Eddie Kramer Signature総覧|5本の設計思想を解剖

この記事では、Waves Eddie Kramer Signature Series(マニュアル表記は Eddie Kramer Collection)の全体像を、Waves が配布しているプラグイン別の現行英語ユーザーガイド5冊に記載された数値と Eddie Kramer 本人のコメントだけを根拠に解剖します。構成は Vocal Channel・Drum Channel・Bass Channel・Guitar Channel・Effects Channel の5本。マニュアルも公式ページも、このシリーズを「5つのプラグイン」と数えています。

シリーズ名の「Channel」が示すとおり、各プラグインは単機能の📖エフェクトではなく、📖EQ・コンプレッション・エフェクトセンドをひとまとめにした処理チェーンです。そして本人のコメントには、ツェッペリンの空気感、ストーンズのドライな質感、ヘビーな📖コンプでつぶしたジミ・ヘンドリックス・タイプ、と参照すべき音像が固有名詞で書かれています。どのタイプがどの数値で始まるのかを、ガイドの記載どおりに追っていきます。

本文の仕様と数値は、Waves が配布しているプラグイン別の現行英語ユーザーガイド5冊に記載がある範囲に限定しました。このうち Vocal・Drum・Bass・Guitar の4本には 2025年5月29日付の v16 update 版があり、そこで ANALOG NOISE という項目が新設されています(後述)。2009年の日本語コレクション冊子(全42ページ)も参照しましたが、Vocal の DLY と Bass 2 の Sensitivity の2か所で英語版と数値が食い違うため、英語版を正としました。編集部はこの製品を所有していないため、音の印象や使用感は書きません。ガイドに記載が無い項目は、章ごと落としてあります。

カホ

「Channel」という名前は誇張ではありません。5本とも、卓の📖チャンネルストリップのように複数の処理を一列に束ねた設計です。

目次

この記事でわかること

  • 5本それぞれの役割・タイプ構成と、現行ガイドに記載された全コントロールの範囲・初期値
  • 2025年の v16 update 版で新設された ANALOG NOISE(初期値 off・ツールバー右上のメニューから操作)
  • Effects Channel の H-Slap/Z-Slap が何のエミュレーションか(テープ速度とEMTプレートの組み合わせ)
  • 「Type を変更すると全コントローラーが初期値にリセットされる」という全章共通の注意書きの意味
  • 同じ Eddie Kramer の名を冠した Kramer HLS/Kramer Master Tape/Kramer PIE との立ち位置の違い

Eddie Kramer Signature Seriesとは|何を解決する製品か

Waves Signature Series について、ガイドは「他に類を見ない『ひとつの用途に特化した』オーディオプロセッサー」であり、世界のトッププロデューサー、エンジニア、ミキシングエンジニアとの📖コラボレーションによるラインナップだと説明しています。制作フローを中断することなく、求めるサウンドに素早くたどり着くための道具という位置づけです。Eddie Kramer Collection の内訳は次の5本です。

Eddie Kramer という人物について、Waves Japan の公式バンドルページは「ビートルズ、レッド・ツェッペリン、ローリング・ストーンズ等を手がけてきた伝説に残るエンジニア。特に全ての作品を共に手がけたジミ・ヘンドリックスとの作品はそれまでの📖レコーディングの歴史を変えたとも言われる」と紹介しています(2026年8月時点)。※引用中の「全ての作品」について一点だけ注記します。Kramer が関わったのは Hendrix 生前に発表された4枚のアルバムで、最初期のシングル「Hey Joe」など、それ以前の録音は別のエンジニアが手がけています。引用は公式ページの表記どおりに載せたうえで、範囲だけ添えておきます。本稿ではこの公式ページの記述以外の経歴には踏み込みません。

コンポーネントは5本とも各2種類です。Vocal・Guitar・Effects の3本は📖モノ入力→📖ステレオ出力(m>s)とステレオ(stereo)、Drum と Bass はモノ(mono)とステレオ(stereo)の組み合わせになっています。

