BSS DPR-402の設計思想|11のジャンパー設定を解剖する

この記事では、Waves BSS DPR-402 の中心にある「11個のジャンパー設定」が何を切り替えているのかを、公式ユーザーガイドと Waves 公式の技術表だけで分解します。あわせて、このプラグインには公式ガイドが2版あり、そのあいだで初期状態とメーターの色が変わっていることを、行単位の突き合わせで確定させます。

先に、いちばん引っかかりやすい仕様をひとつ。ジャンパー設定の 2番「HF Re-Emph Comp」の説明は「Compression is higher at LOW frequencies(低域のほうが圧縮が強い)」、4番「LF Re-Emph Comp」の説明は「Compression is higher at HIGH frequencies(高域のほうが圧縮が強い)」です。名前と説明が逆を向いて見えます。抽出のくずれを疑って誌面を200dpiで描画し、4列の表として目視で確認しましたが、原文どおりでした。

本稿の範囲を明示します。数値はすべて公式ユーザーガイド(全19ページ)と、waves.com 製品ページに埋め込まれた公式技術表の記載で、編集部の実測値ではありません。基準にしたのは製品ページの manualPDF が指す現行版(bss-dpr-402-v16-update.pdf・PDF作成 2025年2月3日/更新 2025年5月29日)で、製品フォルダ同梱版(2016年3月16日作成)との差は版を明示して残しました。手順の妥当性は、別版があると分かっている 🎛️V-Comp を同じ手順に通し v-comp-v16-update.pdf が返ることを確かめてから判定しています。価格は定価と時点のみを書きます。

カホ

📖コンプ・ピークリミッター・📖ディエッサーが1台に入っている、という説明だけだと便利な詰め合わせに見えます。実際に効き方を決めているのは、その3つではなく📖サイドチェーンの📖周波数のほうです。

目次

この記事でわかること

  • 11個のジャンパー設定が何を切り替えているかと、名前と説明が逆を向いて見える2番・4番の原文
  • 2016年版と2025年版のガイドで動いた6箇所(初期状態・メーターの色・ラベル表記・削除された項目)
  • RATIO・ATTACK・RELEASE だけ Default と Reset の値が違う、という仕様
  • ディエッシングのモード数が、公式ガイドと公式製品ページで「3」と「2」に割れていること

BSS DPR-402とは|何を解決する製品か

ガイド §1.2 の定義から入ります。「Waves BSS DPR-402 プラグインは、BSS Audio がもともと製造していた DPR-402 コンプレッサー/ピークリミッター/ディエッサー・ハードウェアのソフトウェア・モデルである」。続けて「このダイナミクス・プロセッサーは1980年代のドラムマシンに📖パンチのある爆発的な特徴的サウンドをもたらし、ダンス・ポップ、🎵エレクトロニック、ヒップホップで多用された」と書き、モデリングは「BSS Audio および Harman International との協働で行った」としています。公式製品ページ(waves.com/2026年9月時点)の見出しも「The Versatile Compressor that Ruled the 80s」で、時代の記述は一致しています。

実機の設計目的は §1.3 が明快です。「BSS DPR-402 は、最もよく使われる3つのダイナミクス機能を1U のラックスペースに収めた、多用途でコンパクトな📖ステレオ機への要求に応えて設計された。チャンネルあたり2系統の独立した📖インサート可能なサイドチェーンを含む内部アーキテクチャーが、大きな柔軟性と適用範囲をもたらしている」。

§1.3 の続きには、この製品を理解するうえで重要な数値がひとつだけ出てきます。「📖ゲインリダクションは電圧制御アッテネーターで実現されており、入力信号を最大 30dB まで下げることができる」。また圧縮部については「高域のみで動作するよう切り替えることができ、その結果、ダイナミックに制御される可変 HF 📖フィルターになる」と書かれています。コンプレッサーが周波数を選ぶ道具にもなる、という設計がここで宣言されています。

