Waves H-Reverbには、リバーブが立ち上がるまでの時間を決めるBuildup Timeというつまみがあります。減衰ではなく、ピークに達するまでの上り坂を操作するコントロールです。公式マニュアルはこれをFIR(有限インパルスレスポンス)方式を選んだ結果として説明していて、リバーブの向きを反転させるReverseや、2本の傾きを持つディケイ・エンベロープも同じ理由から出てきます。この記事では、FIRを選んだことで何ができるようになったのか、通常版とロング版で何が変わるのか、そして全コントロールの範囲と初期値を、公式ユーザーガイドに沿って解剖します。
想定読者は、すでにH-Reverbを持っていて拡張ビューのつまみを持て余している人と、アルゴリズム系リバーブをもう1本足すか迷っている人です。操作手順ではなく「なぜその形になっているのか」を扱います。
仕様・数値はWaves公式の英語版ユーザーガイド(現行・全17ページ)と公式製品ページに基づきます。日本語版マニュアル(全20ページ・株式会社メディア・インテグレーション訳/v.01 201712)も併読しましたが、訳の段階で意味が変わっている箇所が4つ、原文にある行や値が落ちている箇所が2つ、行の並びが原文と違う箇所が1つありました。英語の原文を正とし、日本語版との差は本文でそのつど示します。加えて、ER Select の選び方は現行ガイドで記述そのものが変わっています。編集部は本製品を所有していないため使用感の描写はせず、ガイドで裏が取れない項目は書きません。
カホ減衰しか操作できないリバーブが大半です。このプラグインは立ち上がりの側にもつまみを持っている。そこが設計の起点になっています。
この記事でわかること
- マニュアルが説明するFIRとIIRの違いと、そこから出てくる機能
- 通常のH-Reverbとロング版の違い(最大リバーブ・タイムとCPU)
- Dynamicsセクションの3モードと、検出元がウェットかドライかの切り替わり
- メイン/アドバンスド全コントロールの範囲と初期値
- 日本語版マニュアルと英語原文がずれている7か所(Drive・DeEss の置き換え方向・Reverb Time の「例えば」・CPU の「30%以上」・LFO Sync Rate の値2つ・LFO Rate Mode の行・Output Echoes の範囲行の位置)と、版で変わった ER Select の操作方法
H-Reverbとは|何を解決する製品か
公式製品ページでの名称はH-Reverb Hybrid Reverb。マニュアルの製品概要は、有限インパルスレスポンス(FIR; Finite Impulse Response)テクノロジーを基にした先駆的なアルゴリズムのFIRリバーブで、豪華で広大、温かみのあるリバーブエフェクトを提供するよう設計されている、と書いています。
インターフェイスは折り畳み式です。折り畳んだビューには最も重要なリバーブ・コントローラだけが出ていて、リバーブ・タイム、プリ・ディレイ、ER選択、ミックスに素早く手が届く。拡張ビューを開くと、サウンドとキャラクターをあらゆる側面からコントロールする先進的な機能が現れる、という二段構えです。GUIが折り畳まれた状態でも、底部のトグルでアドバンスド・コントローラ・セクションのオン/オフは切り替えられます。
マニュアルによれば、H-Reverbのスペシャル・エンジンは2種類のリバーブ——シンセサイズ・フィードバックをベースとしたリバーブと、IRコンボリューションをベースとしたリバーブ——を組み合わせたものです。製品名の「Hybrid」はこの構成に対応していると読めます。ただし命名の理由をWavesが明言した資料は確認できておらず、公式日本語ページは「ハイブリッド」を「クラシックなリバーブの音色と、デジタル・リバーブならではの機能性の両方を兼ね備えた」という別の意味づけで説明しています(2026年8月時点)。
コンポーネントは2セット
H-Reverbには2セットのタイム・コンポーネントがあります。最大6秒のリバーブ・タイムを扱う通常のH-Reverbと、最大12秒まで扱える「ロング」H-Reverbです。
2つに分けた理由もはっきり書かれています。主な目的はCPU消費量をユーザーがある程度管理できるようにするためで、ロング・コンポーネントはレギュラーと比べておよそ30%多くCPUを消費する(英語原文 p.5「the long components take up approximately 30% more CPU」)。そして「実際には6秒を超えるリバーブ・タイムが必要になるのは稀だと考えています」という一文が続きます。