設計思想:なぜこの効き方をするのか

タイプは「別の設定」ではなく「別のチェーン」。切り替えると全部リセットされる

このシリーズのガイドには、5本すべての Type の項に同じ注意書きがあります。「Type を変更すると、すべてのコントローラーが初期値にリセットされます」。Vocals 1 で作り込んだ設定を保持したまま Vocals 2 に切り替える、という操作はできません。タイプごとにコントロールの構成自体が変わる(後述のとおり、範囲が変わるものや、一覧から消えるものがある)ことと合わせると、タイプは同じ機械の📖プリセットではなく、それぞれ別のチェーンとして扱われていると読めます。

もうひとつ共通するのが Sensitivity です。LED は緑(良い)・黄(最適)・赤(非常に大きい)の3色で、曲中でもっともピークの高い部分を使って調整するのが公式手順です。ガイドは、黄色でなくても最適な結果につながる場合があると明記したうえで「ご自身の耳を信じてください」と結んでいます。さらにガイドには、Sensitivity を合わせたあとに他のコントロールを動かすと LED が赤に変わることがよくあり、その場合はどちらかを再調整する必要がある、という運用上の注記もあります。

Vocal Channel:2つのフレーバーは初期値のコンプ量で読める

本人は Vocal Channel の設計意図を「ボーカルを📖ミックス内で配置し、📖トラックにブレンドするという処理を、ボーカルが浮いてしまうことなくできるように」と説明し、2つのタイプを「Vocal 1: クラシックロック・ボーカル用にデザインされ、大きな📖ダイナミックレンジと強烈さを有している」「Vocals 2: 柔らかいボーカル・パフォーマンス用で、よりスムーズで安定したレベルを保っている」と使い分けています。

初期値がこの説明を裏付けます。Compress の初期値は Vocals 1 が 54、Vocals 2 が 30。強いパフォーマンスを強く均すのが 1、柔らかいパフォーマンスを軽く整えるのが 2 です。また Vocals 1 は Bass +11.2・Treble +8.3 と低域も高域も最初から持ち上げる設定なのに対し、Vocals 2 の Bass は 0。エフェクト面でも差があり、Vocals 1 の項には FX・DLY・DLY Mix・Verb Mix が並びますが、Vocals 2 の項に載っているのは FX と Verb Mix だけで、DLY は出てきません。なお Treble はタイプで範囲ごと変わり、Vocals 1 は ±50、Vocals 2 は 0〜100 です。

Drum Channel:タイプごとにコントロールの顔ぶれ自体が変わる

Drum Channel のタイプは 📖BD・SNR・📖HH・Toms・📖OH・Room の6種類。本人いわく「ツェッペリンのような空気感たっぷりの巨大なサウンドや、ストーンズのもっとドライでかちっとしたサウンド、もしくはヘビーなコンプでつぶしたジミ・ヘンドリックス・タイプのサウンドであっても、このプラグインなら素早く、簡単に到達できる」。個々のモードから好みの要素を使って「自分自身のハイブリッドドラムキットを組み立て」られる、という設計です。

面白いのは、ガイドの各タイプの項に載っているコントロールの顔ぶれがタイプごとに違うことです。現行の Drum Channel ガイド(p.8〜p.18)で数えると、Gate(初期値 -12.7)が載っているのは BD の項(p.8)の1か所。HH の項(p.12〜13)は Sensitivity・Sensitivity LED・Treble・Bass・Output の5項目、📖OH の項(p.16)は Sensitivity・Sensitivity LED・Treble・Output の4項目で、Compress と FX がこの2タイプの一覧には現れません。Compress の初期値も、BD 40.5・SNR 44.5・Toms 85.3・Room 21.5 と大きく振られていて、📖タムだけ突出して深い圧縮から始まります。EQ は Treble・Bass とも 0〜5 の1刻みという粗い段階式で、連続可変ではありません。

