Waves StudioRackの設計思想|8枠のラックを持ち運ぶ

Waves StudioRackの設計思想|8枠のラックを持ち運ぶ

Waves 🎛️StudioRackは、それ自体は📖EQでも📖コンプでもありません。最大8つのプラグインを1つの「ラック」に積み、設定・コントローラーへのアサイン・📖プリセットごと丸ごと管理して、📖トラック間・📖セッション間・📖DAW間を持ち運ぶためのプラグインチェイナーです。この記事では、その設計思想——なぜ「持ち運び」が中心に据えられているのか——を、公式ユーザーガイドの記載に沿って解剖します。

先に大事な注意をひとつ。StudioRackはバージョンによって仕様が大きく変わってきた製品です。本稿が参照したのは、🎛️SoundGrid Studio/eMotion 📖STとの連携を前提に書かれた2017年5月版のユーザーガイド(英語版・全65ページ。以下「参照版」)で、本文中の数値は、断りのないかぎりこの版のものです(現行ガイドの数値を出すときは必ず「現行ガイド」と明記します)。Wavesが現在配布しているのは2023年2月版(英語版・全57ページ。以下「現行ガイド」)で、6年でほぼ作りが入れ替わっています。参照版にあった I/O 📖Insert モード・Quick Keys・📖MIDI Learn・📖オートメーションの1050コントロールは現行ガイドから消え、代わりに Parallel Split/Multiband Split/📖マクロ8基/StudioVerse/📖VST3ホスティング/内部📖サイドチェーン4系統が入りました。本稿は参照版の設計思想を読むことが目的なので参照版を土台にしますが、現行ガイドで置き換わっている箇所には、そのつど「現行ガイドでは」と添えてあります。

想定読者は、プラグインチェインの管理を仕組みで解決したい人と、SoundGrid系のDSPオフロードが何をしてくれるのかを整理したい中〜上級者です。編集部はこの製品を所有していないため使用感には触れず、マニュアルで裏が取れない数値は書きません。入手条件についてひとつだけ現行の情報を補うと、公式製品ページ(日本語)ではStudioRackは「Free」=無償と表記されています(2026年9月時点)。値段の心配をしてから読む必要はありません。

カホ

音を作るプラグインではなく、音を作る環境を運ぶプラグイン。評価軸がほかと違うので、そこから整理します。

目次

この記事でわかること

  • 「ラックごと持ち運ぶ」という設計の中身(プリセット・アサイン・オートメーションの扱い)
  • 参照版が挙げる3つの処理モード(Local CPU/SoundGrid DSP/I/O Insert)の違い
  • Bypass・Disable・Removeの3段階の「切り方」がなぜ分かれているのか
  • 参照版の操作層の構造(Quick Keys 4基・📖MIDI Learn・オートメーション1050コントロール)と、現行ガイド(2023年2月版)で何に置き換わったか
  • 参照版と現行ガイドの主要スペック対照表(入出力レンジ・処理モード・サイドチェーン・📖ボイス数など15項目)

StudioRackとは|何を解決する製品か

StudioRackはDAWプラグインで、任意のDAWのチャンネルインサートとして動きます。参照版ガイドの要約はこうです。「最大8つのプラグインをチェインし、コントロールし、外部コントローラーにアサインし、プリセットごと管理する。しかも、あるDAWセッションから別のセッションへ、あるDAWプラットフォームから別のプラットフォームへ移動しやすいやり方で」。

解決している問題は明確です。プラグインチェインは通常、DAWの📖ミキサーに縛り付けられています。トラックを移せば挿し直し、DAWを替えれば組み直し。StudioRackはチェインを「ラック」という単位に切り出して、この縛りを外します。さらにSoundGridネットワークにDSPサーバーを足せば、プラグイン処理をホストCPUからサーバーへ移し、eMotion STミキサーと組み合わせて低遅延の録音📖モニターまで作れる——というのが参照版が描く全体像です。

