この記事では、Waves Tony Maserati Signature Series(マニュアル表記は The Tony Maserati Collection)の全体像を、公式日本語マニュアル(全52ページ)に記載された数値と Tony Maserati 本人のコメントだけを根拠に解剖します。ボーカル用 VX1、ドラム用 DRM、ベース用 B72、エレクトリックギター用 GTi、アコースティックギター用 ACG、キーボード/ストリングス用 HMX。マニュアルはこのコレクションを「6つのプラグインで構成」と数えています。
このシリーズの中身は、実はパラメーターの範囲ではなく初期値に書かれています。たとえばドラム用 DRM の7タイプは、どれも同じ5つのコントロール(Sensitivity・Thump・Snap・Treble・Output)を持ちますが、初期値がタイプごとに全部違う。ハイハット用の HH だけ Thump の初期値が -9 で、最初から低域を引く設定になっています。この「最初に置かれた手の位置」を数値で追うのが本稿の主題です。
本文の仕様と数値は、Waves が配布している日本語マニュアル「The Tony Maserati Collection Native ソフトウェアユーザーガイド」に記載がある範囲に限定しました。編集部はこの製品を所有していないため、音の印象や使用感は書きません。なお、現行の公式バンドルページ(2026年8月時点)はこのシリーズを「7プラグイン」と数えており、マニュアルに載っていない Maserati GRP(副題は Group Processor=グループ/バス用のマルチFX)が加わっています。本稿はマニュアルが扱う6本を対象とします。
カホマニュアルの初期値は飾りではありません。ミキシングエンジニアが最初に置く手の位置が、数字で残されています。
この記事でわかること
- 6本それぞれの役割と、マニュアルに記載された全コントロールの範囲・初期値
- DRM の7タイプで初期値がどう変えられているか(初期値そのものがレシピである、という読み方)
- Sensitivity と3色 LED によるレベル設計の考え方と、マニュアル自身がそれを絶対視していないこと
- マニュアル(6本)と現行公式ページ(7本)の数の食い違い、およびマニュアル内の誤植の所在
Tony Maserati Signature Seriesとは|何を解決する製品か
Waves Signature Series について、マニュアルは「他に類を見ない『ひとつの用途に特化した』オーディオプロセッサー」であり、世界のトッププロデューサー、エンジニア、ミキシングエンジニアとのコラボレーションによるラインナップだと説明しています。それぞれのアーティストが持つ独自のサウンドと制作スタイルを細部まで捉えて再現する、制作フローを中断せずに求めるサウンドへ素早くたどり着くための道具、という位置づけです。
Maserati Collection の内訳は次の6本です(マニュアル7ページ目の列挙のまま)。
- ボーカル:Maserati VX1 Vocal Enhancer
- ドラム:Maserati DRM Drum Slammer
- ベース:Maserati B72 Bass Phattener
- エレクトリックギター:Maserati GTi Guitar Toner
- アコースティックギター:Maserati ACG Acoustic Guitar Designer
- キーボード/ストリングス:Maserati HMX Harmonics Generator
Tony Maserati という人物について、Waves Japan の公式バンドルページは「ニューヨーク発のヒップホップ/R&Bの雛形を作ったとも言われる最重要エンジニア/プロデューサー。ビヨンセ、アリシア・キーズ、メアリー・J・ブライジ、アッシャーなどで多数のグラミー受賞、ノミネート作品に携わる」と紹介しています(2026年8月時点)。本稿ではこの公式ページの記述以外の経歴には踏み込みません。
コンポーネント(モノ/ステレオ等の構成違い)は、VX1・DRM・GTi・ACG・HMX が各2種類、B72 のみ3種類です。ここでマニュアルの誤植をひとつ指摘しておくと、10ページ目のコンポーネント一覧では B72 の項だけ、列挙されている3つのコンポーネント名がすべて「Maserati VX1」と表記されています。見出しは「Waves Maserati B72:3 種類のコンポーネント」なので B72 に3種類あること自体は読み取れますが、名前の行はコピーの誤りと考えられます。B72 の章のクイック・スタートには「『SYNTH』設定で完全なステレオ効果を得るには、モノ/ステレオ (m>s) コンポーネントのご使用をお勧めします」とあり、B72 に m>s コンポーネントが存在することはこちらからも確認できます。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
入口はSensitivity。ただしマニュアル自身がLEDを絶対視していない
