Waves Abbey Road TG Mastering ChainのRatioは、3:1や4:1という「比」ではありません。VCAの入出力カーブに掛ける係数で、公式マニュアルは「カーブ上のある点で−12 dBFSの入力がRatio 100のとき−24 dBFSになるなら、Ratio 50では同じ−12 dBFSが−18 dBFSになる」という数値例で説明しています。この記事では、5つのモジュールがそれぞれ何をしているのか、Recoveryが「ミリ秒で書けない」と明記されている理由、通常コンポーネントとLiveコンポーネントで中身のどこが入れ替わるのかを、公式ユーザーガイドに沿って解剖します。
想定読者は、すでにこのプラグインを持っていて設定の意味を掴み切れていない人と、マスタリング用のチェーンを1本に決めようとしている人です。操作手順ではなく「なぜその形になっているのか」を扱います。
仕様・数値はWaves公式のAbbey Road TG Mastering Chain ユーザーガイド(全24ページ・英語版)と公式製品ページに基づきます。編集部は本製品を所有していないため使用感の描写はせず、マニュアルで裏が取れない項目は書きません。
カホこれはチャンネルストリップではなく「トランスファー・コンソール」の再現です。挿した時点では全モジュールがオフ。自分で組むところから始まります。
この記事でわかること
- Ratioが「◯:1」ではない理由と、マニュアルが示す唯一の数値例
- Original/Modern/Limitの3タイプが何をモデリングしているか
- 通常コンポーネントとLiveコンポーネントで入れ替わる中身
- 5モジュール全コントロールの範囲・初期値・刻み幅
Abbey Road TG Mastering Chainとは|何を解決する製品か
マスタリングとミキシングのためのモジュラー式プラグインです。モデリング元はEMI TG12410トランスファー・コンソール。マニュアルと公式製品ページはどちらも、この卓が1970年代初頭から現在に至るまでAbbey Road Studiosの全マスタリング・スイートで使われている、と書いています。
マニュアルが例に挙げる作品は、Pink Floydの『The Dark Side of the Moon』からRadioheadの『OK Computer』まで。用途はマスターバスに限らず、グループや個別トラックにも挿せる、とされています。
構成はオリジナル卓と同じく、次のモジュールです。
- TG12411 Input——入力まわり全般(フェイズ、L/Rバランスなど)
- TG12412 Tone——1バンドにつき5種のフィルタータイプを持つ4バンドEQ
- TG12413 Limiter——3タイプのコンプレッサー/リミッター
- TG12414 Filter——ローパス/ハイパスとプレゼンス・ベル
- TG12416 Output——スプレッダー(ステレオ幅の拡張)を備える出力段
さらに、別プラグインとしてAbbey Road TG Meter Bridgeが付属します。Abbey Roadのエンジニアがこの卓と組み合わせて使ってきた、PPM・VU・位相相関の3つのメーターを1つにまとめたものです。マニュアルによれば、PPMはGenesis Systems DPM 101がベースです。
設計思想:なぜこの効き方をするのか
全モジュールがオフで始まり、順番は自分で決める
マニュアルには「All modules are first turned off by default」と書かれています。挿しただけでは何も起きません。オフの間そのモジュールはCPUを一切消費しない、とも明記されています(ただしLiveコンポーネントでは、オフにしてもCPU消費は変わらない)。
そして並び順が変えられます。既定の並びは左からInput、Tone、Limiter、Filter、Output。このうちTone・Limiter・Filterの3つは、ドラッグでチェーン内の好きな位置へ動かせます。InputとOutputは先頭と末尾に固定です。
並べ替えてもステレオ処理が壊れないように作られている点が、この設計の要です。各モジュールのステレオ・モードがST/DUO/MSのどれであっても、出力は常にステレオ。必要なら次のモジュールの入力側でMSへ変換されます。だから順番をその場で入れ替えても、ステレオ処理に影響が出ない——という説明です。
Ratioは「◯:1」ではなくカーブの係数
TG12413のRatioは、範囲1〜100、初期値50。単位が付いていないのは、これが圧縮比ではなくVCAの入出力カーブに掛ける係数だからです。
マニュアルの数値例はこうです。VCAカーブ上のある点で、−12 dBFSの入力がRatio 100のとき−24 dBFSの出力になるとする。同じ−12 dBFSがRatio 50では−18 dBFSになる。つまりRatioは、そのカーブが与える変化量そのものを縮尺しているコントロールです。