カホ

Toms の Compress 初期値だけ 85.3。他のタイプが 20〜45 台に収まるなかで、タムだけ突出して深い側から始める、という判断が最初から数字に入っています。

Bass Channel:低中域を持ち上げて「小さなスピーカーでも聞こえる」ベースを作る

本人の説明は明快です。「威圧的ではないが抜けの良い、プレゼンスたっぷりのファットベースを作り上げるということ。主に低-中域を強調している。だからこそラジオミックスで本当にはじけて聞こえる。それにこの方法なら、音量の低い小さなスピーカーでもベースは常にクリアに聞こえる」。タイプは2つで、「Bass1: コンプレッションは少なめで、ベースが『呼吸する』余地のある、ダイナミクスを保ったサウンド」「Bass2: コンプレッションを増やした、より📖アグレッシブなサウンド」。初期値も Compress が Bass1 の 30 に対し Bass2 は 40、Bass ノブは 52 対 69 と、2 のほうが濃い設定から始まります。入力側は逆で、Sensitivity の初期値は Bass1 が 0、Bass2 は -23.1。突っ込む量を抑えたうえで濃くかける、という組み立てです。

Guitar Channel:リードは「EQ・コンプ・ディレイ・リバーブ・フランジャー」の5要素

Guitar Channel のタイプは 📖Rhythm 1・Rhythm 2・🎤Lead の3種類。本人はリードギターについて「適切な量の EQ、コンプレッション、📖ディレイ、📖リバーブ、わずかな📖フランジャー、この5種類を組み合わせて使うことで、リードギターを生き生きとしたものにできる」と述べており、実際に Lead タイプにだけ Depth(フランジャーの深さ、初期値 16.2)と Flange Mix(初期値 59.3)が載っています。リズムギターは「EQ をし過ぎず、でも可能な限り『眼前に迫ってくる』サウンドになるよう努めている」とのことで、Rhythm 1 の EQ は Treble・Mid とも 1〜5 の段階式、Rhythm 2 と Lead は 0〜100 の連続可変と、同じ楽器の中でも粒度が使い分けられています。

Effects Channel:テープ速度2種+EMTプレートという「基礎要素」の再現

Effects Channel は、ガイドの内訳リストで5本のうちこれだけが楽器名ではなく「エフェクト」に割り当てられている1本で、空間系エフェクトそのものを担当します。本人の説明では「私が音を描いていくときにいつも使う、いくつかの基礎となる要素を再現することから始めた」もので、2つのタイプの中身はこう明かされています。「H-Slap: 15 inch/sec のテープをエミュレートした短いディレイと、ミディアム・📖リリース設定の EMT 📖プレートリバーブを組み合わせた」「Z-Slap: より長いディレイ(7 ½ inch/sec)と📖フィードバックを少し、それからより長いリリース設定の EMT プレートが一緒になっている」。本人の説明では速度の遅い 7 ½ inch/sec 側が「より長いディレイ」とされており、初期値もこれと対応して DLY は H-Slap が 138、Z-Slap が 272 です。

運用面では Direct In/Out スイッチが重要です。ガイドは「プラグインを📖インサートとして使用する場合は Direct In、📖センドリターンとして使用する場合は 📖Direct Out を選ぶ」と、インサートでも📖センドでも使えることを明記しています。ドライ音を出すか出さないかをこのスイッチで切り替える設計です。

ANALOG NOISE:モデリングの一部としてノイズが乗っている(v16 で明文化)

2025年5月29日付の v16 update 版ユーザーガイドで、Vocal・Drum・Bass・Guitar の4本に ANALOG NOISE という項目が新設されました(Vocal Channel p.14/Drum Channel p.18/Bass Channel p.11/Guitar Channel p.17)。文面は4本とも同型です——「Eddie Kramer ○○ Channel はアナログの信号経路の特定の要素をモデリングしている。そのモデリングの一部には少量のノイズの付加が含まれる。アナログノイズ無しで Kramer ○○ の処理を使えば、非常にクリーンな、ただし少し違う音になる。プラグイン右上のツールバー・メニューを開いて、アナログノイズのオン/オフを切り替える。初期値:off」。