ここは日本語版マニュアルの訳では「およそ30%以上多く」となっており(日本語版 p.4)、原文に無い「以上」が足されています。下限を保証する言い方になるので、数字の意味が変わってしまいます。本記事は原文どおり「およそ30%多く」で通します。
各タイム・コンポーネント・セットには、mono、mono-to-stereo、stereoといった複数のチャンネル・コンフィギュレーションが用意されています。5.0/5.1マルチチャンネル・フォーマットには、全チャンネルに渡ってインサートする5-to-5/5.1-to-5.1に加えて、monoとstereoが用意されています。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
FIRを選んだことで何が変わったか
マニュアルには「概念と用語」という節があり、FIRとIIRの違いが製品の設計理由として説明されています。以下はその範囲での整理です。
まずFIRフィルターは長さが固定されている。一方IIRフィルターは、フィードバック・ループ内で減衰音を繰り返すフィードバック・ループとディケイを基本としている——というのが出発点です。ここからマニュアルは、IIR方式に3つの制約があると指摘します。
- IIRは長いリバーブ・タイムに対して行うのと同じ量の計算リソースを、ショートなリバーブ・タイムに対しても必要とする
- フィードバック・ループはコム・フィルターを作り、規則性を打ち壊す追加の分散フィルターを使っても特徴的な色合いが残る
- IIRフィルターのディケイはリニアであり、リアルなゲート、リバース、あるいは相似形のリバーブを作り出すことを妨げる
対してFIRリバーブは、より長いリバーブ・タイムだとより多くのリソースを消費するが、固有の色味から解放され、時間応答をより深くコントロールできる——というのがマニュアルの主張です。
この整理は、実際のコントロール群と素直に対応します。「ディケイがリニアである制約」から解放されているからReverseが載り、ディケイに2本目の傾きを与えるX-Time/X-Gainが載る。立ち上がりを操作するBuildup Timeが載る。逆に「長いリバーブ・タイムほど重い」という代償があるから、通常版とロング版という2つのコンポーネントに分けてCPUを管理させている。設計思想と機能表が一本の線でつながっています。



「ディケイがリニアだとリバースが作れない」という一文が、この製品のつまみの並びをほぼ説明しています。方式の選択が機能表に直結している珍しい例です。
立ち上がりを操作する——Buildup TimeとReverb Size
Buildup Timeは、リバーブがそのピークレベルに到達するまでに必要な時間を決めます。マニュアルの説明では、自然界の部屋では反射音がテールに組み込まれるまでにある程度時間がかかり、部屋が大きいほど、壁がリスナーから遠いほど、この時間は長くなる。
そのうえで「H-Reverbは自然なリバーブを遙かに凌駕することが可能」だと書かれています。挙げられている例が、ビルドアップ時間に0.5〜2秒を要するエフェクト——スペシャル・エフェクトの領域で、魔法のように耳に残るリバース的な残響を作り出す、というものです。
Reverb Sizeは、ビルドアップの勾配と初期反射密度をコントロールします。初期値の1ではERが等しく提供される。値を上げるとERの間により大きなギャップが生じ、大きな空間でよく見られる、徐々に窪んでいくようなビルドアップになる。下げるとERが凝縮されて重なり合い、より早いビルドアップになって小さい空間の感じが得られる、という説明です。
ディケイは2本の傾きでできている
Reverb Timeは、リバーブ・ディケイ・エンベロープの長さをコントロールします。英語原文(p.8)は「the Reverb Time control sets the duration of the reverb decay envelope, i.e., the time it takes the reverb to decay by 120 dB」——リバーブが120 dB減衰するのに要する時間、それがReverb Timeだという定義です。残響時間の一般的な定義はRT60、つまり60 dB減衰するまでの時間ですが、この製品のガイドは120 dBで定義しているので、本記事もそれに従います。
ここも訳で意味が変わっています。日本語版マニュアル(p.7)は「例えば、リバーブが120 dB 減衰するのに必要な時間などが該当します」と、i.e.(すなわち)を「例えば……など」に置き換えており、定義が例示に弱められています。数ある例のひとつではなく、これがReverb Timeの定義そのものです。
