いよいよ、中級コースに突入だよ!
ここまでよく頑張ったね、おめでとう。
こんにちは、DTM音楽研究家イボGです。
中級コースでは、音楽制作に欠かせないエフェクトによる編集テクニックを学んでいきます。
写真加工アプリがあるように、音楽制作でも、曲をカッコよく聞かせるためにエフェクターを駆使した積極的な音作りがされています。
その目的や使い方は様々で、学ぶことがとても多い試練の道になりますが、ここを乗り越えられるかが良いクリエイターになれるかのカギでもありますので、一緒に頑張っていきましょう!!
エフェクトは楽曲制作をするうえでとても大切な要素だよ。
ボクも書籍をたくさん買ったけど、すごく難しいんだ。
なるべく丁寧に解説するから頑張ろうね。
コンプレッサーとは
今日学習するのは、コンプレッサーというエフェクタです。
Compress(圧縮)のことかな?
正解だよ!
出力信号の大きな所を抑えるという動作をするよ。
略して「コンプ」と呼ぶこともあるよ。
コンプレッサーの役割
コンプを簡単に説明すると、一定レベル以上の信号をし圧縮処理(小さく)するエフェクタです。
使用目的は大きく分けて2つあり、①音量を一定に揃える場合と、②音圧を稼ぐ場合、③バキっとしたサウンドを手に入れる場合の3つがあります。
ベースやマイクなどで唐突に大きな信号が流れるのを抑えるための安全装置としても
①音量を揃える場合
例えば、ボーカルが1曲を歌う場合、Aメロは声量が小さくなりがちですが、得意とする音域で盛り上がるサビは声量が大きくなりがちです。そうした音量ムラをコンプで整えてあげて、楽器とのバランスを取ってあげることでリスナーは聞きやすくなります。
②音圧を稼ぐ場合
コンプレッサーはピーク音(過大音量)を抑える役割があるため、抑えた分だけ全体の音量を上げることができます。詳しい説明は「リミッター/マキシマイザー」の解説を行う記事で行いますので、今は何となくの理解で構いません。
③硬い音を手に入れたい場合
コンプレッサーを通した後の特徴的なサウンドが「パキッ」とした硬い音になることで、ドラムやスネアドラム、ピアノなどの鳴り始めの音量が強い(通称:アタッキーな音)楽器に対してコンプレッサーはとても相性が良いです。そのため、ギュッと圧縮されたようなコンプ独特の音色が好まれて、積極的に使われています。
コンプレッサーの使い方・操作方法
一般的なコンプレッサーには、以下のパラメーターがあり、操作子(ノブやスライダー)で調整したりメーターに表示されますので、是非それぞれの内容を覚えましょう。
- Threshold(スレッショルド):しきい値
- Ratio(レシオ):圧縮比
- Gain Reduction(ゲイン・リダクション):圧縮量
- Attack Time(アタックタイム):動作がオンまでの時間差
- Release Time(リリースタイム):動作がオフになるまでの時間差
- Knee(ニー):圧縮のかかり方をマイルドにする
Threshold(スレッショルド)
しきい値(圧縮を行うレベルの境界線)を調整します。早い話、入力信号がこのしきい値を超えた場合に圧縮を行い、しきい値以下となったら圧縮を解除します。そのため、Thresholdは一般的に「dB」単位で表現されています。
例えば、「しきい値=-10dB」の時に「-8dB」や「-6dB」の信号が入力された場合は圧縮を行い、「-12dB」や「-20dB」の信号が入力された場合はしきい値以下なので、圧縮はされません。
Ratio(レシオ)
レシオは圧縮比のことです。Thresholdを上回った分の音量をどれだけ圧縮するかを示しており、「4:1」のように比率で示されるものもあれば単に「4」としか表記されない製品もあります。「4:1」の場合は、スレッショルドを超過した分は4分の1に圧縮され、レシオが∞の場合はスレッショルドと同じレベルにまで圧縮されます。
ちょっと脱線
ちなみにこのスレッショルドが「∞」のコンプレッサーは別名「リミッター」と呼ばれ、スレッショルドよりも大きな信号の通過をいっさい認めないので、コンプレッサーよりも強い番人のようなイメージです。例えば、デジタル信号の世界では、0dBを最大音量としていますので、0dBを超えないようにマスタートラックにリミッターを挿すということを当たり前に行っています。