シリーズ共通の作法として、マニュアルが第2章でまず説明するのが Sensitivity コントローラーと Sensitivity LED です。LED は信号レベルに応じて緑(良い)・黄(最適)・赤(非常に大きい)の3色に変わり、再生中に消灯する場合は入力が低すぎる可能性がある、点灯するまで Sensitivity を時計回りに動かす、と説明されています。プラグインを起動したら、まず曲中でもっともピークの高い部分を探して Sensitivity で入力を調整する——これが公式の手順です。
興味深いのは、マニュアルがこの LED を自分で相対化していることです。黄色が表示されなくても最適な結果につながる場合がある、素材によっては緑がクライアントのニーズに適うこともあれば、赤こそが適切な処理かもしれない、と明記したうえで「ご自身の耳を信じてください」と結んでいます。マニュアルのコントロール一覧にスレッショルドやレシオといった項目が出てこないシリーズなので、入力レベルの管理がそのまま処理量の管理になりますが、その管理の基準すら最終的には耳に委ねる、という書き方です。



LEDを黄色にすることが目的化しがちですが、マニュアル自身が「耳を信じてください」と書いています。計器は入口であって、合否判定ではありません。
DRM:7タイプの初期値がそのままドラム処理のレシピになっている
DRM のタイプは BD・SNR Top・SNR Bottom・HH・Toms・OH・Room の7種類。スネアを表(Top)と裏(Bottom)で分け、オーバーヘッドとルームも別タイプとして扱います。どのタイプもコントロールは Sensitivity(±18)・Thump(低域、±12)・Snap(トランジェント、0〜100)・Treble(高域、±12)・Output(±18)の5つで共通ですが、初期値の組がタイプごとに違います。マニュアル22〜28ページの記載をそのまま並べます。
| タイプ | Sensitivity | Thump | Snap | Treble | Output |
|---|---|---|---|---|---|
| BD | -4.1 | 0 | 100 | 0 | +2 |
| SNR Top | 0 | 6 | 66.7 | 6 | -0.7 |
| SNR Bottom | 0 | 6 | 53.3 | 6.6 | 0 |
| HH | 5.6 | -9 | 100 | 6 | 0 |
| Toms | -4.1 | 0 | 100 | 0 | +2 |
| OH | 1.6 | 3 | 33.3 | 6 | 0 |
| Room | -4.1 | 0 | 100 | 0 | +2 |
この表は読み物として面白い構造をしています。HH だけ Thump が -9 で、ハイハットからは低域を最初から引く。スネアは表も裏も Thump +6・Treble +6 前後で持ち上げてから、Snap(トランジェントの明瞭さ)を表 66.7・裏 53.3 と控えめに設定する。一方 BD・Toms・Room は Snap が最大の 100 で、Thump と Treble は 0 のまま。OH だけ Snap が 33.3 と大きく抑えられています。本人は DRM について「他の楽器やボーカルなどで込み入ったミックスでも、ドラム・サウンドに刺激的でパーカッシブなトランジェントが得られるよう設計」し、「打ち込み・ライブ演奏どちらのドラムでも、ミックスを始める上で素晴らしい開始点となる」と述べています。初期値の表は、その「開始点」の中身です。
VX1:3つのContourは「別の部屋」を選ぶ操作
ボーカル用 VX1 のタイプは Contour 1〜3 の3種類です。本人の説明では、Contour 1 は「スタジオやライブハウスなどに近いルーム音」、Contour 2 は「プリ・ディレイの反射があるより大きな空間で、スローバラードにもっとも適して」おり、Contour 3 は「非常に小さなルーム感とそれに適した短いプリディレイを持ち、速いテンポの曲に向いています」。つまり Contour の切り替えは音色プリセットの変更ではなく、ボーカルを置く部屋の選択として説明されています。
数値もこの説明と整合しています。ディレイタイム DLY(範囲100〜1000)の初期値は、Contour 1 が 550、Contour 2 が最大の 1000、Contour 3 が 266.7。大きな部屋ほど長く、小さな部屋ほど短い。さらに、本稿が参照した版のコントロール一覧では、Contour 1 と 2 に載っている COMPRESS(コンプレッション量、初期値はそれぞれ 31.2 と 41.7)が Contour 3 の一覧には出てこず、代わりに AIR(サウンドに「空気感」を加える、範囲1〜6・初期値3)が載っています。速いテンポの曲用のタイプだけ、圧縮ではなく空気感のコントロールを前面に出す構成です。
B72:DIとSYNTHは「明らかに異なる2つの設定」
ベース用 B72 のタイプは DI と Synth の2種類。本人は「明らかに異なる2つの設定」と言い切っており、DI はエレクトリック/アコースティックベースで「サウンドの丸みを強調しつつ、曲を通じてライブ感をキープ」、SYNTH は「分厚く、ステレオ感があり、倍音のフレーバーに富んで」いて「在りし日の Prophet のようにスピーカーを満たしてくれる」と説明しています。数値で見ると、DI は Bass 0・Treble +1 とほぼフラットな初期値から始まるのに対し、SYNTH は Bass +6.5・Treble +10 と最初から大きく持ち上げ、さらに FX 系(FX・Tone・FX Out)が加わります。Tone は「buzz」エフェクトのトーンを操作するコントロールです。