重要なのは続く一文です。リバーブ・エンベロープは、関連コントローラであるX-TimeとX-Gainで変更されない限りリニアなディケイになる。裏を返せば、この2つがディケイを折り曲げるためのコントロールだということです。
X-Gainは、一番目と二番目のディケイ・スロープのクロス・ポイントのゲインレベルを決めます(−120〜+12 dB、初期値−60 dB)。X-Timeは、ディケイからリリースに移行する時間を変更するもので、リバーブ・タイムをパーセンテージで設定します。つまり「ここまでが1本目の傾き、ここから2本目」という折れ点を、時間と音量の両方から指定する構造です。
エコーは入口と出口の両方にある
Input Echoesセクションは、最大6つのディレイ・タップを用いて入力オーディオ信号を複製します。複製したものは、エフェクト出力またはリバーブ・ジェネレーターにばらばらに送ることができます。7つのエコー・タイプが、一連のタップを設定する内蔵プリセットとして提供されます。
Output Echoesセクションはその逆側で、4種類のディレイされた複製音がリバーブエフェクト全体に作用するよう構成されており、更なる温かみ、深みと奥行きを加える、とされています。
製品概要の側では、Input Echoesはディフューズ・サウンド(音の拡散)のため、Output Echoesはリアルなリバーブの複製を多数生成して深みと奥行きを高めるため、と役割が説明されています。
リバーブの中にコンプレッサーが入っている
Dynamicsセクションは、ウェット・パスにコンプレッションをかけるためのものです。検出器をウェット・パス自体に置くか、ドライ・パスに置くかで性格が変わります。
- Duck——ドライ信号からダイナミクスを調整し、ドライ信号が存在する時はウェット信号をダッキングする
- Comp——ウェット信号からダイナミクスを調整し、ウェット信号のダイナミクスがリニアでなくなるよう圧縮する
- DeEss——入力上のディエッサー・フィルターを調整する。マニュアルはここに「ドライ信号には影響しません!」と感嘆符付きで注記しています
製品概要では、Duckingはダイレクト信号がはっきりと存在する間はリバーブのラウドネスを下げ、ダイレクト信号がなくなるとラウドネスのレベルを上昇させる、と補足されています。DeEssingモードはリバーブ内で歯擦音のヒス・スプレー・エフェクトをコントロールし、明るいリバーブ・サウンドを作り出すことを可能にする、とされています。
On/Offボタンが独立してあり、これはDynamicsセクションの効果を素早くA/B比較するためのもの、と用途が明記されています。
Time Filtersは1つのグラフで3つの仕事をする
Time Filterセクションは、Damping、Envelope、LFOの3つのモードのうち1つをコントロールします(デフォルトはDamping)。グラフは選択したモードに従ってダイナミックに変化し、モードはラジオ・ボタンで選びます。
Dampingモードは、周波数ごとにリバーブ・タイムのレシオを与えるものです。グラフはX軸に周波数特性、Y軸にリバーブ・タイムのレシオが表示されます。マニュアルの数値例が具体的で分かりやすいので、そのまま引きます——リバーブ・タイムを4秒、低ダンピングを400 Hz、レシオを1.5に設定すると、リバーブの中域と高域は4秒で減衰し、400 Hzの低周波以下は後2秒続き、完全に減衰するのに6秒間かかる。
EnvelopeとLFOは、マニュアルが「Resonant Filter Modes」と呼ぶ別系統です。テールに対してレゾナント・フィルターをスイープさせる仕組みで、F1とF2がスイープ範囲の始点と終点の周波数を決め、Typeがハイパスかローパスか、Qがフィルター・スロープとレゾナンス、Mixがフィルターされたリバーブ・レスポンスとノン・フィルターのミックス量、Flipがスイープの方向(F1からF2か、F2からF1か)を決めます。
スイープ速度の決め方が2つのモードの違いです。Envelopeはリバーブ・タイムのパーセンテージとして速度を設定します。LFOはレート・コントローラを使って、Hz単位の絶対レートか、設定したBPMにおける32分音符を1サイクルとするノート長の値による相対同期か、どちらかで速度を決めます。
この「どちらか」を選ぶのが LFO Rate Mode(Free/Sync)というセレクターで、英語原文 p.15 の LFO Res Filter の項に独立した行として載っています。日本語版マニュアル(p.13)にはこの行がありません——LFO Free Rate と LFO Sync Rate だけが並んでいるので、日本語版だけを読むと「2つのレート・コントローラが同時に効いている」ように見えてしまいます。切り替えるスイッチが1つある、というのが原文の構造です。後述の表にも行を足してあります。