コンポーネントはMono/Mono-to-Stereo/Stereoの3種類。参照版はここに「マルチモノは非対応」「I/O InsertモードにMono-to-Stereoはない」という2つの但し書きを付けています(参照版 p.8)。現行ガイドにはどちらの但し書きもありません——そもそも「I/O Insert」という語が全57ページに1度も出てこないためです。代わりに現行ガイド p.14 は、コンポーネントの説明をラック内の挙動の話に書き換えています。「モノチャンネルに mono-to-stereo プラグインを挿すと、そのプラグインから下のスロットがすべて📖ステレオになる(上のスロットは📖モノのまま)」「ホストDAW側でコンポーネントを差し替えれば、モノのラックをステレオのラックへ変換できる。プラグインの設定はすべて保持される」。複雑なモノのチェインを組んだあとで末尾にステレオリバーブを足したい、という場面のための説明です。なお対応フォーマットについては、参照版がDAE・📖AAX・📖VST・VST3・AUの各フォーマットに専用のWaveShellが用意されると書いているのに対し、現行ガイドは StudioRack 自身の対応フォーマットを列挙していません(DAE・AAX の語は全ページで0件)。

設計思想:なぜこの作りなのか

中心にあるのは「持ち運べること」

参照版ガイドは1つの節を割いて「StudioRackは持ち運び可能(transportable)」と宣言しています。ラックをトラック間・セッション間で移動すれば、ラックの構成・プラグイン・全プリセットが付いてくる。スタジオを移っても、同じプラグインさえ入っていれば同じハードウェアは要らない。Local・SoundGrid DSP・I/O Insertの各モード間もセッションごと行き来できる、と。

移動先にサーバーが無い場合の挙動も、参照版では設計として書かれています。SoundGrid処理のまま開けない環境では、StudioRackは自動的にLocal CPUモードで開く(逆方向——LocalからSoundGridへ——の自動切替はなく、手動で「Switch All to SoundGrid DSP」を選ぶ)。「開けない」ではなく「格下げして開く」に倒してあるのは、持ち運びを最優先にした判断と読めます。なお現行ガイドには、この自動フォールバックを述べた記述が見当たりません。あるのは p.46 の「Switch All to SG/Switch All to Native で、ホストセッション内の全StudioRackを一括で切り替える」だけです。モード名も Local CPU から「Native」へ変わっています(現行ガイド p.4・p.46)。以下この記事では参照版の呼称のまま書きますが、現行の画面では Native と読み替えてください。

処理の置き場所は後から選び直せる

参照版が挙げる構成は3つです。①Local CPUモード:ホスト📖PCで処理。互換DAWならドライバーを問わず動き、特別なセットアップ不要。②SoundGrid DSPモード:SoundGrid対応I/Oとサーバーを使い、処理を外部サーバーへ。③I/O Insertモード:SoundGridドライバーを使えない🎛️Pro Tools HD/HDXシステム向けに、I/Oインサートを手動でパッチして統合する方式です。

DSPモードには明記された制約があります——ただしこれは参照版(2017年5月版 p.13〜14)の記述です。サーバーはリアルタイム処理のため、📖オフラインバウンスに非対応。実行すると「音声が破損する可能性が高い」とまで書かれており、📖バウンス前に全インスタンスをLocalへ切り替える手順(Switch All to Local)が指定されています。📖リアルタイムバウンスは影響を受けません。DSPメーターにも運用基準があり、処理コアの使用率が80%を超えるとポップノイズやドロップアウトの恐れがあるとされています。

現行ガイドは、この2点のどちらにも触れていません。全57ページに「bounce」の語は1度も出てこず、80%という数値もありません。DSPの表示についても、現行ガイド p.45 は「最も📖CPU負荷の高いコアのピークDSP負荷を表示する」と書くだけで、閾値を示しません。つまり現行版で同じ制約が続いているのかどうかは、現行ガイドからは判断できません。制約が消えたという記述も無いので、オフラインバウンスの前にNativeへ切り替えておくのは、現行版でも安全側の運用です。