Gain Reduction(ゲイン・リダクション)
ゲイン・リダクションはどれだけ音を圧縮したかを表し、これも「dB」で表記されます。通常は3~6dB程度のゲイン・リダクションがひとつの目安となり、それ以上に音を圧縮すると、音が歪んでしまったり
Attack Time(アタック・タイム)
入力信号がスレッショルドを超えてから、コンプが実際に動作するまでの時を設定。アタックタイムを大きくすることで、音の立ち上がり部分は圧縮しなくなるためアタック感が損なわれず、アタックタイムを小さくすることで、すぐに圧縮が始まるので、音が奥に引っ込むような感じになります。このように、アタック・タイムを綿密に調整することで、奥行き感をコントロールできるので、実は侮れない重要なパラメーターとなりますので、覚えておいてください。
Release Time(リリース・タイム)
リリースタイムは信号がスレッショルドを下回った時に、どのぐらいの時間差でコンプの圧縮を止めるかを調節するパラメータです。
リリースタイムを長くすると同時にコンプによる圧縮時間が長くなりますが、あまり長いとコンプがかかりっぱなしになってしまいます。逆に、リリースタイムを短くするとコンプレッサーの稼働がすぐに止まるので、急激に入力音のレベルに戻り、シャキシャキと跳ねる感じになりますが、リリースタイムの設定が悪いとノリを崩したりやポンピングと呼ばれるしゃっくりのような聞こえ方になってしまうことがあります。
Knee(ニー)
膝という意味のニーですが、膝をはじめとする人間の体は丸みを帯びており、鋭い部分は基本的にありません。一方のコンプレッサーはThresholdを少しでも超えた瞬間に決められたレシオの比率で圧縮され、スレッショルド以上の音と未満の音で音が極端に違ってしまいます。Kneeが搭載されたコンプレッサーはこれを解消するためのもので、Threshold付近はRatioをマイルドにし、Thresholdを大きく超えた場合は、元々の設定を維持するように滑かにコンプをかけられるようにしています。
コンプレッサーの種類
ここでは、コンプレッサーの技術を応用した類似のエフェクトを紹介します。
リミッター
先ほど、スレッショルドレベルより音量が上回らないように制御するエフェクトの「リミッター」を紹介しましたが、コンプレッサーでも疑似的に再現することができます。
レシオを可能な限り大きくし10~20以上の値が得られれば、ほぼリミッターに近い機能を得ることができます。
また、アタックタイムは可能な限り最小にすれば、その分スレッショルドレベルからはみ出る信号が少なくなります。リリースタイムは音を聞きながら違和感の無い範囲に設定すれば大丈夫です。
マキシマイザー
マキシマイザーは、聴感上の音量を上げること(いわゆる「音圧を稼ぐ」こと)に特化したリミッターの一種です。基本的にはThresholdを下げるとその分メイクアップ・ゲインが反対に連動し、音量感が上がっていくという簡単な仕組みです。
基本的な発想は詰め放題の箱に詰められるだけ入れていくという方法なので、ある一定のレベルからは商品の形が潰れてしまうように、音に歪みが発生してしまいます。そのような場合は、スレッショルドを元に戻していくか、リリース・タイムが付いているタイプでは、遅めに設定することで歪み感を和らげていくこととができます。
少し前の音楽は「いかに音圧を稼いで視聴者に瞬間的なインパクトを与えるか」という視点に傾倒しておりマキシマイザーが席巻した「音圧戦争時代」と揶揄されることもありました。
しかし、逆に音楽的な魅力が損なわれてしまったり、前後の音や楽曲と音量差がありすぎて不快であるというクレームが生じたりと問題もあったので、最近は聴感上の音量感を表すラウドネス・メーターという概念が登場することで音圧戦争時代は終焉に差し掛かっています。
例えば、Youtubeなどのサイトでは動画や楽曲間で音量差が激的に異なり視聴者の気分を害さないよう、ラウドネス・ノーマライゼーションと呼ばれる聴感上の音量を一定に保つ技術を使用しています。
すなわち、音楽の魅力をかき捨て、音圧のみに情熱を注ぐ必要がなくなったのです。
ディエッサー
ディエッサーもコンプの仲間で、ボーカルの歯擦音(シビラント:sibilant)などの特定の周波数をを抑制する目的で使用されます。歯擦音はサ行の発音などで生じる子音の耳障りな音のことで、耳を痛めたり突発的なピークのせいで音量を上げられないといった副作用があるため、これを除去するエフェクトとして開発されたのがディエッサーでした。