全パラメーター
メイン・コントローラ
| コントロール | 役割 | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Pre-Delay(Free) | プリ・ディレイをミリ秒で設定。テンポには追従しない | 0 〜 500 ms | 24 ms(Reset 0 ms) |
| Pre-Delay(Sync) | プリ・ディレイをノート長で設定。テンポに追従する | 1/2, 3/8, 1/3, 1/4, 3/16, 1/6, 1/8, 3/32, 1/12, 1/16, 3/64, 1/24, 1/32, 3/128, 1/48, 1/64, 3/256, 1/96, 1/128 | 3/256 |
| Pre-Delayモード | FreeとSyncの切り替え | Free/Sync | Free |
| Buildup Time | リバーブがピークレベルに到達するまでの時間 | 0 〜 2 秒 | マニュアル表記は「0.025 ms」 |
| Reverb Size | ビルドアップの勾配と初期反射密度 | 0.5 〜 2 | 1 |
| Reverb Time | ディケイ・エンベロープの長さ | 0.1 〜 6 秒(レギュラー)/12 秒(ロング) | 4.21 秒 |
| ER Select | 10種類からERモデルを選ぶ | 1 〜 10 | 5 |
| ER/Tail Balance | ERゲインとテール・ゲインのミックス | 0 〜 100 | 73.2 |
| Dry/Wet | ダイレクト・パスとエフェクトのバランス | 0 〜 100 | 100 |
| Output | 出力レベル | −24 〜 +18 dB | 0 dB |
| Reverse | リバーブ・タイム・エンベロープの方向を逆にする | On/Off | Off |
Buildup Timeの初期値だけ、マニュアルの単位表記が範囲と揃っていません。範囲は「0 – 2 秒」、初期値は「0.025 ms」と書かれています。編集部の判断で単位を直すことはせず、印字どおりに記載しました。
ER/Tail Balanceは方向を取り違えやすいので、マニュアルの記述をそのまま置きます。中央が50でユニティ(ERとテール両方とも0ゲインの状態)。左に(反時計回りに)回すとテール・ゲインのみが下がり、ERゲインはユニティのまま。右に(時計回りに)回すと、テール・ゲインはユニティのまま、ERゲインのみが下がります。初期値73.2は中央より右側です。
Dry/Wetの初期値が100、つまり完全なウェットである理由も書かれています。ソースをリバーブに「センド」する一方、ソースのダイレクト音は別のトラックからミックスされる、オグジュアリー・センドをセットアップする用途に適しているため、という説明です。
Decay Envelope / Input Echoes / Output Echoes
| コントロール | 役割 | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| X-Time | ディケイからリリースに移行する時間。リバーブ・タイムのパーセンテージで設定 | マニュアルに記載なし | マニュアルに記載なし |
| X-Gain | 一番目と二番目のディケイ・スロープのクロス・ポイントのゲイン | −120 〜 +12 dB | −60 dB |
| Density | 最大で滑らか、低いと個々のエコーがまばらに聞こえる | 0 〜 100% | 100% |
| Input Echoes / Type | タップ構成を決める内蔵プリセット | 7つのエコー・タイプ(最大6つのディレイ・タップ) | マニュアルに記載なし |
| Input Echoes / Discrete | — | −inf 〜 0 dBFS | −18.4 |
| Input Echoes / Diffused | — | −inf 〜 0 dBFS | −29 |
| Output Echoes / Amount | 出力エコーのゲイン | 0 〜 10 | 5.81 |
| Output Echoes / Size | 出力エコーのタイミングとインターバル | 0 〜 100% | 65% |
| Output Echoes / Tone | 0がもっとも暗く、10がもっとも明るい | 0 〜 10 | 7.2 |
