Waves CLA Drumsの設計思想|6モードで変わる中身

Waves 🎛️CLA Drumsは、Drum Modeを切り替えると使えるコントロールそのものが入れ替わります。📖Cowbellモードに入るとGateが使えなくなり、代わりに📖Delayが現れる。公式マニュアルに明記された仕様です。この記事では、モードとコントロールの対応関係、カラーの選択肢、そして各コントロールの範囲と初期値を、公式マニュアルの記述だけで整理します。

想定読者は、すでにCLA Drumsを持っている人と、ドラム用の📖チャンネルストリップを検討している人です。📖プリセット紹介ではなく、仕様上の例外と、公式が書いていることの範囲を扱います。CLA シリーズ全体(Vocals・Guitars・Bass・Drums・Unplugged・Effects の6本)の概要と使用場面は、入門側の記事 【Wavesプラグイン】「CLAシリーズ」の概要と使用場面、使い方を解説 で扱っています。まずシリーズの全体像から知りたい方はそちらを先にどうぞ。

参照した一次資料はWaves公式のCLA Drumsユーザーガイド(英語)ですが、この資料には2つの版があり、この記事では版を書き分けています。①Wavesが現在配布している版(全13ページ。PDFの作成日は2021年4月)。以下ではこれを「現行ガイド」と呼びます。②製品に同梱されている版(全18ページ。作成日は2010年3月)。以下ではこれを「2010年版」と呼びます。本文の範囲・初期値は現行ガイドを基準にしました。ただしこの2版は、コントロールの範囲・初期値・Colorの選択肢・モード構成・コンポーネント構成が全項目で一致しており、増えたコントロールも消えたコントロールもありません。実質的に変わったのは、クイックスタート末尾の1行が現行版で削除されたことと、旧版の第4章(WaveSystemの解説5ページ)が別冊ガイドへの案内4行に置き換わったことの2点です(18ページ→13ページの差はここから出ています)。2010年版にしかない記述は消さずに、「2010年版ガイドでは」と年を添えて残しました。あわせてバンドル付属のCLA Signature日本語版マニュアルと公式製品ページも参照しています。編集部は本製品を所有していないため使用感の描写はせず、裏が取れない項目は書きません。

カホ

モードで機能が入れ替わるプラグインは、スクリーンショット1枚では全体像が出ません。マニュアルの但し書きのほうに本体があります。

目次

この記事でわかること

  • Drum Modeによって使えるコントロールが変わる仕様(GateとDelayの排他関係)
  • Gateだけカラーの選択肢が少ない理由と、📖ゲートの形状が何種類あるか
  • 📖Phaseスイッチが載っている理由と、この製品が想定している録音の形
  • 全コントロールの範囲・初期値と、Delay Colorが📖同期する📖音価

CLA Drumsとは|何を解決する製品か

CLA DrumsはWaves Artist Signature Seriesの1本です。現行ガイド p.3 はこのシリーズを「用途特化型のオーディオプロセッサー」と定義し、目的を「制作フローを中断することなく、求めるサウンドに素早くたどり着くこと」と書いています。CLA Artist Collectionは6本で構成され、内訳は🎛️CLA Vocals、CLA Drums、🎛️CLA Bass🎛️CLA Guitars、CLA Unplugged、CLA Effectsです(この6本の顔ぶれは2010年版と現行ガイドで同じですが、バンドル構成は改編されうるので現在の内容は公式ページで確認してください)。

この製品が前提としている録音の形は、ガイドの用語解説にはっきり書かれています。「CLA Drumsプラグインは、主に📖マルチトラックで録音された📖ドラムキット用に設計されている」(現行ガイド p.4)。そのうえで、6つのDrum Modeがそれぞれ異なるドラムキットの要素、またはマイクポジションに最適化されている、と続きます。

モードの一覧は📖Kick📖Snare、Toms、📖OH(Over Heads)、Room、Cowbell。Cowbellについては、マニュアルが括弧書きで「📖シンバル📖ハイハット、ベルにも適している」と補足しています。名前だけ見ると冗談のようですが、実質は金物系のためのモードだと公式が説明している形です。

CLA本人のコメントもマニュアルに収録されています。「6つの異なるモードがある——キック、スネア、📖タム📖オーバーヘッド、ルーム、そしてもちろん私のお気に入りのカウベルだ」。フェーズスイッチについても本人が触れていて、「特にドラムには重要なフェーズスイッチを用意したから、ドラムキットにベストな設定を見つけ出すことができる」と述べています。