プラグイン化にあたって足された機能も、ガイドが自分で数えています。§1.4「上記のオリジナル・ハードウェアの機能をモデリングすることに加え、Waves は柔軟性・制御性・使いやすさのために5つの機能をプラグインへ追加した」——1 INPUT GAIN CONTROL、2 MIX CONTROL、3 NOISE CONTROL、4 📖MS MATRIX(ステレオ・コンポーネントのみ)、5 MONITOR(ステレオ・コンポーネントのみ)。コンポーネントは Mono と Stereo の2つ(§1.5)。

設計思想:なぜこの効き方をするのか

11のジャンパー設定は、サイドチェーンの周波数応答のメニュー

実機では背面のジャンパーで切り替えていたものが、プラグインではドロップダウンになっています。ガイド §2.2 は「このドロップダウンメニューは、オリジナルの BSS DPR-402 ハードウェア・ユニットからモデリングされた11個のジャンパー設定の選択肢を提供する」と書き、初期値は 1(Normal Compression)。公式製品ページも「11 frequency-dependent responses」という言い方でこの数を出しています。

§3.4 の表を、原文の記述のまま並べます。「Num/Setting/Description/Inactive Controls」の4列組みの表なので、抽出テキストではなく誌面を描画して対応を目視で確かめたものです。

No.設定名ガイドの説明(要旨)無効になるコントロール
1Normal Compすべての周波数で等しく圧縮される—
2HF Re-Emph Comp低域のほうが圧縮が強い。強く圧縮した信号が明るく聞こえる。低域が引き起こす圧縮が高域を変調するので、この設定はサイドチェーンから低域を取り除いてその変調をなくす—
3HF Re-Emph Comp +低域のほうが圧縮がずっと強い。重い低域が高域を変調する効果を弱めるため、明るく聞こえる—
4LF Re-Emph Comp高域のほうが圧縮が強い。耳につく成分の制御に有効で、LF 📖歪みが問題になる前に速い ATTACK と DECAY を使える—
5LF Re-Emph Comp +高域のほうが圧縮がずっと強い。用途は4番と同じ—
6Wide LF Cntrl CompFREQ の設定より下の周波数を基準に、オーディオ帯域全体を圧縮する。低域による高域の変調は、望ましい効果になりうる—
7Narrow LF Cntrl CompFREQ より下の周波数だけが圧縮される。高域は減衰せずに通るPeak Limiter、De-ESS
8📖Expander Wide入力がしきい値を超えるとエクスパンションが起きる。ピークリミッターは効果として使えるDe-ESS
9Expander LF Onlyエクスパンションは FREQ より下の周波数にのみ起きるDE-ESS
10Expander LF Cntrlエクスパンションは全帯域に起きるが、リンクと FREQ で設定した低域または高域の制御下に置かれるMode Switch が Compress に固定
11Expander HF Cntrlエクスパンションは全帯域に起きるが、FREQ で設定した低域または高域の制御下に置かれるMode Switch が DE-ESS Wide に固定

2番と4番の名前と説明の向きは、上に書いたとおり原文がそうなっています。加えて2番のセルは、前半で「低域のほうが圧縮が強い」と言い、後半で「サイドチェーンから低域を取り除く」と言っています。同じセルの中で説明が2つの向きを向いているので、どちらが実装かはガイドの文面からは決められません。ここは公式資料が割れている箇所として、そのまま記録します。

読み取れる構造ははっきりしています。11個のうち 1〜7 が圧縮、8〜11 がエクスパンション。そして 6・7・9・10・11 は FREQ つまみ(800Hz〜15kHz)と組み合わせて意味が決まる設定です。つまりジャンパーは「圧縮の強さ」を切り替えるのではなく、サイドチェーンが何を聞くかとゲインリダクションが何に掛かるかの組み合わせを切り替えています。

カホ

「HF なのに低域」で手が止まったら、名前ではなく説明文と FREQ の位置で判断してください。ここは公式ガイドの中で向きが揃っていない箇所です。

FREQ つまみが3つの役割を兼ねている

FREQ の定義は §2.2 で「選択された周波数依存のダイナミクス処理を起動する周波数を決める」。範囲は 800Hz〜15kHz(0.01kHz 刻み)、初期値 15kHz です。この1本のつまみが、状況によって別の意味を持ちます。