Thresholdつまみは見当たりません。マニュアルのTG12413解説が挙げるコントロールはType・Recovery・Make Up・Ratio・サイドチェーン・フィルター・Mix・GRで、その中にThresholdはなく、マニュアル7ページのインターフェイス図にもそれらしいつまみは写っていません。ゲインリダクションの量はRatioと入力レベル、そしてMixで決まります。メイクアップゲインは自動で掛かっており、Make Upはその微調整用。ここで注意が要るのは、メイクアップが圧縮された信号にだけ掛かり、ダイレクト信号には掛からないことです。Mixを100以外にして原音を混ぜているときは、この差が効いてきます。



Thresholdつまみが見当たらないコンプです。Ratioを「比」だと思って50を「50:1」と読むと、まったく別の話になります。
Recoveryはミリ秒で書かれていない
Recoveryは6段階のリカバリータイムを選ぶコントロールで、範囲1〜6、初期値3。使っているType(Original/Modern)によって内容が変わります。
マニュアルは、これらを正確なミリ秒で表すのは非常に難しい、と断ったうえで「リカバリーの段が上がるほどアタック/リリース・タイムが長くなる」という関係だけを示し、正確な違いは自分で試して聴き取ってほしい、と書いています。数値を出さないことを選んでいるわけです。
そのうえでクイックスタートには、マスタリングに向くのは3・4・5だと具体的に書かれています。アップテンポな曲は3、遅い曲は5。数字が無い代わりに、使いどころが指定されています。
Toneは固定周波数——選べるのは1バンドにつき5点
TG12412は4バンドEQですが、周波数は連続可変ではありません。各バンドに5つの固定カットオフ点と5つのフィルター形状が用意されているだけです。
Qつまみもありません。マニュアルがToneモジュールのコントロールとして挙げているのはFrequency・Gain・Shape・Band On/Off・Band Monitoringだけで、幅は連続可変ではなくShapeで形を選ぶ方式です。Low(ローシェルフ)、BL=Blunt(非常に幅の広いベル)、MED=Medium Blunt(中程度の幅のベル)、SH=Sharp(非常に狭いベル)、High(ハイシェルフ)。幅は5段階の離散値です。
ゲインだけが連続で、−10〜+10 dBを0.05 dB刻み。周波数と幅を固定して、量だけを細かく決めさせる構成になっています。各バンドにはOn/Offがあり、拡張ビューではバンド単体のモニタリング(ソロ)もできます。
サイドチェーン・フィルターはWavesの追加であり、Live版との分かれ目
Limiterモジュールのダイナミクス・サイドチェーンには、3基のリニアフェイズ・フィルターが入っています。マニュアルはこれをオリジナル卓には無かったWaves独自の追加だと明記しています。リニアフェイズである理由も書かれていて、サイドチェーン内で位相を揃えておくことで、位相の揃った信号に対してアタック/リリースがきちんと働くようにするため、とされています。
ここがコンポーネント選択に直結します。通常のMono/Stereoコンポーネントは非常に急峻なリニアフェイズFIRのサイドチェーン・フィルターを使い、その代償としてレイテンシーが発生します。Live Mono/Live Stereoは、このFIRを非リニアフェイズのIIRに置き換えて、レイテンシーとCPU消費の両方を抑えます。さらに通常版は低いサンプルレートでアップサンプリングを行いますが、Live版はそれを外してレイテンシーを削っています。
サイドチェーン・フィルターは初期状態ではすべてオフ。折り畳みビューには、全サイドチェーン・フィルターをまとめて切る赤いグローバルOn/Offスイッチがあります。
ST/DUO/MSの選択も、このモジュールではサイドチェーンの処理方法そのものを決めます。Stereoは左右をサイドチェーン内で加算し、左右で同じ値になるためダイナミクス処理も等しく掛かります。DuoはL/Rを別々に処理するので左右で処理が揃わないことがあり、MSはミッドとサイドを別々に処理します。なおマニュアルには、Pro Toolsはモノラルのサイドチェーンしか許可していないという注記も付いています。
Tape Equalizerは、役目を終えた機能を音のために残したもの
InputモジュールにあるTape Equalizerは、周波数スペクトラムを平坦にするためのフィルターです。ハードウェアの時代には、NABまたはIECのテープマシンを7.5 ipsか15 ipsで再生するときに、NABでイコライズされたテープをIECのマシンで再生する(またはその逆)ために必要なイコライゼーションを与える目的で使われていました。