Output EchoesのAmountについて補足しておきます。英語原文(p.11)は「Amount」の見出しの後に「Range: 0–10; Default: 5.81」が続く、SizeやToneと同じ並びです。ところが日本語版マニュアル(p.9)では、この「範囲:0〜10;初期値:5.81」の行だけがAmountの見出しより前——Output Echoesセクションの説明文の直後に置かれています。日本語版だけを見るとどのつまみの数値なのか読み取りにくいところですが、原文に当たればAmountのものです。
X-Timeは、範囲も初期値もマニュアルに書かれていません。この記事で数値を挙げていないのはそのためです。
Dynamics セクション
| コントロール | 役割 | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| On/Off | Dynamicsセクションの効果を素早くA/B比較する | On/Off | マニュアルに記載なし |
| Mode | 3つのモードを選ぶトグル・メニュー | Duck/Comp/DeEss | マニュアルに記載なし |
| Threshold | コンプレッサーのスレッショルド。0=+10 dBFS、−50=−40 dB | 0 〜 −50 | −18 |
| Recovery(Comp/Duckモード) | コンプレッサーのリリース・タイム | 30 〜 3000 ms | 300 ms |
| Range(DeEssモード) | ディエッサーの最大減衰レベル | 0 〜 −24 dBFS | −18 |
Thresholdはつまみの目盛りと実際のdB値が一致しません。マニュアルの説明では、0が+10 dBFS、−50が−40 dBに対応します。目盛りの数字をそのままdBFSとして読まないでください。



目盛りの0が+10 dBFS。「Thresholdを0にしたのに掛からない」の正体はだいたいこれです。
EQ コントローラ
H-ReverbのEQは拡張GUIの左側、EQグラフの近くにあります。特徴は、最大−80 dBまでカットできるシェルフ・フィルターを備えていること。マニュアルはこれを「カット・フィルターのように効果的に動作する」と表現し、こうしたシェルフを用意した理由を、初期反射をフィルタリングによって除去するためだと説明しています。2基のベル・フィルターと同時にハイ/ロー・シェルフを使えます。
| コントロール | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|
| ER Filter Frequency | 1000 〜 14000(マニュアルに単位の記載なし) | 2958 |
| ER Filter Gain | −80 〜 +12(マニュアルに単位の記載なし) | −22.5 |
| LoShelf | On/Off | マニュアルに記載なし |
| LoShelf Freq | 20 〜 1000 Hz | 240 Hz |
| LoShelf Gain | −80 〜 +12 dB | 0 |
| LoBell | On/Off | マニュアルに記載なし |
| LoBell Freq | 60 〜 4000 Hz | 604 Hz |
| LoBell Gain | −24 〜 +12 dB | −1.0 dB |
| LoBell Q | 0.26 〜 6.5 | 0.7 |
| HiBell | On/Off | マニュアルに記載なし |
| HiBell Freq | 1000 Hz 〜 15 kHz | 2398 Hz |
| HiBell Gain | −24 〜 +12 dB | 0 dB |
| HiBell Q | 0.26 〜 6.5 | 0.7 |
| HiShelf | On/Off | On |
| HiShelf Freq | 2000 〜 16000 Hz | 2192 Hz |
| HiShelf Gain | −80 〜 +12 dB | −30.9 dB(Reset 0) |
ER Filterは、EQグラフのすぐ上にある独立したフィルターです。マニュアルの説明では、音が跳ね返る前にどのくらい高周波コンテンツを吸音するかという観点で、壁の素材感を調整するのに使います。より高いカットオフ周波数とより高いフィルターゲインはガラスや大理石といった反射音の多い素材をシミュレートし、より低いカットオフとより低いゲインは高周波を吸音するソフトな壁素材や、布が掛けられた壁面をシミュレートします。
なおER Filterの2つのパラメーターだけ、マニュアルに単位の記載がありません。周波数とゲインであることは文脈から明らかですが、記事側で単位を補うことはしていません。
Time Filters