  • MODE が De-Ess Wide/De-Ess HF のとき — ディエッサーのサイドチェーン・フィルターの周波数(§3.2)
  • MODE が Compress で DE-ESS つまみを使うとき — 「懸念のある周波数より低い周波数がディエッシングを起動しないように FREQ を調整する」(§3.2.3)
  • ジャンパー 6・7・9・10・11 のとき — 圧縮/エクスパンションの対象または制御の境目(§3.4)

ガイドは無効になる条件も明記しています。§3.1 の初期設定に「FREQ — ディエッサーの THRESHOLD が Out のとき、FREQ は無意味」。また DE-ESS つまみのほうは「MODE が Compress に設定されているときに信号へ適用されるディエッシングの量を決める」と定義されており、De-Ess Wide モードでは「DE-ESS コントロールはこのモードでは無効」(§2.2 MODE の項)。つまみが並んでいる見た目に反して、有効な組み合わせはモードが決めています。

MON S.C. の使いどころも、この文脈で読むと具体的になります。§2.2 の定義は「VCA のダイナミクス処理を起動するサイドチェーン信号を📖モニターできるようにする」という一般的なものですが、手順の章はもっと踏み込んでいます。§3.2.1/§3.2.2 の手順4は「MON 📖SC スイッチをクリックすると、ソース信号を内部のディエッサー・フィルター越しに聞ける。これは出力コネクターの通常の信号をディエッサー・フィルターの出力に置き換えるもので、聞こえるサ行との関係で FREQ を設定する助けになる」。何を聞くための機能かではなく、どのつまみを合わせるための機能かが書かれています。

RATIO・ATTACK・RELEASE だけ Default と Reset が違う

ガイドは各コントロールに Range: Default: Reset: の3行を付けています。この3つ組を全部並べて突き合わせると、Default と Reset がずれているコントロールが3つあります。

コントロールDefault(読み込み時)Reset
RATIO4:1Out(1:1)
ATTACK1 ms50 µs
RELEASE100 ms5 ms

ほかのコントロール(IN GAIN・DE-ESS・FREQ・THRESHOLD・METER IN/OUT・OUT GAIN・Mon S.C.・PEAK LIM・PEAK LIM FAST/SLOW・📖CH IN・COLLAPSE/EXPAND・JUMPER・EXT S.C.・MIX・NOISE・MONITOR)は Default と Reset が同じ値です。この差は2016年版と2025年版で変わっていません(両版の Default: と Reset: の行を全部突き合わせて確認)。

実務上は、リセットしたつもりで 圧縮が掛からない状態(RATIO=Out)と最速の📖アタックに飛ぶことになります。§3.1 が示す出発点は RATIO 4:1・RELEASE Auto なので、リセット後の状態は推奨の出発点とも違います。触りすぎたときは、リセットではなく §3.1 の初期設定を手で戻すほうが速い、という結論になります。

カホ

リセットしたのに音が変わらない、と思ったら RATIO が Out に飛んでいた——というのは、ガイドの Default と Reset の行を見比べれば先に分かる話です。

ガイドは2版ある。何が動いたか

製品フォルダ同梱の PDF は 2016年3月16日作成。製品ページの manualPDF が指しているのは bss-dpr-402-v16-update.pdf で、こちらは 2025年2月3日作成(更新 2025年5月29日)。どちらも19ページで章立ても同じですが、中身は同一ではありません。ページ数が同じでも中身が違う例なので、全19ページを行単位で突き合わせました。