GTi・ACG・HMX:タイプ名の後ろに具体的な音像がある
エレクトリックギター用 GTi のタイプは Clean・Clean Chorus・Heavy・Thick Rhythm・Soft Flange の5種類。本人のコメントには参照した音像が具体的に挙がっています。CLEAN は「目の前に迫るようなエリオット・スミスのサウンド」、CLEAN CHORUS は「The Police のアンディ・サマーズがよく使う、広がりのあるコーラス感」、HEAVY は「クランチなギターがどんな分厚い編成のミックスも突き抜けるような、激しい歪みサウンド」、THICK RHYTHM は「大胆なドライブから繊細なサウンドまで」で「ウーリッツァーやホーンに使っても素晴らしい効果」、SOFT FLANGE は「レガートノートまたはエレクトリックギターのサステインに、わずかに揺らぎのある素敵なフィルター効果」。
アコースティックギター用 ACG は ACG 1 と ACG 2 の2タイプで、ACG 1 は「レベルをマキシマイズし、トップとボトムを自在に形作る」、ACG 2 は「コンプレッションを高めに使うことで、ライブパフォーマンスなどで埋もれてしまいがちな繊細な表情も十分に引き出す」設定。初期値でも Punch が ACG 1 の 1 に対して ACG 2 は 4 です。HMX は Modal と Bounce の2タイプで、クイック・スタートは「高次倍音(ハーモニクス)を強調したい場合は Modal」「スペーシーなサウンド、ピンポンディレイ・エフェクトが欲しい場合は Bounce」と使い分けを指定しています。Bounce にはセッションテンポへ自動同期する SYNC(Auto/Man、初期値 Automatic)と、Manual 時に 60〜180 BPM で指定する TEMPO があります。



タイプ名の後ろに、エリオット・スミスやアンディ・サマーズという固有名詞が置かれているのがこのシリーズの正体です。抽象的な「音作り」ではなく、特定の音像への近道として設計されています。
全パラメーター
6本に共通する要素として、METER は -24dBFS〜0dBFS を表示し、METER Switch で入力/出力の表示を切り替えます。FX はエフェクトに送る信号量のコントロールで、マニュアルは「DAW のセンドと似たような役割」と説明しています。以下、プラグインごとにマニュアル記載の範囲と初期値を示します。初期値がタイプごとに異なる場合は併記します。刻み幅は断りがない限り 0.1 ステップです。
VX1 Vocal Enhancer(Contour 1/2/3)
| コントロール | 範囲 | 初期値(C1/C2/C3) |
|---|---|---|
| Sensitivity | ±50 | -10.4/-12.5/-10 |
| Bass | ±50 | 0/0/0 |
| Compress(C1・C2のみ掲載) | 0〜100 | 31.2/41.7/— |
| Air(C3のみ掲載) | 1〜6 | —/—/3 |
| Treble | ±50 | 0/0/0 |
| Output | ±12 | 0/0/0 |
| FX | -inf〜0 | -inf/-inf/-inf |
| DLY | 100〜1000(1ステップ増) | 550/1000/266.7 |
| DLY Mix | 0〜100 | 75/75/79.2 |
| Decay | 0〜100 | 71.1/71.1/Max |
| VRB Tone | ±12 | -5/0/0 |
DRM Drum Slammer(7タイプ共通の範囲)
| コントロール | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|
| Sensitivity | ±18 | タイプ別(上の表を参照) |
| Thump(低域) | ±12 | タイプ別(同上) |
| Snap(トランジェント) | 0〜100 | タイプ別(同上) |
| Treble(高域) | ±12 | タイプ別(同上) |
| Output | ±18 | タイプ別(同上) |
B72 Bass Phattener(DI/Synth)
| コントロール | 範囲 | 初期値(DI/Synth) |
|---|---|---|
| Sensitivity | ±50 | -16.7/0 |
| Bass | ±12 | 0/6.5 |
| Treble | ±12 | 1/10 |
| Output | DI: ±12/Synth: -24〜0 | 0/0 |
| FX(Synthのみ掲載) | -inf〜0 | —/-2.0 |
| Tone(Synthのみ掲載。buzzエフェクトのトーン) | 0〜100 | —/15 |
| FX Out(Synthのみ掲載) | 0〜100 | —/37.5 |
GTi Guitar Toner(5タイプ)
| コントロール | 範囲 | 初期値(掲載タイプ) |