ボーカルのレコーディング時にポップ・ガード(ポップ・フィルター)という網状のアイテムを使用して抑制する工夫をしていますが、ポップフィルターを重ねて使うなど、過度に対策をしすぎると今度はボーカルの声質に影響(声が曇る)を与えてしまうので、ディエッサーが活躍しています。
歯擦音は主に3kHz~7kHz辺りの高域部分にあたるので、ディエッサーはこのあたりの瞬間的な音を抑制するのに特化しており、専用プラグインを使うことが非常に有効的です。
また、ボーカル意外にも活用することが可能で、例えばウッド・ベースやアコースティックギターなどで弦をする音やアタック音が強すぎる時などにディエッサーを程よくかけておくと、耳障りな音だけ弱くすることが可能です。
また、人によってはマスタリングという楽曲を仕上げる最後の工程で活用する人もいるようで、ミキシング後の音がシャキシャキした音になりすぎている場合に有効となる場合があるようです。
マスタリング
楽曲をどんな再生環境でも良く聞こえるように調整する工程。一昔前はエンジニアと呼ばれる専門家が手掛けていたことから、専門的な知識やノウハウが必要となりますが、これについては、本講座のマスターコースで学習します。
サイドチェイン・コンプレッサー
2010年頃より主流になったコンプレッサーで、サイド・チェインという別の入力信号をトリガー(きっかけ)として、コンプレッサーの稼働を制御するという画期的なエフェクトでした。
このエフェクトで何がすごいかとと言うと、例えば周波数帯域的によくぶつかって喧嘩しがちなベースとキックドラムで音量の譲り合いができるということです。
方法としては、ベースにサイド・チェインコンプを挿入し、サイド・チェインの入力をキックドラムをします。こうすることで、キックドラムが鳴ってるときだけベースの音量をコンプレッサーで弱めるということが可能になり、低音域で譲り合い体質が生まれるようになります。
2010年代後半には、更に画期的なダイナミックEQ(動的なイコライザー)という方法が生まれたため、そちらにも移行しつつありますが、未だに使い続けられています。
ダイナミックEQ
今までは、パラメーターを固定した状態のイコライザー(静的なEQ)を使用していましたが、入力信号に応じてEQパラメーターが自動的に変わる(動的なEQ)ということで、ダイナミックEQと呼ばれています。詳細はEQの学習コースで解説しますが、各帯域ごとにコンプレッサーのような機能を持たせることができます。
マルチバンドコンプレッサー
マルチバンドコンプレッサー(Multiband Compressor)は1つの入力信号を低域・中域・高域といった幾つかの周波数帯域に分けてそれぞれ独立した調整が可能なコンプレッサーです。分割されるバンド数も製品によって、3~5とマチマチです。
無難な使い方は一旦全ての帯域を同一パラメーターにしつつ、適切なレシオ、アタック・タイム、リリース・タイムなどを探っていき、その後各帯域ごとに固有の調整をかけていくという使い方が初歩的な使い方になります。
例えば、低域を締まった感じにしたい場合は、低域コンプのリリース・タイムを早めにしてみてください。また、高域をクリアにしたい場合は高域のアタック・タイムを遅くすることでアタック感がしっかり出てくると思います。
DTM中級コース①のまとめ
今回はとても内容が多かったけど、おつかれさまでした。
しんどい…
コンプレッサーは馴染みづらいけど、反面とても重要なエフェクトでもあり、一番最初に紹介させてもらいました。
DTM上級コースでも出てきますので、是非参考にしてください。
- コンプレッサーは「音量を揃える」「音圧を上げる」「サウンドを作る」目的で使われる
- 「Threshold」、「Ratio」、「Knee」、「Attack Time」、「Release Time」などのパラメーターを駆使する
- レシオが∞のリミッターや特定周波数に絞ったディエッサーなど類似製品がたくさんある
以上で今回のセミナーを終了します。おつかれさまでした。
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