箇所2016年版2025年版(現行)
COLLAPSE / EXPAND(p.11)読み込み時は「collapsed」でボタン表示は「Expand」。Default・Reset とも Collapsed読み込み時は「Expanded」でボタン表示は「Collapse」。Default・Reset とも Expanded
Peak Limiter Meter(p.10)リミッティングの開始は緑、強くかかると赤リミッティングの開始は黄、強くかかると赤
CH IN(p.10)Range: In(active)/ Out(bypass)。Default・Reset とも InRange: On(active)/ Off(bypass)。Default・Reset とも On
Mon S.C.(p.9)Range: On/Off。Default・Reset とも OffRange: Audio/S.C.。Default・Reset とも Audio
MONITOR の Left / Right(p.12)「Left は左出力を両側へ送る」「Right は右出力を両側へ送る」「Left は左のモニターへ信号を送る」「Right は右のモニターへ信号を送る」
(?) Jumper Setting Description(p.11)「現在選択されているジャンパー設定の短い説明を表示する」という項目がある項目ごと削除(ただし p.6 のインターフェイス図には両版とも「Jumper Setting Description」の吹き出しが残っている)

これ以外の違いは表示上のものでした。DE-ESS の範囲の表記が「Out (0 dB) to 9 dB … 0.1-dB increments」から「0 dB (Out) to 9 dB … 0.1dB increments」へ(値は同じ)、目次の組版、箇条書きの記号、番号付きリストの折り返し。範囲・初期値の数値そのものは、全19ページのどこでも2版で一致しています。上の表のうち、CH IN と Mon S.C. はラベルの言い換え、Peak Limiter Meter は色、COLLAPSE / EXPAND は起動時の状態、MONITOR は動作の説明、そして最後の1件は項目の削除です。

実害が出るのは MONITOR の行です。2016年版を読むと Left は「左出力を両側へ送る」=📖モノラルで左を確認する動作に読めますが、2025年版は「左のモニターへ送る」と書いています。同じ製品の同じボタンについて、公式資料が別のことを言っている状態です。どちらが現行の実装かはガイドの文面からは決められないので、実際の挙動は手元で確かめてください。

版の探索方法も書いておきます。CDN のスラッグ推測(bss-dpr-402.pdf)で取れる PDF は同梱版と sha256 が完全に一致し、接尾辞 -1 -2 -v1 -v2 -v3 はすべて HTTP 403 でした。現行版に届いたのは -v16-update だけで、これは製品ページの manualPDF フィールドが指していたものと同じ URL です。本稿が取得できた版はこの2つで、そのあいだの中間版は確認できていません。

ディエッシングのモード数が公式どうしで割れている

ユーザーガイドは2箇所で数えています。§1.3「ディエッシングには3つのモードがある。全帯域の減衰、HF のみの減衰、そしてディエッシングとコンプレッションの混合である」。§3.2 も「DPR-402 には3つのディエッシング・モードが用意されている」として、3.2.1 De-Essing Wide with Full Dynamic Control / 3.2.2 De-Essing HF with Full Dynamic Control / 3.2.3 De-Essing Wide with Simultaneous Compression を並べています。

一方、公式製品ページ(2026年9月時点)の機能一覧は「Two de-essing modes—wideband, or high frequencies only」と書いています。MODE スイッチ自体の選択肢は COMPRESS/DE-ESS Wide/DE-ESS HF の3つで、そのうちディエッシング専用の位置は2つ。ガイドは3つ目として「MODE が Compress のまま DE-ESS つまみを使う」やり方を数え、製品ページは数えていない、という違いに見えます。どちらの数え方が正しいかは決められないので、両方を並べておきます。

3つの方式の違いは §3.2 が説明しています。Wide は「ディエッサーはサイドチェーンのフィルターで高域だけを検出するが、圧縮は信号の全帯域に掛ける」。HF は「信号をサ行の部分とそれ以外に分け、サ行の部分だけを圧縮したあと、両者を合成して全帯域の信号を作り直す」。そして HF については「フィルターを入れることで📖位相のずれが生じ、2つの信号を合成したときにアーティファクトになりうる」と注意が付いています。3つ目(Wide with Simultaneous Compression)は「ディエッサーの📖レシオ・アタック・📖リリースがあらかじめ決められている」モードです。

ピークリミッターとの併用可否も、方式ごとに書き分けられています。§3.2.1 は「必要であれば、ピークリミッターを広帯域ディエッシングと同時に使える」。§3.2.2 は「HF モードではピークリミッターを使うべきではない」。§3.3 も「ピークリミッターはコンプレッションおよび/または広帯域ディエッシングと組み合わせて使うよう設計されている。HF ディエッシングと同時には使えない」と重ねています。