|---|---|---|
| Sensitivity | ±50 | Clean 0/Clean Chorus -8.3/Heavy 0/Thick Rhythm +2.8/Soft Flange 0 |
| Presence | Clean・Clean Chorus・Heavy: ±50/Thick Rhythm・Soft Flange: 1〜4 | 22.1/0/32.3/2/3 |
| Tame(ダイナミクス) | 0〜100 | Clean 46.3/Clean Chorus 37.5/Heavy 18.8/Soft Flange 27.5 |
| Output | Clean・Clean Chorus・Heavy: 0〜100/Thick Rhythm・Soft Flange: ±12 | 36.1/36.1/36.1/-1.5/-0.6 |
| Mix(Clean Chorus) | 0〜100 | 30 |
| Depth(Clean Chorus) | 0〜100 | 30 |
| FX(Thick Rhythm・Soft Flange) | inf〜0 | -2.5/-2.5 |
| Delay(Thick Rhythm) | 300〜1000(1msステップ単位) | 500 |
| Width(Thick Rhythm:コーラスの幅/Soft Flange:フランジャーの幅) | 0〜100 | 93.8/65 |
| Vibro(Thick Rhythm) | 0〜100 | 28 |
| Chorus On/Off(Thick Rhythm) | On/Off | Off |
| Press(Soft Flange) | 0〜100 | -30.6(原文ママ。範囲外の値が初期値として記載されている) |
| Renge(Soft Flange・原文ママ) | 0〜100 | 19.6 |
| Rate(Soft Flange) | 0〜100 | 4 |
ACG Acoustic Guitar Designer(ACG 1/ACG 2)
| コントロール | 範囲 | 初期値(ACG 1/ACG 2) |
|---|---|---|
| Sensitivity | ±50 | 0/-8.3 |
| Punch | 1〜5 | 1/4 |
| Mid | 1〜6 | 2/2 |
| Hi | 1〜4 | 2/2 |
| FX | -inf〜0 | 0/0 |
| Excite(ダイナミック・エキサイター) | 0〜100 | 53.3/53.3 |
| Dry/Wet(リバーブ量) | 0〜100 | 40.1/40.1 |
| Pre-Delay | 0〜100 | 20.8/15 |
| Output | -24〜0 | 0/(ACG 2は記載を確認できず) |
HMX Harmonics Generator(Modal/Bounce)
| タイプ | コントロール | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Modal | Sensitivity | ±50 | 0 |
| Modal | Size(リバーブ空間サイズ) | 0〜100 | 26.4 |
| Modal | Amount(リバーブ量) | 0〜100 | 62.5 |
| Modal | Spread(ステレオの広がり) | 0〜100 | 88.3 |
| Modal | Output | ±12 | 2 |
| Bounce | Presence(エフェクトのトーン。入力信号には影響しない) | 0〜100 | 34 |
| Bounce | Size | 1〜100 | 15 |
| Bounce | DLY Mix | 0〜100 | 86.1 |
| Bounce | Tempo(SYNC=Manual時のBPM指定) | 60〜180 BPM | 120 |
| Bounce | Sync | Automatic/Manual | Automatic |
| Bounce | FX | -inf〜0 | 0 |
| Bounce | Wet | 0〜100 | 40.4 |
| Bounce | Output | -24〜0 | 0 |
用途別・設定の始点
すべてマニュアルのクイック・スタートと Tony Maserati 本人のコメントに根拠がある範囲の始点です。共通手順は「トラックにインサート→タイプを選ぶ→Sensitivity LED を見ながら入力を調整→各コントロールで整える」の順になります。
| 素材・状況 | 始点(根拠となる記述) |
|---|---|
| ボーカル全般 | VX1。3種類の Contour を切り替えて最適なスタートポイントを探す(クイック・スタート) |
| スローバラードのボーカル | VX1 Contour 2(プリ・ディレイの反射がある大きな空間、スローバラードに最適——本人コメント) |
| 速いテンポの曲のボーカル | VX1 Contour 3(小さなルーム感と短いプリディレイ——本人コメント) |
| ドラムの各パート | DRM。適用するパートに沿って7タイプから選ぶ(クイック・スタート) |
| エレクトリック/アコースティックベース | B72 の DI から試す(本人コメント) |
