シンセの画面にはツマミがたくさん並んでいますが、音の性格を決めているのは実質3つの要素だけです。この記事では、その3つを押さえたうえで、いちばん使うADSRとフィルターを実用レベルまで解説します。
ユウナよっしゃ、シンセで音作るぞー! ……って開いた瞬間、ツマミが30個くらいあるんですけど。どれ触ったらどうなるのか全然わかんない!
最初は全員そうなります。でも安心してください。ほとんどのシンセは「波形を選ぶ・削る・時間で変化させる」の3段構えでできています。この構造さえ分かれば、知らないシンセでも触り方の見当がつきます。
この記事では、シンセの3要素・ADSRの意味・フィルターの使い方・音色別の設定目安までをまとめます。
シンセは3つの要素でできている
1. オシレーター(波形)
音の材料を決める。ノコギリ波は倍音が多くて派手、矩形波は中空で独特、正弦波は倍音がなく丸い。ここで素材の性格が決まる。
2. フィルター(削る)
材料から要らない部分を削る。シンセの音作りは足し算ではなく引き算が基本。
3. エンベロープ(時間変化)
音量や音色が時間とともにどう変わるかを決める。同じ波形でも、ここで打楽器にもパッドにもなる。
ADSR:音の時間変化を決める4つ
エンベロープの代表がADSRです。鍵盤を押してから離して消えるまでを、4つの区間に分けて考えます。
| 名前 | 何を決めるか | 単位 |
|---|---|---|
| A:アタック | 鍵盤を押してから音が最大になるまでの時間 | 時間 |
| D:ディケイ | 最大になったあと、持続レベルまで下がるのにかかる時間 | 時間 |
| S:サステイン | 鍵盤を押し続けている間、どの音量で持続するか | レベル |
| R:リリース | 鍵盤を離してから音が消えるまでの時間 | 時間 |
ここで最重要の注意点です。サステインだけが「レベル」で、他の3つは「時間」です。ADSRという並びで覚えると4つとも同じ種類に見えてしまい、混乱の原因になります。Sだけ仲間外れだと覚えてください。
もうひとつ間違えやすいのがディケイとリリースの違いです。どちらも「音が減っていく時間」ですが、ディケイは鍵盤を押している最中の減衰、リリースは離したあとの減衰です。ピアノの音で言えば、押したまま鳴り続けて減っていくのがディケイ、指を離してスッと消えるのがリリースにあたります。



あー! 押してる間か、離したあとか。それで分かれてるのか。あたし、DとR両方いじって「なんで変わらないんだ」って言ってたわ……。
フィルター:カットオフとレゾナンス
フィルターは削る道具です。もっとも使うのはローパスフィルターで、設定した位置より上の帯域を削ります。
- カットオフ:どこから削り始めるかを決めます。下げるほどこもった音に、上げるほど元の明るさに近づきます。シンセでいちばん動かすツマミです。
- レゾナンス:カットオフの位置付近だけを強調します。上げるとクセのある鳴りになり、シンセらしさが出ます。上げすぎると発振して耳に痛い音になるので注意が必要です。
- ハイパス:逆に下を削ります。低域が邪魔なシンセに使います。
そして、多くのシンセにはフィルター専用のエンベロープがあります。これを使うと、カットオフが時間とともに動きます。「押した瞬間は明るく、すぐ暗くなる」という設定にすると、それだけで弾けるような音になります。シンセらしい音の正体は、たいていこのフィルターの動きです。
音色別・ADSRの目安
作りたい音から逆算する表です。数値ではなく方向で覚えると応用が利きます。
| 作りたい音 | A | D | S | R | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| プラック(弾ける音) | 最速 | 短い | 0に近い | 短い | フィルターも同時に閉じると鋭くなる |
| パッド(背景の持続音) | 長い | 長い | 高め | 長い | ゆっくり現れてゆっくり消える |
| ベース | 最速 | 中 | 高め | 短い | リリースを伸ばすと低音が濁る |
| ストリングス風 | やや長い | 中 | 高め | 中〜長 | アタックを速くすると途端に嘘くさくなる |
| オルガン風 | 最速 | なし | 最大 | 最速 | 押している間だけ一定、離すと即消える |
| 打楽器風 | 最速 | 短い | 0 | 最短 | サステインを0にするのが要点 |
オルガン風の行を見てください。A最速・D無し・S最大・R最速という、いちばん単純な設定です。ADSRを理解する練習としては、まずこれを作ってみるのが早道です。そこからAを伸ばせばストリングスに、Sを0にすれば打楽器に近づきます。
よくあるつまずき
| 症状 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| ディケイを動かしても変化しない | サステインが最大になっている | Sを下げると初めてDが効く |
| 音が途切れて聞こえる | リリースが短すぎる | Rを少し伸ばす |
| 音が濁って重なる | リリースが長すぎる | 特にベースはRを短く |
| 作った音がオケで埋もれる | カットオフを下げすぎている | ソロではなくオケの中で決める |
| 耳に痛い | レゾナンスの上げすぎ | 下げるか、カットオフの位置をずらす |
| 何をしても平坦 | フィルターエンベロープを使っていない | 音色を時間で動かす |
1行目は特に多いつまずきです。サステインが最大だと、ディケイで下がる先がないので何も起きません。「Dが効かない」と感じたら、まずSを見てください。
よくある質問
Q. プリセットを使うのはダメですか?
まったく問題ありません。むしろプリセットを開いてADSRだけ動かしてみるのが、いちばん効率のいい練習です。ゼロから作る必要はなく、既にある音の立ち上がりと消え方を変えるだけで、自分の曲に合う音に化けます。
Q. 高いシンセを買えば良い音になりますか?
音の質は上がりますが、音作りの考え方は同じです。むしろ高機能なシンセほど画面が複雑になり、基礎が分かっていないと迷子になります。DAW付属のシンセでADSRとフィルターを一通り触れるようになってから買い足すほうが、確実に使いこなせます。
Q. どこから練習すればいいですか?
ノコギリ波1つだけを鳴らし、ADSRの4つを片方の端から端まで動かしてみるのがおすすめです。音を聴きながら極端に動かすと、それぞれが何を担当しているかが体で分かります。そのあとカットオフを同じように動かせば、基礎はほぼ押さえられます。
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