| コントロール | モード | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| モード選択 | — | Damping/Envelope/LFO | Damping |
| LF Cutoff | Damping | 50 〜 1600 Hz | 721 Hz |
| LF Ratio | Damping | x0.1 〜 x2 | x1.20 |
| HF Cutoff | Damping | 1000 〜 15000 Hz | 3699 Hz |
| HF Ratio | Damping | x0.1 〜 x2 | x0.89(Reset x1) |
| F1 | Envelope/LFO | 100 〜 15000 | 100 |
| F2 | Envelope/LFO | 100 〜 15000 | 6695 |
| Filter Type | Envelope/LFO | HiPass/LoPass | LoPass |
| Q | Envelope/LFO | 0.5 〜 10 | 1.2 |
| Filter Mix | Envelope/LFO | 0 〜 100 | 100 |
| Flip | Envelope/LFO | F1>F2/F2>F1 | F1>F2 |
| Attack Time | Envelope | 0 〜 100% | 0% |
| Decay Time | Envelope | 0 〜 100% | 34.4% |
| LFO Rate Mode | LFO | Free/Sync | ガイドに記載なし |
| LFO Free Rate | LFO | 0.1 〜 20 Hz | 2 Hz |
| LFO Sync Rate | LFO | 4/1, 3/1, 2/1, 1/1, 1/2, 3/8, 1/3, 1/4, 3/16, 1/6, 1/8, 3/32, 1/12, 1/16, 3/64, 1/24, 1/32(17個) | 1/4 |
LFO Sync Rate の選択肢は、英語原文(p.15)では17個です。日本語版マニュアル(p.13)では 1/12 と 1/16 の2つが抜けて15個になっています(別々の方法で2度読み取って確認したので、読み取り漏れではなく紙面がそう印字されています)。同じ日本語版でも Pre-Delay の Sync 側リストには 1/12・1/16 が入っているので、この行だけが落ちたと見るのが自然です。実機で 1/12(4分3連)や 1/16 が選べるのに手元の一覧に無い、という場合はこれが理由です。
Modulation とグローバル・セクション
| コントロール | 役割 | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| AM Depth | リバーブ入力にかけるアンプ・モジュレーションの深さ。ステレオ出力コンポーネントではステレオ空間の変化を生む | 0 〜 100 | 20 |
| AM Rate | 値が低ければゆっくり、高ければ速い | 0 〜 100 | 20 |
| FM Mix | 出力側のコーラス/フランジャー系エフェクト | 0 〜 100% | 100% |
| Drive | 入力をクリッパーに押し当て、ウェット信号の倍音をよりリッチにする | 0 〜 100 | 0 |
| Tempo Source | ホストのテンポに合わせるか、内部テンポで手動設定するか | Internal/Host | Host |
| Tempo | 入力エコーなどテンポ同期するコントローラの基準テンポ | マニュアルに記載なし | マニュアルに記載なし |
| Analog | アナログモデリングの有効化 | On/Off | Off |
| Digital | 低ビットレートでのクオンタイズ(ローファイ化) | Off/12 bit/8 bit | マニュアルに記載なし |
Analogについては、マニュアル内に2つの記述があります。製品概要の側では「H-Reverbではリバーブ出力上でアナログモデリングが適用され、ハードウェアユニットのA/Dコンバーターをモデリングしています」。コントローラの解説の側では「Waves NLS plug-inのスタイルを踏襲したアナログモデリングを有効にします」。どちらもマニュアルの記述なので、両方を併記しておきます。
Drive は、ここだけ訳で意味が反転しているので注意が必要です。英語原文(p.16)は「Pushes the input against a clipper (like a vintage hardware reverb getting a hot input), making the wet signal harmonically richer.」——入力をクリッパーに押し当てる、つまり頭を潰す側の壁に信号を突っ込んでいく操作です。ビンテージのハードウェア・リバーブに熱い入力を突っ込んだときのように、という但し書きが付き、その結果としてウェット信号の倍音が豊かになる、と続きます。