マニュアルは「デジタルのミックスでは、この歴史的な目的でこのコントロールを使う必要はない」と正面から書いています。それでも残したのは音のキャラクターが優れているからで、面白い響きが得られるかもしれない、という言い方をしています。用意されているのはNAB→IEC(7.5 ips/15 ips)とIEC→NAB(15 ips/7.5 ips)、そして初期値のFlatです。
全パラメーター
モジュール共通のコントロール
| コントロール | 役割 | 範囲・選択肢 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| On/Off | モジュールの有効化。オフの間はCPUを消費しない(Live版を除く) | On/Off | Off |
| Expand/Collapse | モジュールの拡大/折り畳み | — | — |
| ST/DUO/MS | ステレオ信号の処理モード(ステレオ・コンポーネントのみ) | Stereo/Duo/Mid-Sides | マニュアルに記載なし |
| Link | 拡張ビューでL/R(またはM/S)を連動。オフで個別調整 | On/Off | 折り畳みビューでは常に連動 |
| Expanded Module Navigation | 拡張ビューから他モジュールの拡張ビューへ直接移動する | — | — |
| Track Name | 挿しているトラック名の表示。Meter Bridge側の切り替えに使う | — | DAWによっては手入力 |
マニュアルが「各モジュールの上部に並ぶ」と書いているのは、このうちOn/Off・Expand/Collapse・ST/DUO/MSの3つです(Outputモジュールを除く)。LinkとExpanded Module Navigationは拡張ビューのもの、Track Nameはプラグインのインスタンスごとの表示です。
TG12411 Input
| コントロール | 役割 | 範囲・選択肢 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Input | プラグインへの入力レベル | −24 〜 +24 dB(0.1 dB刻み) | マニュアルに記載なし |
| Tape Equalizer | NAB/IEC間の再生イコライゼーション(現在は音色目的) | NAB→IEC 7.5 ips/15 ips、IEC→NAB 15 ips/7.5 ips | Flat |
| Pole | 入力位相を180度反転。ステレオ版はPole LとPole Rが独立 | On/Off | Off |
| Transpose | LとRの入れ替え | On/Off | Off |
| Balance(BAL) | LとRのレベル関係を変える | −5 〜 +5 dB(0.05 dB刻み) | 0 |
| Phase | 片チャンネルの位相を他方に対して90度ずらす | Stereo/L+90/R+90 | Stereo |
TG12412 Tone
| コントロール | 役割 | 範囲・選択肢 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Frequency(Band 1) | バンド1のカットオフ点 | 32/45/64/91/128 Hz | マニュアルに記載なし |
| Frequency(Band 2) | バンド2のカットオフ点 | 181/256/362/512/724 Hz | マニュアルに記載なし |
| Frequency(Band 3) | バンド3のカットオフ点 | 1.02/1.45/2.05/2.6/3.25 kHz | マニュアルに記載なし |
| Frequency(Band 4) | バンド4のカットオフ点 | 4.1/5.8/8.1/11/16 kHz | マニュアルに記載なし |
| Gain | 各バンドのレベル | −10 〜 +10 dB(0.05 dB刻み) | マニュアルに記載なし |
| Shape | 各バンドのフィルタータイプ | Low(ローシェルフ)/BL(広いベル)/MED(中程度のベル)/SH(狭いベル)/High(ハイシェルフ) | マニュアルに記載なし |
| Band On/Off | バンドごとの有効化 | On/Off | マニュアルに記載なし |
| Band Monitoring | そのバンドだけをソロで聴く(拡張ビューのみ) | — | — |
TG12413 Limiter
| コントロール | 役割 | 範囲・選択肢 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Type | ダイナミクス処理の3モード。このモジュールで唯一L/R個別に設定できないコントロール | Original/Modern/Limit | マニュアルに記載なし |