英語版の公式製品ページは、この製品を「🎤Green Day、Nickelback、Lifehouseのラジオ向けロックドラムサウンドを届ける」と紹介しています。日本語版の製品ページは「クリス・ロード・アルジによるドラム専用プロセッサ」。

コンポーネントは2つ。CLA Drums Mono-to-Stereo(📖モノ入力・📖ステレオ出力)とCLA Drums Stereo(ステレオ入力・ステレオ出力)です。

価格は定価17,380円です(2026年8月時点)。本稿は価格を1時点しか見ていないので、実売の相場は書きません。現在の価格は公式ページで確認してください。

設計思想:なぜこの効き方をするのか

モード選択が先。その上に全部が乗る

クイックスタートの手順は4段階です(現行ガイド p.6)。ドラムトラックに挿す、正しいDrum Modeを選ぶ、Sensitivityを調整する、そして「現在のプラグイン設定がChrisのデフォルトセットアップを表している」。ここから各📖フェーダーを動かしていきます。

比較すると分かりやすいのですが、同じコレクションのCLA Bassのクイックスタートには、モードを選ぶ段がありません。挿してSensitivityを合わせたらそこがデフォルト。CLA Drumsだけ、その前にモード選択が挟まっています。デフォルト設定の中身がモードごとに違うということです。

モードによってコントロールの顔ぶれが変わる

ここがこの製品でもっとも注意が要る仕様です。クイックスタートの但し書きは、こう書いています。「DelayコントローラーはCowbellモードでのみ有効。逆にGateコントローラーはこのモードでは使用できない」(現行ガイド p.6・2010年版も同文)。

コントロール解説の側でも、GateとGate Colorには「Cowbellモードでは利用不可」、DelayとDelay Colorには「Cowbellモードのみ」と、それぞれ注記が付いています。つまり2つの機能は同時には出てこず、モードで切り替わります。

Delay Colorには、他のカラーセレクターに無い性質があります。現行ガイド p.12 によれば、これは📖ディレイタイムとキャラクターを切り替えるもので、ディレイタイムは📖セッション📖BPMに同期します。選択肢はClear(📖Mute)/Green(16 = 16分音符)/Blue(Dot Eight = 付点8分音符)/Red(4分音符)で、初期値はGreen。他のカラーが音のキャラクターを切り替えるのに対し、ここだけ音価を選ぶセレクターになっています。

カホ

「Gateが見当たらない」の原因はたいていCowbellモードです。壊れていません。仕様としてそこには存在していません。

Gateだけカラーの数が違う

Bass Color、Treble Color、Compress Color、📖Reverb Colorは、いずれもClearに加えてGreen/Blue/Redの3色を持ちます。ところがGate ColorだけはClear(Bypass)/Green(Soft)/Red(Hard)で、Blueがありません。ゲートの形状として用意されているのはSoftとHardの2つです。

クイックスタートの書き方も2択で揃っています。「Gateはキットの他の要素からのこぼれや音漏れを減らすために使用する。ハードゲートまたはソフトゲートを選ぶ」(現行ガイド p.6)。Gateフェーダーが調整するのはゲートの📖スレッショルドで、範囲は他と同じ ±10(0.1単位)、初期値0です(現行ガイド p.11)。

Phaseスイッチがある理由

Phase Switchは入力の📖位相反転を行うコントロールで、範囲はOn/Off、初期値Off。CLA Bassには無く、CLA Drumsにだけ載っています。

理由は製品の前提と噛み合っています。マニュアルはこの製品を「主にマルチトラックで録音されたドラムキット用」と定義し、モードもマイクポジションに対応づけられている。複数の📖マイクで同じキットを録っている状況を想定した設計なので、位相の反転が1クリックで届く場所に置かれている、という構成です。CLA本人も「特にドラムには重要」と述べています。

フェーダーの0は「オフ」ではない

CLA Artist Collection 共通の仕様ですが、CLA Drumsの現行ガイド p.6 にも同じ但し書きが載っています。

  • すべてのカラーをclear(Bypass/Mute)にしても、Chrisが設計したいくつかの固定処理はそのまま有効
  • 📖EQの調整はEQフェーダーを動かしたときに有効になる。0のままではEQカラーを切り替えても効果は出ない
  • その他のフェーダーは有効で、0のときChrisのデフォルトセットアップになっている