ピークリミッターは出力ゲインの後段にいる

§2.2 の PEAK LIM の項に、経路を決める一文があります。「ピークレベルのリミッティングは Output 📖Gain の後で起きるので、出力ゲインを変えると出力レベルは変わるが、ピークレベルは変わらない」。そしてレシオは 20:1 固定。範囲は Out(📖0dB)〜−16dB です。

この順序があるので、§3.3 の手順が成立します。「赤の LED が時折のピーク以外で点きっぱなしなら、ピークリミッターへ送る信号を減らすために GAIN を下げるべきである」「それで全体の出力レベルが望ましくないほど下がるなら、コンプレッサーのしきい値を下げるかレシオを上げて圧縮量を増やし、そのうえでゲインを取り直す」。出力ゲインで📖リミッターの深さを決め、足りないぶんはコンプレッサー側で作る、という分担です。

全パラメーター

現行版ガイド §2.2 に Range: Default: Reset: の形で書かれている値だけを並べます。

コントロール範囲DefaultReset
IN GAIN−20dB 〜 20dB(0.1dB 刻み)0dB0dB
DE-ESS0dB(Out)〜 9dB のゲインリダクション(0.1dB 刻み)OutOut
FREQ800Hz 〜 15kHz(0.01kHz 刻み)15kHz15kHz
THRESHOLDOut(0.0dB)〜 −50dB(0.1dB 刻み)OutOut
RATIOOut(1:1)〜 inf:1(0.1:1 刻み)4:1Out(1:1)
MODECOMPRESS / DE-ESS Wide / DE-ESS HF記載なし記載なし
ATTACK50µs 〜 100ms(11段の固定ステップ)1ms50µs
RELEASE5ms 〜 4秒、または Auto100ms5ms
METER IN/OUTInput / OutputOutputOutput
OUT GAIN−20dB 〜 20dB(0.1dB 刻み)0dB0dB
Mon S.C.Audio / S.C.AudioAudio
PEAK LIMOut(0dB)〜 −16dB(0.1dB 刻み)。レシオは 20:1 固定OutOut
PEAK LIM FAST/SLOWFast / SlowFastFast
CH INOn(有効)/ Off(バイパス)OnOn
COLLAPSE / EXPANDExpand / CollapseExpandedExpanded
JUMPER SETTING L/R1〜111(Normal Compression)1(Normal Compression)
EXT S.C.On / OffOffOff
MIX L/R0% 〜 100%(0.1% 刻み)100%100%
NOISEOff 〜 100OffOff
MONITOR(ステレオのみ)Left / Mono / Stereo / RightStereoStereo
STEREO MODE(ステレオのみ)Stereo / Duo / 📖MSStereo記載なし

メーターの範囲も §2.2 に書かれています。BELOW 📖TH メーターは「−18dB からしきい値まで」、GAIN REDUCTION メーターは「−3dB から −27dB のゲインリダクション」、Input/Output Level メーターは「−44dB から 0dB」。De-Esser メーターは3状態で、Off(動作していない)/緑(1dB 未満のような小さい値でもゲインリダクションが働いていることを示す)/橙(およそ 15dB のゲインリダクション)です。

いくつか補足を。EXT S.C. は「VCA に外部📖キー入力を割り当てる。VCA が外部サイドチェーンを『聞く』ためには、このモードを選ぶ必要がある」もので、有効にすると「DE-ESS コントロール、ピークリミッターのコントロール、ジャンパーメニューがこのモードでは無効になる」。NOISE は「処理後の信号に加える、モデリングされたノイズと📖ハムの量」を決めます。STEREO MODE の 📖MS については「左側のコントロールがマトリクスの Mid、右側が Sides に作用する」と方向が明記されています。📖オートメーションの注意もあり、「Duo モードで L と R を別々の値にオートメーションした場合、Stereo モードに戻る前にどちらか一方の設定を削除する必要がある」(§2.2)。