カホ

DSPモードのままオフラインバウンス、はやりがちな事故です。2017年版のマニュアルが「破損する可能性が高い」と書く珍しい箇所でした。現行ガイドは触れていないので、なおさら自分で気をつける場所です。

「切る」が3段階に分かれている理由

参照版のラック(チェイナー)は、8つのスロットに1つずつプラグインを積み、信号は上から下へ直列に流れます。並び替えはドラッグで自由。なお直列一択なのはこの版の話です。現行ガイド p.4 は、📖信号の流れの任意の地点でラックを分岐して最大8系統の補助ラックへ送る Parallel Split、最大5帯域を別々のラックで処理する Multiband Split、そしてステレオのパラレル入力を L/R・M/S・M・S から選べることを、製品紹介の柱に挙げています。以下の構造は参照版のものとして読んでください。そしてプラグインの止め方が3段階に分かれています。Bypassは効果だけを切る。Disableはプラグインを処理チェインから外すが、ラックからは消さない——設定・コントロールアサイン・オートメーションアサインを保持したまま復帰できます。Removeはスロットから削除し、全設定とアサインが失われます。

この3段階は、ラックを「作業状態ごと保存する箱」として扱う思想の表れです。CPUやDSPを空けたいだけならDisable、音の比較ならBypass、決別ならRemove。さらにコピー&ペーストにも設計があり、同系統のプラグイン間でだけ「Paste Preset」が現れます(参照版 p.17 の例は「REQ2とREQ6の間では可能、Q4とREQ4の間では不可」)。スロットのドロップダウンメニューには、そのプラグイン単体の📖Latencyとラック全体のRack Latencyの表示もあります。この3段階もコピー&ペーストの規則も、現行ガイドにそのまま残っています(現行ガイド p.15〜17。挙げている例だけが「REQ6からREQ4へは可能、REQ6からQ6へは不可」に差し替わっています)。

操作層:8つのプラグインに1枚の操作面をかぶせる

参照版のラックには4基のQuick Keysノブがあり、ラック内プラグインの任意のマッピング可能なパラメーターを右クリックで割り当てられます。狙いは「プラグインウィンドウを開かずに重要なコントロールへ触れること。もっと言えば、あるプラグインに集中しながら別のプラグインの値を動かせること」。入出力メーターの間にはQuick Meter(DYN)があり、ゲインリダクションメーターを持つ任意のプラグインのGRを表示できます。

この層は現行ガイドで名前も数も変わっています。現行ガイド p.12 は「Macro Controllers が8基ある」と明記し(p.8 にも「8つのマクロのどれかにコントロールを割り当てる」とあります)、割り当ての範囲・開始点と終了点・方向を決める Macros Edit Window まで用意されています。「Quick 📖Key」という語は現行ガイド全57ページに1度も出てきません。Quick Keys 4基は参照版の呼称と数です。以下の数値も同様に参照版のものとして扱ってください。なお📖ゲインリダクションの表示も、現行では割り当て式の Quick Meter ではなく、出力セクションの常設 GR メーターになっています(現行ガイド p.10 のインターフェース図)。

外部コントローラーにも2系統の道があります——ここも参照版の話です。MIDI Learnは、インスタンス生成時に開く「Waves SoundGrid MIDI Port」というMIDIノード経由で、ホストされたプラグインのコントロールを📖MIDIコントローラーに割り当てます(1つのコントロールに割り当てられるMIDIコントローラーは1つ、逆に1つのMIDIコントローラーから複数コントロールは可)。Pro Toolsユーザー向けには、Avidプロトコルの📖コントロールサーフェス用にUser Assignable枠が32個(UA1〜UA32)確保されています。現行ガイドには MIDI Learn の節も UA1〜UA32 も出てきません。現行でMIDIに触れているのは、Mackie HUI を仮想コントローラーとして登録し、モニターの切り替え(📖PB/Input/Auto)をDAWに追従させる設定だけです(現行ガイド p.51〜57)。現行版で「8つのプラグインに1枚の操作面をかぶせる」役を担うのは、前段のマクロ8基とその編集ウィンドウのほうです。