一方、日本語版マニュアル(p.13)の訳は「クリッパーとは逆に入力を増加させ」で、against を「〜とは逆に」と取ったために、クリッパーから遠ざかる操作のように読めてしまいます。原文が言っているのは逆で、上げるほど入力をクリッパーに強く押し当てる、そのぶんウェット信号の倍音が増える、という順序です。「クリッパーから離す=歪まない」方向のコントロールではありません。初期値が 0 に置かれているのも、この性質に沿ったものと読めます(範囲 0〜100・初期値 0 は両版で一致)。
サラウンド・セクション
| コントロール | 範囲 | 初期値 |
|---|---|---|
| Surround LoShelf Freq | 20 〜 1000 Hz | 240 Hz |
| Surround LoShelf Gain | −80 〜 +12 dB | 0 |
| Surround HiShelf Freq | 2000 〜 16000 Hz | 4604 Hz |
| Surround HiShelf Gain | −80 〜 +12 dB | −6 |
| Center Gain | −60 〜 0 dB | −6 dB |
| Front/Rear Balance | −100 〜 100(−100=サラウンドのみ、100=フロントステージのみ) | 50 |
Center Gainには使い方の注意が付いています。あまり多く送るとフロント・イメージが狭くなってしまい、通常これは不自然さを伴う好ましくない結果を生む、という警告です。初期値が−6 dBと控えめに置かれているのも、この方針に沿ったものと読めます。
用途別・設定の始点
以下はすべてマニュアルに根拠のある起点です。楽器別やジャンル別の推奨値はマニュアルに記載が無いため、この記事では扱いません。
| やりたいこと | 触るコントロール | 起点(マニュアル記載) |
|---|---|---|
| リバースのように膨らませる | Buildup Time | 0.5〜2秒(スペシャル・エフェクトの領域として例示) |
| 上下の向きごと反転させる | Reverse | On(初期値はOff) |
| 小さい空間の詰まった感じ | Reverb Size | 1より下げる(ERが凝縮・重なり、ビルドアップが速くなる) |
| 大きな空間の広がり | Reverb Size | 1より上げる(ER間にスペースができる) |
| 低域だけ長く残す | Time Filters=Damping | 作例:Reverb Time 4秒/LF 400 Hz/レシオ1.5 → 低域は計6秒 |
| 反射の多い硬い壁を作る | ER Filter | カットオフとゲインを高く(ガラス・大理石) |
| 布張りの柔らかい壁を作る | ER Filter | カットオフとゲインを低く(高周波を吸音) |
| 初期反射をEQで切り落とす | LoShelf/HiShelf | 最大−80 dBまでカットできる(カット・フィルターとして使う想定) |
| ボーカルの前でリバーブを引かせる | Dynamics=Duck | Threshold −18/Recovery 300 ms(いずれも初期値) |
| リバーブ内の歯擦音を抑える | Dynamics=DeEss | Range 初期値 −18(ドライには影響しない) |
| テールの倍音を増やす | Drive | 初期値0から上げる(上げるほど入力をクリッパーに押し当てる) |
| ビンテージ・デジタル機の質感 | Digital | 12 bit/8 bit |
| AUXセンドで使う | Dry/Wet | 100のまま(初期値がそのままセンド向き) |
| 6秒を超える残響が要る | コンポーネント選択 | ロング版(最大12秒・CPUは約30%増) |
似た製品との使い分け
通常版とロング版
選択の基準は明快です。必要なリバーブ・タイムが6秒までなら通常版、それを超えるならロング版。ロング版はCPUをおよそ30%多く消費します(英語原文 p.5。日本語版の「30%以上」は訳出時に足された言い方で、原文に「以上」に当たる語はありません)。ガイド自身が「6秒を超えるリバーブ・タイムが必要になるのは稀」と書いているので、既定は通常版で、必要になったときだけ差し替えるという運用になります。
IIR系リバーブとの違い