したがって、フェーダーを全部0に戻しても素の音にはなりません。EQのカラーを切り替えて「何も変わらない」と感じたときは、BassまたはTrebleのフェーダーが0のままである可能性が高い、ということでもあります。

なおClearの意味はセクションによって書き分けられています。Bass/Treble/Compress/GateのClearはBypass、Reverb/DelayのClearはMute。信号を通す補正系と、信号を足す付加系で用語が分かれています。

Sensitivityとメーターの仕様

Input Sensitivityは ±10(0.1単位)、初期値0(現行ガイド p.8)。現行ガイド p.4 は「プラグインを開いたらすぐ、曲の中でもっともピークの高い部分を使って調整することを推奨する」と書いています。

Sensitivity LEDについては、見出しが「3色」となっている一方、挙げられている状態は消灯(低すぎる)/緑(良い)/黄(最適)/赤(非常に大きい)の4つです。そして「LEDが最適(黄)を示していなくても、素材にとって最適な結果が得られることはある。常に自分の耳を信じてほしい」という但し書きが付きます。黄に合わせることが目的ではありません。

Input MeterとOutput Meterの表示範囲はどちらも −26〜0 📖dBFS。Clip LEDは0 dBFSを超えると点灯し、メーターエリア内をクリックするとリセットされます(現行ガイド p.8・p.13)。📖Balanceは左右のオフセットを調整するコントロールで、±6 dB(0.1単位)、初期値0。こちらはStereoコンポーネント限定です。

出力が赤くなったときの対処についてはひとこと注記が要ります。2010年版ガイドは、クイックスタートの末尾に「出力メーターが赤に入ったら、Outputフェーダーで出力レベルを下げる」という1行を置いていました。この1行は現行ガイド(2021年版)では削除されています——クイックスタートは注意書き4項目で終わり、Outputに触れる行がありません。Outputフェーダー自体は現行ガイド p.12 に残っている(±10・0.1単位・初期値0)ので、対処の方向が変わったわけではなく、消えたのはそれを公式の手順として書いた1行のほうです。手順として引用するときは版を添えてください。

全パラメーター

コントロール役割範囲初期値
Drum Modeドラムタイプの切り替えKick/Snare/Toms/📖OH/Room/Cowbell
Input Sensitivity最適な入力レベルに合わせる±10(0.1単位)0
Input Meter入力ピークレベル表示−26〜0 dBFS
Sensitivity LEDレベルの適否表示消灯/緑/黄/赤
Balance左右のオフセット(Stereoのみ)±6 dB(0.1単位)0
Phase Switch入力の位相反転On/OffOff
Bass低域📖ゲイン±10(0.1単位)0
Bass Color低域📖フィルターの切り替えClear(Bypass)/Green(Sub)/Blue(Lower)/Red(Upper)Green(Sub)
Treble高域ゲイン±10(0.1単位)0
Treble Color高域フィルターの切り替えClear(Bypass)/Green(Bite)/Blue(Top)/Red(Roof)Green(Bite)
Compress📖ダイナミックレンジ±10(0.1単位)0
Compress ColorコンプレッションのキャラクターClear(Bypass)/Green(Push)/Blue(Spank)/Red(Wall)Green(Push)
Reverbリバーブのウェットミックス±10(0.1単位)0
Reverb Colorリバーブの空間の切り替えClear(Mute)/Green(Studio)/Blue(Club)/Red(Hall)Green(Studio)
Gate ※ゲートのスレッショルド±10(0.1単位)0
Gate Color ※ゲートの形状の切り替えClear(Bypass)/Green(Soft)/Red(Hard)Green(Soft)
Delay ★ディレイのウェットミックス±10(0.1単位)0
Delay Color ★ディレイタイムとキャラクター(📖BPM同期)Clear(Mute)/Green(16分音符)/Blue(付点8分音符)/Red(4分音符)Green(16分音符)
Output出力レベル±10(0.1単位)0
Output Meter出力ピークレベル表示−26〜0 dBFS

※はCowbellモードでは利用不可、★はCowbellモードのみ。フェーダーの範囲がすべて ±10 で統一されているのはこのシリーズ共通の作りで、dBやHzでの内部値はマニュアルに記載がありません。日本語の公式製品ページはこれを「コントロール範囲を最適化」と表現しています。

Treble Colorについて、資料に不一致があります。英語版マニュアルは範囲・初期値ともBite/Top/Roofで一貫していますが、日本語版マニュアルは範囲の欄だけがSub/Lower/Upper(=Bass Colorと同じ内容)になっており、初期値の欄はGreen(Bite)と書かれています。同じ項目の中で範囲と初期値が噛み合っていないため、この表では英語版を採りました。