オートメーションは「番号の座席」で管理される

ホストしたプラグインのパラメーターは、DAWに直接挿した場合と同様にオートメーションできます。参照版の仕組みは独特で、StudioRackはホストに対して1050個のコントロールを宣言し、そのうちP300〜P1050がオートメーションレーンとして見えます(1〜299は非表示)。プラグインをスロット間で移動してもP###の割り当ては保持されますが、削除して同じスロットに開き直すと保持されません。内部のインデックスシステムが、削除済みプラグインの📖レーンを新しいプラグインが拾ってしまう事故を防いでいます。現行ガイドには 1050 も P300 も出てきません。現行ガイド p.37 の「About Automation」が書いているのは運用のほうで、多数のプラグインをオートメーションするなら、DAWのプラグイン・オートメーション・パネルから割り当てるのではなくコントロールそのものから直接割り当てることを勧める(レーンが枯渇して目的のコントロールが見えなくなるのを防げる)、Pro Tools では Ctrl+Opt+Cmd+クリック(Mac)/Ctrl+Alt+Win+クリック(📖PC)、という内容です。

ツールバーも2階建てです。各プラグインのWaveSystemツールバーとは別に、ラック自体のツールバーがあり、ラックの構造・プラグイン・設定を丸ごとプリセットとして保存できます。注意点として、ラック側ツールバーの📖Undo/📖Redoが扱うのはラック自身のパラメーターだけで、ホストされたプラグインのパラメーター変更は各プラグインのツールバーで戻します(参照版はここでUndoを32段階としています)。ラックの📖A/B比較も、プラグインの追加・削除・並び替えといった構造変更は比較しません。現行ガイドはツールバーの詳細を別冊の WaveSystem Toolbar ガイドへ委ねており(p.9)、32段階という数字もA/Bの制限も本文にありません。代わりに厚くなったのがプリセットの説明で、現行ガイド p.17〜19 は Chain Presets を「ラックの構造(Multiband/Parallel を含む)・プラグイン・設定・マクロ構成の📖スナップショット」と定義しています。

サイドチェーン:参照版は「1本引き込んで中で配る」、現行は「ラック間で配る」

参照版では、外部サイドチェーンはラック単位で扱います。一度に1本のサイドチェーン信号をラックへルーティングし、その1本をラック内のサイドチェーン対応プラグインへ適用できる、という構造です(参照版 p.20)。有効時はプラグインウィンドウにS/Cボタンが現れ、スロットのINボタンがオレンジになります。制約も明記されていて、I/O InsertモードとVST 2.4ではサイドチェーンは使えません(同 脚注2)。

ここは現行ガイドで作り替わっている箇所です。見出しが「Internal 📖Sidechain」になり(現行ガイド p.27)、Parallel Split/Multiband Split のラック向けにソースを4つから選ぶ方式になりました。①External=ホストDAW側の内部パッチから、②StudioRack Input=入力📖ゲインの前・メインラックの処理前、③Parallel/Multiband Split Input=メインラックのスプリット・インサートをソースにする、④Rack # Output=先行するスプリットラックの出力をソースにする(ラックゲインの前・📖ミュートの前・パンナーの後)。サイドチェーン信号は左から右へ流れるので、ラック2はラック3以降のソースになれますがラック1のソースにはなれません。📖SCボタンはプラグインごとに左上に付きます。I/O Insert と VST 2.4 の制約は現行ガイドには出てきません(I/O Insert モードそのものが無く、ホストできるサードパーティ製プラグインは VST3 のみと明記されています。現行ガイド p.21)。つまり見出しに書いた「1本引き込んで中で配る」は参照版の姿で、現行は「ラックをまたいでサイドチェーンを配る」に広がっています。