読みどころは2つあります。ひとつは初期値が off であること。挿した時点ではノイズは乗っておらず、乗せたい人が自分でオンにする、という置き方です。もうひとつは、ガイドが「オフにすると音が少し違う」と認めていること。ノイズは付け足しの飾りではなく、モデリングの一部として設計に組み込まれている、という位置づけになります。ノイズを避けたい場面(無音に近いパッセージ、📖ソロ楽器、ナレーション)と、モデリングどおりの音が欲しい場面とで、意識して切り替える対象です。

操作は各チャンネルのつまみではなく、プラグイン右上のツールバー・メニューから行います。画面上のノブを探しても見つかりません。なお Effects Channel については、本稿の執筆時点で v16 update 版のガイドを取得できませんでした(Waves の配布サーバーが 403 を返します)。同じ項目があるともないとも書けないので、以下の Effects Channel の表にはこの行を置いていません。

全パラメーター

5本に共通する要素として、METER は -24dBFS〜0dBFS を表示し、METER Switch で入力/出力を切り替えます(初期値 Output)。FX は「エフェクトに送る信号量」で、ガイドは 📖DAW のセンドに似た役割と説明しています。以下、現行ガイド記載の範囲と初期値です。刻み幅は断りがない限り 0.1 ステップ、「—」はそのタイプの項に記載が無いことを示します。

Vocal Channel(Vocals 1/Vocals 2)

コントロール範囲初期値(V1/V2)
Sensitivity±50-8.3/0
Bass±5011.2/0
TrebleV1: ±50/V2: 0〜1008.3/44.5
Compress0〜10054/30
Output±500/0
FX0〜10070/62
DLY100〜1000(1ステップ)138/—
DLY Mix0〜10080/—
Verb Mix0〜10080/38.7
ANALOG NOISE(v16 update 版で新設。ツールバー右上のメニューから)On/Offoff

Drum Channel(6タイプ)

タイプCompressGateFXTrebleBass
BD40.5-12.70(Min)32
SNR44.5—3021
HH———13
Toms85.3—5512
📖OH———2—
Room21.5——11

範囲は共通で、Sensitivity ±50(初期値は全タイプ 0)、Compress 0〜100、Gate ±50、FX 0〜100、Treble/Bass 0〜5(1刻み)、Output ±50(初期値は全タイプ 0)です。表の「—」は、そのタイプの項のコントロール一覧に載っていないことを意味します(実装上の有無をガイドは説明していません)。加えて、タイプに依存しない項目として ANALOG NOISE(On/Off・初期値 off・ツールバー右上のメニューから操作)が v16 update 版のガイド p.18 に載っています。

Bass Channel(Bass1/Bass2)

コントロール範囲初期値(Bass1/Bass2)
Sensitivity±500/-23.1
Bass0〜10052/69
Treble0〜100Max/76
Compress0〜10030/40
Output±500/19.7
ANALOG NOISE(v16 update 版で新設。ツールバー右上のメニューから)On/Offoff

Bass2 の Sensitivity 初期値 -23.1 は見落としやすいところです。Bass2 は入力を約23下げた状態から始まり、そのぶん Compress 40・Bass 69 で作り込む——つまりプラグインに突っ込む量そのものを抑えたうえで濃くかける設計になっています。Bass1(Sensitivity 0・Compress 30)とは、同じ入力レベルでも当たり方が違うということです。切り替えたら Sensitivity LED をもう一度見てください、というガイドの手順は、この差があるぶん実務的な意味を持ちます。

なお、2009年の日本語コレクション冊子(p.27)は Bass2 の Sensitivity 初期値を「0」と書いています。同梱されている英語版ガイドは2011年の時点ですでに -23.1 で、現行の v16 update 版も -23.1。日本語冊子側の脱落です。

Guitar Channel(Rhythm 1/Rhythm 2/Lead)