用途別・設定の始点

やりたいこと触るコントロール起点と注意
まず📖トラックの種類を決めるDrum Mode公式の手順では最初。デフォルト設定の中身が変わる
シンバル・ハイハットを扱うDrum Mode=Cowbellマニュアルが適用対象として明記。Gateは使えなくなる
入力を合わせるSensitivityLEDが点灯するまで。曲中で最もピークの高い箇所で
キットの位相を確かめるPhaseスイッチ初期値Off。入力の位相反転
📖かぶり・音漏れを減らすGate+Gate Color(Soft/Hard)Cowbellモードでは利用不可
空間を足すReverb Color(Studio/Club/Hall)ClearはMute
📖テンポ同期のディレイを足すCowbellモードで Delay Color16分/付点8分/4分。セッションの🎛️BPMに同期
低域・高域の質を変えるBass Color/Treble Colorフェーダーを動かさないと切り替えても効かない
出力が赤い
(2010年版のみ)
Outputフェーダーを下げる2010年版ガイドの記載で、現行の2021年版では削除。Clip LEDはメーター内クリックでリセット

最終行だけは出どころが違います。2010年版ガイドのクイックスタート末尾にあった1行で、現行ガイド(2021年版)には対応する記述がありません。操作として妥当かどうかとは別に、「公式が手順として書いている」とは引けない、という意味の断りです。

この表に「キックならBassを+3」といった数値が無いのは、ガイドにその記載が無いからです。公式が手順として指定しているのはモード選択とSensitivityまでで、そこから先は「カラーを切り替えて、曲で一番よく動作するものを見つける」という書き方に統一されています。これは2010年版と現行ガイドで変わりません。

似た製品との使い分け

同じコレクションのCLA Bassとは、骨格が共通で中身が違います。共通なのはSensitivity+LED、Balance(Stereoのみ・±6 dB)、±10のフェーダー、Colorセレクター、−26〜0 dBFSのメーター、そして「0はオフではない」という設計。

違うのはセクション構成です。CLA DrumsはReverb、Gate、Delay(Cowbellのみ)を持ち、CLA BassはSub、📖Distortion、Pitchを持ちます。加えてCLA Drumsだけに6つのDrum ModeとPhaseスイッチがあります。カラーの名前も、低域側(Sub/Lower/Upper)は両者で共通ですが、高域側はCLA DrumsがBite/Top/Roof、CLA BassがHonk/Bark/Cutで別物です。

汎用の📖コンプレッサーやEQとの違いは、決め方の軸です。📖周波数📖レシオを数値で追い込むのではなく、モードとカラーの組み合わせを選ぶ。マニュアルが掲げる「制作フローを中断せずに素早くたどり着く」という目的が、そのままUIになっています。

よくある質問

Cowbellモードはカウベル専用ですか

専用ではありません。マニュアルはCowbellモードについて「シンバル、ハイハット、ベルにも適している」と補足しています。6つのモードはドラムキットの要素またはマイクポジションに最適化されている、という位置づけです。

Gateが操作できません

Cowbellモードを選んでいる可能性が高いです。GateとGate Colorはこのモードでは利用不可と明記されています。逆にDelayとDelay ColorはCowbellモードでのみ有効です。

Delayのテンポはどう決まりますか

セッションのBPMに同期します。Delay Colorで選べる音価は16分音符、付点8分音符、4分音符の3つで、ClearはMute。初期値は16分音符です。

ステレオのドラムバスに使えますか

ステレオ入力・ステレオ出力のコンポーネントは用意されています。ただしマニュアルは、この製品を「主にマルチトラックで録音されたドラムキット用に設計されている」と定義しており、各モードもキットの要素やマイクポジションに最適化されたものとして説明されています。📖バス処理向けの使い方について、公式の記述はありません。

まとめ

  • 手順はモード選択が先。CowbellモードだけGateが消えてDelayが出る排他仕様
  • Gate Colorだけ選択肢が少なく、形状はSoftとHardの2つ。Delay ColorはBPM同期の音価セレクター
  • フェーダー0はCLAの既定値。EQだけが、動かすまで効かない例外
カホ

モードを選んだ時点で、もう半分決まっています。残りはカラーの総当たり。数字を詰める場面はこの製品にはありません。

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