DSPサーバーがあるときの本領:低遅延モニタリング

SoundGrid DSPモードでは、録音時にI/Oからの入力信号が2経路に分かれます。1本はDAWへ、もう1本はDAWのバッファリング遅延を迂回してStudioRackへ直行し、処理はサーバー上で行われ、eMotion STミキサーでモニターミックスを作ります。このときDAW出力は自動でミュートされ、遅延の異なる2つの信号が重なって聞こえる「ダブルモニタリング」を防ぎます。録音中も再生中も同じプラグイン・同じ設定を通るので、「📖トラッキングと📖ミックスで音が違う」という驚きが起きない——というのが参照版の売り文句です。

規模の上限も、参照版は数字で示しています。StudioRackのボイス数は64(参照版 p.13〜14)。モノ=1ボイス、ステレオ=2ボイス消費で、サイドチェーンのルーティングもボイスを使います。eMotion STのStudioRack📖レイヤーは16チャンネル×4層=最大64チャンネル(参照版 p.38〜39)。複数トラックの一括切り替えにはGroup機能、DAWの📖パンチイン/アウトに追従する自動切り替えにはAUTOボタン(仮想HUIデバイス経由でDAWのコマンドを受ける)が用意されています。

この2つの上限値は、現行ガイドには載っていません。消費するボイスの比率(モノ1・ステレオ2・サイドチェーンでもう1)は現行ガイド p.45 にそのまま残っていますが、総数64という数字が書かれていません。eMotion ST 側も数え方が変わっていて、現行ガイド p.38・p.47 は「一度に最大16のStudioRackをコントロールできる」「StudioRackレイヤーは Input・Route・Aux と Monitor 1〜16 を含む」とし、16を上限として示しています。「16×4層=64」という書き方は現行ガイドには出てきません。規模を見積もるときは、どちらの版の数字なのかを分けてください。

全パラメーター・主要スペック(参照版と現行ガイドの対照)

項目参照版(2017年5月版)の記載現行ガイド(2023年2月版)の記載
1ラックのスロット数最大8プラグイン(1スロット1プラグイン・上から下へ直列)最大8プラグイン。加えて Parallel Split/Multiband Split のラックが立つ
コンポーネントMono/Mono-to-Stereo/Stereo(マルチモノ非対応。I/O InsertにMono-to-Stereoなし)Mono/Stereo/Mono-to-Stereo の3種(p.14)。マルチモノ・I/O Insert の但し書きは無し
フォーマットDAE・AAX・VST・VST3・AU(それぞれ専用WaveShell)列挙なし。ホストできるサードパーティ製プラグインはVST3のみ(p.21)という別の話だけがある
処理モードLocal CPU/SoundGrid DSP/I/O Insert(Pro Tools HD・HDX向け)Native/SoundGrid の2つ(p.4・p.46)。I/O Insert は記載なし。非SoundGrid I/O向けには SG Connect(p.40・p.42-43)
ボイス数64(モノ=1、ステレオ=2消費。サイドチェーンも消費)消費の比率は同じ(p.45)。総数64の記載は無し
入力の可変範囲Inputフェーダー −∞〜+10 dB(メーターはdBFSスケール)入力は −24 dB〜+24 dB のノブ(クリップ表示付きフルスケールメーター・位相反転スイッチ併設。p.28)
出力の可変範囲明示の数値記載が見当たらない出力フェーダーが −∞〜+10 dB(p.28)。スプリットラックの出力フェーダーも −∞〜+10 dB、ラック出力メーターは −∞〜0 dB(p.30)
操作層Quick Keys 4基(連続可動ノブ。スイッチ類は名前部をクリックで操作)Macro Controllers 8基(p.8・p.12・p.32)。Quick Key の語は0件
ゲインリダクション表示Quick Meter(DYN)に任意のプラグインのGRを割り当て表示割り当て式ではなく出力セクションの常設GRメーター(p.10 のインターフェース図)
Avidコントローラー用ユーザーアサインUA1〜UA32の32枠記載なし(UA1 は0件)。MIDI関連は Mackie HUI を仮想コントローラーとして登録する設定のみ(p.51-57)
オートメーション1050コントロールを宣言、P300〜P1050が可視レーン1050・P300 とも0件。コントロールから直接割り当てることを推奨(p.37)
Undo/Redo32段階(ラック側とプラグイン側でツールバーが別)本文に段数の記載なし。ツールバーの詳細は別冊 WaveSystem Toolbar ガイドへ(p.9)
サイドチェーンラックあたり1系統(I/O Insert・VST 2.4では不可)Internal Sidechain・4ソース(External/StudioRack Input/Split Input/Rack # Output。p.27)
eMotion ST StudioRackレイヤー16チャンネル×4層=最大64チャンネル同時制御は最大16 StudioRack(p.38・p.47)
DSPメーターの目安コア使用率80%超で処理過多(ポップ/ドロップアウトの恐れ)閾値の記載なし。「最もCPUの高いコアのピークDSP負荷を表示する」とだけ(p.45)