コントロール範囲初期値(R1/R2/Lead)
Sensitivity±500/0/-4.2
Compress0〜10050/32.7/50
TrebleR1: 1〜5(1刻み)/R2・Lead: 0〜1002/33.3/38.9
MidR1: 1〜5(1刻み)/R2・Lead: 0〜1002/22.2/22.2
Output±500/0/0
FX0〜10050/50/60.5
Verb Mix0〜10080/80/Max(100)
DLY50〜500(1ステップ)138/138/138
DLY Mix0〜10080/80/80
Depth(Leadのみ掲載。フランジャーの深さ)0〜100—/—/16.2
Flange Mix(Leadのみ掲載)0〜100—/—/59.3
ANALOG NOISE(v16 update 版で新設。ツールバー右上のメニューから)On/Offoff(3タイプ共通)

Effects Channel(Z-Slap/H-Slap)

コントロール範囲初期値(Z-Slap/H-Slap)
Direct In/OutIn/OutIn(インサート時は In、センドリターン時は Out)
Sensitivity0〜10050/50
Output±500/0
DLY(スラップディレイのタイム)50〜500(1ステップ)272/138
DLY Mix0〜10058/72
Size(リバーブのサイズと📖リバーブタイム)0〜10041/41
Brightness(リバーブの高域特性)±5026.7/26.7
Verb Mix0〜10080/80

Effects Channel の表にだけ ANALOG NOISE の行がないのは、この1本の v16 update 版ガイドを取得できなかったためです(配布サーバーが 403 を返します)。本稿が確認できた Effects Channel のガイドは2021年5月12日版で、そこには ANALOG NOISE の項がありません。Effects Channel に同じ項目があるかどうかは、この記事では判定していません。

用途別・設定の始点

すべてガイドのクイックスタートと本人コメントに根拠がある範囲の始点です。共通手順は「インサート→タイプを選ぶ→Sensitivity を調整→各コントロールで整える→最後にもう一度 Sensitivity LED を確認する」の順で、最後の再確認まで手順に含まれているのがこのシリーズの特徴です。

素材・状況始点(根拠となる記述)
ダイナミックレンジの大きいロックボーカルVocal Channel の Vocals 1(本人コメント)
柔らかく安定したボーカルVocal Channel の Vocals 2(本人コメント)
ドラムの各パートDrum Channel。パートに対応する6タイプ(BD〜Room)から選ぶ(クイックスタート)
好みの要素だけ集めたドラムサウンドタイプごとの処理を組み合わせて「ハイブリッドドラムキット」を組む(本人コメント)
ダイナミクスを残したいベースBass Channel の Bass1(コンプ少なめ——本人コメント)
アグレッシブに押し出したいベースBass Channel の Bass2(コンプ増量——本人コメント)
リードギターGuitar Channel の Lead(EQ・コンプ・ディレイ・リバーブ・フランジャーの5要素——本人コメント)
リズムギターGuitar Channel の Rhythm 1 または 2(クイックスタート)
ボーカルからギターまで幅広くスラップ系の空間を足すEffects Channel。短めなら H-Slap、長め+フィードバックなら Z-Slap(本人コメント)
センドで空間系だけ返したいEffects Channel を Direct Out で使う(ガイド)

似た製品との使い分け

Waves には Eddie Kramer の名を冠した製品がもう一系統あります。Kramer HLS Channel・Kramer Master Tape・Kramer PIE Compressor です。こちらは彼にゆかりのある特定のハードウェア(📖コンソール、テープマシン、コンプレッサー)を再現するモデリング系で、実機由来のパラメーターが露出しています。対して本シリーズは、機材ではなく「作業」を単位に切ったチェーンで、露出するのは Sensitivity と少数のノブだけ。実機の挙動が欲しいのか、本人の手順が欲しいのかが選択の軸になります。

