文テキストが完全に一致し、どちらにもこの2文がありません)。つまり2文が無いからといって、手元のPDFが現行版だとは限りません。なお2023年5月版の同じページの画面図では、開いたメニューが「Dialogue | Speech」と「Singing | Vocals」の2つのサブメニューとして写っています
  • 右クリック系の📖ショートカット(p.10・p.21)。ノードのソロが「右クリック」から「Ctrl+右クリック」へ変更。All Solos off も同様で、2023年版に付いていた「(🎛️StudioRack、Scheps Omni、MixHub)」という但し書きが消えています。ネットワークの前送りも、2023年版の「右クリックで前のネットワークへ」が現行版では「Ctrl+右クリックで前のネットワークへ」に変わりました
カホ

手元のPDFが2023年版だと、ノードのソロを「右クリック」と覚えることになります。ページ数も章立ても同じなので、版が古いことに気づく手がかりがありません。

ついでに、現行版にも残っている表記のほころびを2つ挙げておきます。p.21 のショートカット表は、1行目が「Adjust Strength (Freq locked):Ctrl+ドラッグ 上下」、2行目が「Adjust Strength (Strength locked):Ctrl+ドラッグ 左右」となっており、2行とも Adjust Strength です。p.18 の説明では左右方向は周波数の軸なので、2行目は Frequency の誤りと読むのが自然です。もうひとつ、p.13 の「beyond what the notes can provide」は、文脈からは nodes(ノード)の誤りと読めます。新しいほうを無条件に信じない、という読み方が要ります。

似た製品との使い分け

Clarity Vx DeReverb(下位機)のガイドは全6ページ、Pro は全21ページです。分量の差がそのまま機能差というわけではありませんが、下位機の全6ページを抽出して探したかぎり、Range: の行は Presence の1件だけでした。Pro は同じ形式の行が9件あります。数値で追い込むための情報量そのものが違います。

掛かり方の分布を触れるかどうかが分界線です。下位機は Main Knob で総量を決める設計で、本稿が参照した全6ページのガイドにも、下位機の公式日本語ページにも、周波数ごとの配分を変える手立ては出てきません(公式ページの売り文句は「ワンノブで即座に」)。「低域の残響だけ残したい」「この帯域だけもっと消したい」という要求が出た時点で、Pro の側にある道具が必要になります。公式日本語ページが Pro の売りとして挙げる「問題のある周波数だけを除去する6つバンド、最大200%削減するパワー、リリースを柔らかくするテール・スムージング」は、まさにこの3点です。

購入を比べるときに効く事実がもうひとつあります。英語公式ページの箇条書きの最後の1行は「Clarity Vx DeReverb Pro includes Clarity Vx DeReverb」——つまり Pro には下位機が付いてきます。永続📖ライセンスの定価は wavesjapan.jp の表示で Pro が43,780円、下位機が22,660円(いずれも2026年9月6日時点)。差額の意味は「上位機にいくら足すか」ではなく「2本ぶんでいくらか」になります。ただしこの1行は英語ページにしかありません。日本語ページの箇条書きに同じ項目は見当たらず、「同梱」「含まれ」「付属」のいずれの語も0件でした(同日確認)。同梱の範囲は公式ページで確認してください。

興味深いのは、下位機のガイドにしか無い記述もあることです。ループ再生を回すとパスごとにネットワークが適応して結果が良くなる、という趣旨の説明(下位機 p.6)は、本稿が参照した Pro のガイド全21ページを2系統で全文抽出して探したかぎり出てきません。Pro 側にあるのは Auto-reset で、こちらは無音を検出して履歴を切る方向の機能です。適応を積み上げるか、区切って再現性を取るか。同じ「履歴」という現象への対処が、2製品で逆を向いています。

系列の外に目を移すと、判断の軸そのものが違います。📖ゲートは音量で開閉するので、声が鳴っている最中に重なっている残響は通してしまう。EQ は周波数帯で削るので、同じ帯域にある声と残響を選り分けられない。この製品が公式に説明しているのは、リバーブと乾いた声を区別するよう訓練されたネットワークによる分離です。残響を落としたあとにトラックとして成立させる工程は、AudioTrack のような📖チャンネルストリップや Q10 Equalizer、C1 Compressor の仕事です。「チェーンの先頭に置け」という指示は、この分業と整合しています。

よくある質問

Main Knob を 100% にすれば一番強く掛かりますか?

いいえ。ガイド p.9 が「Main Knob を 100% に設定しても、最大の残響除去にいるという意味ではない。グラフのノードを上に動かせば、Main Knob が 100% のままでもさらに強く残響除去できる」と明記しています。100% は「入力信号を混ぜない」という意味であって、処理の上限ではありません。

Strength Multiplier と Main Knob は、どちらを先に動かすべきですか?

本稿が参照したガイドには、どちらを先にという指定が見当たりません。示されているのは性格の違いと、両者のバランスを変えると「ほぼ同じ残響除去量に到達しても質感がそれぞれ違う」(p.8)という記述です。グラフを使うつもりなら両方を高めの値から始めるよう勧めているので(p.9)、追い込む前提なら高めから削るのが公式の書き方に沿います。

ノイズ除去と併用するときの順番は?

現行版 p.4 は「Clarity Vx DeReverb と Clarity Vx を併用するときは、DeReverb を先にすること」と書いています。あわせて「他のプラグインは Clarity Vx DeReverb より前に来るべきではない」とも。2023年版はこの但し書きを「ノイズリダクションプラグインを含む他のプラグイン」と書いていました。表現は変わっていますが、残響除去を最上流に置くという方針は両版で共通しています。

同じ設定なのに、書き出すたび結果が違うことがあります

ガイド p.11 は、ニューラルネットワークが処理しながら「履歴」を蓄積し、それが以後の判断に影響すると書いています。そのうえで再現性を確保するため、停止のたびに自動でリセットされる仕様です。素材が変わる場面では手動リセットが推奨で、押すタイミングは無声区間か無音(クリック回避のため)。Reset はオートメーションできます。

まとめ

強さの入り口は3つ。Main Knob は入力と処理結果のミックス、Strength Multiplier はエンジンの馬力、ノードは周波数ごとの配分。同じ除去量でも作り方によって質感が変わる、と公式が書いています。

Main Knob 100% は上限ではありません。ノードを上げればその先があり、代わりに出力が 0 dB を超える経路も増える。リミッターとフェーダーが載っているのは、そのための後始末です。

手元の PDF が古い可能性を疑ってください。同梱版と現行版はどちらも21ページ・同じ章立てで、それでいてソロのショートカットと挿す位置の注記が変わっています。

カホ

迷ったら、まずネットワークを選んで Main Knob だけで詰める。それで足りたら終わりです。足りないと分かってからグラフに入るほうが、結果的に早く終わります。

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公式製品ページ:Waves Clarity Vx DeReverb Pro(日本語)/Waves Clarity Vx DeReverb Pro(英語)

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