左の列が本稿の土台にした参照版、右が現在配布されている版です。とくに注意が要るのは入出力の行——参照版で「Inputフェーダー −∞〜+10 dB」だったものが、現行ではその範囲がOutput側へ移り、入力は ±24 dB のノブに変わっています。手元のGUIと数字が合わないときは、まずこの行を見てください。

用途別・構成の始点

状況参照版マニュアルが指す構成・操作(現行ガイドと食い違う行には注記)
DSPサーバーの無い普通のDAW環境Local CPUモード。ドライバーを問わず、特別なセットアップ不要
録音時の低遅延モニターが欲しいSoundGrid DSPモード+eMotion ST(サーバーとSoundGrid対応I/Oが必要)
Pro Tools HD/HDXで使いたいI/O Insertモード(DLI/DLSなどのブリッジI/Oで統合)。現行ガイドに I/O Insert の記載は無く、非SoundGrid I/O向けには SG Connect が用意されている(ただしライブや録音時の低遅延モニタリングには推奨しない、と注記あり)
オフラインバウンスをする先に「Switch All to Local」で全インスタンスをLocalへ(現行の呼称は Native)。現行ガイドはオフラインバウンスに触れていない
複数トラックのモニターを一括で切り替えたい各StudioRackのGRPをオンにしてグループ化
パンチインに合わせて自動で入力モニターへAUTOボタン+DAW側に仮想HUI(Waves SoundGrid StudioRack)を登録

似た製品との使い分け

StudioRackの比較相手は、他のプラグインというより「DAWに直接挿す」という標準のやり方です。音の処理そのものは、直接挿しても、ラックに積んでも、同じプラグインなら同じです。参照版のラックが足すのは、チェインを1単位として保存・移動・複製できること、Quick Keysと外部コントローラーの操作面、そしてSoundGrid環境での処理オフロードでした。現行ガイドでは、ここにマクロ8基(p.12)・最大8系統のパラレル・最大5バンドのマルチバンド・スプリット・ステレオ入力の L/R/M/S/M/S 選択(p.4)・StudioVerse(p.5・p.19。テキスト検索やタグ、オーディオIDでコミュニティのプリセットを探せるクラウド機能)が加わっているので、比較の材料はこの記事が扱う範囲より増えています。

積むプラグインが1〜2個だけのトラックでは、参照版の機能だけを見るかぎり管理層のぶんだけ手数が増えがちです。ただしこれはマニュアルの記載ではなく構成上の見立てで、現行版のマクロやマルチバンド・スプリットまで含めると評価は変わり得ます。