マニュアルは他社製品を名指ししませんが、比較の軸ははっきり示しています。FIRを採ったことで固有の色味から解放され、時間応答をより深くコントロールできる。代わりに、長いリバーブ・タイムほどリソースを消費する。
実用上の読み替えはこうです。ディケイの形そのものを設計したい仕事——ゲート、リバース、2段階の減衰、テールだけをフィルターでスイープさせる——にはH-Reverbの構造が向きます。一方、短い残響を大量のトラックに配りたい場面では、リバーブ・タイムに比例してCPUが増える性質が効いてきます。
センドで使う前提の初期値
Dry/Wetの初期値が100であること、そしてクイックスタートが「お客様のリバーブAUXバスまたはトラックインサートに挿し、リバーブAUXに信号を送る」という手順で始まることから、この製品は基本的にセンドで使う想定だと読めます。インサートで使う場合は、Dry/Wetを100から下げる操作が最初に必要になります。
よくある質問
Thresholdを0にしてもコンプが掛かりません
つまみの0はdBFSの0ではありません。マニュアルによれば0が+10 dBFSに相当し、−50が−40 dBに相当します。掛けたいときは数字を下げる方向に動かしてください。範囲は0〜−50、初期値は−18です。
DeEssモードにすると別のつまみが出てくるのはなぜですか
モードによって使えるコントロールが入れ替わるためです。DeEss を選ぶと、Recovery が Range に置き換わります。英語原文(p.12)は「When DeEss mode is selected, the Recovery control is replaced by a Range control.」——受動態で、置き換えられるのは Recovery のほうです。同じページのパラメーター一覧も「Recovery(Comp と Duck モードで利用可)」「Range(DeEss モードで利用可)」となっており、原文の中に食い違いはありません。
混乱のもとは訳です。日本語版マニュアル(p.10)はこの受動態を能動態に訳して「RecoveryコントローラがRangeコントローラを置き換えます」としており、主客が入れ替わっています。日本語版だけを読むと一覧と説明文が逆向きに見えますが、原文に当たれば一貫しています。Range の範囲は 0 〜 −24 dBFS、初期値は −18 です。
ER Selectの10種類はどう選べばいいですか
ガイドは各モデルの内容を個別に説明していません。書かれているのは操作方法で、英語原文(p.8)は「ドロップダウン・メニューを使って ER モデルを選ぶか、ボックスをクリックしてモデルを順に送る」(Use the drop-down menu to select an ER model or click on the box to move through the models)です。ディスプレイには ER の番号と、ER 反射の時間とゲインの模式図が表示されます。範囲は 1〜10、初期値は 5 です。
ここは版で操作方法そのものが変わっているところです。2017年の日本語版マニュアル(p.7)は「ディスプレイの両端にある矢印で次または一つ前の ER に切り替える/ディスプレイエリアをクリックすると10個すべてがポップアップ表示され、ランダム・アクセス・スタイルで選べる」と書いていました。現行の英語版ガイドにはこの矢印もポップアップも出てきません。p.7 の折り畳みビュー図を拡大して見ても、ER SELECT に付いているのは右端のドロップダウン▼ボタンだけで、左右の矢印は見当たりません。手元のマニュアルに矢印の説明があったら、それは古い版です。
ダンピングのレシオは何に掛かるのですか
リバーブ・タイムに影響します。マニュアルの作例では、リバーブ・タイム4秒・低ダンピング400 Hz・レシオ1.5のとき、中域と高域は4秒で減衰し、400 Hz以下はさらに2秒続いて計6秒かかります。LF/HFともレシオの範囲はx0.1〜x2で、HF Ratioのリセット値がx1です。
まとめ
- FIRを採ったことでディケイの形を設計できる。Reverse、X-Time/X-Gain、Buildup Timeはその帰結
- コンポーネントは通常版(最大6秒)とロング版(最大12秒・CPU約30%増)の2択
- Dynamics ThresholdはdBFSと目盛りがずれている(0=+10 dBFS、−50=−40 dB)



つまみが多い製品ですが、増えている場所には理由があります。立ち上がり、折れ点、向き——どれも減衰しか操作できない方式では作れなかったものです。



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