特に Effects Channel と Kramer Master Tape は話題が重なります。Effects Channel の2タイプはテープ速度 15 ips/7.5 ips のスラップディレイと EMT プレートの組み合わせを固定のチェーンとして提供するもの、Kramer Master Tape はテープマシンそのものの再現です。スラップの質感を数ノブで済ませたいか、テープ側のパラメーターまで触りたいかで分かれます。兄弟シリーズとの比較では、ドラムの切り分けが Maserati DRM は7タイプ(📖スネア表裏を分離)、本シリーズの Drum Channel は6タイプ、JJP はドラムと📖シンバル類を2本のプラグインに分割、と三者三様です。

カホ

モデリング系は「機材の再現」、シグネチャー系は「手順の再現」です。同じ人名でも売っているものが違います。

よくある質問

タイプを切り替えたら設定が消えました。不具合ですか?

仕様です。現行ガイドは5本とも Type の項に「Changing Types will reset all controls to their initial values.(タイプを変更すると、すべてのコントロールが初期値にリセットされます)」と注記しています。なお、2つの設定を保持して切り替え比較する Setup A/B や Copy A->B といったツールバーの機能は、現行のプラグイン別ガイドには載っていません——現行版はツールバーの説明を3行に圧縮し、別冊の WaveSystem Guide(プラグイン右上のアイコンから開く)に案内する形に変わっています。2009年の日本語コレクション冊子には、この章がまるごと入っていました。

Effects Channel はセンドで使えますか?

使えます。Direct In/Out スイッチがその切り替えで、インサートなら Direct In、センドリターンなら Direct Out を選ぶよう明記されています。Direct Out ではダイレクト信号を出力しない設定になります。

Drum Channel の HH に Compress が見当たりません

現行ガイド(Drum Channel・p.12〜13)の HH の項に載っているのは Sensitivity・Sensitivity LED・Treble・Bass・Output で、Compress と FX は一覧に出てきません(OH の項は Sensitivity と Sensitivity LED のほかは Treble と Output のみ)。タイプごとにコントロールの構成が違うのはこのシリーズの設計で、理由の説明はガイドにありません。

DLY の単位は何ですか?

現行ガイドの表記は「100 -1000(1ステップ単位)」(Vocal・p.10)や「50〜500(1ステップ単位)」(Guitar・Effects)で、単位の記載がありません。本人コメントのテープ速度の説明(15 ips=短い、7.5 ips=長い)と初期値の対応(138 対 272)から時間系の値であることは読み取れますが、ms とはガイドに書かれていないため、本稿では断定していません。

なお Vocal の下限は、2009年の日本語コレクション冊子(p.13)だけが「10-1000」と書いています。同梱の英語版ガイドは2011年の時点ですでに「100 -1000」で、現行の v16 update 版も同じ。日本語冊子側の 10 と 100 の取り違えです。

まとめ

  • Eddie Kramer Signature Series は Vocal・Drum・Bass・Guitar・Effects の5本。楽器4本+空間系1本で、いずれも複数の処理を束ねた「Channel」として設計されている。
  • タイプはプリセットではなく別チェーン。切り替えると全コントロールが初期値に戻り、タイプによってコントロールの顔ぶれや範囲そのものが変わる。
  • Effects Channel の正体は 15 ips/7.5 ips のテープスラップ+EMTプレートという「本人の基礎要素」。インサートでもセンドでも使えるよう Direct In/Out が用意されている。
  • 2025年5月29日付の v16 update 版ガイドで、Vocal・Drum・Bass・Guitar の4本に ANALOG NOISE(On/Off・初期値 off)が明文化された。モデリングの一部としてノイズが乗っており、オフにすると「非常にクリーンな、ただし少し違う音」になる。操作はツールバー右上のメニューから。Effects Channel については v16 版を確認できていない。
カホ

参照点がツェッペリンとストーンズとヘンドリックスで、実装がテープ速度とEMTプレート。名前ではなく中身で選べる程度には、手の内が公開されています。

Waves Japan の公式ページでは、Eddie Kramer Signature Series の定価は59,400円です(2026年8月時点)。現在の価格と収録内容はWaves Japan の製品ページで確認してください。

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