参照版では、同じStudioRackでも標準コンポーネントとI/O Insertコンポーネントで役割が違いました。両者のインターフェースはeMotion STモニタリング部だけが異なり、I/O Insert側はPro Tools HD/HDXの再生エンジンと共存するための方式です。その代償として、I/O Insertでは低遅延録音モニタリングとサイドチェーンが使えず、低遅延モニターはPro Tools側の機能で行う、と参照版は整理しています。この区別は現行ガイドでは消えました。現行のコンポーネントは Mono/Stereo/Mono-to-Stereo の3つだけで(p.14)、I/O Insert コンポーネントは存在しません。Pro Tools ユーザーが現行版で同じことを狙うなら、上の表で触れた SG Connect を見ることになります。

カホ

「何の音がするか」で選ぶ製品ではなく、「作業がどう変わるか」で選ぶ製品。比較表の軸を間違えないことです。

よくある質問

プラグインは何個まで積めますか

本稿が参照した版では1ラックあたり最大8つです。スロットの並びがそのまま信号の流れ(上から下)になり、ドラッグで並び替えられます。バージョンで変わり得る数字なので、現行版は公式ページで確認してください。

Waves以外のプラグインもホストできますか

できます。参照版の記述だけでは断定できません(ラックに積むのは「任意のSoundGrid Studioプラグイン」とされる一方、ロード時のリストは「DAWにインストールされているプラグイン」からカテゴリー別・メーカー別に表示される、とも書かれています)。ただし現行ガイドには節がまるごとあり(p.21〜22「Using VST3 Plugins in StudioRack」)、Waves以外のVST3プラグインを Main・Parallel・Multiband のどのスロットにも挿せると明記されています。初回起動時にVST3のスキャンを促され、以後は追加・変更したときだけ再スキャンすれば足ります。ただし「VST3のほとんどに対応するが、VST(2.x)には対応しない」とも明記されています(同 p.21)。また現行ガイド p.46 自身が「VST3 プラグインは SoundGrid に対応しない」と書いており、DSPサーバーへのオフロードはできません。

DSPサーバーが無いと意味がありませんか

そんなことはありません。Local CPUモードはサーバー無しで動き、チェインのプリセット保存・持ち運びといったラックの管理機能はローカルでも使えます。参照版(2017年5月版)ではここに Quick Keys と MIDI Learn も並んでいましたが、どちらの語も現行ガイド全57ページには出てきません(現行の操作層はマクロ8基。p.8・p.12・p.32)。サーバーが要るのは、処理のオフロードと低遅延モニタリングです。

BypassとDisableはどう使い分けますか

Bypassは効果だけを切ります。Disableはプラグインを処理チェインから外しつつ、設定・アサイン・オートメーションを保持したまま復帰できます。Removeは削除で、全設定が失われます。聴き比べはBypass、取っておきたいけれど処理から外したいときはDisable、です。

まとめ

  • StudioRack自体は加工装置ではなく、プラグインチェインを「ラック」単位で保存・移動・操作するための器。参照版では1ラック最大8プラグイン。現行公式では無償(Free)配布
  • 参照版の核は、処理の置き場所(Local CPU/SoundGrid DSP/I/O Insert)を後から選び直せること。DSPモードではオフラインバウンス不可(現行ガイドは処理モードが Native/SoundGrid の2つになり、バウンスにもI/O Insertにも触れていない)
  • バージョン差の大きい製品。本稿の数値は、断りのないかぎり参照版(2017年5月版)のもの。直列8スロット・Quick Keys 4基は現行ガイド(2023年2月版)の「パラレル/M/S・5バンド分割・マクロ8基」とは別物。とくに入出力は −∞〜+10 dB が入力から出力へ移り、入力は ±24 dB のノブになっている。手元の画面と数字が合わないときは、まず版を疑う
カホ

チェインを組む腕と、チェインを運ぶ仕組みは別の資産です。後者を仕組みに任せられるのが、この種のホスト系の価値です。

関連記事

PR
Pro Tools

Pro Tools

Avid / ¥34,900(参考)

このリンクから購入されると当サイトに紹介料が入ることがありますが、価格が上がることはありません。

Waves StudioRackの設計思想|8枠のラックを持ち運ぶ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次