| Recovery | 6段階のリカバリータイム。段が上がるほどアタック/リリースが長い | 1 〜 6 | 3 |
| Make Up | 圧縮された信号のメイクアップゲイン(手動微調整) | −12 〜 +12 dB | 0 dB |
| Ratio | VCA入出力カーブに掛ける係数(圧縮比ではない) | 1 〜 100 | 50 |
| Mix | 非圧縮の信号と圧縮された信号のバランス | マニュアルに数値記載なし | マニュアルに記載なし |
| SC High Pass | サイドチェーンのハイパス(リニアフェイズ) | 25 Hz 〜 1 kHz/48 dB/oct | Off |
| SC Bell | サイドチェーンのベル | 100 Hz 〜 12 kHz/−40 〜 +40 dB(0.1 dB刻み) | Off |
| SC Low Pass | サイドチェーンのローパス(リニアフェイズ) | 1 kHz 〜 22 kHz/48 dB/oct | Off |
| GR | ゲインリダクション・メーター | — | — |
MixはRatioと並ぶ主要コントロールですが、マニュアルには「非圧縮の信号と圧縮された信号のバランスを決める」という説明だけがあり、範囲も初期値も書かれていません。この記事で数値を挙げていないのはそのためです。
TG12414 Filter
| コントロール | 役割 | 範囲・選択肢 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| High Pass | ハイパス(固定周波数から選択) | 40/63/80/110 Hz(’Low’がオフとして機能) | マニュアルに記載なし |
| Presence | Med Bluntベルの固定カットオフ点 | 0.5/0.8/1.2/1.8/2.8/4.2/6.5/10 kHz | マニュアルに記載なし |
| Presence(dB) | プレゼンスの増減量 | −10 〜 +10 dB(0.1 dB刻み) | マニュアルに記載なし |
| Low Pass | ローパス(固定周波数から選択) | 20/15/12/10/8 kHz(’High’がオフとして機能) | マニュアルに記載なし |
TG12416 Output
| コントロール | 役割 | 範囲・選択肢 | 初期値 |
|---|---|---|---|
| Spreader | ステレオ幅の拡張。Sum and Diffマトリクスを掛け、両者のゲイン関係を操作して像を広く/狭くする | −5 〜 +5 dB(0.1 dB刻み) | 0 |
| Monitoring | 出力のモニター方法を切り替える | L/Stereo/R/M(ミッド)/Mono/S(サイド) | Stereo |
| Output Fader | プラグイン全体の出力レベル | −24 〜 +12 dB(0.1 dB刻み) | マニュアルに記載なし |
| Output Fader Link | 左右フェーダーを相対的にリンク | On/Off | マニュアルに記載なし |
| Output Meter | 出力レベルのピーク表示 | — | — |
Spreaderはオリジナルのハードウェア、EMI TG12416ユニットに載っていたスプレッダーを精密にモデリングしたもの、と説明されています。単位がdBであってパーセントではない点に注意してください。
用途別・設定の始点
以下はすべて公式マニュアルのクイックスタートに書かれている手順・数値です。編集部が推測で足した値はありません。
| やりたいこと | 触るコントロール | 起点(マニュアル記載) |
|---|---|---|
| ヘッドルームを確保する | Input+Meter Bridge | Meter Bridgeで入力が0VUを指すように合わせる |
| 独特の色を足す | Tape Equalizer | Flat以外を試す(音色目的での使用を公式が推奨) |
| 現代的なマスタリング | Limiter Type | Modern(今日のマスタリング要件に最も適する) |
| 曲に合った時定数を選ぶ | Recovery | 3〜5。アップテンポな曲は3、遅い曲は5 |
| 圧縮のバランスを取る | Ratio と Mix | Ratio 30〜40/Mix 40〜50のあたり |
| 低域でコンプが詰まる | Limiterの拡張ビュー+SCハイパス | 120〜200 Hzの間で良い点を探す |
| 周波数バランスを整える | Tone モジュール | —(試しながら決める、とだけ記載) |
| 不要帯域の掃除・プレゼンス付加 | Filter モジュール | — |