用途別・設定の始点

ガイド第3章が示している初期設定です。§3 の前置きは「オリジナルの BSS DPR-402 に『標準的なセットアップ』などというものは無かった。ただし、ある種の設定は特定の用途にとって良い出発点になった」と断ったうえで並べています。

目的MODEガイドの初期設定
基本のコンプレッション(§3.1)CompressTHRESHOLD=Out/RATIO=4:1/RELEASE=Auto(このとき ATTACK は無関係)/OUTPUT GAIN=0dB/CHN IN=In/DE-ESS THRSHLD=Out/📖PK LIM THRSHLD=Out
広帯域ディエッシング(§3.2.1)De-Ess WideTHRESHOLD=Out/RATIO=Infinity/ATTACK=50µs/RELEASE=100ms/FREQ=4kHz/OUTPUT GAIN=0dB/PK LIM THRSHLD=Out
HF ディエッシング(§3.2.2)De-Ess HF§3.2.1 と同じ値。ただし「ピークリミッターは HF モードでは使うべきではない」
圧縮と同時のディエッシング(§3.2.3)Compressコンプレッサー側は必要に応じて設定。「最適なディエッシング効果のためには圧縮量を 10〜15dB を超えないようにする」/DE-ESS THRSHLD=Out から反時計回りに/FREQ=4kHz/PK LIM THRSHLD=Out
ピークリミッティング(§3.3)—PEAK LIM THRESHOLD=必要に応じて/PEAK LIM FAST/SLOW=FAST

ディエッシングの手順で共通しているのが「Auto は使うな」という指示です。§3.2.1・§3.2.2 の手順3は「速いアタックとリリースが最も適切だが、最良の結果になるよう調整すること。Auto の位置は使うべきではない」。同じ手順2には「ディエッシングでは通常ゲインの補償は不要」とも書かれています。コンプレッション(§3.1)では Auto が推奨で、ディエッシングでは禁止。同じ RELEASE つまみの Auto が、モードによって推奨と非推奨に分かれます。

§3.2.3 には副作用の警告もあります。「このモードではディエッシングが広帯域なので、ソースに大きな低域が含まれていると歪みやポンピングを起こすことがある」。低域の多い素材で圧縮と同時にディエッシングを掛けるなら、FREQ を上げて低域が起動条件に入らないようにする、という手順2の指示とセットで読む箇所です。

表の「CHN IN=In」は原文の表記どおりです。2025年版は §2.2 でこのボタンの表記を On/Off に変えていますが、第3章の初期設定は両版とも「CHN IN – In (illuminated)」のまま。同じガイドの中で、コントロール一覧と手順で呼び方が揃っていません。画面上は点灯しているかどうかで判断できるので実害は小さい箇所ですが、記述の食い違いとして記録しておきます。

似た製品との使い分け

同じ VCA 系の Waves 製品と、公式技術表と各製品のユーザーガイドで裏が取れる範囲だけを並べます。

製品サイドチェーンの周波数操作遅延(公式表・📖サンプル)対応📖サンプルレート上限
BSS DPR-40211のジャンパー設定+FREQ(800Hz〜15kHz 可変)44.1/48/88.2/96 で 85、176.4/192 で 0192kHz
🎛️dbx 160SC-HP(約90Hz のハイパスをオン/オフ)44.1/48 で 85、88.2 以上で 0192kHz
🎛️API 2500Thrust(Norm/Med/Loud の3状態)全レート 096kHz

dbx 160 の公式ガイドは SC-HP を「サイドチェーンから低域のエネルギーを取り除くために、サイドチェーンに約 90Hz の📖ハイパスフィルターを入れる選択肢を与える」と定義しています。オン/オフの2択で、周波数は固定。API 2500 の Thrust は「RMS ディテクターの入力にハイパスフィルターを挿入する独自プロセス」で、Norm(フィルターなし)/Med(低域をわずかに減衰し高域をわずかにブースト)/Loud(20Hz で 15dB 減衰、20kHz で 15dB 増加する緩やかな直線フィルター)の3状態です。