| シンセベース | B72 SYNTH。完全なステレオ効果には m>s コンポーネントを使う(クイック・スタート) |
| クランチ〜激しい歪みのギター | GTi HEAVY(レベル調整とEQだけで分厚いミックスを突き抜ける——本人コメント) |
| リズムギター、ウーリッツァー、ホーン | GTi THICK RHYTHM(本人コメント) |
| ライブで埋もれがちな繊細なアコギ | ACG 2(コンプレッション高め——本人コメント) |
| ピアノの響きを広げる、ボーカル・デモを生き生きと | HMX MODAL(本人コメント) |
| 繊細なバラードにエネルギーや流れを | HMX BOUNCE(本人コメント) |
似た製品との使い分け
Waves の Signature Series には、同じ「用途特化・本人監修」の設計で Eddie Kramer Signature Series(5本)や JJP Signature Series(6本)などの兄弟シリーズがあります。同じドラムという用途でも切り分け方に個性が出ていて、Maserati DRM はスネアの表と裏を別タイプにした7タイプを1本に収め、Eddie Kramer Drum Channel のマニュアルは BD・SNR・HH・Toms・OH・Room の6タイプ(スネアは1タイプ)、JJP はドラム本体(JJP Drums)とシンバル・パーカッション(JJP Cymbals & Percussion)の2本のプラグインに分割しています。どの粒度で叩き分けたいかが選択の分かれ目になります。
汎用ツールとの関係で言えば、C1 Compressor や Q10 Equalizer のような製品は、どの周波数をどれだけ動かすかの判断を全面的に使い手に預けます。Maserati Collection はその判断の大部分をタイプ選択と初期値に埋め込み、使い手には Sensitivity と少数のコントロールだけを残す設計です。速さと引き換えに、埋め込まれたレシピが素材に合わない場合の逃げ道は多くありません。コンプレッションの考え方自体を押さえたい場合はコンプの基礎から入るのが近道です。
よくある質問
公式ページには7本と書いてあります。マニュアルの6本とどちらが正しいですか?
どちらも公式です。本稿が参照した日本語マニュアルは「6つのプラグインで構成」と書いていますが、現行の公式バンドルページ(2026年8月時点)は Maserati GRP を加えた7本を数えています。公式ページの収録一覧は ACG/B72/DRM/GRP/GTI/HMX/VX1 で、マニュアルの6本との差はこの GRP 1本だけです。GRP は副題を Group Processor といい、公式の説明は「グループ用のマルチFX」——つまり単一楽器ではなくバスに挿す位置づけの1本です。GRP はこのマニュアルに章がなく、本稿では扱っていません。最新の収録内容は公式ページで確認してください。
Sensitivity LED は必ず黄色(最適)に合わせるべきですか?
いいえ。マニュアルは、黄色が表示されなくても最適な結果が得られる場合があること、素材によっては緑や赤が適切なこともあることを明記し、「ご自身の耳を信じてください」と結んでいます。黄色はあくまで目安です。
B72 の SYNTH でステレオ感が出ません
マニュアルのクイック・スタートに「『SYNTH』設定で完全なステレオ効果を得るには、モノ/ステレオ (m>s) コンポーネントのご使用をお勧めします」とあります。モノ・コンポーネントを挿している場合は、m>s に差し替えるのが公式の答えです。
DLY(ディレイタイム)の単位は何ですか?
VX1 の DLY は「範囲:100〜1000(1ステップ増)」と書かれており、単位の記載がありません。一方 GTi の Thick Rhythm にある DELAY は「300〜1000(1msステップ単位)」と ms 表記があります。VX1 側も ms と読むのが自然ですが、マニュアルに明記がないため本稿では断定していません。
まとめ
- Maserati Collection はマニュアル上6本(現行公式ページは GRP を加えた7本)。各プラグインはタイプ選択と初期値に処理のレシピを埋め込んだ用途特化型で、露出しているのは少数のコントロールだけ。
- DRM の7タイプは同じ5コントロールに異なる初期値の組を持ち、HH の Thump -9 や OH の Snap 33.3 など、初期値そのものがドラム処理の開始点として設計されている。
- 入口は Sensitivity。ただしマニュアル自身が LED の色を絶対視せず、最後は耳で決めろと書いている。



6本に共通するのは、決めるべきことが先に決めてあることです。使い手に残された判断は、入力レベルとタイプ選択に集約されています。
Waves Japan の公式ページでは、Tony Maserati Signature Series の定価は70,400円です(2026年8月時点)。現在の価格と収録内容はWaves Japan の製品ページで確認してください。バンドルへの収録状況も改編されることがあるため、購入前の公式確認が確実です。


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