| 処理前後を比較する | Bypass | 処理後のレベルを未処理側に合わせてからA/Bする |
SCハイパスの理由も書かれています。サブ帯域はコンプレッションを窒息させる傾向があるため、ここを切っておくと圧縮が音楽により相関するようになる、という説明です。



Ratio 30〜40にMix 40〜50、SCハイパス120〜200 Hz。ここまで具体的に起点を書いてくれるマニュアルは多くありません。まずこの通りに置きます。
似た製品との使い分け
Original/Modern/Limit
Originalは、TG12413が本来持っていたZener(ツェナー)ダイオード方式のコンプレッサーです。マニュアル冒頭の一覧では、その音を「アグレッシブでダーティー」と表現しています。
ModernはVCAベースのコンプレッサーで、現代のマスタリング要件に応えるために低レベルの圧縮を念頭に置いて新規設計されたもの。一覧では「澄んだ響きで、体感ラウドネスがより高い」「WavesとAbbey Roadによるオリジナル設計」とされています。
Limitは同じZenerダイオードのリミッター・モードで、Originalのコンプレッサーに比べてニーがはるかにハードです。ここは誤解されやすいところなので、マニュアルの注記をそのまま置いておきます——これはブリックウォール・リミッターではなく、トランジェントは通過することが想定されています。天井を確実に止める仕事は、別のツールの担当だということです。
通常コンポーネントとLiveコンポーネント
コンポーネントはMono、Stereo、Live Mono、Live Stereoの4つ。Live版は、極端に低いレイテンシーと最小限のCPU使用が求められるライブ用途に最適化されています。
| 項目 | 通常(Mono/Stereo) | Live(Live Mono/Live Stereo) |
|---|---|---|
| アップサンプリング | 低いサンプルレートで行う | レイテンシー削減のため外している |
| サイドチェーン・フィルター | 非常に急峻なリニアフェイズFIR(レイテンシーが生じる) | 非リニアフェイズIIR(レイテンシーとCPUを最小化) |
| モジュールをオフにしたとき | そのモジュールはCPUを消費しない | CPU消費は変わらない |
音質を優先するなら通常版、レイテンシーを優先するならLive版、という分かれ方です。マニュアルはLive版を音質面で劣ると書いてはいませんが、リニアフェイズのサイドチェーンが失われることは明記しています。
Meter Bridgeは別プラグイン
Meter Bridgeは本体とは別のプラグインで、1つのインスタンスが同じセッション内の全TG Mastering Chainインスタンスと通信できます。あるトラックで開けば既定ではそのトラックを監視し、別のトラックを見たいときはMeter Bridge側の「Track Name」ウィンドウでその名前を選ぶだけ。IN/GR/OUTの3つの表示を切り替えられます。
よくある質問
挿しただけでは音が変わりません
仕様です。マニュアルに「すべてのモジュールは最初オフになっている」と明記されています。各モジュールのOn/Offを個別にクリックして有効化してください。
モジュールを並べ替えるとステレオ処理が崩れませんか
崩れない設計です。モジュールのステレオ・モードがST/DUO/MSのいずれであっても出力は常にステレオで、必要なら次のモジュールの入力でMSに変換されます。これによって、ステレオ処理に影響を与えずにその場で並べ替えができる、と説明されています。
Ratio 50は50:1という意味ですか
違います。VCAの入出力カーブに掛ける係数です。マニュアルの例では、Ratio 100で−12 dBFSが−24 dBFSになる点が、Ratio 50では−18 dBFSになります。圧縮比を表す数字ではありません。
Limitモードならクリップを止められますか
止まりません。マニュアルは「これはブリックウォール・リミッターではない。トランジェントは通過することが想定される」と明記しています。Zenerダイオードのリミッター・モードを再現したもので、Originalよりニーが硬い、という位置づけです。
まとめ
- Ratio(1〜100・初期値50)は圧縮比ではなくVCAカーブの係数。Thresholdつまみは見当たらず、量はRatioと入力レベルとMixで決まる
- Recoveryはミリ秒で書かれていない。公式が示す起点は3〜5で、アップテンポなら3、遅い曲なら5
- 通常版とLive版の違いはアップサンプリングとサイドチェーンの方式。リニアフェイズFIRか、非リニアフェイズIIRか



つまみの名前が同じでも中身は別物、という典型です。Ratioを比だと思わないこと。ここだけ外さなければ、あとはクイックスタートの数字がそのまま起点になります。




コメント