3製品とも「低域でコンプが暴れるのを止める」という同じ問題を扱っていますが、解像度が違います。dbx 160 は1つのスイッチ、API 2500 は3つの📖プリセット曲線、DPR-402 は11の応答+可変の境目。そのぶん DPR-402 は選ぶ手間が増えます。初期値が 1(Normal Compression)=全帯域均等になっているのは、まず普通のコンプとして使えるようにしてから選ばせる、という設計です。

もうひとつ、DPR-402 はエクスパンダーを持っています。ジャンパー 8〜11 がそれで、8 は全帯域、9 は FREQ より下だけ、10・11 は全帯域だが制御の帯域を選ぶもの。ダイナミクスを「詰める」だけでなく「開く」側も同じ箱に入っている点は、上の2製品との性格の違いとして大きい部分です。

よくある質問

ジャンパー2番の「HF」は高域が圧縮されるという意味ですか?

ガイド §3.4 の説明文は「Compression is higher at LOW frequencies」=低域のほうが圧縮が強い、です。名前は「HF Re-Emph(HF の再強調)」なので、名前と説明文は逆を向いて見えます。さらに同じセルの後半は「この設定はサイドチェーンから低域を取り除く」と書いており、セルの中でも向きが揃っていません。誌面を描画して確認したうえで、公式資料が割れている箇所として原文のまま記録しています。実際の効き方は、FREQ を動かしながらゲインリダクションのメーターで確かめてください。

同梱のマニュアルを読めば足りますか?

足りない箇所があります。製品フォルダ同梱の PDF は2016年3月16日作成で、製品ページの manualPDF が指す現行版(2025年2月3日作成)とは6箇所で記述が違います。とくに、起動時にインターフェイスが畳まれているか展開されているか、ピークリミッターのメーターが点き始める色が緑か黄か、MONITOR の Left/Right が両側へ送るのか片側へ送るのか。範囲と初期値の数値そのものは変わっていないので、パラメーターの値だけを見るなら同梱版でも同じです。

遅延はどれくらいですか?

Waves 公式の Plugin 📖Latency 表(2026年9月時点)は、44.1kHz・48kHz・88.2kHz・96kHz で 85サンプル、176.4kHz・192kHz で 0サンプルと出しています。サンプル数が高いレートまで一定で、そこから 0 に落ちる形です。ユーザーガイド本文にレイテンシーの節はありません(3系統の全文検索で latency は0件)。コンポーネントは Mono と Stereo、対応サンプルレートの上限は 192kHz、対応バージョンは V17 から V9 まで(いずれも公式技術表)。

価格はいくらですか?

公式日本語ページ(wavesjapan.jp/2026年9月時点)には永続📖ライセンス版の定価 26,180円が表示されています。英語ページの製品データでは MSRP 149ドル。確認した時点では割引が併記されていましたが、単発のセール価格は目安になりません。現在の価格は公式ページでご確認ください。バンドルでの入手経路もあり、公式製品ページの Included In タブには 🎛️Waves Ultimate・📖Cloud MX Audio 📖Mixer Premium・Live Plus・Mercury・Pro Show・SD7 Pro Show が並んでいます(収録構成は改編されるため、購入前に公式で確認してください)。

まとめ

11のジャンパー設定は圧縮の強さではなく、サイドチェーンが何を聞き、ゲインリダクションが何に掛かるかの組み合わせを切り替えるものです。5つの設定は FREQ つまみと組みで意味が決まります。

公式ガイドは2版あり、初期状態・メーターの色・ラベル表記・MONITOR の説明・削除された項目の6箇所で違います。範囲と初期値の数値は変わっていません。

RATIO・ATTACK・RELEASE は Default と Reset の値が違います。リセットは推奨の出発点には戻らないので、§3.1 の初期設定を手で戻すほうが確実です。

カホ

3機能入りという看板より、サイドチェーンの周波数を11通りに選べることのほうが、この製品の本体です。そこを見ると、ドラムに強いと言われてきた理由も筋が通ります。

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